ご紹介頂いたように 私は脳の研究をしています
人間の脳の機能と構造についての研究です
その意味するものについて 少し皆さんに考えて頂きたい
脳はゼリー様の塊で 重さは1.4kgくらい
手のひらで持てるサイズですが
宇宙空間の広大さを考えることができるのです
無限ということの意味を考えたり
それを考える自分について考えたりもします
我々が自己認識と呼ぶ
この奇妙な再帰的性質こそ
神経科学の至高の目標だと思います
いつかはその仕組みを理解したいものです
では この神秘的な器官についてどう研究するのでしょう?
1000億個の神経細胞があり
この原形質の小さな集まりが
作用し合っています
その活動から様々な能力が生まれて来るのですが
それを我々は人間性とか人間の意識と呼んでいます
それはどのようにして生じるのでしょう?
人間の脳の機能を研究する方法は
たくさんあります
我々が主に使っているのは
脳の小さな領域に遺伝子発現の異常が生じ
そこに持続的な障害を持つ患者です
その際に起こるのは 精神的機能の
全体的な低下 つまり認識能力が
鈍くなるようなものではありません
ある機能だけが選択的に失われるのです
他の機能は正常に保たれています
そこから確証できるのは
脳のその部分が ともかく
その機能を果しているということです
そうやって機能を構造にマップすれば
ある神経回路が どうやって特定の機能を
作り上げているかがわかります
それが我々のやろうとしていることです
ここで顕著な例を幾つかご紹介します
3つの例を各6分間でお話します
最初はカプグラ症候群という
非常に変わった症候です
スライドをご覧下さい
順に 側頭葉、前頭葉、頭頂葉 です
これらの脳葉が脳を構成します
側頭葉の内側表面の中にしまい込まれているのが
ここには見えませんが...
紡錘状回と呼ばれる小さな領域です
「顔の領域」とも呼ばれます
損傷すると人の顔が認識できなくなるからです
声からなら認識できて
「ああ ジョーだね」とか言えるのですが
顔を見ても誰だかわかりません
鏡で自分の顔すら認識できないのです
まあ 自分がウィンクすれば相手もウィンクするので
鏡に写った自分だとわかるのですが
それが自分自身だと真に認識することはできません
この症状は紡錘状回の損傷によるものだと
よく知られています
しかし他にもっと稀な症状があります
あまりにも稀で殆どの医師は聞いたこともありません 神経科医でもです
カプグラ妄想と呼ばれています
他には全く正常なのですが
頭に損傷を負って 昏睡から目覚めます
他は全く正常なのですが 母親の顔を見て
「この女性は母親に瓜二つだが
ニセモノだ」 と言うのです
「他の女性が私の母親のフリをしている」 と...
これはなぜ起こるのでしょう?
なぜ他の全ての面では完全に正気で
知的能力もある人が 母親を見た時に
妄想が始まって 母親ではないと言うのでしょう
これに対する最も一般的な解釈は
全ての精神医学の教科書に書かれていますが
フロイト派の見解です
これは女性にも適用されますが
ここでは男性についてだけ述べます
これは 幼児期に母親に対して
強い性的魅力を感じていたという見解です
いわゆる エディプス コンプレックス です
私がこれを信じているわけではありませんが
これがフロイト派の標準的な見解なのです
成長して 大脳皮質が発達すると
母親に対する潜在的な性的衝動が抑制されます
さもないと母親を見るたびに
欲情してしまいます
もし頭を殴られて 大脳皮質を損傷すると
もし頭を殴られて 大脳皮質を損傷すると
この潜在的な性的衝動が浮かび上がり
表面に燃え上がって 突然に且つ不可解に
自分が母親に欲情しているのに気づくのです
そして「ああ この人は僕のママなのに
どうしてこんなに興奮してまうんだろう?
彼女は他の女性に違いない
彼女はニセモノだ」
それが損傷した脳にとって
筋が通る唯一の解釈です
この議論は 私にとっては
全く筋が通りませんが...
フロイト派の議論では
毎度のことながら大変独創的ではあります
(笑)
筋は通りません
なぜなら同じような妄想を
ペットのプードルに対しても持つ患者も見てきたからです
(笑)
こう言います「先生
この犬はフィフィに瓜二つですが
フィフィじゃなくて他の犬です」
フロイト派の説明を当てはめてみて下さい
(笑)
人間に共通する潜在的な
獣姦願望とでも言うのでしょうか
とてもばかげた話ですよね
では実際には何が起こっているのでしょうか?
この奇妙な障害を説明する為に
脳における正常の視覚経路の
構造と機能を見てみましょう
通常は 視覚信号が眼球に入ってきて
脳の視覚野に行きます
実は視覚だけに関係する部分が
脳の後部に30箇所あります
視覚はいろいろ処理された後
そのメッセージは
紡錘状回という小さな領域に伝わり
そこで顔を認識します
そこに顔に敏感に反応する
神経細胞があります
さきほどお話しした
「顔の領域」と
呼んでもいいところでしたね
その領域が損傷を受けると
顔を見る機能を失うのです
でもその領域から メッセージは
辺縁系の扁桃体と呼ばれる領域に
送られます
脳の感情の中核です
その 扁桃体と呼ばれる構造は
見ているものの
感情的な重要性を評価します
それは獲物か 捕食者か 配偶者か?
それとも 全く取るに足らない何か
例えば糸くずとか
チョークとか -言いたくはありませんが-
靴の片方だとか そんな感じのものです
完全に無視できるものです
もし 扁桃体が興奮すれば それは何か重要なものとされ
メッセージは自律神経系に送られます
心臓の鼓動は早くなり
筋肉の動きによって作り出される熱を
発散させるのに汗をかき始めます
便利なことに
両手のひらに電極を置き
汗が生み出す皮膚の電気抵抗の変化を
計測できます
それで分かるのは 何かを見ている時に
興奮しているとか
欲情しているかとかいうことです
それについてはまた後で触れます
私の考えを説明します
この人がモノを見る時
何でもいいんですが
視覚野に行って
紡錘状回で処理されて
それが豆の木だとか テーブルだとか
あるいは母親だとか認識します
そこから扁桃体にメッセージが送られ
自律神経系に渡されるのです
でも多分この人の
扁桃体から辺縁系に至る神経線維―
脳の感情の中核が
事故で切断されているかもしれません
紡錘状回は正常なので
まだ母親を認識でき こう言うのです
「ええ、母親に似ています」
でも感情の中枢への神経線維が
切断されているので
「でも母親なら
なぜ暖かさを感じないのだろう」と言うのです
逆に「恐怖」を感じることも
あるかもしれません
(笑)
それで言うのです
「この不可解な感情の欠如を説明できない
これは母親のはずがない
母親を装う知らない女性なんだ」
どうすればこれが検証できるでしょう?
みなさんのうちの誰かをここに連れてきて
スクリーンの前に立たせ
皮膚電気反応を計測します
そしてスクリーンに写真を写し
対象を見た時に
どの位汗をかくか計測します
テーブルとか傘とかだと勿論汗はかきませんね
ライオンや虎
セクシーな写真を見せれば 汗をかき始めます
そして何と 母親の写真を見せると
普通の人の話ですが 汗をかき始めます
ユダヤ人でなくても構いません
(笑)
では この患者の場合は何が起こるでしょう?
患者を連れてきて スクリーンに写真を見せ
皮膚電気反応を計測します
テーブルや椅子やチリでは
普通の人と同様 何も起こりませんが
彼の母親の写真を見せても
皮膚電気反応は フラットです
母親に対して感情的反応がないのです
視覚やから感情の中枢への
神経路が切れているからです
視覚野は正常なので視覚も正常で
感情も正常です
笑いますし泣きもします
しかし視覚から感情への
神経路が切れているので
母親がニセモノだという
妄想を抱いてしまうのです
これは我々の研究の好例です
奇妙で 見た目は不可解な
神経精神症状を取り上げて
標準的なフロイト派の見方は
間違っていると結論します
既知の脳の神経解剖学に関して
正確な説明を与えることができます
ところで この患者が次に
隣の部屋にいる母親から電話を受けると
彼は「やあママ 元気?
今どこにいるの?」と言うのです
電話で妄想は起こりません
母親が1時間後に彼に近づくと
彼は言うのです 「誰?
僕の母親に似ているけど」ってね
その理由は 脳の聴覚の中枢からは
感情の中枢につながる
異なる経路があるからです
そこは事故で切断されていません
その為 電話では問題なく
母親だと認識できるのです
でも対面するとニセモノだと言います
では 脳の中でこれら複雑な回路は
どう組み立てられているのでしょう?
生まれつき 遺伝子によるもの?
それとも育成されたもの?
この問題へのアプローチは
「幻肢」という
別の興味深い症状を考えることです
幻肢は知っていますよね
壊疽の治療に腕や下肢が切断された時
或いはイラク戦争等で失った時
これは今深刻な問題ですが...
失った腕の存在を
生き生きと感じ続けるのです
それが幻肢と呼ばれています
実際には 体のほとんどの部分で幻が生じ得ます
驚くことに 内臓でもです
子宮を摘出した患者もいました
幻の子宮を持ち 毎月ある時期に
幻の月経痛までありました
先日ある学生が私に聞いてきました
幻の月経前症候群もあるのかと
(笑)
科学的問い掛けとして十分なテーマですが
まだ取り組んでいません
では 次の質問は
実験によって幻肢について何を学べるかということ
我々が発見したことの一つは
幻肢を持つ患者の半数が
その幻を動かせると言うことです
兄弟の肩をポンと叩いたり
鳴っている電話を取ったり
さよならと手を振ったりします
とても本物のようで 鮮明な感覚です
その患者は妄想している訳ではありません
腕がないことは分かっているのですが
それでも本物と区別できない
知覚経験なのです
とは言え 患者の約半数には生じません
彼らは言います
「でも先生 幻肢は麻痺しています
けいれんしたままの状態で
ひどく痛むのです
動かすことさえできたら
痛みは楽になるのでしょうが」
ではなぜ 幻肢は麻痺するのでしょう?
矛盾しているように聞こえます
でも症例記録を見ていてわかったのは
麻痺した幻肢を持つ人々は
元々の腕が 末梢神経損傷で
麻痺していました
実際の腕への神経連絡が
切断されていました
例えばオートバイ事故で
それで患者はその痛む実物の腕を
数ヶ月から1年の間
包帯で吊るし
外科医は腕の痛みを取り除こうと
見当違いの試み
つまり腕を切断するのです
それで同じ痛みを持つ幻の腕を手にするのです
これは重大な臨床的問題です
患者は意気消沈します
自殺する人さえいます
この症候群を
どう治療すれば良いのでしょう?
ここで なぜ麻痺した幻肢が
生じるのか考えてみましょう
症例記録を見た時に気づいたのは
彼らが実際の腕を持ち
腕を支配する神経が切断され
実際の腕が麻痺していたことです
そして切断の前数ヶ月間
包帯で吊るされていて
その痛みが幻の腕に引き継がれました
これはなぜ起こるのでしょう?
腕が切断される前に麻痺していた時は
前頭葉が腕に「動け」と命令を送ります
しかし「動かない」という
視覚的フィードバックを受け取ります
動け、動かない、動け、動かない...
これが脳の回路に焼き付いてしまうのです
これを「学習した麻痺」と呼びます
この「ヘッブの関連付け」により
脳は学習します
腕を動かせという単純な命令が
麻痺した腕の感覚を生み出し
腕を切断した時に
この学習した麻痺が
自分の身体イメージ
つまり幻の腕に持ち越されるのです
ではどうすれば患者を救えるでしょうか?
学習した麻痺を取り除き
幻の腕のひどく痛む
締め付けるようなけいれんを
取り除けるのでしょう?
幻の腕に命令を送って
腕がその命令に従っているという
視覚フィードバックを与えてみてはと
考えました
幻の痛み 幻のけいれんを
取り除けるかもしれないと
どうすればできるでしょう?
バーチュアルリアリティです
それには何百万ドルもの
費用が掛かります
私は3ドルでやる方法を思いつきました
でも私のスポンサーには内緒ですよ...
(笑)
私が「鏡の箱」と呼ぶものを作ります
真ん中に鏡をつけたダンボール箱を用意して
そこに幻の腕を入れます
最初の患者デレックがやって来ました
十年前に腕を切断しています
上腕の外傷で神経が離断され
腕が麻痺し
1年間包帯で吊るした後に
切断されました
幻肢が生じ
ひどく痛みますが 動かせません
麻痺した幻肢です
私はあの鏡付きの箱を渡しました
「鏡の箱」です
彼はけいれんして締め付けられた
幻の腕を鏡の左側に入れ
正常な腕を鏡の右側に入れます
そして同じ形 握り締めた形にして
鏡の中を見ます
何が起こるでしょう?
幻の腕が蘇るのが見えます
鏡の中の正常な腕の反射を見ているのですが
それが幻の腕が蘇ったように見えるのです
「では」と私は言いました
「幻をピクピク動かしてみて
鏡を見ながら
実物の指を動かしてみて」と
彼は幻が動いているという
視覚を受けますよね?
それは明らかですが 驚いたことに
患者は言うのです
「おお 幻が動き出した!
痛みも 締め付けるようなけいれんも
和らいでいる」と
先ほどの最初にやってきた患者は
(拍手)
ありがとう
最初の患者が 鏡を覗き込んだとき
私は「鏡に映った幻を見てください」と
言いました
彼はクスクス笑って
「幻が見えますよ」と言いました
でも彼は愚かではありません
鏡の反射だということはわかっています
しかしそれは鮮明な感覚経験なのです
次に私は「本物の腕と幻を
動かして下さい」と言いました
彼は「いや 痛くて
幻を動かせません」
私は「正常な腕を動かして」と言います
彼は「おお 幻が動き出した
信じられない!
痛みも和らいでいる」と言います
私は言いました 「眼を閉じて」
彼は眼を閉じます
「正常な腕を動かして下さい」
「ああ 何も起こらない
またけいれんしている」
「はい では眼を開けて」
「わあ! また動き出した!」
彼はお菓子屋にいる子供のようでした
これで学習された麻痺に関する
私の理論が証明されました
視覚インプットの重大な役割も
でも彼の幻の腕を動かすことでは
ノーベル賞はもらえません
(笑)
(拍手)
考えてみたら 完全に無用な能力です
(笑)
でもそれでわかったのです
神経学で見られる
他の麻痺
脳卒中とか限局性筋失調症とかも
多分 学習された部分があって
鏡を使った簡単な装置で
克服できるかもしれないと
そこで言いました 「ねえ デレック」
そもそも 痛みを和らげるのに
鏡を持って歩くわけにはいきません
それで言いました「鏡を家に持ち帰って
1-2週間練習してみて下さい
多分 練習したら
鏡は要らなくなるかもしれません
麻痺を忘れて
麻痺した腕を動かせるようになります
そうすれば痛みから解放されますよ」
彼は承諾し 家に持ち帰りました
「まあ所詮2ドルですからね どうぞ持っていって」
持ち帰った2週間後に彼は電話してきました
彼が言うには
「先生 多分信じて貰えないでしょうが」
「えっ?どいういうこと?」
彼は言います 「無くなりましたよ」
「何が無くなったんですか?」
多分鏡の箱を無くしたんだろうと思いました
(笑)
「いやいや 私が十年間苦しめられた
幻のことです
それが消えてしまったのです」
私は心配になって言いました
「なんてこった!」
私は彼の身体イメージを
変えてしまったのです
人体実験、倫理とかはどうなるのでしょう?
私は聞きました
「デレック これって困ります?」
彼は「いえ
この3日間 幻の腕がなくなって
幻のひじの痛みもなく
締め付けられもせず
幻の前腕痛もなく
全部の痛みが消えてなくなりました
問題はまだ幻の指が
肩からぶら下がっていることです
箱では届きませんから」
(笑)
「デザインを変えて 額に乗せてもらえば
同じことができて
幻の指も取り除けますよね?」
彼は私を魔術師だと思っていたようです
これはどうして起こるのでしょう?
それは脳が途方もない
感覚の矛盾に直面するからです
視覚からは
幻が戻ってきたとの情報を受けます
一方 筋肉からの固有感覚がありません
筋肉からの信号は
「腕がない」と言っているからです
運動指令は腕があると言っています
この矛盾の為
脳は言います「もううんざりだ
幻はないんだよ
腕もないんだよ」と
ある種の否定に入ります
信号を選択するのです
それで腕が消えた時に
おまけに痛みも消えます
離脱した痛みが
空中に浮いているわけにはいきませんから
予期せぬ贈り物なのです
このテクニックはヘルシンキでも
何十人もの患者に試されました
幻の痛みの治療として有益と
証明されるかもしれません
実際 脳卒中のリハビリに
試した人もいます
通常 脳卒中では神経線維の損傷が起き
どうしようもないと考えられています
しかし 脳卒中で起こる麻痺の ある要素も
学習された麻痺であると判明しています
それは鏡を使って
克服できるかもしれません
これにも臨床試験が行われて
たくさんの患者が救われました
ではお話の3番目にギアを入れ替えましょう
共感覚と呼ばれる奇妙な現象です
19世紀にフランシス ゴルトンによって
発見されました
彼はチャールズ ダーウィンのいとこです
彼の指摘は
ある人々は 他はすべて正常なのに
次のような特殊性があるということでした
数字を見る度にいつも 色がついていると
5は青 7は黄色 8は黄緑色
9は藍色 とかね
この人達は他の面では
全く正常だということをお忘れなく
あるいはCのシャープとか
時に音階が色を想起させます
Cのシャープは青 Fのシャープは緑
他の音階は黄色 という具合です
これはなぜ起こるのでしょう?
これは共感覚と呼ばれます
ゴルトンがそう呼びました
感覚が入り交じったものです
普通 全ての感覚ははっきりと異なります
この人達は感覚がごちゃ混ぜになっています
これはなぜ起こるのでしょうか?
この問題の二つの面のうち一つは
大変興味深いです
共感覚には家系が関係します
それでゴルトンは
これは遺伝的なものだと考えました
もう一点
これがこの講座のメインテーマである-
創造性に関する論点に行き着くのですが
共感覚は
アーティスト 詩人 小説家といった
一般人よりも創造性の高い人に
8倍も多く見られます
それはなぜでしょう?
その質問にお答えします
これはまだ解明されていませんでした
では共感覚とは何なのでしょうか?
様々な理論があります
その一つは
単に彼らが狂っているというもの
まあこれは科学的理論ではないので
忘れましょう
彼らは麻薬中毒者だという理論もあります
これには正しい部分もあるかもしれません
サンディエゴよりも
ここサンフランシスコでの方が一般的だから
(笑)
では3つ目の理論は
共感覚で一体何が起こっているか
自問してみましょうか?
脳の中で 色の領域と数字の領域は
隣接していることがわかりました
紡錘状回の中です
そこで 脳の中で色と数字の間に
偶然 交互の結びつきが生じたのではと
考えました
それで数字を見る度に
対応する色が見え
その結果 共感覚が生じると
これがなぜ起こるのでしょう?
なぜある人々には
交互の結びつきが生じるのか?
家系に関係する と言ったのを覚えてますか?
それがヒントになります
異常な遺伝子が存在して
遺伝子の変異で
交互の結びつきが生じます
我々は皆 全てのものが
他のものと結びついた状態で生まれます
脳の全ての領域は
他の領域と結びついています
それが枝切りされて 大人の脳の
特有のモジュール構造が作り出されるのです
もしある遺伝子が枝切りを
引き起こしていて
その遺伝子が変異すれば
脳の隣り合う領域の間で
枝切りに欠陥が生じます
数字と色の間であれば
数字と色の共感覚になります
音階と色であれば
音階と色の共感覚になります
ここまではいいですね
その変異遺伝子が脳の至る所で発現し
全部が相互接続されたらどうなるでしょう?
アーティストや小説家 詩人が共通に持つものを考えて下さい
隠喩的な考え方をする能力です
一見関連のないアイデアを結びつけます
「向こうは東
ならばジュリエットは太陽だ」とか
ジュリエットが太陽だなんて
あなたは言いませんよね
彼女はきらめく炎の玉という意味でしょうか?
統合失調症患者はそう言いますが
それはまた別の話です
普通の人は
彼女は太陽のように暖かいと言います
彼女は太陽のように輝くとか
太陽のように恵みを与えるとか
すぐにつながりが見つかったでしょう
この接続とコンセプトの
交差が増強した状態が
脳の別の部分にもあると仮定すれば
共感覚を持つ人々にとっては
より隠喩的な考えと創造性を
生み出しやすいことになります
それ故に 詩人やアーティストや小説家に
共感覚の症例が
8倍も見られるのです
これは共感覚のとても骨相学的な見方です
最後のデモンストレーションは
もう1分いいですか?
(拍手)
誰もが皆 共感覚者だということを
お見せします そう思わないでしょうが
これは私が火星人のアルファベットと呼ぶものです
普通のアルファベットと同様
AはA、BはB、CはCと
異なる音素に異なる形が相当します
これが火星人のアルファベットです
片方が「キキ」で もう一方が「ブバ」です
どっちがキキで どっちがブバでしょう?
左がキキで 右がブバだと思う人
手を挙げて下さい
一人か二人 変異体がいます
(笑)
左がブバで 右がキキだと思う人 手を挙げて
皆さんの99パーセントです
誰も火星人じゃないのに
どうしてそうなったんでしょう?
皆さんはクロスモデリングを行ったのです
共感覚の抽象的概念です
つまり聴覚皮質でキキという鋭い音―
有毛細胞が興奮するキキという音が
視覚で見える 突然の屈曲
ギザギザの形に似ていると言っているのです
これはとても重要なことです
なぜならあたなの脳が
原始的なことに従事していると言っているから
ばかげた錯覚に見えますが
あなたの目の中の光子が形を作り
あなたの耳の有毛細胞が
その聴覚パターンに反応しているのです
脳は共通の意味合いを引き出しているのです
それは原始的な抽象化です
これは脳の紡錘状回で起こることが
わかっています
そこが損傷されると
ブバとキキの判別能力が失われるからです
同時に隠喩の能力も失われます
その人に「光るもの全てが金ではない」
というのはどういう意味と聞くと
その患者は「金属製で光っていても
金というわけではない
その比重を量らなければね」と言います
その隠喩的な意味合いを
完全に見落としているのです
この領域は高等霊長類
特に人間においては
下等霊長類の8倍もの大きさがあります
ここ角回では
何かとても興味深いことが起こっています
それは聴覚 視覚 触覚の間の交差点であり
人間では巨大になっているからです
とても面白いことが起こっています
それが抽象化や隠喩や創造性などの
人間独自の能力の
基礎になっていると私は考えます
哲学者が何千年も研究してきた
これらの問いはすべて
脳イメージングや患者の研究や
適切な質問をすることによって
我々科学者が研究し始めることができます
ありがとうございました
(拍手)
時間超過ですみません
(笑)