WEBVTT 00:00:00.753 --> 00:00:02.000 今日お話ししたいことは 00:00:02.000 --> 00:00:04.592 医学における 大きな誤解の一つについてです 00:00:04.592 --> 00:00:06.560 それは 医学的な大発見が 00:00:06.560 --> 00:00:09.398 続きさえすれば 私たちの抱える問題は 00:00:09.398 --> 00:00:12.800 全て解決されるという考えです 00:00:12.800 --> 00:00:15.400 私達の社会は 夢みがちです 00:00:15.400 --> 00:00:17.910 科学者が 独りきりで 00:00:17.910 --> 00:00:21.254 ある夜遅くに 00:00:21.254 --> 00:00:23.760 世界を揺るがすような発見をする 00:00:23.760 --> 00:00:26.940 ジャーン! 一夜にして 全てが変わってしまう 00:00:27.860 --> 00:00:29.830 とても魅力的な想像です 00:00:29.830 --> 00:00:32.160 しかし実際はそうではありません 00:00:32.160 --> 00:00:35.620 現実では 現在の医学は 団体競技なのです 00:00:35.620 --> 00:00:37.000 様々な意味で 00:00:37.000 --> 00:00:39.000 ずっとそうでした 00:00:39.350 --> 00:00:41.000 私が実際にそれを 00:00:41.000 --> 00:00:44.980 まざまざと体験したときのことを 00:00:44.980 --> 00:00:46.540 お話ししましょう NOTE Paragraph 00:00:47.164 --> 00:00:48.800 私は外科医です 00:00:48.800 --> 00:00:50.960 そして私たち外科医は常に 00:00:50.960 --> 00:00:52.910 光と密接な関係がありました 00:00:52.910 --> 00:00:53.910 [光あれ!] 00:00:53.910 --> 00:00:57.570 切開すると患者の身体の中は とても暗いのです 00:00:57.570 --> 00:01:00.660 何をしているかの確認に光が必要です 00:01:00.660 --> 00:01:03.150 そのため 手術は伝統的に 00:01:03.150 --> 00:01:05.530 朝早くに開始して 00:01:05.530 --> 00:01:07.390 日光を有効活用してきたのです 00:01:07.390 --> 00:01:09.680 この昔の絵を見ると 00:01:09.680 --> 00:01:11.370 初期の手術室が大体 00:01:11.370 --> 00:01:14.000 建物の一番上に置かれていたのが分かります 00:01:14.000 --> 00:01:17.550 西洋で一番古い手術室が 00:01:17.550 --> 00:01:19.040 ロンドンにあります 00:01:19.040 --> 00:01:20.770 この手術室は 00:01:20.770 --> 00:01:22.560 教会の一番上にあり 00:01:22.560 --> 00:01:24.580 日光を取り入れるようにしています 00:01:24.580 --> 00:01:27.080 そしてこれはアメリカでもっとも有名な 00:01:27.080 --> 00:01:29.820 病院のひとつである 00:01:29.820 --> 00:01:32.080 ボストンのマサチューセッツ総合病院です 00:01:32.080 --> 00:01:34.490 手術室はどこでしょう? 00:01:34.490 --> 00:01:35.540 まさにここ 00:01:35.540 --> 00:01:37.000 建物の頂上にあり 00:01:37.000 --> 00:01:40.000 たくさんの窓から光が入るようになっています NOTE Paragraph 00:01:40.000 --> 00:01:42.390 今日の手術室では 00:01:42.390 --> 00:01:45.240 日光は必要なくなりました 00:01:45.240 --> 00:01:48.370 日光を使う替わりに 00:01:48.370 --> 00:01:50.380 手術室用に作られた 00:01:50.380 --> 00:01:52.420 照明器具を使うからです 00:01:52.420 --> 00:01:54.200 肉眼で見える光ではなく 00:01:54.200 --> 00:01:56.450 今までは見えなかったものが 00:01:56.450 --> 00:01:58.680 見えるようになる 00:01:58.680 --> 00:02:01.000 違う種類の光をもたらすことができます 00:02:01.000 --> 00:02:03.000 これが私の考えている光 00:02:03.000 --> 00:02:06.370 蛍光の魔法です NOTE Paragraph 00:02:06.370 --> 00:02:07.880 少し補足させてください 00:02:07.880 --> 00:02:10.000 医学部の授業では 00:02:10.000 --> 00:02:13.610 画面のように図解で解剖学を学び 00:02:13.610 --> 00:02:15.790 全てが色分けされていました 00:02:15.790 --> 00:02:18.070 神経は黄色 動脈は赤色 00:02:18.070 --> 00:02:20.350 そして静脈は青色です 00:02:20.350 --> 00:02:24.480 誰でも外科医になれそうですよね 00:02:24.480 --> 00:02:27.540 しかし これは首の図と同じ部位ですが 00:02:27.540 --> 00:02:30.000 実際の手術で目にするとき 00:02:30.000 --> 00:02:32.000 それぞれの組織を見分けるのは 00:02:32.000 --> 00:02:34.840 そう簡単ではありません 00:02:34.840 --> 00:02:37.000 この数日間 私たちは 00:02:37.000 --> 00:02:39.000 ガンが我々の社会でまだまだ 00:02:39.000 --> 00:02:41.400 緊急の問題であり 00:02:41.400 --> 00:02:43.000 1分に1人がガンで亡くなる状況を 00:02:43.000 --> 00:02:45.382 解消することが 00:02:45.382 --> 00:02:49.000 どれほど強く求められているか 聞いてきました 00:02:49.000 --> 00:02:51.810 ガンが早期に見つかり 00:02:51.810 --> 00:02:56.000 手術によって摘出できる場合なら 00:02:56.000 --> 00:02:58.390 そのガン細胞に 00:02:58.390 --> 00:03:00.970 どんな遺伝子やタンパク質が 00:03:00.970 --> 00:03:02.990 含まれていても関係ありません 00:03:02.990 --> 00:03:04.220 もうビンの中にあるのですから 00:03:04.220 --> 00:03:08.210 摘出は完了し ガンが完治したのです NOTE Paragraph 00:03:08.210 --> 00:03:09.930 ガン切除法をお話しします 00:03:09.930 --> 00:03:13.220 医者は 研修を通じ ガンの見え方 00:03:13.220 --> 00:03:15.690 触感や他の組織との繋がり 00:03:15.690 --> 00:03:18.870 そして あらゆる経験を元に 最善を尽くして 00:03:18.870 --> 00:03:21.256 こう言います 「よし ガンはなくなった 00:03:21.256 --> 00:03:24.420 うまくいった 摘出が終わった」 00:03:24.420 --> 00:03:26.560 患者がまだ手術台に寝ている時に 00:03:26.560 --> 00:03:28.000 こんな風に外科医は話します 00:03:28.000 --> 00:03:31.000 実際には全て摘出したか まだわかりません 00:03:31.000 --> 00:03:34.450 患者の手術部位に残された 00:03:34.450 --> 00:03:36.850 周辺数か所から検体をとり 00:03:36.850 --> 00:03:40.380 病理検査室へ送る必要があります 00:03:40.380 --> 00:03:42.930 検査中 患者は手術台の上にいて 00:03:42.930 --> 00:03:44.640 看護師 麻酔医 外科医 そして 00:03:44.640 --> 00:03:47.260 助手は待っているのです 00:03:47.260 --> 00:03:48.830 待つしかないのです 00:03:48.830 --> 00:03:50.440 病理医はその検体を 00:03:50.440 --> 00:03:53.500 凍らせ 切断し 一つずつ顕微鏡で確認し 00:03:53.500 --> 00:03:55.144 手術室へ結果を伝えます 00:03:55.144 --> 00:03:57.000 1検体につき20分かかります 00:03:57.000 --> 00:03:59.510 もし3つ検体があったら 00:03:59.510 --> 00:04:01.560 1時間かかるのです 00:04:01.560 --> 00:04:04.030 そして病理医が言うのは 00:04:04.030 --> 00:04:06.420 「実は AとBは大丈夫ですが 00:04:06.420 --> 00:04:09.046 Cにはまだガンが残っているので 00:04:09.046 --> 00:04:11.300 その部分を切除してください」 00:04:11.300 --> 00:04:14.679 手術ではこの検査と切除を何回も続けます NOTE Paragraph 00:04:14.679 --> 00:04:16.940 この手順を経てはじめて こう言えます 00:04:16.940 --> 00:04:18.230 「終わりました 00:04:18.230 --> 00:04:20.790 全ての腫瘍は摘出されたと思います」 00:04:20.790 --> 00:04:23.930 数日後に患者は帰宅しますが 00:04:23.930 --> 00:04:26.490 私たち担当医に電話がかかり 00:04:26.490 --> 00:04:28.080 「残念ですが 00:04:28.080 --> 00:04:29.000 最終の病理検査を 00:04:29.000 --> 00:04:31.810 最後の検体に行っていたところ 00:04:31.810 --> 00:04:33.710 辺縁にガンがありました 00:04:33.710 --> 00:04:36.740 患者にはまだガンが残っています」と 00:04:36.740 --> 00:04:39.000 告げられるのは 00:04:39.000 --> 00:04:42.000 度々ある話です 00:04:42.000 --> 00:04:45.000 こうなると医者は 自分の患者に 00:04:45.000 --> 00:04:47.780 再手術の可能性だとか 00:04:47.780 --> 00:04:50.040 放射線療法や化学療法などの 00:04:50.040 --> 00:04:53.940 追加の治療が必要なことを 伝えねばならなくなります 00:04:53.940 --> 00:04:55.470 ですから 外科医が手術中に 00:04:55.470 --> 00:04:57.490 術野にガンが残っているかを 00:04:57.490 --> 00:05:00.320 確実に分かる方が 00:05:00.320 --> 00:05:03.880 良いに決まっていますよね 00:05:03.880 --> 00:05:06.870 様々な意味で 私たちはいまだに 00:05:06.870 --> 00:05:10.600 暗闇の中で手術しているような ものなのです NOTE Paragraph 00:05:10.600 --> 00:05:13.990 2004年 外科の研修中に 00:05:13.990 --> 00:05:16.010 ロジャー・チェン先生と 00:05:16.010 --> 00:05:18.850 出会う幸運に恵まれました 00:05:18.850 --> 00:05:22.450 2008年にノーベル化学賞を 00:05:22.450 --> 00:05:24.320 受賞した方です 00:05:24.320 --> 00:05:25.710 ロジャーとそのチームは 00:05:25.710 --> 00:05:28.950 ガンの発見方法を研究しており 00:05:28.950 --> 00:05:31.320 とても賢い分子を 00:05:31.320 --> 00:05:33.160 開発していました 00:05:33.160 --> 00:05:34.390 彼らが開発した分子は 00:05:34.390 --> 00:05:36.630 3つの部分からできています 00:05:36.630 --> 00:05:39.770 主要な部分は青い部分 ポリカチオンで 00:05:39.770 --> 00:05:41.650 体の中のどの組織にも 00:05:41.650 --> 00:05:43.870 とてもくっつきやすいものです NOTE Paragraph 00:05:43.870 --> 00:05:45.390 この成分だけを 00:05:45.390 --> 00:05:47.000 含む溶液を 00:05:47.000 --> 00:05:50.190 ガン患者に投与すると 00:05:50.190 --> 00:05:52.040 全てが光ってしまいます 00:05:52.040 --> 00:05:53.430 特異的なものはありません 00:05:53.430 --> 00:05:55.660 まったく特異性がないのです 00:05:55.660 --> 00:05:58.040 そこで彼らはさらに2つ 成分を加えました 00:05:58.040 --> 00:06:00.650 1つ目は赤い部分 ポリアニオンで 00:06:00.650 --> 00:06:03.040 シールの裏側のように 00:06:03.040 --> 00:06:04.620 くっつかない役目を果たします 00:06:04.620 --> 00:06:07.000 この2つを一緒にすると 分子は中性になり 00:06:07.000 --> 00:06:09.470 何物にも着かなくなります 00:06:09.470 --> 00:06:12.620 これら2つの分子は 特定の「分子ハサミ」でしか切れない 00:06:12.620 --> 00:06:15.000 第3の物質により結び付けられます 00:06:15.000 --> 00:06:17.850 分子ハサミとは 例えば腫瘍が作り出す 00:06:17.850 --> 00:06:21.080 タンパク分解酵素のようなものです 00:06:21.080 --> 00:06:22.160 次のように使います 00:06:22.160 --> 00:06:27.543 この3部構成の分子を含む溶液を作って 00:06:27.543 --> 00:06:30.230 緑色で表されている 00:06:30.230 --> 00:06:32.498 色素と一緒にガン患者の 静脈に注射します 00:06:32.498 --> 00:06:34.326 すると 00:06:34.326 --> 00:06:36.000 正常な組織はハサミとはならず 00:06:36.000 --> 00:06:39.200 分子は体内を素通りし 排泄されます 00:06:39.200 --> 00:06:41.960 しかし腫瘍があった場合 00:06:41.960 --> 00:06:43.520 分子ハサミが存在し 00:06:43.520 --> 00:06:45.940 この分子を切断可能部位で 00:06:45.940 --> 00:06:47.790 切断します 00:06:47.790 --> 00:06:49.730 そして こうなります 00:06:49.730 --> 00:06:51.420 腫瘍は標識され 00:06:51.420 --> 00:06:53.970 蛍光を発します NOTE Paragraph 00:06:53.970 --> 00:06:56.388 これは腫瘍が神経の周りに 00:06:56.388 --> 00:06:58.510 できている例です 00:06:58.510 --> 00:07:00.690 腫瘍がどこかわかりますか? 00:07:00.690 --> 00:07:03.000 私が研究中には分かりませんでした 00:07:04.020 --> 00:07:06.490 しかし ほら 蛍光です 00:07:06.490 --> 00:07:08.059 緑色に見えます 00:07:08.059 --> 00:07:11.310 そう 今なら皆さん全員が 00:07:11.310 --> 00:07:13.370 ガンの位置が分かりますね 00:07:13.370 --> 00:07:16.770 手術室 術野でも 分子レベルでガンの場所や 00:07:16.770 --> 00:07:18.230 外科医が摘出のために 00:07:18.230 --> 00:07:20.850 どう切除すれば良いのか 00:07:20.850 --> 00:07:23.110 どの程度周りを切除するのか 00:07:23.110 --> 00:07:24.263 分かるのです 00:07:25.820 --> 00:07:27.790 また 蛍光のすごいところは 00:07:27.790 --> 00:07:30.920 明るいだけではなく 00:07:30.920 --> 00:07:33.590 組織を透過して光るところです 00:07:33.590 --> 00:07:37.160 蛍光が発する光は 組織を 00:07:37.160 --> 00:07:38.720 通り抜けられるのです 00:07:38.720 --> 00:07:42.290 なので 腫瘍が表面になかったとしても 00:07:42.290 --> 00:07:44.479 見ることができるのです NOTE Paragraph 00:07:44.479 --> 00:07:46.240 この動画では 腫瘍が 00:07:46.240 --> 00:07:50.060 緑色に光っているのが見えます 00:07:50.060 --> 00:07:52.770 実は正常な筋肉が上にかぶさっています 見えますか? 00:07:52.770 --> 00:07:54.840 その筋肉をはぎ取ってみましょう 00:07:54.840 --> 00:07:56.820 しかし筋肉をめくる前でも 00:07:56.820 --> 00:07:59.000 腫瘍が下にあるのが見えました 00:07:59.896 --> 00:08:02.810 これが腫瘍を蛍光で 00:08:02.810 --> 00:08:05.480 標識することの長所なのです 00:08:05.480 --> 00:08:07.920 境目が分子レベルで 00:08:07.920 --> 00:08:09.470 見えるだけではなく 00:08:09.470 --> 00:08:12.530 表面ではない 通常見えないところに 00:08:12.530 --> 00:08:15.620 あったとしても見えるのです 00:08:15.620 --> 00:08:19.130 またリンパ節転移発見にも活用できます NOTE Paragraph 00:08:19.130 --> 00:08:20.520 センチネルリンパ節切除は 00:08:20.520 --> 00:08:24.800 乳ガンやメラノーマ(悪性黒色腫)の治療を 大きく変えました 00:08:24.800 --> 00:08:26.730 以前は腋下リンパ節を 00:08:26.730 --> 00:08:28.900 全て切除するという 00:08:28.900 --> 00:08:31.750 患者を弱らせてしまう手術が必要でした 00:08:31.750 --> 00:08:34.180 センチネルリンパ節切除が標準的な 00:08:34.180 --> 00:08:37.930 手術方法となった今 外科医は 00:08:37.930 --> 00:08:40.600 リンパ節のうちで ガンの下流にある 00:08:40.600 --> 00:08:43.860 最初のリンパ節だけを 探せばよくなりました 00:08:43.860 --> 00:08:47.110 もしそのリンパ節にガンがあった場合 00:08:47.110 --> 00:08:48.870 その女性は腋下リンパ節の 00:08:48.870 --> 00:08:51.140 廓清手術を受けるのです 00:08:51.140 --> 00:08:52.260 つまり 00:08:52.260 --> 00:08:55.000 リンパ節にガンが見つからなかった場合 00:08:55.000 --> 00:08:57.000 その女性は不必要な 00:08:57.000 --> 00:08:59.000 手術を受ける必要がないのです NOTE Paragraph 00:08:59.000 --> 00:09:02.000 しかし現在の手術法では センチネルリンパ節は 00:09:02.000 --> 00:09:05.070 どこへ行くかを示す 00:09:05.070 --> 00:09:06.830 地図に過ぎません 00:09:06.830 --> 00:09:08.510 例えば高速道路を運転していて 00:09:08.510 --> 00:09:10.480 次のガソリンスタンドを知りたければ 00:09:10.480 --> 00:09:14.010 地図があれば 道の先のガソリンスタンドがわかります 00:09:14.010 --> 00:09:15.240 しかしそこにガソリンが 00:09:15.240 --> 00:09:17.720 あるかどうかまではわかりません 00:09:17.720 --> 00:09:20.980 切り出して 家にもって帰り 00:09:20.980 --> 00:09:22.830 スライスして 中を見て 00:09:22.830 --> 00:09:24.440 やっと ガソリンがあることがわかるのです 00:09:24.440 --> 00:09:25.820 このやり方だと多くの時間が必要です 00:09:25.820 --> 00:09:28.650 検査の間も患者はまだ手術台の上です 00:09:28.650 --> 00:09:30.400 麻酔医や外科医は待っています 00:09:30.400 --> 00:09:32.000 時間がかかるのです NOTE Paragraph 00:09:32.000 --> 00:09:35.000 私たちの技術を使えばその場でわかります 00:09:35.830 --> 00:09:38.700 小さな丸いコブがたくさん見えますね 00:09:38.700 --> 00:09:41.178 この中に肥大したリンパ節があります 00:09:41.178 --> 00:09:43.290 他のものと比べて少しだけ大きいものです 00:09:43.290 --> 00:09:47.100 風邪でも 肥大したリンパ節は見られます 00:09:47.100 --> 00:09:49.460 肥大してもガンがあるとは限らないのです 00:09:49.460 --> 00:09:51.140 私たちの技術があれば 00:09:51.140 --> 00:09:53.900 外科医はすぐさま 00:09:53.900 --> 00:09:56.262 どこにガンがあるか見分けられます 00:09:56.262 --> 00:09:57.910 深くはお話ししませんが 00:09:57.910 --> 00:10:00.440 私たちの技術は 00:10:00.440 --> 00:10:04.120 腫瘍や転移性リンパ節を 蛍光で標識するだけではなく 00:10:04.120 --> 00:10:07.740 同じ3部構成の分子を使って 00:10:07.740 --> 00:10:10.640 ガドリニウムの標識もでき 00:10:10.640 --> 00:10:13.220 非侵襲的検査に使えます 00:10:13.220 --> 00:10:14.780 ガン患者に対して 00:10:14.780 --> 00:10:17.550 リンパ節がガンに侵されているかを 00:10:17.550 --> 00:10:18.800 手術する前に知りたいと思えば 00:10:18.800 --> 00:10:21.000 MRIで見ることができます NOTE Paragraph 00:10:21.000 --> 00:10:23.000 手術では何を切除すべきかを 00:10:23.000 --> 00:10:25.320 知るのが重要です 00:10:26.330 --> 00:10:28.000 しかし同様に 00:10:28.000 --> 00:10:31.000 身体機能に大切なものを 00:10:31.000 --> 00:10:34.000 温存することも重要です 00:10:34.560 --> 00:10:38.080 意図しない損傷を避けることが とても重要です 00:10:38.080 --> 00:10:39.690 ここで私がお話ししているのは 00:10:39.690 --> 00:10:41.000 神経のことです 00:10:41.500 --> 00:10:43.960 神経は傷つけられると 00:10:43.960 --> 00:10:45.790 麻痺や 00:10:45.790 --> 00:10:47.544 痛みを引き起こします 00:10:48.516 --> 00:10:51.080 前立腺ガンを例に取ると 00:10:51.080 --> 00:10:52.880 60%の男性が 00:10:52.880 --> 00:10:55.190 前立腺ガンの手術のあと 00:10:55.190 --> 00:10:57.330 尿失禁と勃起不全を 00:10:57.330 --> 00:10:58.677 起こす可能性があります 00:10:58.677 --> 00:11:01.820 多くの人に多くの問題が 起こってしまうのです 00:11:01.820 --> 00:11:03.150 そしてこれは 00:11:03.150 --> 00:11:06.060 外科医が十分に注意して 00:11:06.060 --> 00:11:09.000 神経を避けるような手術 神経温存手術をしても 00:11:09.000 --> 00:11:11.758 起こるのです NOTE Paragraph 00:11:11.758 --> 00:11:14.610 前立腺ガンの場合には 00:11:14.610 --> 00:11:16.879 これらの神経はとても細く 00:11:16.879 --> 00:11:19.000 実際には見えないのです 00:11:19.500 --> 00:11:21.000 血管に沿っていると知られている 00:11:21.000 --> 00:11:23.350 解剖学的な経路を 00:11:23.350 --> 00:11:25.320 たどっているに過ぎません 00:11:25.320 --> 00:11:29.350 これは誰かが研究しているからこそ わかることですが 00:11:29.350 --> 00:11:31.300 それは実際の場所は 00:11:31.300 --> 00:11:33.000 まだ研究中ということです 00:11:34.195 --> 00:11:36.910 こんな手術で大丈夫でしょうか 00:11:36.910 --> 00:11:39.870 ガンの場所がわからないのに 切除しようとしているのです 00:11:39.870 --> 00:11:43.183 神経の場所がわからないのに 温存しようとしているのです NOTE Paragraph 00:11:43.183 --> 00:11:45.140 お伝えしたように 蛍光によって 00:11:45.140 --> 00:11:46.399 神経を可視化できれば 00:11:46.399 --> 00:11:49.000 すばらしくないですか? 00:11:49.800 --> 00:11:53.000 最初はあまり支持されませんでした 00:11:53.740 --> 00:11:56.940 人には「長年この方法でやってきて 00:11:56.940 --> 00:11:58.160 問題はないですよ 00:11:58.160 --> 00:12:00.950 合併症もそれほどないし」と 言われました 00:12:00.950 --> 00:12:03.150 にもかかわらず 私は研究を進めました 00:12:03.150 --> 00:12:05.210 ロジャーが助けてくれたのです 00:12:05.210 --> 00:12:07.780 チーム全員を連れてきてくれました 00:12:07.780 --> 00:12:11.000 ここでも団体競技の必要性がわかります 00:12:11.720 --> 00:12:14.000 そしてついに神経を特異的に標識する 00:12:14.000 --> 00:12:17.090 分子を見つけたのです 00:12:17.090 --> 00:12:18.820 この溶液を作り 00:12:18.820 --> 00:12:20.470 蛍光で標識し 00:12:20.470 --> 00:12:23.830 マウスに投与したら 00:12:23.830 --> 00:12:26.640 神経が文字通り光ったのです 00:12:26.640 --> 00:12:28.010 どこが神経かわかります NOTE Paragraph 00:12:28.010 --> 00:12:31.570 これはマウスの坐骨神経です 00:12:31.570 --> 00:12:34.620 大きく太い部分がよく分かるでしょう 00:12:34.620 --> 00:12:38.160 しかし 私が今切開しているところには 00:12:38.160 --> 00:12:41.670 とても微細な分枝がありますが 00:12:41.670 --> 00:12:43.070 実際には見えません 00:12:43.070 --> 00:12:46.640 小さいメデューサの 頭のようなものが見えますね 00:12:46.640 --> 00:12:48.740 顔の表情や動き 呼吸に関わる 00:12:48.740 --> 00:12:52.460 それぞれの神経や 00:12:52.460 --> 00:12:54.030 前立腺のあたりの排尿の神経も 00:12:54.030 --> 00:12:56.640 見ることができます 00:12:56.640 --> 00:12:58.620 神経一つずつを見ることができるのです 00:12:59.590 --> 00:13:03.000 この2つの蛍光試薬を同時に使うと どうなるかお教えしましょう 00:13:03.550 --> 00:13:05.740 ここに腫瘍があります 00:13:05.740 --> 00:13:08.000 この腫瘍の辺縁がわかりますか? 00:13:09.190 --> 00:13:10.485 これでわかりますね 00:13:11.350 --> 00:13:14.650 この腫瘍に入り込んでいる 神経はどうでしょう? 00:13:14.650 --> 00:13:17.140 白い部分は見やすいですが 00:13:17.140 --> 00:13:19.190 腫瘍の中に入っている部分はどうでしょう? 00:13:19.190 --> 00:13:21.400 どこに入っているかわかりますか? 00:13:21.400 --> 00:13:23.090 これでわかりますね NOTE Paragraph 00:13:23.090 --> 00:13:25.040 基本的には 私達は 00:13:25.040 --> 00:13:26.810 組織を染色し 00:13:26.810 --> 00:13:29.090 手術野を色分けする方法を開発したのです 00:13:29.090 --> 00:13:31.000 これはちょっとした突破口です 00:13:31.000 --> 00:13:35.000 手術のやり方を変えると思っています 00:13:35.430 --> 00:13:36.762 私達は研究結果を 00:13:36.762 --> 00:13:40.030 米国科学アカデミー紀要と 00:13:40.030 --> 00:13:42.170 ネイチャー バイオテクノロジーで 発表しました 00:13:42.170 --> 00:13:44.740 ディスカバーとエコノミストでは 00:13:44.740 --> 00:13:46.850 解説を頂いています 00:13:46.850 --> 00:13:49.000 多くの同僚の外科医に見せたところ 00:13:50.320 --> 00:13:52.220 「すごい 私の患者も 00:13:52.220 --> 00:13:53.650 恩恵を受けられるだろう 00:13:53.650 --> 00:13:55.120 この方法なら 私の手術は 00:13:55.120 --> 00:13:57.850 より良い結果が出せて 00:13:57.850 --> 00:13:59.500 合併症も少なくなる」と 00:13:59.500 --> 00:14:01.340 言っていました NOTE Paragraph 00:14:02.730 --> 00:14:04.950 今 待ち望まれているのは 00:14:04.950 --> 00:14:07.940 この技術の更なる発達と 00:14:07.940 --> 00:14:09.600 通常の手術室で 00:14:09.600 --> 00:14:11.280 この蛍光を見ることを 00:14:11.280 --> 00:14:13.210 可能にする器機の 00:14:13.210 --> 00:14:16.440 開発です 00:14:16.440 --> 00:14:17.889 最終的なゴールは 00:14:17.889 --> 00:14:21.000 これらを患者に適用することです 00:14:21.900 --> 00:14:24.700 しかし 一回使用の 00:14:24.700 --> 00:14:27.080 蛍光分子を開発する単純な 00:14:27.080 --> 00:14:28.380 やり方はないと 00:14:28.380 --> 00:14:30.000 わかりました 00:14:30.710 --> 00:14:34.020 当然ながら医薬業界では 00:14:34.020 --> 00:14:37.430 長期間 毎日服用する 00:14:37.430 --> 00:14:40.000 複数回使用薬などに焦点が当てられています 00:14:40.520 --> 00:14:43.890 私達はこの技術を発展させることに 専念しています 00:14:43.890 --> 00:14:46.960 また新薬の開発や 成長因子の使用 00:14:46.960 --> 00:14:48.710 周囲の細胞を傷つけずに 00:14:48.710 --> 00:14:51.140 問題の原因となる 00:14:51.140 --> 00:14:53.400 神経を殺すことに注力しています 00:14:53.400 --> 00:14:56.540 私達はこれが可能であること 専心すべきことであると信じています NOTE Paragraph 00:14:57.270 --> 00:14:59.900 最後に お伝えしたいことがあります 00:15:01.690 --> 00:15:03.880 革新が成功するには 00:15:03.880 --> 00:15:07.090 1つの突破口だけでは成し得ません 00:15:07.090 --> 00:15:09.888 短距離走ではありません 00:15:09.888 --> 00:15:13.000 個人競技ではないのです 00:15:13.000 --> 00:15:15.720 革新が成功するには 00:15:15.720 --> 00:15:19.070 団体競技 リレー競技が必要です 00:15:19.070 --> 00:15:22.770 1つのチームが突破口を開き 00:15:22.770 --> 00:15:24.170 他のチームが 00:15:24.170 --> 00:15:26.720 それを受け容れ 適応させるのです 00:15:26.720 --> 00:15:29.860 そのためには 長期にわたって 昼夜を分かたず 00:15:29.860 --> 00:15:32.000 教育し 説得し 00:15:32.000 --> 00:15:35.410 受容される たゆまぬ勇気が 00:15:35.410 --> 00:15:37.000 必要なのです 00:15:38.250 --> 00:15:39.820 今日の健康と医学に投じたいのは 00:15:39.820 --> 00:15:41.480 この光なのです NOTE Paragraph 00:15:42.301 --> 00:15:43.300 どうもありがとう NOTE Paragraph 00:15:43.300 --> 00:15:47.000 (拍手)