WEBVTT 00:00:07.765 --> 00:00:10.015 アリスは「不思議の国」での 様々な冒険を終えると 00:00:10.015 --> 00:00:15.191 かんしゃく持ちの ハートの女王の宮廷に戻っていました 00:00:15.191 --> 00:00:18.241 アリスは気付かれぬように 庭を通りすぎようとした時 00:00:18.241 --> 00:00:21.711 王と女王の言い争いを耳にします NOTE Paragraph 00:00:21.711 --> 00:00:27.551 「簡単なことよ 64は65と同じ それだけのことよ」と女王は言います NOTE Paragraph 00:00:27.551 --> 00:00:31.852 アリスは思わず割り込んで 「とんでもない」と声を出しました 00:00:31.852 --> 00:00:38.639 「64が65と同じだったら 64じゃなくて65ってことになるわ」 NOTE Paragraph 00:00:38.639 --> 00:00:41.459 すると女王は 「何だって?この無礼者が!」と激怒します 00:00:41.459 --> 00:00:44.449 「今すぐ証明し おまえを死刑にしてやる!」 NOTE Paragraph 00:00:44.449 --> 00:00:46.019 反論する間もなく 00:00:46.019 --> 00:00:50.896 アリスは目の数が 8x8と5x13のチェス盤がある所に 00:00:50.896 --> 00:00:55.225 無理やり連れていかれます 00:00:55.225 --> 00:01:00.004 女王が手を叩くと 奇妙な姿をした4人の兵士が近づき 00:01:00.004 --> 00:01:03.934 互いにぴったり身を寄せて 1つ目のチェス盤に覆いかぶさります 00:01:03.934 --> 00:01:11.788 アリスは 兵士のうちの2人は 斜辺以外の辺の長さが5,5,3の台形で 00:01:11.788 --> 00:01:18.624 他の2人は 斜辺以外の2辺の長さが8と3の 細長い直角三角形をしていると気づきました NOTE Paragraph 00:01:18.624 --> 00:01:20.624 「ごらん これは64よ」 00:01:20.624 --> 00:01:22.944 女王はもう一度 手を叩きました 00:01:22.944 --> 00:01:25.904 カードの兵士たちは立ち上がって 隊列を組み直し 00:01:25.904 --> 00:01:29.104 2つ目のチェス盤の上に移って 横になります 00:01:29.104 --> 00:01:31.724 「そしてそちらが65」 NOTE Paragraph 00:01:31.724 --> 00:01:36.194 アリスは息をのみます 確かに兵士たちはチェス盤を移る間に 00:01:36.194 --> 00:01:38.414 大きさや形を変えた様子が 全くありません 00:01:38.414 --> 00:01:42.944 でも数学的に考えれば 女王が何らかの 仕掛けを講じたことは間違いありません 00:01:42.944 --> 00:01:46.994 果たしてアリスは 命を落とすことになる前に トリックを見破れるでしょうか? NOTE Paragraph 00:01:46.994 --> 00:01:49.564 ビデオを止めて考えてみましょう 正解まで3秒 NOTE Paragraph 00:01:49.564 --> 00:01:51.834 正解まで2秒 NOTE Paragraph 00:01:51.834 --> 00:01:54.290 正解まで1秒 NOTE Paragraph 00:01:54.290 --> 00:01:59.429 思わしくない状況に置かれたまさにその時 アリスは幾何学を思い出し 00:01:59.429 --> 00:02:03.010 並んで横になっている台形と三角形の兵士を 00:02:03.010 --> 00:02:04.750 もう一度見つめます 00:02:04.750 --> 00:02:08.350 彼らは長方形のチェス盤の半分を きっちりと覆い 00:02:08.350 --> 00:02:12.728 角から角まで 一本の長い辺を 作っているように見えます 00:02:12.728 --> 00:02:16.172 そうならば これらの図形の斜辺の傾きは 00:02:16.172 --> 00:02:17.472 同じでなければなりません 00:02:17.472 --> 00:02:19.712 でも 彼女が傾きを求めるための 正確な公式 ― 00:02:19.712 --> 00:02:23.172 (高さ)÷(横の長さ) を使って計算してみると 00:02:23.172 --> 00:02:26.032 実に興味深い結果が得られました 00:02:26.032 --> 00:02:30.643 台形の兵士の方の斜辺は 横の長さ5に対し 高さは2なので 00:02:30.643 --> 00:02:34.859 傾きは2/5 つまり0.4となります 00:02:34.859 --> 00:02:40.107 一方 三角形の兵士の方は 横の長さ8に対し 高さは3で 00:02:40.107 --> 00:02:45.247 傾きは3/8 つまり0.375になります 00:02:45.247 --> 00:02:47.387 全く同じではありません! 00:02:47.387 --> 00:02:49.607 女王が衛兵に命令して アリスを制止させる前に 00:02:49.607 --> 00:02:54.165 彼女は体が縮む薬を一口飲んで もっと近くで見ようとします 00:02:54.165 --> 00:02:58.838 案の定 三角形と台形の間には 00:02:58.838 --> 00:03:03.488 チェス盤の端から端まで伸びている 平行四辺形の隙間があり 00:03:03.488 --> 00:03:06.338 ちょうど無くなった正方形1個分の 大きさになっています NOTE Paragraph 00:03:06.338 --> 00:03:10.058 これらの数字には さらに興味深いことがあります。 00:03:10.058 --> 00:03:12.998 これらは全てフィボナッチ数列の一部で 00:03:12.998 --> 00:03:17.418 各数字は 直前の 2つの数字の和になっています 00:03:17.418 --> 00:03:21.168 フィボナッチ数は 次の2つの性質を持っています 00:03:21.168 --> 00:03:25.058 1つ目は フィボナッチ数を 1つ選んで自乗すると 00:03:25.058 --> 00:03:27.418 前後の数の積より 00:03:27.418 --> 00:03:31.388 1小さいか 1大きい数となっています 00:03:31.388 --> 00:03:35.863 つまり8の自乗は 5と13の積より1小さく 00:03:35.863 --> 00:03:40.211 5の自乗は3と8の積より 1大きいといった具合です 00:03:40.211 --> 00:03:46.378 2つ目の性質は 隣り合っている2つの フィボナッチ数の比はほぼ同じ数であることです 00:03:46.378 --> 00:03:51.744 なんと この比は 最終的に黄金比に収束します 00:03:51.744 --> 00:03:55.644 そんな訳で ずる賢い王族は 同じように見える傾きを 00:03:55.644 --> 00:03:57.714 作ることが出来たのです 00:03:57.714 --> 00:04:02.847 実際にハートの女王は任意の連続する 4つのフィボナッチ数を用いて 00:04:02.847 --> 00:04:06.347 同様のなぞかけを ひねりだすこともできたでしょう 00:04:06.347 --> 00:04:10.770 数字が大きくなる程 不可能なことがより真実に見えてきます 00:04:10.770 --> 00:04:14.955 しかし『不思議の国のアリス』の著者であり かつ まさにこのパズルを研究した ― 00:04:14.955 --> 00:04:19.318 熟練した数学者でもある ルイス・キャロルの言葉によると 00:04:19.318 --> 00:04:22.088 「人はあり得ないことなんて 信じることはできない」のです