WEBVTT 00:00:00.880 --> 00:00:05.520 地球上での人間の暮らしが どう組織されているか 捉え直してみましょう 00:00:06.920 --> 00:00:10.720 地球は人体で そこに我々が 住んでいると考えるのです 00:00:12.160 --> 00:00:17.916 骨格に当たるのが 道路や線路 橋やトンネル 空港や港といった 00:00:17.940 --> 00:00:19.576 交通システムで 00:00:19.600 --> 00:00:22.816 そのおかげで 我々は大陸を隅々まで移動できます 00:00:22.840 --> 00:00:26.096 人体に活力を与える 血管系に当たるのが 00:00:26.120 --> 00:00:28.896 石油やガスのパイプラインと 送電網で 00:00:28.920 --> 00:00:30.430 これがエネルギーを供給します 00:00:30.680 --> 00:00:33.696 コミュニケーションを担う 神経系に当たるのは 00:00:33.720 --> 00:00:37.416 インターネットケーブル 衛星や携帯電話ネットワーク 00:00:37.440 --> 00:00:40.600 データセンターで これにより 情報の共有が可能になります NOTE Paragraph 00:00:41.480 --> 00:00:45.856 拡大し続ける このインフラ基盤は 00:00:45.880 --> 00:00:50.896 現在 6400万kmの道路 00:00:50.920 --> 00:00:53.736 400万kmの鉄道網 00:00:53.760 --> 00:00:56.696 200万kmのパイプライン 00:00:56.720 --> 00:01:00.280 100万kmのインターネットケーブルから なっています 00:01:01.160 --> 00:01:03.720 では 国境線はどうでしょうか? 00:01:04.959 --> 00:01:08.520 国境は50万km足らずに過ぎません NOTE Paragraph 00:01:09.680 --> 00:01:12.240 もっと適切な世界地図を作りましょう 00:01:12.720 --> 00:01:16.160 その第一歩は 過去の神話を 乗り越えることです 00:01:17.080 --> 00:01:20.160 歴史学者なら誰でも知っている 言葉があります 00:01:21.160 --> 00:01:23.936 「地理が運命を決める」 00:01:23.960 --> 00:01:25.900 重々しい言葉ですよね 00:01:26.120 --> 00:01:28.230 運命論的な響きがあります 00:01:28.440 --> 00:01:32.656 この言葉から伝わるのは 内陸国は貧しくなる運命にあり 00:01:32.680 --> 00:01:35.896 小国は より大きな隣国から 逃れられず 00:01:35.920 --> 00:01:38.840 距離の隔たりは 克服できないということです 00:01:39.880 --> 00:01:43.456 でも世界中を旅していると いつも 00:01:43.480 --> 00:01:47.290 至る所で急速に広まる はるかに強い力の存在に気づきます 00:01:47.960 --> 00:01:49.740 「接続性」という力です NOTE Paragraph 00:01:50.080 --> 00:01:53.216 地球に広がる接続性という革命は 00:01:53.216 --> 00:01:56.536 運輸、エネルギー、コミュニケーションなど あらゆる領域に及び 00:01:56.560 --> 00:02:00.816 人、物、資源、知識の移動性を 00:02:00.816 --> 00:02:03.576 飛躍的に高めており 00:02:03.600 --> 00:02:08.460 もはや地理と接続性を 分けて考えることはできません 00:02:08.840 --> 00:02:12.936 私は この2つの力が融合したものを 00:02:12.960 --> 00:02:15.650 「接続性の地政学」と名付けました NOTE Paragraph 00:02:16.280 --> 00:02:19.206 接続性の地政学は 00:02:19.206 --> 00:02:23.656 人、資源、アイデアの移動における 飛躍的な進歩を描くものであると同時に 00:02:23.680 --> 00:02:26.340 それ自体が1つの「進化」— 00:02:26.340 --> 00:02:32.456 世界の進化なのです つまり政治的な地理学という 00:02:32.480 --> 00:02:35.980 世界を正統に分割する方法から 00:02:36.000 --> 00:02:38.216 機能的な地理学という 00:02:38.240 --> 00:02:40.816 実際に我々が 世界を利用する方法への進化であり 00:02:40.840 --> 00:02:45.470 国家や国境から インフラや サプライチェーンへと向かう進化です NOTE Paragraph 00:02:45.720 --> 00:02:49.240 我々が生きる世界の構造は 00:02:49.240 --> 00:02:52.896 19世紀における 垂直に統合された帝国から 00:02:52.920 --> 00:02:57.176 20世紀における 水平の 相互依存関係にある国家を経て 00:02:57.200 --> 00:03:02.440 21世紀における 地球規模の ネットワーク文明へと進化しつつあります 00:03:03.240 --> 00:03:06.576 主権ではなく 接続性こそが 00:03:06.600 --> 00:03:10.816 人類を組織する 原理になっているのです NOTE Paragraph 00:03:10.840 --> 00:03:14.240 (拍手) NOTE Paragraph 00:03:15.480 --> 00:03:18.696 我々は この地球規模の ネットワーク文明を実現しつつあり 00:03:18.720 --> 00:03:21.496 文字通り築き上げている最中です 00:03:21.520 --> 00:03:25.216 全世界の防衛予算と 軍事支出を合わせると 00:03:25.240 --> 00:03:28.336 年間総額で 2兆ドルを少し下回る程度ですが 00:03:28.360 --> 00:03:30.736 世界全体のインフラ支出は 00:03:30.760 --> 00:03:34.136 今後10年間で 年9兆ドルに達すると 00:03:34.160 --> 00:03:35.696 予想されています 00:03:35.720 --> 00:03:37.336 しかも それは当然の成り行きです 00:03:37.360 --> 00:03:40.096 我々は これまで 世界人口が30億人だった頃の 00:03:40.120 --> 00:03:43.610 インフラ資産に頼って 生活してきましたが 00:03:43.640 --> 00:03:46.736 今や人口は70億人を超え 80億人に向かい 00:03:46.760 --> 00:03:48.990 いずれ90億人を超えるのですから 00:03:49.280 --> 00:03:53.976 つまり 大まかに言うと 基本インフラのニーズに応えるには 00:03:54.000 --> 00:03:58.670 人口10億人当り 年間 約1兆ドルが必要になるのです NOTE Paragraph 00:03:59.360 --> 00:04:02.400 そして予想通り その先頭に立つのはアジアです 00:04:03.320 --> 00:04:05.936 中国は2015年に 00:04:05.960 --> 00:04:09.870 アジアインフラ投資銀行の 発足を宣言しましたが 00:04:09.880 --> 00:04:13.056 これにより他の組織と共同で 00:04:13.080 --> 00:04:16.495 上海からリスボンにまたがる 「鉄のシルクロード」のネットワークを 00:04:16.519 --> 00:04:18.720 構築しようとしています NOTE Paragraph 00:04:19.640 --> 00:04:23.816 そして これらの「地理工学」技術が 進展するにつれて 00:04:23.840 --> 00:04:29.296 今後40年間の インフラへの支出や 00:04:29.320 --> 00:04:32.656 インフラの建設は 00:04:32.680 --> 00:04:36.100 過去4千年間のそれを上回るでしょう NOTE Paragraph 00:04:36.760 --> 00:04:39.260 ここで少し立ち止まって 考えてみましょう 00:04:39.560 --> 00:04:44.336 社会を破壊する道具よりも グローバル社会の基盤整備に 00:04:44.360 --> 00:04:47.176 はるかに多くの資金を 投資することで 00:04:47.200 --> 00:04:49.776 重大な結果が生じる可能性があります 00:04:49.800 --> 00:04:52.856 接続性とは 世界中の人と資源の配分を 00:04:52.880 --> 00:04:55.456 最適化する手立てであり 00:04:55.480 --> 00:05:00.120 人類が個人の合計を超える力を 全体として発揮する手立てです 00:05:00.840 --> 00:05:03.950 今 起きているのは そういうことだと思います NOTE Paragraph 00:05:05.000 --> 00:05:08.936 21世紀には 接続性と並ぶ もう1つの大きなトレンドがあります 00:05:08.960 --> 00:05:11.510 地球全体の都市化です 00:05:12.000 --> 00:05:15.280 都市は我々を規定するインフラです 00:05:15.840 --> 00:05:19.056 2030年までに 世界人口の3分の2以上が 00:05:19.080 --> 00:05:20.336 都市に住むことになるでしょう 00:05:20.360 --> 00:05:23.096 また 都市は単なる 地図上の小さな点ではなく 00:05:23.120 --> 00:05:26.720 数百キロに渡って広がる 巨大な群島になっています NOTE Paragraph 00:05:27.360 --> 00:05:28.936 今 我々がいるバンクーバーは 00:05:28.960 --> 00:05:31.506 カスカディア人口密集地帯の 北に位置していますが 00:05:31.506 --> 00:05:34.400 アメリカ国境を超え 南はシアトルまで広がっています 00:05:34.600 --> 00:05:36.936 テクノロジーの原動力である シリコンバレーは 00:05:36.960 --> 00:05:39.610 サンフランシスコの北から 南はサンノゼ ― 00:05:39.610 --> 00:05:41.616 湾をはさんで オークランドまで広がります 00:05:41.640 --> 00:05:44.616 ロサンゼルス大都市圏は 今ではサンディエゴを越え 00:05:44.640 --> 00:05:46.896 メキシコ国境を挟んで ティフアナにまで伸びています 00:05:46.920 --> 00:05:49.896 サンディエゴとティフアナは 空港ターミナルを共有していて 00:05:49.920 --> 00:05:52.136 どちらの国にも出国できます 00:05:52.160 --> 00:05:56.400 ゆくゆくは高速鉄道網が 太平洋沿岸一帯を結ぶかもしれません 00:05:57.680 --> 00:06:01.816 アメリカ北東部のメガロポリスは ボストンを起点とし ニューヨークと 00:06:01.840 --> 00:06:03.616 フィラデルフィアを通って ワシントンD.C.に至ります 00:06:03.640 --> 00:06:05.816 この一帯には5千万人以上が暮らし 00:06:05.840 --> 00:06:08.616 ここにも高速鉄道網の計画があります NOTE Paragraph 00:06:08.640 --> 00:06:12.910 一方 まさにメガシティが 出現しつつある場所がアジアです 00:06:13.280 --> 00:06:17.536 東京、名古屋、大阪を通る この光の筋の中には 00:06:17.560 --> 00:06:19.736 8千万人以上が住んでおり 00:06:19.760 --> 00:06:22.190 日本経済の大部分を占める 00:06:22.200 --> 00:06:24.790 世界最大のメガシティです 00:06:25.160 --> 00:06:26.630 ― 今のところは NOTE Paragraph 00:06:26.800 --> 00:06:29.336 一方 中国では 1億人近くの人口を抱える 00:06:29.360 --> 00:06:32.256 メガシティ群が 出現しつつあります 00:06:32.280 --> 00:06:34.176 北京近郊の渤海沿岸の地域や 00:06:34.200 --> 00:06:36.450 上海周辺の長江デルタ — 00:06:36.450 --> 00:06:40.736 香港から 北は広州まで広がる 珠江デルタにも 00:06:40.760 --> 00:06:42.096 内陸部には 00:06:42.120 --> 00:06:45.016 重慶・成都メガシティ群があり 00:06:45.020 --> 00:06:49.480 その総面積は オーストリアに匹敵します NOTE Paragraph 00:06:51.263 --> 00:06:53.216 そして これらメガシティ群はいずれも 00:06:53.240 --> 00:06:56.296 GDPが2兆ドルに迫る勢いですが 00:06:56.320 --> 00:06:59.320 これは現在のインドのGDPと ほぼ同じ規模です 00:06:59.560 --> 00:07:05.216 想像してみてください もしG20のような 00:07:05.240 --> 00:07:08.776 国際的な外交会議の参加資格が 国家ではなく 00:07:08.800 --> 00:07:11.100 経済規模に基づいていたら どうなるでしょう 00:07:11.320 --> 00:07:14.896 中国のメガシティのいくつかが 参加するようになる一方で 00:07:14.920 --> 00:07:19.040 アルゼンチンやインドネシアといった 国家は席を失うでしょう NOTE Paragraph 00:07:20.080 --> 00:07:23.776 インドに目を向けると 人口は中国を追い抜く勢いで 00:07:23.800 --> 00:07:26.096 多くのメガシティ群を抱えています 00:07:26.120 --> 00:07:28.536 たとえば デリーの首都圏や 00:07:28.560 --> 00:07:30.016 ムンバイです 00:07:30.040 --> 00:07:31.256 中東では 00:07:31.280 --> 00:07:34.416 イランの3分の1の人口が テヘラン周辺に集まっています 00:07:34.440 --> 00:07:36.296 エジプトでは 8千万人いる国民のほとんどが 00:07:36.320 --> 00:07:39.336 カイロ・アレクサンドリア間の 地域に住んでいます 00:07:39.360 --> 00:07:43.376 ペルシャ湾岸では ネックレスのように並ぶ 都市国家群が出現しつつあり 00:07:43.400 --> 00:07:44.856 バーレーンとカタールにはじまり 00:07:44.880 --> 00:07:48.130 アラブ首長国連邦を経て オマーンの首都マスカットまで広がっています NOTE Paragraph 00:07:48.520 --> 00:07:50.790 それからアフリカ最大の都市で 00:07:50.800 --> 00:07:54.656 ナイジェリア経済の中心地 ラゴスがあります 00:07:54.680 --> 00:07:56.736 大西洋岸回廊を結ぶ ― 00:07:56.760 --> 00:08:01.176 鉄道網を整備する計画があり ラゴスを拠点として 00:08:01.200 --> 00:08:04.256 ベナン、トーゴ、ガーナを経由し 00:08:04.280 --> 00:08:07.736 コートジボワールの 首都アビジャンまでを結びます NOTE Paragraph 00:08:07.760 --> 00:08:11.640 今あげた国々は いわばラゴスの郊外です 00:08:12.000 --> 00:08:13.856 メガシティの世界では 00:08:13.880 --> 00:08:17.090 国家が都市の郊外になりうるのです 00:08:18.640 --> 00:08:24.760 2030年までに 世界中で50か所もの メガシティ群ができることになるでしょう 00:08:25.400 --> 00:08:27.256 では どちらの地図が多くを語るでしょう? 00:08:27.280 --> 00:08:30.416 どこの家の壁にも貼ってある 200の国々が載った 00:08:30.440 --> 00:08:32.336 これまでの地図でしょうか? 00:08:32.360 --> 00:08:35.800 それとも50のメガシティ群の 地図でしょうか? NOTE Paragraph 00:08:36.159 --> 00:08:38.895 ただ これでも完全ではありません 00:08:38.919 --> 00:08:42.936 相互のつながりを理解しない限り 個々のメガシティを 00:08:42.960 --> 00:08:46.120 理解したことにはならないからです 00:08:46.880 --> 00:08:49.256 人々はつながりを求めて 都市に移住し 00:08:49.280 --> 00:08:52.480 接続性が これら都市群の繁栄する要因です 00:08:53.320 --> 00:08:56.976 サンパウロやイスタンブール モスクワといった多くの都市のGDPは 00:08:57.000 --> 00:09:01.096 国全体のGDPの 3分の1から半分にまで迫り 00:09:01.120 --> 00:09:03.280 さらに それを超えつつあります NOTE Paragraph 00:09:04.120 --> 00:09:05.896 また同じくらい重要なことがあります 00:09:05.920 --> 00:09:08.776 それぞれの都市の価値は 00:09:08.800 --> 00:09:12.456 繁栄をもたらしている 人、資金、テクノロジーの流れが果たす ― 00:09:12.480 --> 00:09:14.176 役割を理解しない限り 00:09:14.200 --> 00:09:15.880 評価できないのです 00:09:16.640 --> 00:09:19.376 南アフリカのハウテン州を 例にとりましょう 00:09:19.400 --> 00:09:22.536 ここにはヨハネスブルクや 州都プレトリアがあります 00:09:22.560 --> 00:09:26.496 ここでもGDPは南アフリカ全体の 3分の1を超えています 00:09:26.520 --> 00:09:29.776 もう1つ重要な点は 南アフリカやアフリカ大陸全土に 00:09:29.780 --> 00:09:35.016 直接投資をしている 多国籍企業のほとんどが 00:09:35.040 --> 00:09:37.930 ここに拠点となるオフィスを 構えていることです NOTE Paragraph 00:09:38.680 --> 00:09:42.376 都市は地球規模の バリューチェーンの一部となり 00:09:42.400 --> 00:09:45.976 グローバルな分業の一端を 担いつつあります 00:09:46.000 --> 00:09:48.250 これが都市の意図なのです 00:09:48.640 --> 00:09:50.456 自分の街を孤立させたい市長など 00:09:50.480 --> 00:09:52.330 私は見たことがありません 00:09:52.840 --> 00:09:55.896 どの市長も自分の街が 国に属していると同時に 00:09:55.920 --> 00:10:01.240 地球規模のネットワーク文明にも 属していることを理解しているのです NOTE Paragraph 00:10:02.680 --> 00:10:06.900 さて 多くの人々は 都市化に不安を抱いています 00:10:06.920 --> 00:10:09.710 都市が地球を破壊していると 考えています 00:10:09.960 --> 00:10:11.176 一方 現在 — 00:10:11.200 --> 00:10:15.456 200以上の都市間の情報交換ネットが 盛り上がっています 00:10:15.470 --> 00:10:20.056 これは今 存在する 政府間組織の数と ほぼ同じです 00:10:20.080 --> 00:10:24.456 そして この都市間ネットワークは すべて1つの目的 — 00:10:24.480 --> 00:10:29.176 21世紀における 人類の最優先事項である 00:10:29.200 --> 00:10:32.200 「持続可能な都市化」に 力を注いでいます NOTE Paragraph 00:10:32.680 --> 00:10:34.300 これは成功しているでしょうか? 00:10:34.560 --> 00:10:36.296 気候変動を取り上げてみましょう 00:10:36.320 --> 00:10:39.056 ニューヨークやパリで 次々に開かれたサミットでは 00:10:39.080 --> 00:10:42.370 温室効果ガスの排出量は 削減できないのは明らかです 00:10:42.560 --> 00:10:48.516 一方 都市が技術、知識、政策を 相互に交換することこそ 00:10:48.520 --> 00:10:53.136 経済活動による二酸化炭素排出量を 減らす手立てになるのです NOTE Paragraph 00:10:53.160 --> 00:10:55.296 都市は互いに学び合っています 00:10:55.320 --> 00:10:57.776 どうやって排出量ゼロの建物を増やし 00:10:57.800 --> 00:11:00.936 電気自動車のカーシェアリングを どう展開するか といったことです 00:11:00.960 --> 00:11:02.176 中国の主要な都市では 00:11:02.200 --> 00:11:05.256 自動車の走行台数を 制限しています 00:11:05.280 --> 00:11:06.536 また西側の都市の多くでは 00:11:06.560 --> 00:11:09.160 若者の自動車離れがすすんでいます 00:11:09.720 --> 00:11:11.936 都市は これまで 問題の一因でしたが 00:11:11.960 --> 00:11:14.270 今では解決策の一部なのです NOTE Paragraph 00:11:14.880 --> 00:11:19.480 持続可能な都市化の もう一つの重要な課題は格差です 00:11:19.960 --> 00:11:23.376 私がメガシティを 何時間も あるいは何日もかけて 00:11:23.400 --> 00:11:25.496 端から端まで巡っていくと 00:11:25.520 --> 00:11:29.256 同じ土地なのに 極度の格差があるという 00:11:29.280 --> 00:11:31.550 悲劇的状況が見えてきます 00:11:32.080 --> 00:11:35.096 それにも関わらず グローバルな金融資産総額は 00:11:35.120 --> 00:11:36.576 史上最高額となる 00:11:36.600 --> 00:11:40.096 300兆ドルに迫る勢いです 00:11:40.120 --> 00:11:43.770 これは世界の実質GDPの ほぼ4倍に当たります NOTE Paragraph 00:11:44.520 --> 00:11:48.976 我々は世界金融危機以降 巨額の負債を抱えていますが 00:11:49.000 --> 00:11:52.160 果たして それを包括的な経済成長に 投資してきたでしょうか? 00:11:52.840 --> 00:11:54.960 いいえ まだです 00:11:55.800 --> 00:11:59.616 誰にでも手の届く公営住宅を 十分に建設し 00:11:59.640 --> 00:12:02.776 人々がデジタルだけでなく 物理的にもつながれるような 00:12:02.800 --> 00:12:07.336 強力な輸送ネットワークに 投資するようになってはじめて 00:12:07.360 --> 00:12:09.736 分断された都市や社会が 00:12:09.760 --> 00:12:11.876 一体感を得られるのです NOTE Paragraph 00:12:11.876 --> 00:12:14.480 (拍手) NOTE Paragraph 00:12:15.840 --> 00:12:18.736 国連の「持続可能な開発目標」に 00:12:18.760 --> 00:12:21.216 インフラ構築が含まれたのも 00:12:21.240 --> 00:12:23.850 それが他のあらゆる項目の 基盤になるからです 00:12:24.080 --> 00:12:25.896 政財界の指導者たちは 00:12:25.920 --> 00:12:29.016 接続性が慈善活動ではなく チャンスだということを 00:12:29.040 --> 00:12:30.640 理解しつつあります 00:12:31.080 --> 00:12:33.816 だからこそ財界は 接続性こそ21世紀の 00:12:33.840 --> 00:12:38.840 最も重要な資産だということを 認識する必要があるのです NOTE Paragraph 00:12:40.280 --> 00:12:44.580 都市には 世界をより持続可能で より公正なものに 00:12:44.600 --> 00:12:46.856 変えうる力があるだけでなく 00:12:46.880 --> 00:12:49.736 都市間の接続性を通して 世界はさらに平和になると 00:12:49.760 --> 00:12:51.820 私は考えています 00:12:52.400 --> 00:12:56.416 国境を跨いで密接な関係を築いた地域に 目を向けると 00:12:56.420 --> 00:13:00.656 貿易や投資が増えるだけでなく より安定することがわかります 00:13:00.680 --> 00:13:03.176 誰もが知っている話ですが 第二次世界大戦後に 00:13:03.200 --> 00:13:05.776 ヨーロッパで 産業の統合がすすんだことが 00:13:05.800 --> 00:13:08.720 現在の平和な欧州連合を生む きっかけとなりました 00:13:09.000 --> 00:13:11.616 ちなみにロシアが 00:13:11.640 --> 00:13:15.830 国際システムの主要勢力の中で 最もつながりが薄い理由も明らかでしょう 00:13:16.240 --> 00:13:20.016 これは現在の緊張関係を説明する 手がかりになります 00:13:20.040 --> 00:13:22.936 つまり システムに あまり関与していない国は 00:13:22.960 --> 00:13:25.660 システムを乱しても あまり失うものがないのです 00:13:26.800 --> 00:13:29.616 北米では地図上で最も重要な線とは 00:13:29.640 --> 00:13:33.416 アメリカとカナダの国境や アメリカとメキシコの国境ではなく 00:13:33.440 --> 00:13:36.816 道路や鉄路、パイプライン — 00:13:36.840 --> 00:13:39.696 電力網、運河からなる 緻密なネットワークであり 00:13:39.720 --> 00:13:43.536 これが北米連合を 一つにまとめています 00:13:43.560 --> 00:13:48.406 北アメリカに必要なのは 壁ではなく つながりなのです NOTE Paragraph 00:13:48.406 --> 00:13:50.920 (拍手) NOTE Paragraph 00:13:55.880 --> 00:14:00.216 一方 接続性の本当の将来性は 旧植民地世界にあります 00:14:00.240 --> 00:14:04.576 かつて実に作為的に国境が引かれた あらゆる地域で 00:14:04.600 --> 00:14:06.536 歴代の指導者たちが 00:14:06.560 --> 00:14:09.176 敵対し続けてきました 00:14:09.200 --> 00:14:11.576 ところが現在 新世代の指導者が権力を持ち 00:14:11.600 --> 00:14:13.430 和解がすすんでいます NOTE Paragraph 00:14:13.760 --> 00:14:15.550 東南アジアを見てみましょう 00:14:15.550 --> 00:14:19.256 バンコクとシンガポールを結ぶ 高速鉄道網や 00:14:19.280 --> 00:14:22.176 ベトナムからミャンマーに至る 貿易回廊の計画があります 00:14:22.200 --> 00:14:27.736 現在6億人が住むこの地域は 農業資源と工業生産の 00:14:27.760 --> 00:14:29.730 協調を図っていて 00:14:29.730 --> 00:14:34.376 私が「アジアの平和」と呼ぶ 安定した東南アジア諸国の関係を 00:14:34.400 --> 00:14:37.240 実現しつつあります NOTE Paragraph 00:14:38.040 --> 00:14:41.176 同じような現象は 東アフリカでもすすみ 00:14:41.200 --> 00:14:42.576 6か国が 00:14:42.600 --> 00:14:45.896 鉄道など複数の輸送方法を連携させた 回廊形成に投資し 00:14:45.920 --> 00:14:49.056 内陸国の物資を 市場に届けようとしています 00:14:49.060 --> 00:14:53.776 現在こういった国々では 公益事業と投資政策の協調を図り 00:14:53.800 --> 00:14:57.940 「アフリカの平和」を 実現しつつあるのです NOTE Paragraph 00:14:59.200 --> 00:15:02.096 このような発想が 特に役立つと思われる地域が 00:15:02.120 --> 00:15:03.620 中東です 00:15:04.000 --> 00:15:06.456 アラブ諸国が悲劇的な形で 崩壊しつつある今 00:15:06.480 --> 00:15:09.216 カイロやベイルート バグダッドのような古都以外に 00:15:09.240 --> 00:15:11.720 何が残るでしょう? 00:15:12.400 --> 00:15:17.136 実は アラブ世界に住む およそ4億人が 00:15:17.160 --> 00:15:19.256 ほぼすべて都市へと移住しています 00:15:19.280 --> 00:15:21.176 社会あるいは都市には 00:15:21.200 --> 00:15:23.456 水資源やエネルギー資源が 00:15:23.480 --> 00:15:26.020 豊富な場所も 乏しい場所もありますが 00:15:26.040 --> 00:15:28.936 このような不均衡を解消する 唯一の方法は 00:15:28.960 --> 00:15:31.576 戦争でも 国境を引くことでもなく 00:15:31.600 --> 00:15:35.690 パイプラインや運河で 接続性を高めることです 00:15:36.040 --> 00:15:39.976 残念ながら これはまだ 中東の地図上では実現していませんが 00:15:40.000 --> 00:15:42.740 相互につながった — 00:15:42.760 --> 00:15:46.620 「アラブの平和」を実現するため 内部的な統合をすすめると共に 00:15:46.640 --> 00:15:48.336 生産性を高めるつながりを 00:15:48.360 --> 00:15:52.656 ヨーロッパやアジア、アフリカといった 周辺地域との間に持つべきです NOTE Paragraph 00:15:52.680 --> 00:15:54.676 さて 政情が不安定な地域に 00:15:54.676 --> 00:15:58.120 今すぐ接続性が必要とは 思えないかもしれません 00:15:58.600 --> 00:16:02.216 しかし長期的に見ると 接続性の向上が 安定をもたらす唯一の方法だと 00:16:02.240 --> 00:16:04.736 歴史が示しています 00:16:04.740 --> 00:16:10.416 接続性が新たな現実になっている地域が 次第に増え 00:16:10.440 --> 00:16:13.576 都市や国家は一つにまとまって より平和で繁栄した — 00:16:13.600 --> 00:16:16.470 共同体を形成しつつあります NOTE Paragraph 00:16:17.760 --> 00:16:20.500 一方 試金石となるのはアジアでしょう 00:16:21.040 --> 00:16:23.976 果たして接続性は 極東の大国間の敵対関係を 00:16:24.000 --> 00:16:26.576 乗り越えられるでしょうか? 00:16:26.600 --> 00:16:31.430 何と言っても 第三次世界大戦が始まるのは 極東だと考えられていますから 00:16:31.920 --> 00:16:35.056 25年前に冷戦が終結して以来 00:16:35.080 --> 00:16:38.456 この地域では少なくとも6つの戦争が 起こると予想されてきましたが 00:16:38.480 --> 00:16:40.650 実際には1つも起きていません NOTE Paragraph 00:16:41.160 --> 00:16:43.220 中国と台湾を見てみましょう 00:16:43.560 --> 00:16:48.176 1990年代には誰もが第三次大戦が 始まるとしたらここだと考えていたのですが 00:16:48.200 --> 00:16:49.696 その頃から 00:16:49.720 --> 00:16:54.216 海峡を挟んだ貿易取引額と投資額が あまりに巨額になったため 00:16:54.240 --> 00:16:55.456 2015年11月には 00:16:55.480 --> 00:16:58.336 双方の指導者が 歴史的な首脳会談を開き 00:16:58.360 --> 00:17:01.580 「一つの中国」の原則を確認しました 00:17:01.960 --> 00:17:04.776 さらに2016年初頭に台湾では 独立を志向する 00:17:04.800 --> 00:17:07.576 [民主進歩党]が勝利しましたが 00:17:07.599 --> 00:17:10.079 基本的な方向性は 変わりませんでした NOTE Paragraph 00:17:11.359 --> 00:17:14.256 一方 中国と日本の間には さらに長い対立の歴史があり 00:17:14.280 --> 00:17:16.695 領土問題で互いの力を誇示するため 00:17:16.720 --> 00:17:19.230 空と海上で軍事力を展開しています 00:17:19.520 --> 00:17:20.736 その一方で近年 00:17:20.760 --> 00:17:24.896 日本の最大の対外投資先は 中国であり 00:17:24.920 --> 00:17:27.990 中国における日本車の販売台数は 記録的な数に上ります 00:17:28.440 --> 00:17:31.376 また現在 日本に住む 外国人で一番多いのは 00:17:31.400 --> 00:17:33.520 どこの出身者でしょう? 00:17:34.120 --> 00:17:35.920 そう 中国です NOTE Paragraph 00:17:37.520 --> 00:17:39.416 中国とインドは紛争中で 00:17:39.440 --> 00:17:41.496 3つの国境問題を抱えていますが 00:17:41.520 --> 00:17:43.976 アジアインフラ投資銀行への 00:17:44.000 --> 00:17:46.416 出資額 第2位はインドです 00:17:46.440 --> 00:17:49.696 両国が構築中の貿易回廊は 北東インドから 00:17:49.720 --> 00:17:53.640 ミャンマー、バングラデシュを経て 中国南部まで広がり 00:17:54.320 --> 00:17:58.176 両国の貿易量は 10年前は200億ドルだったのが 00:17:58.200 --> 00:18:00.120 現在800億ドルに膨らんでいます NOTE Paragraph 00:18:00.600 --> 00:18:03.616 核武装をしているインドとパキスタンは 3度の戦争を経て 00:18:03.640 --> 00:18:05.856 今もカシミール地方を 巡って争っていますが 00:18:05.880 --> 00:18:09.416 同時に両者は 最恵国待遇について交渉し 00:18:09.440 --> 00:18:11.176 イランからパキスタンを経由し 00:18:11.200 --> 00:18:15.176 インドに至るパイプラインの 完成を目指しています NOTE Paragraph 00:18:15.200 --> 00:18:17.100 次にイランについてです 00:18:17.880 --> 00:18:21.740 イランとの戦争は必至と思われたのは ほんの2年前のことなのに 00:18:21.760 --> 00:18:26.480 なぜ あらゆる大国が商機を求めて イランに殺到するのでしょう? NOTE Paragraph 00:18:28.560 --> 00:18:29.816 皆さん — 00:18:29.840 --> 00:18:33.840 第三次大戦が起こらないと 断言はできません 00:18:34.640 --> 00:18:37.850 ただ まだ起きていない理由は はっきりしています 00:18:38.680 --> 00:18:42.376 確かにアジア各国は 急速に軍事力を増強していますが 00:18:42.400 --> 00:18:45.976 同時に国同士がインフラや サプライチェーンに 00:18:46.000 --> 00:18:48.936 何十億ドルも投資し合っています 00:18:48.960 --> 00:18:52.776 こういった国々は互いの 政治的地理より 機能的地理に 00:18:52.800 --> 00:18:55.256 関心があるのです 00:18:55.280 --> 00:19:00.336 だからこそ各国の指導者は 熟考を重ね ギリギリのところで踏みとどまり 00:19:00.360 --> 00:19:04.920 領土問題の緊張よりも 経済連携に目を向けようとするのです NOTE Paragraph 00:19:06.440 --> 00:19:09.420 世界は分裂しつつあるように 見えることもありますが 00:19:09.760 --> 00:19:11.696 接続性を高めることこそ 00:19:11.720 --> 00:19:15.460 バラバラになった世界を 以前より はるかに良い形で 00:19:15.480 --> 00:19:17.550 元に戻す方法なのです 00:19:17.960 --> 00:19:22.726 世界を 物理的あるいはデジタルの 接続性で隙間なく覆うことで 00:19:22.726 --> 00:19:24.896 地理的制約を超えられる世界へと 00:19:24.920 --> 00:19:28.440 進化していくのです 00:19:28.920 --> 00:19:32.096 我々は グローバルな 接続性のネットワークに息づく 00:19:32.120 --> 00:19:35.336 細胞であり 血管です NOTE Paragraph 00:19:35.360 --> 00:19:39.016 毎日 何億もの人々が インターネットを通して 00:19:39.040 --> 00:19:41.656 顔を合わせたこともない人々と 協働しています 00:19:41.680 --> 00:19:45.176 毎年10億人以上が国境を超え 00:19:45.200 --> 00:19:49.120 10年後には30億人に達すると 予想されています NOTE Paragraph 00:19:50.200 --> 00:19:52.696 我々は単に接続性を作るだけでなく 00:19:52.720 --> 00:19:54.620 それに命を与えています 00:19:54.960 --> 00:19:58.296 我々が生きるのは グローバル・ネットワーク文明であり 00:19:58.320 --> 00:20:00.620 これが我々の地図 ― 00:20:01.240 --> 00:20:05.640 地理で運命が決められることのない 世界の地図です 00:20:06.560 --> 00:20:10.930 未来に向けた 新しく希望の膨らむ 別の言葉があります 00:20:11.400 --> 00:20:14.030 「接続性こそが運命を決める」 NOTE Paragraph 00:20:14.040 --> 00:20:15.256 ありがとう NOTE Paragraph 00:20:15.280 --> 00:20:21.509 (拍手)