WEBVTT

00:00:00.920 --> 00:00:02.604
ある日

00:00:02.628 --> 00:00:04.460
マドリッドの薄暗いバーで

00:00:05.023 --> 00:00:09.247
マギル大学の同僚 マイケル・ミーニーに
ばったり出会いました

00:00:09.271 --> 00:00:11.576
一緒にビールを飲むと

00:00:11.600 --> 00:00:13.653
科学者の常として

00:00:13.677 --> 00:00:15.123
彼は自分の研究のことを話しました

00:00:16.304 --> 00:00:23.258
彼の興味は母親ラットが
生まれたばかりの子供を舐める

00:00:23.282 --> 00:00:24.652
という行為でした

00:00:25.656 --> 00:00:28.075
そこで私はこう言いました

00:00:28.099 --> 00:00:31.099
「そんなことに
私の税金は浪費されてるんだな

NOTE Paragraph

00:00:31.123 --> 00:00:32.157
（笑）

NOTE Paragraph

00:00:32.181 --> 00:00:34.959
こんな『ソフトサイエンス』に」

NOTE Paragraph

00:00:35.835 --> 00:00:38.332
それで彼は

00:00:38.356 --> 00:00:41.756
人間も育児の仕方はそれぞれだけど

00:00:41.780 --> 00:00:44.226
母親ラットの子供の舐め方も様々だ
と説明し始めました

00:00:44.250 --> 00:00:46.985
非常に熱心に育児に励む母親がいる一方

00:00:47.009 --> 00:00:49.214
ほとんど無関心な母親もおり

00:00:49.238 --> 00:00:51.208
大半はその中間です

00:00:51.867 --> 00:00:53.768
でももっと面白いのは

00:00:53.792 --> 00:00:58.710
これらの赤ちゃんラットが成長したときのこと


00:00:58.734 --> 00:01:02.913
母ラットが死んだずっと後で
人間なら何年も後に相当する頃に

00:01:02.937 --> 00:01:05.005
彼らは全く違った性格になっています

00:01:05.029 --> 00:01:09.402
より熱心に舐められ
毛繕いされた個体は

00:01:09.426 --> 00:01:11.178
そのために

00:01:12.059 --> 00:01:13.423
リラックスしており

00:01:14.022 --> 00:01:16.271
彼らの性行動や

00:01:16.295 --> 00:01:19.250
生活の仕方が

00:01:19.274 --> 00:01:24.754
母親にそれほど構われなかった
個体とは違っていました

NOTE Paragraph

00:01:25.934 --> 00:01:29.098
そこで考えました

00:01:29.122 --> 00:01:30.414
魔法だろうか？

00:01:31.002 --> 00:01:32.371
どういうことだろう？

00:01:32.395 --> 00:01:34.604
遺伝子学者たちは

00:01:35.390 --> 00:01:39.362
母親が「悪い遺伝子」を
持っていれば

00:01:39.386 --> 00:01:43.023
子供はストレス耐性がない子供になり

00:01:43.047 --> 00:01:45.594
それが後の世代に受け継がれる

00:01:45.618 --> 00:01:48.318
つまり遺伝子により全てが決まる
と説明するかも知れません

00:01:48.342 --> 00:01:51.836
しかし それ以外に何か
起きている可能性は？

NOTE Paragraph

00:01:51.860 --> 00:01:55.431
ラットを使い この疑問の答えを
探し出すことができます

00:01:55.455 --> 00:01:59.060
それで交換哺育の実験をしました

00:01:59.084 --> 00:02:03.839
子ネズミたちを２種類の

00:02:03.863 --> 00:02:05.730
養母へとあてがいます

00:02:05.754 --> 00:02:09.082
実の母親ではありませんが
哺育をさせます

00:02:09.106 --> 00:02:11.360
よく舐める母親と
あまり舐めない母親です

00:02:11.384 --> 00:02:15.262
あまり舐めない母親の子供には
よく舐める母親を充てがいました

00:02:15.708 --> 00:02:18.081
なんと結果は

00:02:18.105 --> 00:02:22.144
母親からの遺伝子は
問題ではありませんでした

00:02:22.168 --> 00:02:27.916
ラットの特性を決定していたのは
産みの母親では無く

00:02:27.940 --> 00:02:31.946
子ネズミたちを世話した母親でした

00:02:32.771 --> 00:02:35.596
どういうことでしょうか？

NOTE Paragraph

00:02:36.921 --> 00:02:38.724
私はエピジェネティクス研究者で

00:02:38.748 --> 00:02:42.420
遺伝子が胚発生時
つまり我々が母親の胎内にいる間に

00:02:42.444 --> 00:02:44.160
どのように化学的な印をつけられ

00:02:44.184 --> 00:02:48.989
どの組織でどの遺伝子が発現するかを

00:02:49.013 --> 00:02:51.492
決定づけられるかという仕組みに

00:02:51.516 --> 00:02:52.698
興味があります

00:02:52.722 --> 00:02:56.892
脳では肝臓や眼とは違った遺伝子が発現します

00:02:57.718 --> 00:03:00.557
そこで こう考えてみました

00:03:00.581 --> 00:03:07.528
ひょっとして母親は
行動を通じて 子どもの遺伝子を

00:03:07.552 --> 00:03:09.101
リプログラムするのではないか？

00:03:09.125 --> 00:03:10.736
そして10年をかけて

00:03:10.760 --> 00:03:14.801
生化学的な作用が
影響することを発見しました

00:03:14.825 --> 00:03:18.268
母親によるグルーミングや
子供を舐めるという行為が

00:03:18.292 --> 00:03:20.775
生化学的シグナルへと翻訳され

00:03:20.799 --> 00:03:24.110
それが細胞核そしてDNAへ伝わって

00:03:24.134 --> 00:03:26.212
それらをプログラムし直し
変化させていたのです

00:03:26.236 --> 00:03:31.132
こうしてラットは
その一生に向けて準備をするわけです

00:03:31.156 --> 00:03:33.777
厳しい一生になるだろうか？

00:03:33.801 --> 00:03:35.563
食べ物は豊富にある環境だろうか？

00:03:35.587 --> 00:03:38.112
猫や蛇が多くいる環境だろうか？

00:03:38.136 --> 00:03:40.459
それとも上流階級の住宅地で

00:03:40.483 --> 00:03:43.190
社会に受け入れられるよう

00:03:43.214 --> 00:03:46.349
行儀よくしているだけでいい
気楽な生活だろうか？

00:03:46.978 --> 00:03:52.569
そのプロセスがどれほど
我々の人生に重要かを

00:03:52.593 --> 00:03:53.768
考えてみましょう

NOTE Paragraph

00:03:53.792 --> 00:03:56.704
私たちは先祖のDNAを受け継ぎます

00:03:57.411 --> 00:03:59.340
DNAは古いものです

00:03:59.364 --> 00:04:01.432
人類の進化とともに進化しました

00:04:01.938 --> 00:04:06.271
でもそれは夏は日が長く冬は短い
ストックホルムで

00:04:06.295 --> 00:04:09.681
自分が生まれることになるのか

00:04:09.705 --> 00:04:11.010
エクアドルのような

00:04:11.034 --> 00:04:14.567
年中昼夜の時間が半々の国で
生まれるのかなど予測してくれません

00:04:14.591 --> 00:04:18.386
それが私たちに大きな生理的影響を
与えるとしてもです

00:04:19.489 --> 00:04:23.725
私たちのアイデアは
おそらく生まれてすぐに

00:04:23.749 --> 00:04:25.916
母親から伝えられたシグナルが

00:04:25.940 --> 00:04:30.455
子供に どんな社会環境が待ち受けているかを
教えているというものです

00:04:30.479 --> 00:04:33.879
厳しい環境になるなら
気持ちを尖らせてストレスを持ち

00:04:33.903 --> 00:04:37.026
優しい環境になるなら
それとは違った感じになるのは当然です

00:04:37.050 --> 00:04:40.240
光に溢れる 
あるいは薄暗い環境でしょうか？

00:04:40.264 --> 00:04:44.249
食べ物が溢れる 
または少ない環境でしょうか？

00:04:44.273 --> 00:04:45.797
食べ物の欠乏した環境では

00:04:45.821 --> 00:04:50.437
食餌が手に入る度に
たらふく食べることを脳は学び

00:04:50.461 --> 00:04:55.217
また身体は それを無駄なく
脂肪として蓄えるようになります

NOTE Paragraph

00:04:56.819 --> 00:04:58.249
これは良いことです

00:04:58.273 --> 00:05:00.130
このように進化の選択により

00:05:00.154 --> 00:05:05.050
固定化した古来のDNAが
様々な新たな環境でダイナミックに

00:05:05.074 --> 00:05:06.923
機能できるようになったのです

00:05:07.377 --> 00:05:09.960
まあでも時にはうまく行かず

00:05:10.706 --> 00:05:14.568
例えば 貧しい家庭に生まれたら

00:05:14.592 --> 00:05:17.521
シグナルは「食べまくれ

00:05:17.545 --> 00:05:20.760
目に入る食べ物は全部食べるんだ」
と言うでしょう

00:05:20.784 --> 00:05:23.036
しかし人間とその脳は進化し

00:05:23.060 --> 00:05:25.156
進化も加速させました

00:05:25.180 --> 00:05:28.544
マクドナルドのハンバーガーを
１ドルで買えます

00:05:28.568 --> 00:05:34.978
そうして 母親から伝えられた情報は

00:05:35.002 --> 00:05:37.594
現状に不適応ということになります

00:05:38.351 --> 00:05:42.564
飢饉や飢餓から
守ってくれるはずの遺伝情報は

00:05:42.588 --> 00:05:45.045
そうする代わりに

00:05:45.069 --> 00:05:48.039
肥満や循環器系や代謝の疾患などを
引き起こしてしまいます

00:05:48.666 --> 00:05:52.138
特に人生の初期に
遺伝子に対して 経験の刻印が

00:05:52.162 --> 00:05:54.463
刻まれるという考えにより

00:05:54.487 --> 00:05:57.301
健康と疾病 両方についての

00:05:57.325 --> 00:05:59.668
統合的な説明がつきます

NOTE Paragraph

00:06:00.612 --> 00:06:02.970
これはラットだけに
起こる現象でしょうか？

00:06:02.994 --> 00:06:05.946
問題は こんな実験を
人間にはできないことです

00:06:05.970 --> 00:06:10.082
倫理的にも子供を
無作為に苦しめてはいけません

00:06:10.106 --> 00:06:13.410
もし貧しい子供に
ある特質が現れたとしても

00:06:13.434 --> 00:06:17.173
それは貧しさから来たものなのか

00:06:17.197 --> 00:06:20.021
貧しい人々は悪い遺伝子を持つのか
はっきりしません

00:06:20.045 --> 00:06:23.160
遺伝子学者たちは
貧しい人々が貧しくなった―

00:06:23.184 --> 00:06:25.240
遺伝的な要因を
挙げるでしょうが

00:06:25.264 --> 00:06:27.224
エピジェネティクス学者は

00:06:27.248 --> 00:06:31.358
貧しい人々が
悪い環境や困窮した環境に住み

00:06:31.382 --> 00:06:34.346
彼らにこの特質を持つ表現型が
発現すると言うでしょう

NOTE Paragraph

00:06:35.576 --> 00:06:41.418
それで人間に近いサルを見てみました

00:06:42.087 --> 00:06:45.781
私の同僚 スティーブン・スオミは
２種類の方法で

00:06:45.805 --> 00:06:46.966
サルを育てています

00:06:46.990 --> 00:06:49.891
サルを無作為に母親から引き離し

00:06:49.915 --> 00:06:52.507
他のメスに育てさせました

00:06:52.531 --> 00:06:55.490
代理母というわけです

00:06:55.514 --> 00:06:58.185
これらのサルは
母親ではなく乳母に育てられ

00:06:58.209 --> 00:07:02.829
他のサルは
自分の母親たちに育てられます

00:07:02.853 --> 00:07:07.549
そして育った時
彼らは全く違っていました

00:07:07.573 --> 00:07:10.666
母親と育ったサルは
アルコールに興味を示さず

00:07:10.690 --> 00:07:12.369
性的に攻撃的ではありませんでした

00:07:12.393 --> 00:07:16.160
母親がいなかったサルたちは
攻撃的でストレス耐性が無く

00:07:16.184 --> 00:07:17.798
アルコール依存症になりました

00:07:18.482 --> 00:07:23.964
我々は誕生直後の
彼らのDNAを観察しました

00:07:23.988 --> 00:07:26.755
母親が刻印をしているのだろうか？

00:07:26.779 --> 00:07:32.137
子供のDNAに母親の印があるだろうか？

NOTE Paragraph

00:07:32.161 --> 00:07:34.413
出生後14日目のサルです

00:07:34.437 --> 00:07:38.513
現在はこうして
エピジェネティクスを研究します

00:07:38.537 --> 00:07:43.200
今日 メチル化マークと呼ばれる
これらの化学的マークの存在部分が特定でき

00:07:43.224 --> 00:07:46.482
単一ヌクレオチドの解像度で
全ゲノムにわたった地図が作れます

00:07:46.506 --> 00:07:48.383
単一ヌクレオチドの解像度で
全ゲノムにわたった地図が作れます

00:07:48.407 --> 00:07:51.474
こうして 母がいたサルと
そうでないサルを比較できます

00:07:51.498 --> 00:07:53.452
これがその情報を
チャートにしたものです

00:07:53.476 --> 00:07:58.213
よりメチル化された遺伝子は赤い色で

00:07:58.237 --> 00:08:01.251
メチル化が比較的少なかった遺伝子は
緑色で表されています

00:08:01.275 --> 00:08:03.759
多くの遺伝子に
変化がおきている様子がわかります

00:08:03.783 --> 00:08:06.497
母親がいないことは

00:08:06.521 --> 00:08:08.052
あらゆる点で影響を及ぼします

00:08:08.076 --> 00:08:11.584
その子が成人したとき
人生がどうなるかに

00:08:11.608 --> 00:08:13.367
あらゆるシグナルを送ります

00:08:13.391 --> 00:08:15.812
２種のサル群は

00:08:15.836 --> 00:08:18.556
お互いに大きく違っています

00:08:19.392 --> 00:08:21.521
どれくらい早期にこれが発達するか？

00:08:22.078 --> 00:08:24.291
これらのサルは母親に会っていないという

00:08:24.315 --> 00:08:26.014
社会的体験をしています

00:08:26.038 --> 00:08:30.303
生まれたばかりの瞬間にも
社会的地位の感覚はあるのか？

NOTE Paragraph

00:08:31.131 --> 00:08:35.180
この実験では 色々な社会的地位のサルの

00:08:35.204 --> 00:08:37.161
胎盤を採取しました

00:08:37.698 --> 00:08:43.072
面白いことに
あらゆる生物の社会的構造に

00:08:43.096 --> 00:08:45.714
社会的地位の階層が見られます

00:08:46.345 --> 00:08:48.533
第１位のサルはボスです

00:08:48.557 --> 00:08:50.895
第４位のサルは下僕

00:08:50.919 --> 00:08:53.358
４匹のサルを一緒の檻に入れると

00:08:53.382 --> 00:08:56.393
いつもボスザルと下僕が決まります

00:08:57.448 --> 00:09:01.296
面白いのは第１位のサルは

00:09:01.320 --> 00:09:04.752
第４位のサルよりもずっと健康なことです

00:09:04.776 --> 00:09:06.580
そして彼らを一緒の檻に入れると

00:09:06.604 --> 00:09:11.301
第１位のサルは
それほど餌を食べず

00:09:11.325 --> 00:09:13.162
第４位のサルが
たくさん食べます

00:09:14.129 --> 00:09:18.402
このメチル化マッピングに
現れているのは

00:09:18.426 --> 00:09:21.201
生まれながらに驚く程顕著な

00:09:21.225 --> 00:09:23.939
社会的地位の高いサルと

00:09:23.963 --> 00:09:26.637
そうでないサルとの違いです

NOTE Paragraph

00:09:27.349 --> 00:09:31.580
私たちは すでに社会的情報を
持って生まれて来るということです

00:09:31.604 --> 00:09:34.657
その情報は良い悪いとか
そう言うものではなく

00:09:34.681 --> 00:09:36.100
単に私たちがそれぞれ生物的に

00:09:36.124 --> 00:09:40.365
プログラムを行い人生に向けて
準備できるようにするものです

00:09:40.389 --> 00:09:43.470
社会的に高い地位にいるか
低い地位にいるか

NOTE Paragraph

00:09:44.326 --> 00:09:46.207
でも人間についてはどう研究すれば？

00:09:46.710 --> 00:09:50.158
人間を実験に利用したり
困難な状況に陥れることはできません

00:09:50.182 --> 00:09:52.775
しかし神が人間に行う実験があります

00:09:52.799 --> 00:09:55.087
天災というものです

NOTE Paragraph

00:09:55.111 --> 00:09:59.371
カナダの史上最も熾烈な自然災害は

00:09:59.395 --> 00:10:01.805
ケベックの

00:10:01.829 --> 00:10:04.232
1998年の大吹雪です

00:10:04.256 --> 00:10:08.056
大吹雪で電力網が
停まってしまいました

00:10:08.080 --> 00:10:11.077
ケベックの気温は 
-30℃ から -35℃ 程度まで

00:10:11.101 --> 00:10:13.050
下がりました

00:10:13.074 --> 00:10:15.606
その当時妊娠していた
母親たちがいましたが

00:10:16.082 --> 00:10:22.114
同僚のスザンヌ・キングが
その子供たちの成長を

00:10:22.138 --> 00:10:23.852
15年にわたり追跡しました

NOTE Paragraph

00:10:24.565 --> 00:10:28.811
ストレスが大きかった場合に
何が起きたか

00:10:28.835 --> 00:10:31.443
以下が客観的なストレス尺度です

00:10:31.467 --> 00:10:35.905
電力無しでどれ位過ごしたか？
その間をどこで過ごしたか？

00:10:35.929 --> 00:10:40.932
義母のアパートだったか
郊外の立派なお屋敷か？

00:10:40.956 --> 00:10:43.614
こうした情報を
社会的ストレススケールに反映した上で

00:10:43.638 --> 00:10:45.020
こんな質問をします

00:10:45.044 --> 00:10:48.088
子供たちはどうなったか？

00:10:48.112 --> 00:10:50.746
ストレスが大きくなるほど

00:10:50.770 --> 00:10:52.828
子供達の自閉症率は高く

00:10:52.852 --> 00:10:55.391
代謝疾患の率も高く

00:10:55.415 --> 00:10:58.247
自己免疫疾患の発症の割合も
高かったのです

00:10:58.787 --> 00:11:01.211
メチル化状態をマッピングすると

00:11:01.235 --> 00:11:06.773
緑だった部分がストレスの
増大と共に赤くなり

00:11:06.797 --> 00:11:10.289
赤い遺伝子がストレスの減少と共に
緑色に変化していきます

00:11:10.313 --> 00:11:14.863
ゲノムの再配列がストレスに
反応して起こっています

NOTE Paragraph

00:11:17.442 --> 00:11:20.651
もし遺伝子をプログラムできるなら

00:11:20.675 --> 00:11:24.000
― 私たちが遺伝子に刻まれた
歴史の奴隷とならず

00:11:24.002 --> 00:11:27.300
書き込まれたプログラムを
消去できるとしたらどうでしょう？

00:11:28.093 --> 00:11:32.675
なぜならエピジェネティクスが誘因となって

00:11:33.659 --> 00:11:35.462
代謝疾患や

00:11:35.486 --> 00:11:37.589
精神疾患が引き起されるからです

NOTE Paragraph

00:11:38.120 --> 00:11:40.813
コカイン中毒の話をしましょう

00:11:41.575 --> 00:11:44.631
コカイン中毒は

00:11:44.655 --> 00:11:48.422
人の命を奪うこともある恐ろしいものです

00:11:49.545 --> 00:11:51.470
私たちの考えは

00:11:51.494 --> 00:11:54.733
依存症になった脳を再プログラムして

00:11:54.757 --> 00:11:59.681
依存症を消し去れないものだろうか
というものでした

00:12:00.377 --> 00:12:04.657
人間の症状を再現できる

00:12:04.681 --> 00:12:06.770
コカイン中毒モデルを使いました

00:12:06.794 --> 00:12:09.462
人間だと 高校生が

00:12:09.486 --> 00:12:11.566
友達にコカインを勧められ

00:12:11.590 --> 00:12:13.396
それを吸っても何も起きませんが

00:12:13.420 --> 00:12:17.621
数ヶ月経って 何かのきっかけで
最初の快感を思い出し

00:12:17.645 --> 00:12:19.285
コカイン売人の誘惑に負け

00:12:19.309 --> 00:12:22.141
ついには薬物依存症となり
人生は変わってしまいます

NOTE Paragraph

00:12:22.165 --> 00:12:23.811
ラットを使ってこの実験をします

00:12:23.835 --> 00:12:25.410
同僚のガル・ヤディドは

00:12:25.434 --> 00:12:28.434
ラットにコカインを与え

00:12:28.458 --> 00:12:31.586
それから１ヶ月コカイン投与を中断します

00:12:31.610 --> 00:12:35.286
それから最初のコカインの味と快感を

00:12:35.310 --> 00:12:38.126
その時のケージの色で思い出させると

00:12:38.150 --> 00:12:39.802
ラットたちは狂ったようになり

00:12:39.826 --> 00:12:42.273
コカインを手に入れる為
死ぬまで

00:12:42.297 --> 00:12:43.556
レバーを押し続けます

00:12:44.047 --> 00:12:48.490
まず 確認された
これらのラットの変化は

00:12:48.514 --> 00:12:51.215
コカインが彼らの手に入らず
何も起こっていない期間に

00:12:51.239 --> 00:12:53.011
エピゲノムが再配列されていたことです

00:12:53.035 --> 00:12:54.956
エピゲノムが再配列されていたことです

00:12:54.980 --> 00:12:57.869
彼らの遺伝子は
ある方法で修飾され

00:12:57.893 --> 00:13:01.635
何かがトリガーとなり

00:13:01.659 --> 00:13:03.948
この中毒性の表現型が
発現するようになります

NOTE Paragraph

00:13:04.565 --> 00:13:11.335
それでこれらのラットに
対象のエピジェネティックマーカーの

00:13:11.359 --> 00:13:13.583
DNAメチル化を促進する薬や

00:13:13.607 --> 00:13:17.090
エピジェネティックマーカーを
減少させる薬を投与しました

00:13:17.114 --> 00:13:20.369
それで わかったことは
DNAメチル化を促進させると

00:13:20.393 --> 00:13:22.276
ラットは より必死に

00:13:22.300 --> 00:13:24.784
コカインをもっと求めるのです

00:13:24.808 --> 00:13:28.234
しかしメチル化されたDNAを減らすと

00:13:28.258 --> 00:13:30.362
ラットの中毒症状は無くなりました

00:13:30.386 --> 00:13:32.005
彼らを再プログラム化できたのです

00:13:32.029 --> 00:13:35.335
エピジェネティック薬とその他の薬の

00:13:35.359 --> 00:13:36.665
根本的な違いは

00:13:36.689 --> 00:13:38.861
エピジェネティック薬は

00:13:38.885 --> 00:13:43.017
経験の刻印を取り除き

00:13:43.041 --> 00:13:45.168
それ以降は

00:13:45.192 --> 00:13:48.213
同じ経験をしない限り
その状態に戻ることはありません

00:13:48.237 --> 00:13:49.891
ラットはリプログラムされたのです

00:13:49.915 --> 00:13:54.136
30日後 あるいは60日後に
動物を再度見てみると

00:13:54.160 --> 00:13:57.079
これは人間の時間では
何年も後ということですが

00:13:57.103 --> 00:14:02.409
一回のエピジェネティック薬の効果で
中毒症状が見られませんでした

NOTE Paragraph

00:14:04.472 --> 00:14:07.743
では DNAについて
何が分かったのでしょう

00:14:07.767 --> 00:14:10.892
DNAは単なる文字の羅列ではありません

00:14:10.916 --> 00:14:13.035
単なるシナリオでもありません

00:14:13.059 --> 00:14:15.430
DNAはダイナミックな映画です

00:14:16.367 --> 00:14:21.278
私たちの体験はインタラクティブな
映画に書き込まれていくのです

00:14:21.302 --> 00:14:24.855
例えると あなたはDNAという
あなたの人生を物語る映画を

00:14:24.879 --> 00:14:26.661
観ているようなものです

00:14:26.685 --> 00:14:30.074
俳優を出演させたり
退場させたりできて

00:14:30.872 --> 00:14:36.767
遺伝子は決定論的な性質を
持っているにもかかわらず

00:14:36.791 --> 00:14:40.480
遺伝による表現型を
コントロールできます

00:14:40.504 --> 00:14:43.774
これはがんや精神疾患などの深刻な疾患を

00:14:43.798 --> 00:14:47.306
不適応だと捉えて
新たなアプローチで取り組めるという

00:14:47.330 --> 00:14:50.234
不適応だと捉えて
新たなアプローチで取り組めるという

00:14:50.258 --> 00:14:53.186
非常に楽観的なメッセージだと言えます

00:14:53.210 --> 00:14:55.744
非常に楽観的なメッセージだと言えます

00:14:55.768 --> 00:14:58.842
もしエピジェネティクス的に介入できれば

00:14:58.866 --> 00:15:02.362
映画から俳優を退場させ

00:15:02.386 --> 00:15:05.243
新たな物語を始めさせることができます

NOTE Paragraph

00:15:06.028 --> 00:15:08.525
今日のお話は

00:15:08.549 --> 00:15:13.641
私たちのDNAが２つの要素で
構成されているということでした

00:15:13.665 --> 00:15:15.490
２層の情報

00:15:16.106 --> 00:15:19.781
古い情報の層は

00:15:19.805 --> 00:15:23.310
何百万年もかかり進化して来ました

00:15:23.334 --> 00:15:26.510
それは固定化していて
変わるのは難しく

00:15:27.411 --> 00:15:31.261
もう一方は
エピジェネティック層で

00:15:31.285 --> 00:15:35.180
柔軟にダイナミックに変化します

00:15:35.204 --> 00:15:39.796
それがインタラクティブな物語を展開し

00:15:39.820 --> 00:15:46.608
私たちに運命をかなり
コントロールさせてくれ

00:15:47.695 --> 00:15:51.151
子供達の運命を助け

00:15:51.175 --> 00:15:55.330
願わくば人類を長らく苦しめて来た

00:15:55.354 --> 00:15:59.770
病気や深刻な健康問題を

00:15:59.794 --> 00:16:03.405
克服させてくれるかもしれません

NOTE Paragraph

00:16:03.429 --> 00:16:06.822
私たちが遺伝子によって形作られていても

00:16:06.846 --> 00:16:08.601
私たちが遺伝子によって形作られていても

00:16:08.625 --> 00:16:11.692
自分の責任で生きる人生になるよう―

00:16:11.716 --> 00:16:15.849
方向付ける自由の余地はあるのです

NOTE Paragraph

00:16:15.873 --> 00:16:17.093
ありがとうございました

NOTE Paragraph

00:16:17.117 --> 00:16:22.072
（拍手）