0:00:09.514,0:00:11.463 みなさん こんにちは 0:00:13.861,0:00:18.467 ご存知かと思いますが[br]私の盲導犬のグラデスです 0:00:19.997,0:00:25.001 まずは彼女の番 窮屈は苦手なので[br]先にハーネスを外します 0:00:30.031,0:00:32.886 伏せ! 0:00:37.671,0:00:42.548 わたしのスピーチの間に[br]引っ掻いたり 立ち上がったり 0:00:42.548,0:00:46.792 眠りながら吠えるかもしれませんが[br]よろしくお願いします 0:00:50.943,0:00:54.126 ラルフ・ウォルドー・エマーソンは[br]こう述べています 0:00:55.316,0:00:58.040 「常にあなたを 0:00:58.040,0:01:01.347 変えようとする世の中で[br]自らを保つということは 0:01:01.347,0:01:04.458 最高の達成である」 0:01:04.458,0:01:08.100 わたしに言わせれば[br]それは大きなチャレンジです 0:01:08.838,0:01:12.919 もともとチャレンジなんて[br]好きなたちではありません 0:01:12.919,0:01:16.177 大勢の中の一人で十分です 0:01:16.177,0:01:21.092 自由な考え方 自分の生き方が[br]確保されればそれで構いません 0:01:22.711,0:01:25.906 ですが身体障害によって[br]何かが決めつけられる となれば 0:01:25.906,0:01:29.483 傍観者でいるわけにはいきません 0:01:31.421,0:01:34.833 わたしは昔から本や文学が好きでしたので 0:01:34.833,0:01:38.581 図書館司書か言語学者になって 0:01:38.581,0:01:41.400 いつも本に囲まれて過ごしたいと[br]思っていました 0:01:42.253,0:01:45.519 ですが盲目であるわたしの経験では 0:01:45.519,0:01:48.620 特にここ数年において 0:01:48.620,0:01:53.417 身体障害者に向けられた社会的差別や無知は 0:01:53.417,0:01:58.035 大変強く あまりに不公正であることに[br]気づきました 0:01:58.035,0:02:02.377 これでは図書館司書として[br]普通の暮らしを楽しむのは無理です 0:02:07.025,0:02:11.810 「人生には二つの選択肢がある」と[br]デニス・ウェイトリーは言いました 0:02:13.040,0:02:15.640 「ありのままの状況を受け入れるか 0:02:15.640,0:02:19.058 その状況を変えるという任務を[br]引き受けるか」 0:02:20.088,0:02:21.488 普通の生活をしようとするだけで起きる[br]様々な困難について考えると 0:02:21.488,0:02:25.400 普通の生活をしようとするだけで起きる[br]様々な困難について考えると 0:02:27.850,0:02:31.304 障害者たちが意味のある 0:02:31.304,0:02:35.240 充実した毎日を送ろうとしたら 0:02:35.240,0:02:37.810 選択肢はたったひとつそれは 0:02:37.810,0:02:40.869 状況を変える任務を受けて立つしかありません 0:02:43.519,0:02:48.915 わたしは4歳のときに[br]網膜色素変性症と診断されました 0:02:48.915,0:02:53.835 そしてこの20年間で徐々に視力を失いました 0:02:55.255,0:02:57.193 医者は両親に 0:02:57.193,0:03:02.658 40-50歳で失明するだろうと告げました 0:03:02.658,0:03:07.406 大学や学校に行くのは問題ないはずでした 0:03:08.440,0:03:12.155 ですが実際は そうはなりませんでした 0:03:12.155,0:03:15.919 8歳ですでに本の活字が読めなくなり 0:03:17.143,0:03:20.581 黒板も見えなくなりました 0:03:20.581,0:03:23.964 大学に行き始めた頃には 0:03:23.964,0:03:26.989 鏡の中の自分の姿さえも[br]見えなくなっていました 0:03:30.419,0:03:35.613 人生の節目ごとに[br]私はいつも同じ決断を迫られました 0:03:36.890,0:03:42.084 自分に用意された言い訳を受け入れ[br]あわれな自分とともに やすやすと生きるか 0:03:43.440,0:03:47.094 覚悟を決め 未知の世界に足を踏み入れるのか 0:03:48.554,0:03:50.986 わたしはいつも後者を選びました 0:03:52.756,0:03:56.955 わたしはモンゴルの視覚特別支援学校で学び 0:03:56.955,0:03:59.114 2000年にそこを卒業しました 0:04:00.174,0:04:01.545 その当時 0:04:01.545,0:04:06.340 盲目の人が受ける教育といえばそこまででした 0:04:06.340,0:04:08.272 普通ですとその後 0:04:08.272,0:04:12.526 障害者のための工場で働くか[br]家にいるかのどちらかですが 0:04:13.873,0:04:16.438 わたしはそんな「普通」はいやで 0:04:16.438,0:04:19.950 大学に行きたい[br]いい仕事にも就きたいと思いました 0:04:19.950,0:04:23.688 両親や家族に[br]誇りに思ってもらいたかったのです 0:04:24.889,0:04:28.465 そのためには[br]他の人の2倍強い気持ちで 0:04:28.465,0:04:33.673 他の人の2倍努力する必要が[br]ありました 0:04:37.073,0:04:40.839 14歳になるまで[br]わたしはありふれた子供でした 0:04:42.161,0:04:46.619 いずれ失明するとは知らず 0:04:46.619,0:04:49.925 ただ目が悪いだけだと思っていました 0:04:50.795,0:04:55.331 病状が日々の生活に及ぼす影響といえば 0:04:55.331,0:05:00.850 分厚いメガネのせいで[br]時に悪口を言われることや 0:05:00.850,0:05:05.275 読み間違えることぐらいでした 0:05:07.365,0:05:12.532 しかし14歳になって 真実を知らされた時 0:05:13.575,0:05:16.676 時間との競争が始まりました 0:05:17.472,0:05:21.229 目の見えない生活は想像もつきませんでした 0:05:21.909,0:05:25.600 視力を失えば[br]すべてを失うと思っていました 0:05:26.784,0:05:29.050 そしてはっと気づきました 0:05:29.050,0:05:33.742 なぜ あの頃 父があちこちの博物館に[br]連れて行ってくれたのか 0:05:35.055,0:05:37.070 私が8歳のときで 0:05:39.460,0:05:43.699 博物館にはつまらないものや[br]怖いものしかありませんでした 0:05:45.343,0:05:47.223 でも ようやく理解しました 0:05:47.223,0:05:51.860 父はわたしの記憶に何かを残したくて 0:05:51.860,0:05:56.576 我が国の歴史や文化を見てほしかったのです 0:06:00.766,0:06:05.513 パニックに襲われたのを覚えています 0:06:05.513,0:06:08.843 見て学ぶべきことがどれほど多く 0:06:08.843,0:06:12.925 そして残された時間がいかに少ないか[br]気づいたときでした 0:06:15.741,0:06:18.462 読むべき本を探し始めました 0:06:19.943,0:06:22.604 本だけが心のよりどころだと思っていました 0:06:24.794,0:06:30.100 寮の部屋で [br]息つく間もないほど読書に読書を重ねました 0:06:30.100,0:06:33.280 まるで本なしでは生きていけないみたいでした 0:06:34.361,0:06:39.137 3週間で 学校にあるモンゴル語の点字本は 0:06:39.137,0:06:42.956 すべて読み終え 0:06:44.370,0:06:48.298 学校の科目も同じ勢いで勉強しました 0:06:48.298,0:06:52.836 できるだけ多くの知識を[br]頭の中に詰め込みたかったのです 0:06:52.836,0:06:56.381 失明した時に備えて 0:06:56.989,0:06:59.191 自分でできるだけのことを[br]したかったのです 0:07:01.129,0:07:06.353 残念ながら学校には資料が少なすぎました 0:07:06.353,0:07:08.515 苛立ちが募りだしました 0:07:08.515,0:07:12.367 何もかもが足りなかったのです 0:07:14.500,0:07:20.708 ですが そんな状況でも[br]意思は揺らぎませんでした 0:07:20.708,0:07:24.851 そして他の選択肢を探すようになりました 0:07:26.226,0:07:32.076 例えば 学校の本を読みつくした後 0:07:32.076,0:07:36.443 英語の点字図書が寄付されていることを知り 0:07:37.185,0:07:40.562 どうしたのかというと[br]英語を勉強することに決めました 0:07:42.269,0:07:44.485 英語の先生などいませんでしたし 0:07:44.485,0:07:48.185 教材 教本などありませんでした 0:07:48.185,0:07:52.062 そんなことではあきらめません 0:07:52.899,0:07:56.938 特別支援学校卒業後 0:07:56.938,0:08:02.104 健常者の通う普通の高校に行きました 0:08:03.672,0:08:06.120 それは大学に行くためで 0:08:06.120,0:08:10.430 10年の高等教育を受けなければなりません 0:08:12.620,0:08:14.880 これもまた 大変でした 0:08:14.880,0:08:17.313 盲目の生徒への教え方や接し方を[br]誰も知らなかったのです 0:08:17.313,0:08:20.293 盲目の生徒への教え方や接し方を[br]誰も知らなかったのです 0:08:21.270,0:08:26.640 学校初日にですが 点字を打っていたら 0:08:26.640,0:08:31.929 怒られたことを 今でも覚えています 0:08:31.929,0:08:35.028 穴開けが 授業の邪魔ですって 0:08:36.943,0:08:42.347 怖いことも照れくさいことも克服しました 0:08:42.347,0:08:45.584 自分の障害に閉じ込められるのはゴメンです 0:08:47.154,0:08:51.217 2006年 モンゴル人文大学を卒業し 0:08:51.907,0:08:56.520 2007年にモンゴルの視覚障害者として 0:08:56.520,0:08:59.643 初めてフルブライト奨学生となりました 0:08:59.643,0:09:01.378 (拍手) 0:09:06.988,0:09:11.663 2009年 ルイジアナ州立大学の 0:09:11.663,0:09:17.113 図書館情報科学科で修士号を取得 0:09:17.113,0:09:21.581 モンゴルで初の盲導犬とともに帰国しました 0:09:21.581,0:09:23.163 (笑) 0:09:24.833,0:09:29.555 モンゴルでは[br]オーディオブックは一つもなく 0:09:29.555,0:09:32.882 点字図書も足りませんでした 0:09:32.882,0:09:36.138 モンゴルの高校・大学では[br]ないものばかりでした 0:09:37.346,0:09:40.511 ノートのための点字紙も足りませんので 0:09:40.511,0:09:46.794 書き写すのは大事なことだけに留めて 0:09:46.794,0:09:50.422 できるだけ記憶に頼らねばなりませんでした 0:09:51.642,0:09:56.650 教材や文具が不足して[br]大変だとは言っても 0:09:57.683,0:10:03.550 社会の無知と向き合うことに比べれば[br]大したことはありません 0:10:04.727,0:10:07.962 それはわたしの歩みを妨げる[br]唯一の理由でもあります 0:10:09.055,0:10:12.342 ある時 記者に質問されました 0:10:12.342,0:10:15.970 人生で一番辛いことは何でしょう 0:10:15.970,0:10:18.837 「貢献できないこと」と答えました 0:10:19.917,0:10:21.430 その理由は 0:10:21.430,0:10:26.642 人間の気持ちや技能は 人に伝えることで[br]はじめて意味を持つと信じているからです 0:10:28.282,0:10:33.209 世の中に還元するべき成果を 0:10:33.209,0:10:36.710 共有できないのは最大の悲劇です 0:10:38.810,0:10:41.014 想像してみてください 0:10:41.014,0:10:44.067 知識やエネルギーに満ち溢れているのに[br]何も貢献できないこと 0:10:45.097,0:10:50.263 能力のある大人なのに[br]子供のように扱われること 0:10:51.401,0:10:55.402 ひとりの人間として見られず 0:10:55.402,0:10:57.843 障害しか見られないこと 0:10:59.733,0:11:04.342 理解や認識の欠如が 0:11:04.342,0:11:08.835 差別や誤解が生まれる元となります 0:11:10.042,0:11:14.868 教材などの不足よりも[br]このことによる影響は深刻です 0:11:16.564,0:11:22.827 食べる物がなく お腹が空くだけで辛いけれど 0:11:24.482,0:11:27.726 それとは違う次元の辛さというのは 0:11:27.726,0:11:31.564 食べ物がないことが問題だと[br]気づいてくれないことです 0:11:32.844,0:11:36.133 物があるだけで[br]いろいろ可能になりますが 0:11:36.133,0:11:38.586 それは道具にすぎないのです 0:11:39.266,0:11:45.814 世の中の理解があってこそ[br]それらの道具は働き始めます 0:11:47.881,0:11:52.395 個人的に ここまでは長い道のりでした 0:11:53.589,0:11:58.503 ですが 教育された若者 0:11:58.503,0:12:03.891 社会的不利にいる人間の代表として言えば 0:12:03.891,0:12:06.120 まだやることは沢山あります 0:12:07.560,0:12:10.782 わたしの経験からわかったのは 0:12:10.782,0:12:15.077 世の中が変わっていくには 0:12:15.077,0:12:19.771 個人の成功だけがすべてではありませんが 0:12:19.771,0:12:22.564 始まりとはなりえます 0:12:23.594,0:12:29.197 この20年で失ったものは大きかった[br]でも学びも多かった 0:12:30.945,0:12:35.260 失明は世の終わりではありません 0:12:36.500,0:12:41.289 人生において何に出くわすかということは 0:12:41.289,0:12:43.880 自分では選べません 0:12:44.957,0:12:49.875 それを受けて対処してみようという力 0:12:49.875,0:12:52.293 それが世の中を変えることになります 0:12:53.713,0:12:55.765 ヘレン・ケラーは言いました 0:12:57.084,0:13:00.875 「扉が一つ閉じられたときに[br]がっかりしてそればかり見ていると 0:13:00.875,0:13:03.540 別の扉が開いたのにも気づかない」 0:13:04.760,0:13:09.642 ですから見るだけではなく[br]人生を経験して下さい 0:13:09.642,0:13:13.334 人生は見るだけではもったいない 0:13:15.264,0:13:19.774 みなさんはオープンな方々だと信じています 0:13:19.774,0:13:23.863 この多様な世界に生きるみなさん 0:13:23.863,0:13:27.713 社会の公正さや民主主義を信じるみなさん 0:13:27.713,0:13:33.385 障害者に手を差し伸べることをお願いします 0:13:33.385,0:13:39.652 可哀想だからではなく[br]理解をもって受け入れて下さい 0:13:39.652,0:13:41.074 ありがとうございます 0:13:41.074,0:13:42.360 (拍手)