マーク・ブラウンのGame Maker's Toolkitへようこそ
今回もゲームデザインについて語っていく
2015年のゲーム業界はリマスターとリメイクだらけ
様々なゲームがリサイクルされた
セインツロウ4、バイオハザード、ムジュラの仮面、
ボーダーランズ、DMC4とDmC、
そしてレア社のほぼ全作品、
風ノ旅ビト、ゴッドオブウォー3、ダクソ2、FF零式、
FF10、FF10-2、アンチャーテッド1~3、
ダークサイダーズ2、Tearaway、Dishonored、
ギアーズ、ゼノブレイド……
こうしたリサイクルは必ずしも悪いことではないが
これほど多くのスタジオが
過去にしがみついている中で
新しいことに挑戦するのは困難に思える
だがそれは杞憂だった
過去の動画で紹介したように
Nova-111はリアルタイム戦闘とターン制を
上手に組み合わせたし
The Swindleのタイムリミット制は
プレイヤーを見事に焦らせる
Grow Homeの自由度あふれる山登りも、
自動生成でミステリーを語るWesteradoも
今年の作品だ
だがそれ以外のゲームにも
優れたデザインやアイデアを認めることができる
今回は5つの実例を挙げてみたい
まずはブラッドボーンだ
ソウルシリーズ特有の難易度とダークさをそのままに
過去作の洗練された戦闘システムに
もう一捻り加えられている
今作でフロム・ソフトウェアは
盾を弱体化し
さらに「リゲインシステム」を導入することで
アグレッシヴな戦闘を促している
このシステムでは攻撃を食らうと
通常通りHPが削られるが
すぐに反撃することによってある程度HPを
回復することができる
かくてプレイヤーは木の板に隠れたり
逃げまわってポーションをがぶ飲みする代わりに
積極的な攻撃を仕掛けることになる
もちろんそこには、拙速な行動によって
即死するリスクが潜んでいる
ソウルシリーズのディレクターを勤める宮崎英高は
体力ではなく、戦い続けようとする精神力こそが
HPの意味するものだと考えているそうだ
つまり攻撃を受けると絶望的な気分になるが
反撃することによって
いくらかの希望が湧いてくるのである
MGS5のフルトン回収システムは
PSPのピースウォーカーで既に登場していたが
その醍醐味はファントムペインで
明確になった
この機能では睡眠/気絶/投降状態にある
全ての敵兵を小型バルーンに括りつけ
空の彼方へ打ち上げることによって
マザーベースに送ることができる
動物や乗り物も回収できるが
ゲームデザインの観点からは
敵兵の回収がもっとも興味深い
ステルスゲームの製作者たちは、敵NPCを
殺さないことの動機作りに苦労してきた
死んでいない敵は起き上がりかねないので
不殺を貫くとゲームプレイ上はデメリットしかない
したがって実績やアンロックを狙う場合以外は
消音ピストルで敵の頭に鉛玉をブチ込むのが
簡単な解決策だった
しかしMGS5では、能力の高い兵士は
マザーベースで便利に使えるので
殺さずに他の兵士から隔離し
空に打ち上げるのが有効な戦術になってくる
ゴミ性能のゴミ兵士を殺すことの実害は依然ないが
このシステムがある以上皆殺しは賢い選択ではない
スプラトゥーン最大の長所は
ステージをカラフルに塗りつぶせるところではなく
イカとして潜ったり飛び回ったりすることでもない
この2つが両方とも最大の長所であり
より正確に言えば、両者が完璧に噛み合って
機能していることが重要なのである
色を塗ることによって潜るための道を作り、
潜ることによって塗料をタンクに貯め、
貯まった塗料で道を作り、
その道に潜って塗料を貯め……
まあもう充分お分かりだろう
近年は一つの作品に複数のシステムが
導入されているのが普通だが、
このように2つの異なるシステムが
お互い共生関係にあるのは極めて珍しい
射撃と水泳が別個に存在しているのではなく
単独ではどちらも成立しえないのである
本作の全ての局面で、プレイヤーはこの2つの
システムを往復する必要がある
それは歯ごたえがあり、楽しい
単にCoDの銃弾を塗料に置き換えて
撃ち合いをするだけのゲームだったら
ここまで面白い作品にはならなかったはずだ
チェックポイントがゲームの緊張感を左右する
ことについても過去の動画で確認した
コンソール版Far Cry 2はその間隔がきわめて広く
30分間セーブしていない状態で銃撃戦に入って
絶望に暮れることは珍しくない
しかしあまりにも頻繁にセーブされると
プリンスオブペルシャ(2008)のようなゲームになる
オリとくらやみの森では、チェックポイントの間隔を
プレイヤーの判断で決めることができる
決められたオートセーブポイントの他に、
エナジーセルを消費することによって
「ソウルリンク」と呼ばれる即席チェックポイントを
作ることができる
セーブ頻度の裁量はプレイヤー次第であり
落ち着くたびに毎回セーブするのか
あるいは難所にセーブ無しで挑むのかという
自由が与えられる
だがこれはPCゲームでのクイックセーブの濫用とは
根本的に異なっている
エナジーセルの数は限られているので
ソウルリンクの使い所には注意しなければならない
また、エナジーセルは強力な攻撃を繰り出すために
必要なリソースでもあるため
使いみちの優先度も気にする必要がある
このシステムはセーブという行為に戦略性を与え
攻略の一つの要素に昇華させている
全てのアクションゲームに適合するものではないが
進行状況の保存というコマンドに
こうした味付けができることを
デザイナーは知っておくべきだろう
最後はライフイズストレンジ
殺人やいじめ、自殺や家庭内暴力を扱った
暗いゲームだ
「座る」というコマンドの存在は
こうしたゲームだからこそ重要になってくる
主人公のマックスが腰掛けてしばらくぼうっとする
地点が全エピソードに用意されているのだ
彼女は考え事をしたり、我が身に降りかかってきた
さまざまな事態について整理したりする
「めちゃくちゃでふざけたことばかり起こったけど、
クロエとまた遊べるのは最高の気分だ」
そこに素晴らしいBGMが加わり、
カメラはゆったりと揺れながら
そのアングルを変化させてゆく
マックスを過酷な物語に引き戻すタイミングは
プレイヤーに委ねられている
緊張感に満ちた叙情性を特徴とする本作において
このシステムは実に重要と言える
安息のチャンスがプレイヤーに与えられ
物語上の意味も持っている
しかし本作とは別ジャンルのゲームにおいても
この演出は意義深い
ずっと激しいアクションが続くのは疲れるので
優秀な開発者はこうしたひとときを用意している
疲れたプレイヤーはゲームを中断してしまうからだ
つまりこれはプレイヤーをゲームから
離さないためのテクニックでもある
以上が2015年の優れたゲームデザイン5選だ
今月末の動画で、素晴らしいデザインをあと一つ
紹介するので楽しみにしていてほしい
ひとまず視聴ありがとう
視聴者の皆も今年気に入ったゲームデザインを
コメント欄で紹介してほしい
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