まず最初に プレゼンテーションはプレゼント だと私は普段言っています これは皆さんに与えるギフトという意味と もう一つ プレゼント 現在 その場 この環境 空気 これを共有するというのが重要だ という風に考えています 私が サンフランシスコに留学した時に 最初に撮った写真に たまたま これはスタンフォード大学で 結婚式を挙げる その卒業生です そこに集まる卒業生の皆さん ここには人と人の愛が形になっていました これはもうまさにプレゼントだと思うんですね 幸せをみんなに共有してもらいたい それを祝ってあげたい この思いをプレゼントする 物ではないのです 空間とか思い出とか時間 環境 こういったものをプレゼントする そしてこの場 時間 これを共有する これがまさに人と人がコミュニケーションを取る時に 非常に重要なところだという風に私は考えます つまり ギフト モーメント この二つの意味があると思うんですね では素晴らしいプレゼンテーションとは なんでしょうか こういった立ち振る舞いでしょうか スライドのデザインでしょうか では良いプレゼンターというのは どういうプレゼンターが 良いプレゼンターなんでしょうか 私も数々のTEDx あるいはTED イベントに参加し スタッフとして関わり そして スピーカーをさせていただき 感じたものがありました それは 自然にみなさんが スタンディングオベーションができるようなもの これはTED のトークの内容だけではなくて その人の思いであるとか背景 そして来た皆さんの背景 そして生活環境 そういったものとどこまでマッチするか コミュニケーションが取れるか そういうことだと 思うんですね 日本の皆さんはなかなかシャイで 後ろの人にちょっと邪魔になるんじゃないか ということでなかなか スタンディングオベーションができません でも そういった ちょっとした勇気 ちょっとした垣根を取り払えば 素晴らしいアイデアは "Ideas worth spreading" 広がるという風に思うんですね それを私に印象づける出来事がありました 2004年に田舎の病院に赴任した時に 最先端治療のプレゼンテーションというのを してしまったんですね 観客は皆さん80歳以上でした 感想は「よく分からない」 TED トークでももしかしたら こういうことがありえるかもしれない 「どうだ 私は凄いだろう」という振る舞いで 観客に響かないこともあるんです ここにはコミュニケーションは存在しません つまり プレゼンターだけでなくて オーディエンスとコミュニケーションを取れる というのがまさにプレゼンテーションであり プレゼントだと思うんですね アメリカではショー・アンド・テルという 訓練を子供の頃から受けます 私もアメリカに在住してた時に ショー・アンド・テルという作業が 最も人の心をつかむ ということを実感しました ものを見せ それについて語り みんなの意見をフラットな立場で聞く それをシェアする これがまさに「プレゼント」だという風に感じます それには物事とか事象 考えを 可視化 ビジュアライゼーションする必要があるんです そこで 私は外科医として 患者さんの状態や病気を可視化する研究を始めました 例えばこのようなパソコンで 誰でも見られる 患者さんでも自分で自分の体が見られるようなシステム この開発の研究をしました 例えばこうです 従来平面だったレントゲンは 立体画像になり 好みの臓器 好みの血管 好みの骨 こういったものを的確に表現できるようになります しかも簡単 安い 早い です このソフトはOsiriX(オザイリックス)といいます これは世界中に無料で オープンソースで 現在でも配布されているソフトです これを私はインターネットで偶然見つけました そしたらここに「オープンソース 100%フリー」 と書いてありました これは衝撃でしたね この「オープンソース」という概念 ソフトのすべてを公開し 誰でも改変ができるようにする そうすることによって 例えばプレゼンターに対して オーディエンスが 自分の状況に合った形に 変えていけるんです こういった双方向性 展開性 そして インタラクション 交差性 というのが必要になってくるわけです レントゲン画像を立体にするというソフトです しかも無料なので 医師だけではなくて 学生や看護師 医療に関わる全ての人 さらに健康な人でも 自分の体を手に取るように分かるわけです 特に外科医はそれを手術室に持ち込み 実際の患者さんの手術中に その人の内蔵をあたかもカーナビのように 見ることができるわけです 手術中という厳しい環境では マウスを動かしたりはできません そこで日本には非常に良いものがありました こういったものを使うと この加速度センサーを腹腔鏡 お腹に刺さったカメラにくっつければ カメラの動きにナビゲーションが 同期してくれるんです わずか4千円です こういったものこそ 人の命を救うのではないでしょうか この画面を見ながら手術をするのに 一つ問題がありました 若いドクターは画面ばっかり見てしまって 手術野を見てくれない 手術が止まってしまうという現象がありました これを解決する簡単な手段がありました お腹に投影をするんです 患者さんの実際のデータを 手術中に投影をし濃度を変化させます 内蔵 血管 病気 ガン こういったものが全て手術中に 外科医の必要な分だけ 表示することができるんです さらにお腹にカメラを入れ 小さな傷で手術をすれば このスクリーンが保たれるので 絶えず直感的な手術が 可能になるわけですね これを高価なシステムでやっては意味がないんです これは先ほどのオープンソースの 無料のソフトを 市販のプロジェクターで 投影してるだけなんです これがアイデアなんです 広げる価値あるアイデアなんです 誰もが使えなければ意味がない という風に私は思います さらにこのソフトも 最も誰でも使えるようなマニュアルを 私が作りました しかもこういったアプリケーションの形にし 日本語版 英語版 両方用意し 世界中に配布をしました そうすることによって誰でも気軽に扱える 例えば このような携帯音楽プレイヤー この中でも立体画像が誰でも 指を動かすだけで 直感的に操作ができるようなシステムを開発しました これこそが コンシューマライゼーション 消費者 使う人の立場に立った ユーザビリティというものだという風に考えます さらにこのオープンソースというところが 発展に非常に大きな貢献をしました ソフトウェアが全て公開されているので 誰でも好きなように改変ができ どんどん新しく展開ができるのです その内容を開発した本部にフィードバックをすれば 本体の開発が非常に促進されるんです よくオープンソースではビジネス化されないと言われます 似たようなものが作られてしまうから ではなくて 世界中のみんなが仲間になれば 世界中のみんなが開発者になるんです こういった味方につけるぐらいの魅力があれば オープンソースは成り立つという風に考えます 私は2006年 この開発者に会いにシカゴにいきました そこで彼らのプレゼンテーションを聞くだけではなくて 私がプレゼンテーションをしました 彼らは放射線科医で診断のために このソフトを作ったのですが 私は外科医として治療のために こんなに役に立つ方法があるよと 私がプレゼントしたんです そうすることによって 彼らと意気投合し 開発チームに加わることになったのです 彼らにとって新しい視点だったそうです 外科医の立場で治療に役立てるということを これが彼らがオープンソースにした 最も顕著な理由なんです その理由を私が見つけ それに応えることが できたんですね 非常に嬉しいことにこのストーリーを Apple の本社のアメリカのサイトに 紹介していただく機会がありました こういった人との繋がりというのは またさらにたくさんの人を呼ぶという風に思います これがきっかけでこのOsiriX ソフトの 公式のプロモーター そしてトレーナーとして認定していただき 今世界中にこれを普及する活動を させていただいています さらにApple の本社に このソフトの開発 さらに普及を進めるためのこのホームページ これを一緒にデザインしようと 声をかけていただきました さらにそこのすぐ近くの スタンフォード大学の付属の アメリカ退役軍人局病院 そこに招いていただき 軍の施設としてこのインフラ構築 画像を誰でも気軽に共有できるようなシステム これを一緒に作ろうと 声をかけていただき 留学にいたったわけです ここで全ての人にオープンマインド 心を開くという準備がないと こういったことが達成できません いつかこういったステージで このソフトウェア そして我々のコンセプトを 紹介する日がくるということを夢見て それからジュネーヴ大学に渡り 彼らの開発チームに 菅野氏と一緒に加わることができ (ビデオ) これは開発者です (ビデオ) ジュネーヴの教授のオスマン・ラティブ氏 彼と一緒にこのさらに先の開発をしよう という約束をつけました そしてこういった教材を作り 世界中に無料で配布し さらに今ではこういったタブレット端末で 簡単に立体画像が誰でも見れるようなシステムを構築したり そしてそれを教育として 学生の授業に使ったり 3D画像を手の中で見入ることによって 彼らは笑顔で楽しみを持って 学習に勤しむことができるのです 彼らはディスカッションを始め こんなに楽しい学習はないと 自主的に始めるんですよね これが教育の醍醐味というものだというのを感じました 更に看護婦さんたちは この立体画像であるからこそ 簡単に理解ができ 病棟業務という厳しい業務の中でも スムーズにこういった業務の進行ができます 患者さんの説明にも 非常に有用です 難しい専門用語の並んだ同意書ではなくて 自分の体を触ってもらう 例えばこれはドクターヘリです 厳しい環境でも 患者さんに向き合うことができる これはもう既に医療の壁を越えます ちょっとしたエレベーター あるいは廊下の搬送時間でも 医師同士 医療従事者同士が コミュニケーションがとれ 的確な情報伝達ができます (ビデオ)すごい (ビデオ)1枚1枚 見るよりいいですよね 部分的に見られるから 患者さんサイドに立つということが 非常に重要だったんです それをこれは成し遂げました こういったものは非常に一般の方々に 受け入れられます さらにここで一つ問題がありました バーチャルリアリティは あくまでバーチャルで平面です 3Dにみてもこれはバーチャルであって リアルじゃないんです 人は直接手で触れて温もりを感じて 命というものを感じるんです 子供が小さな頃ものを口に入れるのは まず触覚で ものを確かめるためなんです こういった原始的な触覚が 今までの画像診断にはありませんでした だったら触覚をつければ良いんです 3Dプリンタという技術を使うと このオープンソースのソフトウェアならこそ 臓器が立体コピーできるんです 二種類の異なる 固い 柔らかい樹脂を スプレー状に噴射し 髪の毛の半分の細さずつ 積層していきます そうすると様々な臓器 様々な人体が 立体コピーできるんです サイズも等身大 大きく小さく 自由に変えることができます ここで重要なのは ただ臓器をコピーするだけではないんです この出来上がったものには触感 柔らかさがあるので 命を感じることができるんですね これがもし固いものだと 命を感じることはないんです 手に持つ 自分で自由に触れることによって この中に命を吹き込むことができました 例えばこの臓器の模型を作る際に あらかじめ例えばこのような多発する骨盤骨折 折れてる所を認定するだけではなくて 正常な方を 未来イメージにデータを作れば 治療のあと つまり未来が作れるんです この未来に対して 例えばプレートをカスタマイズすれば 個人個人の違いを 均一化することができるんです これがオーダーメイド医療ということになると思います さらにこのような多発するガンの症例 たくさんガンがありすぎて どこをとっていいか分かりません 画像だけでは難しいところを 立体画像にし このまま触感を付け加えます そうすることによって 手術の前に既にガンを持ち 臓器を持ち 柔らかい臓器なので切る練習ができるのです 人体を練習台にするわけにはいかないんです 実際にこれを手術室に持ち込むと 一度やった手術を もう一回するので 外科医は安心して治療が提供できるのです こういった簡易で しかも安いシステムは どこでも応用が利く という風に考えてます 特にロボット手術のような最先端医療では 模型で ロボットの練習をするという新しい展開 こういったものが可能になるわけですね 実際私は既に5つの病院で このシステムを導入し ロボット手術を行っております こういったテクノロジーは特に 健康な人だったり 医療以外に役立てるべきだと 考えております 例えば妊婦さん 不安を抱えた妊婦さんの 母体を透明 赤ちゃんを白い樹脂で造形し へその緒をいれてあげます 生まれる前に赤ちゃんが抱けるんです このお母さんは この子のためなら頑張ろうと言いました この模型を持って初めて 命というものを可視化し 感触化するんです このプロジェクトは素晴らしいことに ディスカバリーチャンネルに紹介していただいたんです これは国境を越えるということなんです こうして人と人は温もりを持って 繋がっていくんだと思います ドイツのある会社はこのように ブログで私を紹介してくれました アメリカの企業も一緒に手を取り合って やろうと言ってくれました 世界中でこういった展開を今 させていただいてます 我々は誰でもどこでも使えるように インターナショナルなランゲージで このOsiriX のハンズオンコースというのをやってます 世界各地で実際にソフトを触り 実際に体験していただくという活動をしております しかもノンプロフィットで これは台湾ですね このマニュアルは 開発した本家からも 本当に偉大な貢献だという風に 評価していただきました こうして人は温もりを持って繋がっていくんです 我々医者は病気を健康まで戻します でも健康は本来0であり マイナスから0までなんです だったら医師は医療の技術と 医療の知識で健康をさらに引き上げる プラスに持っていくべきだという風に考えてます これが教育です 教育に温もりと触感を加えます これはまさに次元が一つ加わるので 世の中の価値観を変える これがイノベーションということになるでしょう これは例えば中学校 高校の授業でも もう既に活用させていただき 特に子供は一発で理解をするんですね こうして笑顔というのが 伝搬していくんだと思います 自分自身を自然にありのままで プレゼントすれば 思いというのは伝わるんじゃないでしょうか どうもありがとうございました (拍手)