WEBVTT 00:00:15.570 --> 00:00:18.330 「宇宙 それは究極のフロンティア」 00:00:20.370 --> 00:00:23.826 この言葉を初めて耳にしたのは まだ6歳の時のことです 00:00:23.850 --> 00:00:26.106 その言葉に心を躍らせて 00:00:26.130 --> 00:00:28.506 この不思議な新世界を 探求したいと思いました 00:00:28.530 --> 00:00:30.026 新たな生命を探し出し 00:00:30.050 --> 00:00:33.250 宇宙から来るものは 全て見たいと思いました 00:00:34.330 --> 00:00:38.050 この夢と言葉に導かれ 発見を目指す道のりを歩み 00:00:38.050 --> 00:00:39.506 この夢と言葉に導かれ 発見を目指す道のりを歩み 00:00:39.530 --> 00:00:41.706 学校、大学で学び 00:00:41.730 --> 00:00:45.170 博士号を取得して ついには 天文学者になりました 00:00:45.610 --> 00:00:48.026 近い将来に 自分が宇宙船を操縦することなど 00:00:48.050 --> 00:00:51.210 実現しないと 分かりましたが 00:00:52.450 --> 00:00:57.066 同時に 宇宙は奇妙で 素晴らしく しかも 広大であるということも学びました 00:00:57.090 --> 00:00:59.890 あまりにも広大なので 宇宙船では探求できないほどです 00:01:00.730 --> 00:01:04.090 そこで 望遠鏡を使って天文学を 研究することにしました 00:01:04.849 --> 00:01:07.626 ご覧になっているのは 夜空の写真です 00:01:07.650 --> 00:01:09.870 世界の至る所で見ることが できるようなものです 00:01:10.894 --> 00:01:14.010 ここに映し出されているのは全て 我々が住んでいる銀河系の星です 00:01:14.570 --> 00:01:17.205 より暗い部分に目を向けてみると 00:01:17.229 --> 00:01:19.523 砂漠といった 真っ暗な場所に行けば 00:01:19.547 --> 00:01:21.988 銀河系の中心部を 見ることができるかもしれません 00:01:22.012 --> 00:01:24.646 そこには何千億という星が 広がっています 00:01:25.540 --> 00:01:27.116 とても美しい画像です 00:01:27.140 --> 00:01:28.291 カラフルです 00:01:28.315 --> 00:01:31.029 でもやはり ここは宇宙の ほんの片隅に過ぎません 00:01:31.430 --> 00:01:34.522 横に広がった不思議な 暗い塵のようなものが見えます 00:01:34.546 --> 00:01:36.266 これは局所的に分布する塵で 00:01:36.290 --> 00:01:38.946 星が発した光を ぼんやりとさせています 00:01:38.970 --> 00:01:40.546 でも我々には 高度な技術があります 00:01:40.570 --> 00:01:43.926 裸眼でも この宇宙の片隅を 探索することができますが 00:01:43.950 --> 00:01:45.386 もっと良く見ることも可能です 00:01:45.410 --> 00:01:49.170 素晴らしい望遠鏡 ハッブル宇宙望遠鏡による観測です 00:01:49.730 --> 00:01:51.906 宇宙学者が繋ぎ合わせた画像が これです 00:01:51.930 --> 00:01:53.826 「ハッブル・ディープ・フィールド」は 00:01:53.850 --> 00:01:57.686 空のほんの僅かな領域を 何百時間もかけて観測したもので 00:01:57.710 --> 00:02:00.610 その視野は 腕を伸ばした時の 親指の大きさよりも狭い程度です 00:02:01.050 --> 00:02:02.306 この画像には 00:02:02.330 --> 00:02:03.986 何千もの銀河が映っていますが 00:02:04.010 --> 00:02:07.466 全宇宙には 何千億の銀河があるはずだと 00:02:07.490 --> 00:02:08.866 考えられています 00:02:08.889 --> 00:02:11.546 中には我が銀河系と似たものも とても異なるものもあります 00:02:11.570 --> 00:02:14.226 「良く分かった」とお思いでしょうが 私の探求はまだ続きます 00:02:14.250 --> 00:02:16.946 とても高性能な望遠鏡を 使えば簡単にできることで 00:02:16.970 --> 00:02:18.770 空を見上げるだけでOKです 00:02:19.290 --> 00:02:22.886 でも それだけでは 実は見落として しまうことがあるのです 00:02:22.910 --> 00:02:25.646 なぜかというと これまで話してきたことは 00:02:25.670 --> 00:02:29.567 人の目で見ることができる 可視光だけを使っており 00:02:29.591 --> 00:02:32.951 宇宙が発している情報の ほんの一断片に過ぎないからです 00:02:33.925 --> 00:02:38.147 可視光だけによる観測には 2つの重大な問題があります 00:02:38.850 --> 00:02:41.726 1つ目は 先ほど言及した 塵に関するものです 00:02:41.750 --> 00:02:44.686 塵は可視光が我々に届くのを 妨げています 00:02:44.710 --> 00:02:49.396 ですから遠くの宇宙を探ろうとするほど 届く光は弱くなります 00:02:49.420 --> 00:02:52.836 しかし 可視光で宇宙の探求を行なう時 実はある奇妙な問題が 00:02:52.860 --> 00:02:54.996 付きまとっているのです 00:02:55.020 --> 00:02:57.700 交通量の多い街角に 立っているとしましょう 00:02:58.180 --> 00:02:59.676 車が通り過ぎます 00:02:59.700 --> 00:03:01.100 救急車が近づいてくると 00:03:01.940 --> 00:03:03.616 音程の上がったサイレンが聞こえます 00:03:03.640 --> 00:03:07.076 (通り過ぎるサイレンの音のまね) 00:03:07.100 --> 00:03:09.460 救急車が通り過ぎた時に 音の高さが変わったように聞こえます 00:03:09.460 --> 00:03:11.540 救急車が通り過ぎた時に 音の高さが変わったように聞こえます 00:03:12.060 --> 00:03:15.940 救急車の運転手が わざわざ サイレンの音を変えたのではありません 00:03:16.860 --> 00:03:19.436 これは音を聞く側がそう感じるのです 00:03:19.460 --> 00:03:22.196 救急車が近づくとき 00:03:22.220 --> 00:03:23.436 音の波は圧縮され 00:03:23.460 --> 00:03:25.396 音程が高くなります 00:03:25.420 --> 00:03:28.196 逆に救急車が遠ざかるとき 音の波は伸ばされて 00:03:28.220 --> 00:03:30.276 音程は低くなります 00:03:30.300 --> 00:03:32.300 同じようなことが 光でも起こります 00:03:32.860 --> 00:03:35.236 我々に近づく天体が発する光の波は 00:03:35.260 --> 00:03:38.436 圧縮されて より青い色に見えます 00:03:38.460 --> 00:03:40.676 天体が遠ざかるときには 00:03:40.700 --> 00:03:43.356 光の波の間隔が広がり より赤い色に見えます 00:03:43.380 --> 00:03:46.260 これらの効果を 青方偏移、赤方偏移と言います 00:03:47.260 --> 00:03:49.237 宇宙は膨張しているので 00:03:49.261 --> 00:03:53.356 全ての天体は どの天体からみても遠ざかっており 00:03:53.380 --> 00:03:56.060 全てが赤方偏移を受けて見えます 00:03:56.967 --> 00:04:00.556 さらにとても不思議なことに 遠くの宇宙を深部を見るほど 00:04:00.580 --> 00:04:04.876 つまり遠くの天体を見るほど 天体はより速い速度で遠ざかっており 00:04:04.900 --> 00:04:06.619 より赤く見えます 00:04:07.340 --> 00:04:10.635 さてハッブル・ディープ・フィールドに 話を戻しますが 00:04:10.659 --> 00:04:13.356 ハッブル天体望遠鏡だけを使って 遠い宇宙の観測を 00:04:13.380 --> 00:04:14.916 続けていこうとするならば 00:04:14.940 --> 00:04:17.636 ある距離に達したところで 00:04:17.660 --> 00:04:19.260 全てが赤く見えてしまい 00:04:20.060 --> 00:04:22.036 ある問題に直面することになります 00:04:22.060 --> 00:04:24.116 とても遠方に達すると ついには 00:04:24.140 --> 00:04:27.116 全てが赤外域へと移行し 00:04:27.140 --> 00:04:28.876 何も見ることができなくなります 00:04:28.900 --> 00:04:30.596 何か手段を講じなければなりません 00:04:30.620 --> 00:04:32.436 手段がなければ 私の旅はそこまでです 00:04:32.460 --> 00:04:34.356 赤方偏移に邪魔される前に見えている 天体だけではなく 00:04:34.380 --> 00:04:38.106 全宇宙を探索したいと私は思いました 00:04:38.130 --> 00:04:39.386 そのための技術があります 00:04:39.410 --> 00:04:40.786 電波天文学というものです 00:04:40.810 --> 00:04:43.146 天文学者はこの技術を 何十年もの間使ってきました 00:04:43.170 --> 00:04:44.466 素晴らしい技術です 00:04:44.490 --> 00:04:47.986 「The Dish」の愛称で親しまれている パークス電波望遠鏡を紹介します 00:04:48.010 --> 00:04:49.386 映画でご覧になったかもしれません 00:04:49.410 --> 00:04:50.887 電波は偉大です 00:04:50.911 --> 00:04:53.448 より遠い宇宙を見ることができますし 00:04:53.472 --> 00:04:55.666 塵に遮られることもないので 00:04:55.690 --> 00:04:57.846 宇宙にあるものを全て見ることができ 00:04:57.870 --> 00:04:59.826 しかも 赤方偏移は それほど問題になりません 00:04:59.850 --> 00:05:03.050 広い帯域の信号を受信する受信機を 作ることができるからです 00:05:03.570 --> 00:05:07.506 ではパークス望遠鏡を銀河系の中心に 向けたら何が見えるのでしょうか? 00:05:07.530 --> 00:05:09.490 素晴らしいものが見えるはずですよね? 00:05:10.130 --> 00:05:13.026 実際 とても興味深いものが見えます 00:05:13.050 --> 00:05:14.706 塵は消え去ります 00:05:14.730 --> 00:05:18.170 先ほど言ったように 電波は 塵を通り抜けるので 問題とはなりません 00:05:18.810 --> 00:05:20.706 しかし 見え方はとても異なっています 00:05:20.730 --> 00:05:24.546 天の川の中心が 燦々と輝いているのが見えます 00:05:24.570 --> 00:05:26.250 でも これは星の光ではありません 00:05:26.930 --> 00:05:30.066 シンクロトン放射光と 呼ばれるもので 00:05:30.090 --> 00:05:34.690 宇宙の磁場に置かれた電子が らせん状に運動することによって発生します 00:05:35.000 --> 00:05:37.596 銀河面はシンクロトン放射光で輝きます 00:05:37.620 --> 00:05:40.916 また そこから発する 奇妙な房のようなものや 00:05:40.940 --> 00:05:43.436 可視光では目にすることのない 00:05:43.460 --> 00:05:45.780 天体も見ることもできます 00:05:46.440 --> 00:05:48.876 しかし この画像の解析は とても困難です 00:05:48.900 --> 00:05:51.676 なぜなら ご覧のとおり 解像度が非常に低いからです 00:05:51.700 --> 00:05:53.876 電波の波長は長いので 00:05:53.900 --> 00:05:56.196 分解能が低くなるのです 00:05:56.220 --> 00:05:58.186 またこの画像は白黒なので 00:05:58.210 --> 00:06:01.970 その色合いは分りません 00:06:01.660 --> 00:06:04.236 では 最新情報をお伝えしましょう 00:06:04.260 --> 00:06:05.716 我々は このような問題を 00:06:05.740 --> 00:06:08.266 乗り越えられる 望遠鏡を建造することができます 00:06:08.290 --> 00:06:11.626 お見せしているのは マーチソン電波天文台の写真です 00:06:11.650 --> 00:06:14.426 ここは電波望遠鏡を設置するのに 最適の場所です 00:06:14.450 --> 00:06:16.746 平坦で乾燥しており 00:06:16.770 --> 00:06:19.746 そして 最も大切なことですが 電波が飛び交っていないことです 00:06:19.770 --> 00:06:22.866 携帯電話も Wi-Fiも 何もありません 00:06:22.890 --> 00:06:25.386 電波という意味で とても静かな場所であり 00:06:25.410 --> 00:06:28.130 電波望遠鏡を設置するには 完ぺきな場所です 00:06:29.010 --> 00:06:30.966 私がこの数年間 研究で用いてきた望遠鏡は 00:06:30.990 --> 00:06:33.826 マーチソン・ワイドフィールド・アレイ (MWA)と言います 00:06:33.850 --> 00:06:36.866 その建造の過程を 少しお見せしましょう 00:06:36.890 --> 00:06:40.170 これは パース在住の 学部生と修士課程の学生によるチームで 00:06:40.170 --> 00:06:41.426 これは パース在住の 学部生と修士課程の学生によるチームで 00:06:41.450 --> 00:06:43.043 我々は「学生部隊」と呼んでいます 00:06:43.067 --> 00:06:45.884 電波望遠鏡を作るために ボランティアで作業しています 00:06:45.908 --> 00:06:47.548 履修単位はありません 00:06:48.300 --> 00:06:51.196 彼らはダイポールアンテナを 組み立てています 00:06:51.220 --> 00:06:56.180 これはFMラジオやテレビのように 低周波の電波だけを受信します 00:06:56.980 --> 00:07:00.076 これを砂漠に展開しています 00:07:00.100 --> 00:07:02.516 最終的には 西豪州にある砂漠の 00:07:02.540 --> 00:07:04.676 10平方キロを覆っています 00:07:04.700 --> 00:07:07.618 興味深いことに 動く部品はありません 00:07:07.642 --> 00:07:09.899 これらの小さなアンテナを 鳥かごのネットのように 00:07:09.923 --> 00:07:11.780 メッシュ状に展開しているだけです 00:07:11.804 --> 00:07:13.276 かなり安価に作れます 00:07:13.300 --> 00:07:15.276 ケーブルは 00:07:15.300 --> 00:07:16.935 アンテナから信号を受け取り 00:07:16.959 --> 00:07:19.516 中央処理装置へと送ります 00:07:19.540 --> 00:07:21.316 望遠鏡の大きさと言えば 00:07:21.340 --> 00:07:23.996 展開している砂漠全体の 大きさに相当し 00:07:24.020 --> 00:07:26.820 パークス電波望遠鏡よりも 高い分解能があります 00:07:27.460 --> 00:07:30.996 全てのケーブルは 1つの装置に接続され 00:07:31.020 --> 00:07:34.556 そこから ここパースにある スーパーコンピュータに信号が送られます 00:07:34.580 --> 00:07:35.876 ここで私の出番です 00:07:35.900 --> 00:07:37.051 (ため息) 00:07:37.075 --> 00:07:38.356 電波のデータです 00:07:38.380 --> 00:07:40.396 私は過去5年間 00:07:40.420 --> 00:07:43.276 非常に厄介ながらも とても興味深いデータと格闘していました 00:07:43.300 --> 00:07:45.276 かつて誰も扱ったことがない類の データでした 00:07:45.300 --> 00:07:47.436 データの較正に 長い時間を費やしました 00:07:47.460 --> 00:07:50.676 何百万時間という スーパーコンピュータのCPUタイムを消費し 00:07:50.700 --> 00:07:52.926 データに含まれる情報を 理解しようとしました 00:07:52.950 --> 00:07:54.101 このデータを用い 00:07:54.125 --> 00:07:58.148 南半球の天体全体の観測を 完成させました 00:07:58.172 --> 00:08:03.286 「銀河系・系外・全天MWA観測」 00:08:03.310 --> 00:08:04.825 私がGLEAMと名付けたものです 00:08:05.260 --> 00:08:07.155 マーチソンに行ったと 想像してください 00:08:07.179 --> 00:08:09.075 星の下で野宿し 00:08:09.099 --> 00:08:10.716 南の方の空を眺めます 00:08:10.740 --> 00:08:12.407 天の南極を見ると 00:08:12.431 --> 00:08:13.636 銀河が上っていきます 00:08:13.660 --> 00:08:16.276 ラジオや光を消していけば 00:08:16.300 --> 00:08:18.956 この様な観測ができるのです 00:08:18.980 --> 00:08:22.036 銀河面はもはや塵によって 光を失っていません 00:08:22.060 --> 00:08:24.369 シンクロトロン放射で輝き 00:08:24.393 --> 00:08:25.636 何千もの点が輝いて見える― 00:08:25.660 --> 00:08:28.956 我が銀河系に最も近い銀河である 大マゼラン雲は 00:08:28.980 --> 00:08:32.196 馴染み深い青白い色ではなく オレンジに見えます 00:08:32.220 --> 00:08:35.596 他にも多くのものが見えます もっと拡大してみましょう 00:08:35.620 --> 00:08:38.035 先にお見せした パークス電波望遠鏡による 00:08:38.059 --> 00:08:41.275 低解像度でモノクロの 銀河系中心部分の画像に戻り 00:08:41.275 --> 00:08:43.676 低解像度でモノクロの 銀河系中心部分の画像に戻り 00:08:43.700 --> 00:08:46.246 徐々にGLEAMの画像へと 移行していきます 00:08:46.270 --> 00:08:50.126 その解像度は100倍も向上し 00:08:50.150 --> 00:08:53.006 夜空をカラーで見ることができます 00:08:53.030 --> 00:08:54.366 自然の色であり 00:08:54.390 --> 00:08:57.366 フォルスカラー(合成した色) ではありません 00:08:57.390 --> 00:08:59.790 電波の真の色なのです 00:09:00.670 --> 00:09:03.486 最も低い周波数を赤で表現し 00:09:03.510 --> 00:09:05.126 最も高い周波数を青 00:09:05.150 --> 00:09:06.726 中間を緑にしています 00:09:06.750 --> 00:09:08.966 これで虹色のように表現できます 00:09:08.990 --> 00:09:10.846 単なるフォルスカラーではありません 00:09:10.870 --> 00:09:13.806 この画像の色は 宇宙で起きている物理的な過程を 00:09:13.830 --> 00:09:15.070 我々に伝えています 00:09:15.644 --> 00:09:18.106 例えばこの銀河面に沿って見てみると 00:09:18.130 --> 00:09:19.886 シンクロトロン放射で輝いていますが 00:09:19.910 --> 00:09:22.286 これは赤っぽいオレンジに見えます 00:09:22.310 --> 00:09:25.430 しかし もっと注意深く見ると 小さな青い点が見えます 00:09:25.990 --> 00:09:27.566 拡大してみると 00:09:27.590 --> 00:09:30.126 この青い点は とても明るい星の周りに輝く 00:09:30.150 --> 00:09:31.790 イオン化したプラズマと分かります 00:09:32.350 --> 00:09:35.126 ここでは 星が赤い光を遮っているため 00:09:35.150 --> 00:09:36.790 青く見えているのです 00:09:37.350 --> 00:09:40.016 ここから 我が銀河系における 星が誕生する領域について 00:09:40.040 --> 00:09:41.296 知ることができます 00:09:41.320 --> 00:09:42.936 こういったものは 直ぐに見つかります 00:09:42.960 --> 00:09:46.016 銀河系を観察すれば 色によって そこにあると分かります 00:09:46.040 --> 00:09:47.616 小さな石鹸の泡のような 00:09:47.640 --> 00:09:50.834 円形の像が 銀河面の周辺に見られます 00:09:50.858 --> 00:09:52.858 これは超新星の残骸です 00:09:53.580 --> 00:09:55.276 星が爆発を起こすと 00:09:55.300 --> 00:09:57.756 その外殻が飛び散り 00:09:57.780 --> 00:10:01.076 物質を集めながら 宇宙空間へと広がっていき 00:10:01.100 --> 00:10:03.060 小さな殻を形成します 00:10:03.780 --> 00:10:07.156 超新星の残骸の行方は 00:10:07.180 --> 00:10:09.260 天文学者にとって 長い間 謎となっていました 00:10:09.940 --> 00:10:14.276 我々が観測している シンクロトロン放射を生成するには 00:10:14.300 --> 00:10:16.956 放出する面に大量の高エネルギー電子が 存在するはずですが 00:10:16.980 --> 00:10:19.556 これは超新星の残骸によって 生成されたと考えられます 00:10:19.580 --> 00:10:21.356 しかし その量は多くはありません 00:10:21.380 --> 00:10:25.276 幸運なことに GLEAMは超新星の残骸を とても精度良く検出できます 00:10:26.160 --> 00:10:27.416 結構なことですね 00:10:27.440 --> 00:10:29.436 我々は宇宙のほんの一部を 探究したわけですが 00:10:29.460 --> 00:10:31.836 私はもっと深い宇宙 遠くまで探求したいと思いました 00:10:31.860 --> 00:10:34.116 銀河系の先まで探求したかったのです 00:10:34.140 --> 00:10:37.916 運よく 右上にとても興味深い天体が 写っています 00:10:37.940 --> 00:10:40.156 これは近くにある電波銀河 00:10:40.180 --> 00:10:41.420 ケンタウルス座Aです 00:10:41.860 --> 00:10:43.011 拡大してみると 00:10:43.035 --> 00:10:46.435 2本の巨大なプリューム(柱状のもの)が 宇宙空間へと突き出ているのが見えます 00:10:47.220 --> 00:10:50.116 2つのプリュームの間にある 中心部分に注目すると 00:10:50.140 --> 00:10:52.516 私たちの銀河系と似た銀河が見えます 00:10:52.540 --> 00:10:54.996 渦巻銀河で 塵吸収帯がある― 00:10:55.020 --> 00:10:56.636 普通の銀河です 00:10:56.660 --> 00:10:59.676 しかし このジェットは 電波でしか見ることができません 00:10:59.700 --> 00:11:02.876 可視光を見ているだけでは 銀河本体の数千倍もの大きさがあるのに 00:11:02.900 --> 00:11:05.940 その存在すら知ることがありません 00:11:06.500 --> 00:11:09.320 何が起きているのでしょう? ジェットを生成しているものは? 00:11:10.180 --> 00:11:13.716 どの銀河にもその中心には 超大質量ブラックホールが 00:11:13.740 --> 00:11:15.996 あることが知られています 00:11:16.020 --> 00:11:17.509 ブラックホールは見えませんが 00:11:18.060 --> 00:11:21.076 その周りを飛び交う光が 軌道を変える様子は見ることができます 00:11:21.100 --> 00:11:25.396 時に 星やガス雲が その軌道に入り込むと 00:11:25.420 --> 00:11:28.156 潮汐力により引き裂かれ 00:11:28.180 --> 00:11:30.660 降着円盤というものが形成されます 00:11:31.260 --> 00:11:34.476 降着円盤は 強力なX線を発し 00:11:34.500 --> 00:11:38.916 強力な磁場が 物質を光速に近い速さで 00:11:38.940 --> 00:11:40.660 宇宙空間に解き放ちます 00:11:41.053 --> 00:11:43.831 このジェットを 電波では見ることができ 00:11:43.855 --> 00:11:46.015 このように 我々の観測にかかります 00:11:46.660 --> 00:11:49.436 大変結構なことです 電波銀河を1つ見ることができました 00:11:49.460 --> 00:11:51.636 しかし 一番上の部分を見ると 00:11:51.660 --> 00:11:53.396 もう1つ電波銀河が見えるでしょう 00:11:53.420 --> 00:11:56.660 やや小さめですが 単に遠くにあるためです 00:11:57.148 --> 00:11:59.636 電波銀河が2つです 00:11:59.660 --> 00:12:01.334 電波銀河が見られるのは 良いことです 00:12:01.358 --> 00:12:03.095 では 他の点は何でしょうか? 00:12:03.119 --> 00:12:04.679 星でしょうか? 00:12:05.060 --> 00:12:06.276 いいえ 違います 00:12:06.300 --> 00:12:07.900 どれも 電波銀河なのです 00:12:08.550 --> 00:12:11.446 この画像に移っている 全ての点はどれも 00:12:11.470 --> 00:12:13.150 数百万光年から数十億光年離れた 00:12:13.174 --> 00:12:16.031 遠くにある銀河で 00:12:16.055 --> 00:12:18.726 その中心には 超大質量ブラックホールがあり 00:12:18.750 --> 00:12:22.190 物質を光速に近い速さで 宇宙空間へと押しやっています 00:12:22.214 --> 00:12:23.713 びっくりするようなことです 00:12:24.850 --> 00:12:28.586 この観測は 実は今までお見せしたよりも 広い範囲をカバーしています 00:12:28.610 --> 00:12:31.146 縮小して 観測範囲全体を見ると 00:12:31.170 --> 00:12:34.538 30万もの電波銀河があるのが 分かります 00:12:35.140 --> 00:12:37.244 最初に発見された 超巨大質量ブラックホールの 00:12:37.268 --> 00:12:40.828 背後にあるこれらの銀河全てを 我々は発見しました 00:12:41.680 --> 00:12:44.640 この画像にはさらに別の物も 隠れています 00:12:45.320 --> 00:12:47.716 皆さんを宇宙の始まりの時へと いざないましょう 00:12:47.740 --> 00:12:50.896 宇宙の誕生であるビッグバンの後 00:12:50.920 --> 00:12:54.816 宇宙は水素でいっぱいになりました 中性の水素です 00:12:54.840 --> 00:12:57.616 まさに最初の星と銀河が 形成されるようになると 00:12:57.640 --> 00:12:59.736 水素はイオン化されました 00:12:59.760 --> 00:13:03.200 中性だった宇宙は イオン化されたのです 00:13:04.080 --> 00:13:07.256 その名残は我々を取り巻く 電波に残されています 00:13:07.280 --> 00:13:09.016 どこにいても 力の作用と同じく 00:13:09.040 --> 00:13:10.465 私たちの体を透過していきます 00:13:10.489 --> 00:13:11.494 (笑) 00:13:11.518 --> 00:13:14.358 太古の昔の出来事なので 00:13:14.920 --> 00:13:16.720 信号は赤方偏移し 00:13:17.480 --> 00:13:20.776 今では非常に低い周波数の 信号となっています 00:13:20.800 --> 00:13:23.256 我々が観測するのと 同じ周波数領域にありますが 00:13:23.280 --> 00:13:24.656 極めて弱い信号です 00:13:24.680 --> 00:13:28.560 我々が観測する天体が発する信号の 10億分の1程度です 00:13:29.240 --> 00:13:33.866 我々の望遠鏡の感度は この信号を 捉えるのに十分ではないかもしれませんが 00:13:33.890 --> 00:13:36.386 新しい電波望遠鏡の登場です 00:13:36.410 --> 00:13:38.066 宇宙船には乗れませんが 00:13:38.090 --> 00:13:39.346 世界で最大級の電波望遠鏡を 00:13:39.370 --> 00:13:42.226 使ってみたいと思います 00:13:42.250 --> 00:13:45.866 我々は新しい電波望遠鏡「スクエア・ キロメートル・アレイ」を建造中です 00:13:45.890 --> 00:13:48.626 MWAよりも1千倍大型で 00:13:48.650 --> 00:13:51.866 感度も1千倍高く 解像度はそれ以上です 00:13:51.890 --> 00:13:54.106 何千万もの銀河が見つかるに 違いありません 00:13:54.130 --> 00:13:56.466 おそらく その信号の中から 00:13:56.490 --> 00:14:00.666 宇宙に初めて誕生した星や銀河を 見ることができるでしょう 00:14:00.690 --> 00:14:03.050 宇宙がまさに 時を刻み始めた時のことです 00:14:03.514 --> 00:14:04.665 有難うございました 00:14:04.689 --> 00:14:11.689 (拍手)