WEBVTT 00:00:06.794 --> 00:00:12.118 このチンパンジーは風で落ちた 熟しすぎのプラムを見つけました 00:00:12.118 --> 00:00:14.081 その多くは割れ 00:00:14.081 --> 00:00:17.601 うっとりするフルーティな香りに チンパンジーは惹かれました 00:00:17.601 --> 00:00:19.032 彼がフルーツをたらふく食べると 00:00:19.032 --> 00:00:23.042 不思議な効果を体験し始めます 00:00:23.042 --> 00:00:26.032 このチンパンジーは無意識に 00:00:26.032 --> 00:00:28.179 ビール ワインや 他のアルコールを作るために 00:00:28.179 --> 00:00:33.192 人間がいずれ用いることになる過程を 偶然に見つけたのです NOTE Paragraph 00:00:33.192 --> 00:00:37.878 熟しすぎた果物に含まれる糖は 酵母という微生物を 00:00:37.878 --> 00:00:38.878 引き寄せます 00:00:38.878 --> 00:00:43.781 酵母が果物の糖を餌にすると アルコール飲料に含まれるアルコールの一種 00:00:43.781 --> 00:00:46.791 エタノールという物質を作ります 00:00:46.791 --> 00:00:49.766 この過程を発酵といいます 00:00:49.766 --> 00:00:51.861 人間が発酵飲料を作り始めた 00:00:51.861 --> 00:00:54.611 具体的な時期は知られていません 00:00:54.611 --> 00:00:59.572 最も古い証拠としては 中国で発見された紀元前7000年の 00:00:59.572 --> 00:01:01.682 陶器の壺の残留物から 得られたもので 00:01:01.682 --> 00:01:04.875 人々が米 キビ ブドウや はちみつを発酵させて 00:01:04.875 --> 00:01:09.311 アルコール飲料を作っていたことが 明らかになっています NOTE Paragraph 00:01:09.311 --> 00:01:11.111 数千年のうちに 00:01:11.111 --> 00:01:15.441 世界中の文化が それぞれ特有の 発酵飲料を作りました 00:01:15.441 --> 00:01:19.663 古代メソポタミア人とエジプト人は 穀物粒を蓄えておいて 00:01:19.663 --> 00:01:21.919 1年を通してビールを作っていました 00:01:21.919 --> 00:01:24.837 このビールは 全ての社会階級に属する人が入手でき 00:01:24.837 --> 00:01:28.232 労働者が日々に受け取る 配給にさえもなっていました 00:01:28.232 --> 00:01:29.922 彼らはワインも作りましたが 00:01:29.922 --> 00:01:32.882 ブドウを育てるには 最適とはいえない気候だったので 00:01:32.882 --> 00:01:36.212 希少で高価な珍味でした NOTE Paragraph 00:01:36.212 --> 00:01:40.162 ビールが入手しやすかった エジプトとメソポタミアとは対照的に 00:01:40.162 --> 00:01:45.072 ブドウの生育が容易なギリシャとローマでは ワインが簡単に入手できました 00:01:45.072 --> 00:01:48.702 酵母はどんな植物中の糖も 発酵させるので 00:01:48.702 --> 00:01:50.625 古代の人々が住んでいた地方に 00:01:50.625 --> 00:01:53.995 生えていた穀物や植物から アルコールを作りました 00:01:53.995 --> 00:01:57.195 南アメリカでは穀物から チチャを作りましたが 00:01:57.195 --> 00:01:59.912 時に幻覚性のある薬草を加えました 00:01:59.912 --> 00:02:03.806 現在のメキシコに当たるところでは サボテンの樹液から作られたプルケが 00:02:03.806 --> 00:02:05.316 人々に好まれていました 00:02:05.316 --> 00:02:09.476 一方 東アフリカの人々は バナナやヤシからビールを作りました 00:02:09.476 --> 00:02:13.916 現在の日本に当たる場所では 米から日本酒を作りました 00:02:13.916 --> 00:02:17.689 地球上のほとんどの地域で 独自の発酵飲料があるのです NOTE Paragraph 00:02:17.689 --> 00:02:21.125 アルコール摂取が 日常生活の一部になるにつれて 00:02:21.125 --> 00:02:25.680 プラスの効果があると考える 専門家も現れました 00:02:25.680 --> 00:02:28.920 ギリシャの医者はワインが 健康に良いと考え 00:02:28.920 --> 00:02:32.305 詩人たちはワインが創造力を 喚起することを証明しました 00:02:32.305 --> 00:02:36.427 アルコールには乱用の可能性があることが より問題だと考える人たちもいました 00:02:36.427 --> 00:02:38.970 ギリシャの哲学者たちは 禁酒を支持しました 00:02:38.970 --> 00:02:43.547 ヨーロッパでは初期のユダヤ教とキリスト教の 作家たちはワインを儀式に取り入れましたが 00:02:43.547 --> 00:02:46.936 泥酔を罪とみなしていました 00:02:46.936 --> 00:02:49.715 また 中東 アフリカ スペインにおいては 00:02:49.715 --> 00:02:52.691 イスラム法が酔いながらの礼拝を 禁じていましたが 00:02:52.691 --> 00:02:57.052 アルコールの全面禁止を 次第に強化していきました NOTE Paragraph 00:02:57.052 --> 00:03:01.613 古代の発酵飲料に含まれていた アルコールの度数は比較的低いものでした 00:03:01.613 --> 00:03:04.062 13パーセント程で 00:03:04.062 --> 00:03:07.332 発酵中に野生の酵母が作り出す副産物が 00:03:07.332 --> 00:03:09.692 毒となり酵母が死滅します 00:03:09.692 --> 00:03:11.220 酵母が死滅すると 00:03:11.220 --> 00:03:15.000 発酵は止まり アルコール度数は横ばい状態になります 00:03:15.000 --> 00:03:18.900 よって何千年もの間 アルコール度数は限られていました 00:03:18.900 --> 00:03:22.834 それは蒸留という工程の 発明により変化しました 00:03:22.834 --> 00:03:27.280 9世紀のアラビアの文書には アルコールを蒸発させるために 00:03:27.280 --> 00:03:29.708 発酵した液体を沸騰させる様子を 描写しています 00:03:29.708 --> 00:03:32.681 アルコールは水より低い温度で沸騰するので 00:03:32.681 --> 00:03:34.741 アルコールが先に沸騰します 00:03:34.741 --> 00:03:39.490 この蒸気を集めて冷却すると どんな発酵飲料よりも 00:03:39.490 --> 00:03:43.800 濃度が高い液体のアルコールが残ります NOTE Paragraph 00:03:43.800 --> 00:03:47.992 当初 これらのより強い蒸留酒は 医療用に使われました 00:03:47.992 --> 00:03:51.181 そして蒸留酒はビールとワインと異なり 腐敗しないため 00:03:51.181 --> 00:03:55.097 貿易において重要な商品になりました 00:03:55.097 --> 00:03:59.358 ヨーロッパの植民地であったカリブ海諸島で 収穫された砂糖から作られたラムは 00:03:59.358 --> 00:04:03.595 船乗りの重要商品として 北アメリカへ輸出されました 00:04:03.595 --> 00:04:06.663 ヨーロッパ人はアフリカに ブランデーとジンを持ち込み 00:04:06.663 --> 00:04:09.251 奴隷や土地そして 00:04:09.251 --> 00:04:12.251 パーム油とゴムのような物資と 取引をしました 00:04:12.251 --> 00:04:16.001 蒸留酒はこれらの地域で 貨幣の役割を果たしました NOTE Paragraph 00:04:16.001 --> 00:04:17.903 大航海時代の長距離航海において 00:04:17.903 --> 00:04:21.745 蒸留酒は重要な役割を担いました 00:04:21.745 --> 00:04:25.677 ヨーロッパから東アジアとアメリカ大陸へ 航海するのに何か月かかることがあるので 00:04:25.677 --> 00:04:28.848 船員のための水を新鮮に 保つのは困難でした 00:04:28.848 --> 00:04:33.728 アルコールは有害な微生物を 死滅させる保存料となるので 00:04:33.728 --> 00:04:38.520 水を長く新鮮に保つため バケツ一杯分の ブランデーを水の樽に加えました NOTE Paragraph 00:04:38.520 --> 00:04:40.320 こうして 1600年代までには 00:04:40.320 --> 00:04:43.890 アルコールは単に動物を 騒がしくさせるものから 00:04:43.890 --> 00:04:49.754 代償を伴いながらも国際貿易と世界の探検に 刺激を与えるものになりました 00:04:49.754 --> 00:04:50.999 時が過ぎるにつれて 00:04:50.999 --> 00:04:56.495 人間社会におけるアルコールの役割は よりややこしくなるばかりでした