WEBVTT 00:00:00.667 --> 00:00:04.143 私達はぎっちり詰まった固い地面に 立っているようでいて 00:00:04.143 --> 00:00:05.570 実は違います 00:00:05.753 --> 00:00:08.284 私達の足の下の 岩や土の中には 00:00:08.284 --> 00:00:11.573 小さな割れ目や隙間が 縦横に走っていて 00:00:11.597 --> 00:00:16.500 その隙間は膨大な量の こういう微生物によって 00:00:16.500 --> 00:00:18.047 満たされています 00:00:18.866 --> 00:00:22.183 最も深いところで 見つかった微生物は 00:00:22.183 --> 00:00:24.141 5キロの深さにいました 00:00:24.165 --> 00:00:28.401 真下に向けて 地中をかけていくとしたら 00:00:28.401 --> 00:00:30.534 5キロ走をしている間ずっと 00:00:30.534 --> 00:00:32.729 まわりに微生物がいるのです NOTE Paragraph 00:00:32.874 --> 00:00:35.072 地面のそんな深くまで 微生物がいるとは 00:00:35.072 --> 00:00:37.056 思わなかった かもしれませんが 00:00:37.056 --> 00:00:40.032 腸の中に微生物が 棲んでいるのはご存じでしょう 00:00:40.032 --> 00:00:45.144 地球上のすべての動物の 腸内細菌を集めたら 00:00:45.144 --> 00:00:48.831 その重さは 10万トンにもなります 00:00:48.831 --> 00:00:53.584 巨大な生物群系をお腹に抱えて 私達は生きているのです 00:00:53.807 --> 00:00:55.574 誇りにすべきでしょう NOTE Paragraph 00:00:55.574 --> 00:00:56.574 (笑) NOTE Paragraph 00:00:56.574 --> 00:01:00.534 でも地表の 土壌や河川や海洋を覆う 00:01:00.534 --> 00:01:02.979 微生物の量に比べれば 00:01:02.979 --> 00:01:05.648 大したものではなく 00:01:05.648 --> 00:01:09.941 その総重量は 20億トンにもなります 00:01:10.174 --> 00:01:12.770 でも実は地球上の 微生物の大部分は 00:01:12.794 --> 00:01:16.571 海洋や腸や下水処理場に いるわけではありません 00:01:16.595 --> 00:01:19.372 ほとんどは地中にいるのです 00:01:19.396 --> 00:01:23.515 その総重量は400億トンです 00:01:23.754 --> 00:01:27.039 これは地球上でも 特に大きな生物群系ですが 00:01:27.039 --> 00:01:30.935 ほんの数十年前まで その存在は知られていませんでした 00:01:30.935 --> 00:01:33.542 その生態がどのようなもので 00:01:33.566 --> 00:01:36.111 人間にどう役立ちうるか 00:01:36.135 --> 00:01:38.295 限りない可能性があります NOTE Paragraph 00:01:38.367 --> 00:01:40.239 赤い点で示したのは 00:01:40.263 --> 00:01:42.465 現代的な微生物学手法によって 00:01:42.465 --> 00:01:45.347 地下深くのサンプルが よく得られている地点で 00:01:45.347 --> 00:01:47.220 世界各地が 網羅されていると 00:01:47.220 --> 00:01:48.868 感心するかもしれませんが 00:01:48.868 --> 00:01:51.649 これらの場所の サンプルしかないと考えると 00:01:51.649 --> 00:01:54.164 ちょっと寂しい感じがします 00:01:54.164 --> 00:01:56.773 私達が宇宙船でやって来た 異星人だったとして 00:01:56.773 --> 00:02:00.006 これらのサンプルだけで 地球の地図を作ろうとするのは 00:02:00.030 --> 00:02:02.352 無理な話でしょう NOTE Paragraph 00:02:03.218 --> 00:02:05.519 でもこんな風に言う人もいます 00:02:05.543 --> 00:02:08.963 「地中に微生物がたくさんいても 00:02:08.963 --> 00:02:11.263 休眠状態なんじゃないの?」 00:02:11.710 --> 00:02:13.227 良い指摘です 00:02:13.251 --> 00:02:18.101 イチジクの木や 麻疹ウイルスや 娘のモルモットなんかに比べたら 00:02:18.125 --> 00:02:21.156 そういう微生物はあんまり 活動していないと言えるでしょう 00:02:21.180 --> 00:02:25.006 あれだけ膨大な量がいるわけですから その活動はゆっくりなはずです 00:02:25.030 --> 00:02:27.990 もし大腸菌並のスピードで 分裂を始めたとしたら 00:02:27.990 --> 00:02:31.055 岩石も含めた地球の重さが 00:02:31.055 --> 00:02:33.111 一夜にして 2倍になってしまいます 00:02:33.111 --> 00:02:36.503 その多くは おそらく 古代エジプト時代から 00:02:36.503 --> 00:02:40.026 細胞分裂を一度も していないことでしょう 00:02:40.180 --> 00:02:41.880 途方もない話です 00:02:41.880 --> 00:02:47.242 そんなに長生きなものというのは 想像もできない感じですが NOTE Paragraph 00:02:47.266 --> 00:02:50.314 いい喩えを思い付きました 00:02:50.314 --> 00:02:52.255 ちょっと奇妙で 複雑なんですが 00:02:52.279 --> 00:02:54.450 付いて来ていただきたいです 00:02:54.474 --> 00:02:56.130 やってみましょう 00:02:56.159 --> 00:02:58.072 それは1日しか 生きられない者が 00:02:58.072 --> 00:03:01.117 木のライフサイクルを 理解しようとするようなものです 00:03:01.141 --> 00:03:05.436 人の寿命が1日で 冬に生きているとします 00:03:05.436 --> 00:03:07.881 すると葉を持った木を 見ることなく 00:03:07.881 --> 00:03:09.768 生涯を過ごすことになります 00:03:09.792 --> 00:03:13.895 一冬の間に 幾世代も移り変わり 00:03:13.919 --> 00:03:16.139 歴史書を見ても 00:03:16.139 --> 00:03:20.065 木は何もしない 生気のない棒きれとしか 00:03:20.065 --> 00:03:21.696 書かれていません 00:03:21.720 --> 00:03:23.243 これは馬鹿げた見方です 00:03:23.243 --> 00:03:25.663 木は再び活動を始める 夏を待っているのだと 00:03:25.663 --> 00:03:26.926 私達は知っています 00:03:26.950 --> 00:03:29.415 でも人間の寿命が木の寿命より 00:03:29.415 --> 00:03:32.042 はるかに短かったとしたら 00:03:32.042 --> 00:03:36.547 この当たり前の事実に 気付かずにいるかもしれないのです NOTE Paragraph 00:03:36.879 --> 00:03:41.807 あの地下深くにいる微生物が 休眠中だと言うのは 00:03:41.831 --> 00:03:46.593 1日で死んでしまう人間が 木を理解しようとするようなものかもしれません 00:03:46.601 --> 00:03:48.395 地下深くにいる微生物は 00:03:48.395 --> 00:03:50.932 夏に相当するものを 待っているのに 00:03:50.932 --> 00:03:54.593 私達の寿命が それを見るには 短すぎるのだとしたら? 00:03:54.784 --> 00:03:56.478 大腸菌を 00:03:56.478 --> 00:03:59.690 食べ物も栄養もなしで 試験管の中に密封し 00:03:59.714 --> 00:04:02.182 何ヶ月も何年も放っておくと 00:04:02.206 --> 00:04:05.222 その多くは 飢えて死にますが 00:04:05.246 --> 00:04:07.552 一部生き残るものもいます 00:04:07.576 --> 00:04:09.766 そういう生き残ったものを 00:04:09.790 --> 00:04:12.657 また飢餓状況に置いて 00:04:12.681 --> 00:04:15.855 新たな急成長する 大腸菌と生存競争させると 00:04:15.879 --> 00:04:18.208 毎回 タフな年寄り連中が 00:04:18.208 --> 00:04:20.966 ピカピカの新米たちに 打ち勝ちます 00:04:21.339 --> 00:04:25.942 極めてゆっくりであることに 進化上の利点があることを 00:04:25.966 --> 00:04:28.180 これは示しています 00:04:28.736 --> 00:04:30.625 ゆっくりだからと言って 00:04:30.649 --> 00:04:37.389 重要でないと決めつける べきではないでしょう 00:04:38.402 --> 00:04:41.084 この目に付かず 気にもとめられない微生物が 00:04:41.108 --> 00:04:43.695 人類の役に立つ かもしれないんです NOTE Paragraph 00:04:44.125 --> 00:04:45.407 地下生活には 00:04:45.431 --> 00:04:47.937 私達に分かる限りで 2つのやり方があります 00:04:47.937 --> 00:04:51.513 1つは地表の世界から降りてくる 食べ物を持つというもの 00:04:51.537 --> 00:04:56.045 千年前に起こったピクニックの 食べ残しを食べようとするというような 00:04:56.069 --> 00:04:58.093 まったくおかしな生き方ですが 00:04:58.117 --> 00:05:01.755 地球上の多くの微生物が そんな風に生きているようなのです 00:05:01.755 --> 00:05:03.633 もう1つの可能性は 00:05:03.633 --> 00:05:09.095 「地上世界なんて必要ないよ ここだけでやっていける」というものです 00:05:09.119 --> 00:05:11.001 そういう道を行く微生物は 00:05:11.001 --> 00:05:14.012 生存に必要なものをすべて 00:05:14.012 --> 00:05:16.889 地中から得る 必要があります 00:05:18.205 --> 00:05:20.661 中にはむしろ 得やすいものもあります 00:05:20.685 --> 00:05:22.553 地中の方が豊かにあるもの 00:05:22.577 --> 00:05:26.395 窒素や鉄や硫黄のような栄養分とか 水とか 00:05:26.419 --> 00:05:27.592 生きる場所とか 00:05:27.616 --> 00:05:29.280 地上の世界では 00:05:29.280 --> 00:05:32.014 手に入れるために 殺し合いにもなりうるものです NOTE Paragraph 00:05:32.038 --> 00:05:35.859 地中の世界で獲得が問題になるのは エネルギーです 00:05:36.101 --> 00:05:37.291 地上では植物が 00:05:37.315 --> 00:05:40.567 太陽の光が 葉に当たるやいなや 00:05:40.567 --> 00:05:44.403 二酸化炭素分子を編み合わせて おいしい糖を作り出せます 00:05:44.427 --> 00:05:46.955 でも地中に太陽光はなく 00:05:46.979 --> 00:05:48.937 地下の生態系では 00:05:48.937 --> 00:05:53.162 誰がみんなの食事を作るのかという問題を 解決する必要があります 00:05:53.416 --> 00:05:54.865 地下では 00:05:54.865 --> 00:05:59.102 岩を呼吸する植物のようなものが 必要になります 00:05:59.641 --> 00:06:02.670 さいわいに そのようなものは存在し 00:06:02.670 --> 00:06:05.444 「化学合成無機栄養生物」と 呼ばれています NOTE Paragraph 00:06:05.444 --> 00:06:06.156 (笑) NOTE Paragraph 00:06:06.180 --> 00:06:10.172 これは「化学合成」をすることで 00:06:10.172 --> 00:06:12.482 「無機」物の岩から 00:06:12.482 --> 00:06:15.244 「栄養」を得る「生物」です 00:06:15.268 --> 00:06:17.926 それを様々な 元素に対し行えます 00:06:17.950 --> 00:06:21.783 硫黄 鉄 マンガン 窒素 炭素 00:06:21.807 --> 00:06:25.387 電子を直接 扱えるものまでいます 00:06:25.530 --> 00:06:27.706 電気コードを切って 00:06:27.706 --> 00:06:30.115 シュノーケルみたいに 吸うようなものです NOTE Paragraph 00:06:30.115 --> 00:06:31.185 (笑) NOTE Paragraph 00:06:31.185 --> 00:06:33.196 化学合成無機栄養生物は 00:06:33.196 --> 00:06:35.475 その過程で得た エネルギーを使い 00:06:35.475 --> 00:06:37.831 植物のように 食べ物を作るのです 00:06:37.855 --> 00:06:40.808 でも植物は食べ物を 作るだけではありません 00:06:41.103 --> 00:06:43.419 排出物として酸素を作り 00:06:43.443 --> 00:06:46.031 私達動物は それに依存しています 00:06:46.031 --> 00:06:49.277 化学合成無機栄養生物が 生成する廃棄物は 00:06:49.301 --> 00:06:51.518 よく鉱物の形を取ります 00:06:51.518 --> 00:06:55.871 錆とか 「愚者の黄金」の黄鉄鉱とか 00:06:55.895 --> 00:06:58.185 石灰岩のような炭酸塩とか 00:06:59.020 --> 00:07:05.843 ですから 岩のようにすごく ゆっくりした微生物がいて 00:07:06.243 --> 00:07:09.649 岩からエネルギーを得て 00:07:09.673 --> 00:07:13.320 排出物として別の岩を 作っているわけです 00:07:13.320 --> 00:07:17.479 これは生物学の話なのか それとも地質学の話なのか? 00:07:17.479 --> 00:07:19.789 これのおかげで 話がややこしくなります NOTE Paragraph 00:07:19.789 --> 00:07:20.637 (笑) NOTE Paragraph 00:07:20.661 --> 00:07:22.807 これについて調べるんだったら 00:07:22.831 --> 00:07:28.378 岩のように振る舞う微生物を 研究する生物学者になって 00:07:28.402 --> 00:07:31.776 地質学から取り組み始める べきかと思います 00:07:31.800 --> 00:07:35.240 では 地質学で一番イカしてるのは 何でしょう? 00:07:35.252 --> 00:07:36.460 火山です NOTE Paragraph 00:07:36.484 --> 00:07:37.735 (笑) NOTE Paragraph 00:07:37.759 --> 00:07:41.890 これはコスタリカにある ポアス火山の内側を撮したものです 00:07:41.890 --> 00:07:43.716 火山の多くは 00:07:43.716 --> 00:07:47.466 海洋プレートが大陸プレートに ぶつかることでできます 00:07:47.470 --> 00:07:51.646 海洋プレートが 大陸プレートの下に沈み込むとき 00:07:51.646 --> 00:07:53.761 濡れタオルを 絞ったときのように 00:07:53.761 --> 00:07:56.126 水や二酸化炭素 その他の物質が 00:07:56.126 --> 00:07:57.946 絞り出されます 00:07:58.382 --> 00:08:02.064 沈み込み帯は地球深部への 入り口のようなもので 00:08:02.088 --> 00:08:05.849 地表と地下の世界の間を 物質が行き来します NOTE Paragraph 00:08:05.873 --> 00:08:08.901 最近コスタリカの研究者から 00:08:08.925 --> 00:08:12.028 一緒に火山の調査をしようと 招待されて 00:08:12.052 --> 00:08:16.650 もちろん応じました コスタリカは素敵なところだし 00:08:16.674 --> 00:08:20.164 沈み込み帯の上に 位置していますから 00:08:20.478 --> 00:08:23.272 私達には知りたいことがありました 00:08:23.296 --> 00:08:25.684 深く埋もれた 海洋プレートからの 00:08:25.708 --> 00:08:28.684 二酸化炭素が 出てくるのは 00:08:28.708 --> 00:08:30.815 火山からだけで 00:08:30.839 --> 00:08:34.133 沈み込み帯全体に 分散していないのはなぜか? 00:08:34.157 --> 00:08:36.640 微生物はそれに何か 関わりがあるのか? NOTE Paragraph 00:08:36.664 --> 00:08:39.961 この写真は ポアス火山の中にいる 00:08:39.961 --> 00:08:42.495 私と共同研究者の ドナト・ジョヴァネッリです 00:08:42.519 --> 00:08:46.121 私達の脇にある湖は バッテリー液並の酸です 00:08:46.145 --> 00:08:50.177 この写真を撮ったときに pHを測ったので分かります 00:08:50.362 --> 00:08:52.737 火口内で調査していて 00:08:52.737 --> 00:08:57.550 ふとコスタリカの研究者 カルロス・ラミレスに聞いてみました 00:08:57.550 --> 00:09:03.154 「これが今噴火し始めたら どうすればいいのかしら?」 00:09:03.269 --> 00:09:06.412 彼は「良い質問だね 簡単さ 00:09:06.436 --> 00:09:09.514 振り向いて 眺めを楽しめばいい」 NOTE Paragraph 00:09:09.538 --> 00:09:10.831 (笑) NOTE Paragraph 00:09:10.855 --> 00:09:12.762 「それが最後の眺めになるから」 NOTE Paragraph 00:09:12.762 --> 00:09:13.561 (笑) NOTE Paragraph 00:09:13.585 --> 00:09:17.030 ちょっと大袈裟に 聞こえるかもしれませんが 00:09:17.054 --> 00:09:21.521 私があの湖の脇にいた54日後に 00:09:21.521 --> 00:09:23.252 こんなことがありました NOTE Paragraph 00:09:23.276 --> 00:09:24.434 (聴衆から驚きの声) NOTE Paragraph 00:09:25.204 --> 00:09:26.854 びびりますよね? NOTE Paragraph 00:09:26.878 --> 00:09:28.028 (笑) NOTE Paragraph 00:09:28.934 --> 00:09:33.287 この火山では六十何年ぶりかの 大きな噴火で 00:09:33.311 --> 00:09:35.795 この映像のしばらく後に 00:09:35.819 --> 00:09:38.462 撮影していた カメラが吹き飛び 00:09:38.486 --> 00:09:40.906 私達がサンプルを 取っていた湖は 00:09:40.930 --> 00:09:42.800 すっかり蒸発しました 00:09:42.815 --> 00:09:44.607 ただ私達が火山の 中にいた日には 00:09:44.607 --> 00:09:47.015 こういうことが 起きないだろうことは 00:09:47.015 --> 00:09:48.922 かなり確信がありました 00:09:48.922 --> 00:09:51.329 コスタリカ火山・地震観測所 (OVSICORI) が 00:09:51.329 --> 00:09:53.792 注意深く火山活動を 監視していて 00:09:53.792 --> 00:09:56.892 その組織の科学者も あの日は同行していたからです 00:09:56.916 --> 00:09:58.810 この火山の噴火は 00:09:58.810 --> 00:10:04.426 海洋プレートからの二酸化炭素が 出てくるところを見たければ 00:10:04.450 --> 00:10:07.553 火山を見ればよいことを 示しているようですが NOTE Paragraph 00:10:07.577 --> 00:10:09.846 コスタリカに行くと 00:10:09.870 --> 00:10:12.610 火山の他にも 気持ちの良い小さな温泉が 00:10:12.610 --> 00:10:15.888 そこらじゅうにあることに 気付きます 00:10:16.069 --> 00:10:18.153 温泉の水の一部は 00:10:18.153 --> 00:10:21.664 深く埋もれた海洋プレートから 沸き上がってきたものです 00:10:21.688 --> 00:10:23.138 私達の仮説では 00:10:23.138 --> 00:10:26.397 二酸化炭素も一緒に 出てきているはずだけど 00:10:26.397 --> 00:10:29.662 地中深くの何かが それを取り除いているんです NOTE Paragraph 00:10:29.662 --> 00:10:33.799 それで私達は2週間 コスタリカ中を車で回って 00:10:33.823 --> 00:10:36.634 見付けた温泉すべてから サンプルを取りました 00:10:36.634 --> 00:10:38.418 すごく大変でした 00:10:38.442 --> 00:10:44.038 その後の2年間を 測定とデータ分析に費やしました 00:10:44.038 --> 00:10:46.615 科学者でない人のために 言いますと 00:10:46.615 --> 00:10:48.562 大きな発見というのは 00:10:48.562 --> 00:10:51.597 素敵な温泉や舞台の上にいるときに 起きるものではありません 00:10:51.597 --> 00:10:54.154 ごちゃごちゃした コンピューター画面と睨めっこし 00:10:54.154 --> 00:10:56.715 難しい装置に取り組み 00:10:56.715 --> 00:10:58.567 データに訳が分からなくなって 00:10:58.567 --> 00:11:01.212 スカイプで同僚に相談する中で 生まれるものです 00:11:01.236 --> 00:11:02.991 科学的発見というのも 00:11:02.991 --> 00:11:06.729 地中深くの微生物みたいに すごくゆっくりとしたものなんです NOTE Paragraph 00:11:07.267 --> 00:11:10.616 でも今回は それが報われました 00:11:10.640 --> 00:11:13.862 深く埋もれた 海洋プレートから 00:11:13.862 --> 00:11:18.125 膨大な二酸化炭素が出てきていることを 発見したんです 00:11:18.149 --> 00:11:20.768 そして その二酸化炭素が 大気に放出されるのを抑え 00:11:20.768 --> 00:11:23.441 地中に保持しているのが 00:11:23.441 --> 00:11:25.271 地下深いところ 00:11:25.271 --> 00:11:29.053 コスタリカのかわいい ナマケモノやオオハシたちの下にいる 00:11:29.053 --> 00:11:31.343 化学合成無機栄養生物なんです 00:11:31.343 --> 00:11:34.753 この微生物の周囲で起きる 化学的な過程によって 00:11:34.753 --> 00:11:37.489 二酸化炭素が 炭酸塩鉱物に変わり 00:11:37.489 --> 00:11:39.657 地下に閉じ込められて いるのです NOTE Paragraph 00:11:39.657 --> 00:11:41.885 そこで疑問が生じます 00:11:41.909 --> 00:11:44.174 地下で起きるその過程が 00:11:44.174 --> 00:11:47.909 下から来る二酸化炭素の吸収に そんなに優れているなら 00:11:47.909 --> 00:11:50.849 地表で私達が抱えている 二酸化炭素の問題も 00:11:50.849 --> 00:11:53.038 それでどうにか できないか? 00:11:53.038 --> 00:11:57.145 人類が大気に放出する 膨大な二酸化炭素によって 00:11:57.145 --> 00:12:00.303 今いる生物を支える 地球の力が 00:12:00.303 --> 00:12:02.713 損なわれつつあります 00:12:02.713 --> 00:12:05.306 二酸化炭素が 大気に放出されないよう 00:12:05.306 --> 00:12:08.258 根源で二酸化炭素を 取り除く方法を開発しようと 00:12:08.258 --> 00:12:11.037 科学者や技術者や 起業家が取り組んでいます 00:12:11.037 --> 00:12:13.198 取り除いた二酸化炭素を どうにかする必要があります 00:12:13.198 --> 00:12:14.379 そのため 00:12:14.379 --> 00:12:17.365 地中にある炭素が 保持されている場所の 00:12:17.365 --> 00:12:19.879 研究を続ける 必要があります 00:12:19.903 --> 00:12:22.390 そこで炭素が どうなるか知るために NOTE Paragraph 00:12:22.390 --> 00:12:25.211 地下深くの微生物は 何かを保持させるには 00:12:25.211 --> 00:12:27.836 ゆっくりすぎて 問題かもしれないし 00:12:27.836 --> 00:12:31.664 あるいは微生物が二酸化炭素を 固体の鉱物に変えるのに 00:12:31.664 --> 00:12:33.688 役立つかもしれません 00:12:33.712 --> 00:12:36.132 私達がコスタリカでした 1つの研究から 00:12:36.156 --> 00:12:38.742 そのような大きな進歩が 起きうるのだとしたら 00:12:38.742 --> 00:12:41.963 他にどんな発見が地下で待ち受けているか 考えてみてください NOTE Paragraph 00:12:41.963 --> 00:12:47.556 この地質・生物・化学の新分野 地下深くの生物学は 00:12:47.580 --> 00:12:49.121 それを何と呼ぶにせよ 00:12:49.145 --> 00:12:50.982 大きな影響を もたらすことでしょう 00:12:51.006 --> 00:12:53.379 気候変動を緩和するだけでなく 00:12:53.403 --> 00:12:57.595 生命と地球がどう 共進化してきたかの理解や 00:12:57.613 --> 00:13:02.311 工業や医学への応用に 役立つものの発見 00:13:02.335 --> 00:13:04.597 地震の予知や 00:13:04.621 --> 00:13:06.819 地球外生命の発見 00:13:06.843 --> 00:13:10.559 生命の起原の理解にも 繋がるかもしれません NOTE Paragraph 00:13:10.827 --> 00:13:13.972 さいわい 私が1人でやる 必要はありません 00:13:13.972 --> 00:13:17.287 世界中に素晴らしい 研究者がいて 00:13:17.311 --> 00:13:20.993 地下深くの世界の 謎の解明に挑んでいます 00:13:21.831 --> 00:13:26.525 地下深くに埋もれた 生物なんて 00:13:26.525 --> 00:13:31.299 日常生活からは遠く隔たっていて 無関係だと思うかもしれませんが 00:13:31.299 --> 00:13:35.051 この奇妙で ゆっくりした生物は 00:13:35.075 --> 00:13:38.504 地球の生命の 大いなる謎への答えを 00:13:38.504 --> 00:13:40.175 持っているかも しれないのです NOTE Paragraph 00:13:40.175 --> 00:13:41.516 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:13:41.516 --> 00:13:46.444 (拍手)