1 00:00:00,667 --> 00:00:04,143 私達はぎっちり詰まった固い地面に 立っているようでいて 2 00:00:04,143 --> 00:00:05,570 実は違います 3 00:00:05,753 --> 00:00:08,284 私達の足の下の 岩や土の中には 4 00:00:08,284 --> 00:00:11,573 小さな割れ目や隙間が 縦横に走っていて 5 00:00:11,597 --> 00:00:16,500 その隙間は膨大な量の こういう微生物によって 6 00:00:16,500 --> 00:00:18,047 満たされています 7 00:00:18,866 --> 00:00:22,183 最も深いところで 見つかった微生物は 8 00:00:22,183 --> 00:00:24,141 5キロの深さにいました 9 00:00:24,165 --> 00:00:28,401 真下に向けて 地中をかけていくとしたら 10 00:00:28,401 --> 00:00:30,534 5キロ走をしている間ずっと 11 00:00:30,534 --> 00:00:32,729 まわりに微生物がいるのです 12 00:00:32,874 --> 00:00:35,072 地面のそんな深くまで 微生物がいるとは 13 00:00:35,072 --> 00:00:37,056 思わなかった かもしれませんが 14 00:00:37,056 --> 00:00:40,032 腸の中に微生物が 棲んでいるのはご存じでしょう 15 00:00:40,032 --> 00:00:45,144 地球上のすべての動物の 腸内細菌を集めたら 16 00:00:45,144 --> 00:00:48,831 その重さは 10万トンにもなります 17 00:00:48,831 --> 00:00:53,584 巨大な生物群系をお腹に抱えて 私達は生きているのです 18 00:00:53,807 --> 00:00:55,574 誇りにすべきでしょう 19 00:00:55,574 --> 00:00:56,574 (笑) 20 00:00:56,574 --> 00:01:00,534 でも地表の 土壌や河川や海洋を覆う 21 00:01:00,534 --> 00:01:02,979 微生物の量に比べれば 22 00:01:02,979 --> 00:01:05,648 大したものではなく 23 00:01:05,648 --> 00:01:09,941 その総重量は 20億トンにもなります 24 00:01:10,174 --> 00:01:12,770 でも実は地球上の 微生物の大部分は 25 00:01:12,794 --> 00:01:16,571 海洋や腸や下水処理場に いるわけではありません 26 00:01:16,595 --> 00:01:19,372 ほとんどは地中にいるのです 27 00:01:19,396 --> 00:01:23,515 その総重量は400億トンです 28 00:01:23,754 --> 00:01:27,039 これは地球上でも 特に大きな生物群系ですが 29 00:01:27,039 --> 00:01:30,935 ほんの数十年前まで その存在は知られていませんでした 30 00:01:30,935 --> 00:01:33,542 その生態がどのようなもので 31 00:01:33,566 --> 00:01:36,111 人間にどう役立ちうるか 32 00:01:36,135 --> 00:01:38,295 限りない可能性があります 33 00:01:38,367 --> 00:01:40,239 赤い点で示したのは 34 00:01:40,263 --> 00:01:42,465 現代的な微生物学手法によって 35 00:01:42,465 --> 00:01:45,347 地下深くのサンプルが よく得られている地点で 36 00:01:45,347 --> 00:01:47,220 世界各地が 網羅されていると 37 00:01:47,220 --> 00:01:48,868 感心するかもしれませんが 38 00:01:48,868 --> 00:01:51,649 これらの場所の サンプルしかないと考えると 39 00:01:51,649 --> 00:01:54,164 ちょっと寂しい感じがします 40 00:01:54,164 --> 00:01:56,773 私達が宇宙船でやって来た 異星人だったとして 41 00:01:56,773 --> 00:02:00,006 これらのサンプルだけで 地球の地図を作ろうとするのは 42 00:02:00,030 --> 00:02:02,352 無理な話でしょう 43 00:02:03,218 --> 00:02:05,519 でもこんな風に言う人もいます 44 00:02:05,543 --> 00:02:08,963 「地中に微生物がたくさんいても 45 00:02:08,963 --> 00:02:11,263 休眠状態なんじゃないの?」 46 00:02:11,710 --> 00:02:13,227 良い指摘です 47 00:02:13,251 --> 00:02:18,101 イチジクの木や 麻疹ウイルスや 娘のモルモットなんかに比べたら 48 00:02:18,125 --> 00:02:21,156 そういう微生物はあんまり 活動していないと言えるでしょう 49 00:02:21,180 --> 00:02:25,006 あれだけ膨大な量がいるわけですから その活動はゆっくりなはずです 50 00:02:25,030 --> 00:02:27,990 もし大腸菌並のスピードで 分裂を始めたとしたら 51 00:02:27,990 --> 00:02:31,055 岩石も含めた地球の重さが 52 00:02:31,055 --> 00:02:33,111 一夜にして 2倍になってしまいます 53 00:02:33,111 --> 00:02:36,503 その多くは おそらく 古代エジプト時代から 54 00:02:36,503 --> 00:02:40,026 細胞分裂を一度も していないことでしょう 55 00:02:40,180 --> 00:02:41,880 途方もない話です 56 00:02:41,880 --> 00:02:47,242 そんなに長生きなものというのは 想像もできない感じですが 57 00:02:47,266 --> 00:02:50,314 いい喩えを思い付きました 58 00:02:50,314 --> 00:02:52,255 ちょっと奇妙で 複雑なんですが 59 00:02:52,279 --> 00:02:54,450 付いて来ていただきたいです 60 00:02:54,474 --> 00:02:56,130 やってみましょう 61 00:02:56,159 --> 00:02:58,072 それは1日しか 生きられない者が 62 00:02:58,072 --> 00:03:01,117 木のライフサイクルを 理解しようとするようなものです 63 00:03:01,141 --> 00:03:05,436 人の寿命が1日で 冬に生きているとします 64 00:03:05,436 --> 00:03:07,881 すると葉を持った木を 見ることなく 65 00:03:07,881 --> 00:03:09,768 生涯を過ごすことになります 66 00:03:09,792 --> 00:03:13,895 一冬の間に 幾世代も移り変わり 67 00:03:13,919 --> 00:03:16,139 歴史書を見ても 68 00:03:16,139 --> 00:03:20,065 木は何もしない 生気のない棒きれとしか 69 00:03:20,065 --> 00:03:21,696 書かれていません 70 00:03:21,720 --> 00:03:23,243 これは馬鹿げた見方です 71 00:03:23,243 --> 00:03:25,663 木は再び活動を始める 夏を待っているのだと 72 00:03:25,663 --> 00:03:26,926 私達は知っています 73 00:03:26,950 --> 00:03:29,415 でも人間の寿命が木の寿命より 74 00:03:29,415 --> 00:03:32,042 はるかに短かったとしたら 75 00:03:32,042 --> 00:03:36,547 この当たり前の事実に 気付かずにいるかもしれないのです 76 00:03:36,879 --> 00:03:41,807 あの地下深くにいる微生物が 休眠中だと言うのは 77 00:03:41,831 --> 00:03:46,593 1日で死んでしまう人間が 木を理解しようとするようなものかもしれません 78 00:03:46,601 --> 00:03:48,395 地下深くにいる微生物は 79 00:03:48,395 --> 00:03:50,932 夏に相当するものを 待っているのに 80 00:03:50,932 --> 00:03:54,593 私達の寿命が それを見るには 短すぎるのだとしたら? 81 00:03:54,784 --> 00:03:56,478 大腸菌を 82 00:03:56,478 --> 00:03:59,690 食べ物も栄養もなしで 試験管の中に密封し 83 00:03:59,714 --> 00:04:02,182 何ヶ月も何年も放っておくと 84 00:04:02,206 --> 00:04:05,222 その多くは 飢えて死にますが 85 00:04:05,246 --> 00:04:07,552 一部生き残るものもいます 86 00:04:07,576 --> 00:04:09,766 そういう生き残ったものを 87 00:04:09,790 --> 00:04:12,657 また飢餓状況に置いて 88 00:04:12,681 --> 00:04:15,855 新たな急成長する 大腸菌と生存競争させると 89 00:04:15,879 --> 00:04:18,208 毎回 タフな年寄り連中が 90 00:04:18,208 --> 00:04:20,966 ピカピカの新米たちに 打ち勝ちます 91 00:04:21,339 --> 00:04:25,942 極めてゆっくりであることに 進化上の利点があることを 92 00:04:25,966 --> 00:04:28,180 これは示しています 93 00:04:28,736 --> 00:04:30,625 ゆっくりだからと言って 94 00:04:30,649 --> 00:04:37,389 重要でないと決めつける べきではないでしょう 95 00:04:38,402 --> 00:04:41,084 この目に付かず 気にもとめられない微生物が 96 00:04:41,108 --> 00:04:43,695 人類の役に立つ かもしれないんです 97 00:04:44,125 --> 00:04:45,407 地下生活には 98 00:04:45,431 --> 00:04:47,937 私達に分かる限りで 2つのやり方があります 99 00:04:47,937 --> 00:04:51,513 1つは地表の世界から降りてくる 食べ物を持つというもの 100 00:04:51,537 --> 00:04:56,045 千年前に起こったピクニックの 食べ残しを食べようとするというような 101 00:04:56,069 --> 00:04:58,093 まったくおかしな生き方ですが 102 00:04:58,117 --> 00:05:01,755 地球上の多くの微生物が そんな風に生きているようなのです 103 00:05:01,755 --> 00:05:03,633 もう1つの可能性は 104 00:05:03,633 --> 00:05:09,095 「地上世界なんて必要ないよ ここだけでやっていける」というものです 105 00:05:09,119 --> 00:05:11,001 そういう道を行く微生物は 106 00:05:11,001 --> 00:05:14,012 生存に必要なものをすべて 107 00:05:14,012 --> 00:05:16,889 地中から得る 必要があります 108 00:05:18,205 --> 00:05:20,661 中にはむしろ 得やすいものもあります 109 00:05:20,685 --> 00:05:22,553 地中の方が豊かにあるもの 110 00:05:22,577 --> 00:05:26,395 窒素や鉄や硫黄のような栄養分とか 水とか 111 00:05:26,419 --> 00:05:27,592 生きる場所とか 112 00:05:27,616 --> 00:05:29,280 地上の世界では 113 00:05:29,280 --> 00:05:32,014 手に入れるために 殺し合いにもなりうるものです 114 00:05:32,038 --> 00:05:35,859 地中の世界で獲得が問題になるのは エネルギーです 115 00:05:36,101 --> 00:05:37,291 地上では植物が 116 00:05:37,315 --> 00:05:40,567 太陽の光が 葉に当たるやいなや 117 00:05:40,567 --> 00:05:44,403 二酸化炭素分子を編み合わせて おいしい糖を作り出せます 118 00:05:44,427 --> 00:05:46,955 でも地中に太陽光はなく 119 00:05:46,979 --> 00:05:48,937 地下の生態系では 120 00:05:48,937 --> 00:05:53,162 誰がみんなの食事を作るのかという問題を 解決する必要があります 121 00:05:53,416 --> 00:05:54,865 地下では 122 00:05:54,865 --> 00:05:59,102 岩を呼吸する植物のようなものが 必要になります 123 00:05:59,641 --> 00:06:02,670 さいわいに そのようなものは存在し 124 00:06:02,670 --> 00:06:05,444 「化学合成無機栄養生物」と 呼ばれています 125 00:06:05,444 --> 00:06:06,156 (笑) 126 00:06:06,180 --> 00:06:10,172 これは「化学合成」をすることで 127 00:06:10,172 --> 00:06:12,482 「無機」物の岩から 128 00:06:12,482 --> 00:06:15,244 「栄養」を得る「生物」です 129 00:06:15,268 --> 00:06:17,926 それを様々な 元素に対し行えます 130 00:06:17,950 --> 00:06:21,783 硫黄 鉄 マンガン 窒素 炭素 131 00:06:21,807 --> 00:06:25,387 電子を直接 扱えるものまでいます 132 00:06:25,530 --> 00:06:27,706 電気コードを切って 133 00:06:27,706 --> 00:06:30,115 シュノーケルみたいに 吸うようなものです 134 00:06:30,115 --> 00:06:31,185 (笑) 135 00:06:31,185 --> 00:06:33,196 化学合成無機栄養生物は 136 00:06:33,196 --> 00:06:35,475 その過程で得た エネルギーを使い 137 00:06:35,475 --> 00:06:37,831 植物のように 食べ物を作るのです 138 00:06:37,855 --> 00:06:40,808 でも植物は食べ物を 作るだけではありません 139 00:06:41,103 --> 00:06:43,419 排出物として酸素を作り 140 00:06:43,443 --> 00:06:46,031 私達動物は それに依存しています 141 00:06:46,031 --> 00:06:49,277 化学合成無機栄養生物が 生成する廃棄物は 142 00:06:49,301 --> 00:06:51,518 よく鉱物の形を取ります 143 00:06:51,518 --> 00:06:55,871 錆とか 「愚者の黄金」の黄鉄鉱とか 144 00:06:55,895 --> 00:06:58,185 石灰岩のような炭酸塩とか 145 00:06:59,020 --> 00:07:05,843 ですから 岩のようにすごく ゆっくりした微生物がいて 146 00:07:06,243 --> 00:07:09,649 岩からエネルギーを得て 147 00:07:09,673 --> 00:07:13,320 排出物として別の岩を 作っているわけです 148 00:07:13,320 --> 00:07:17,479 これは生物学の話なのか それとも地質学の話なのか? 149 00:07:17,479 --> 00:07:19,789 これのおかげで 話がややこしくなります 150 00:07:19,789 --> 00:07:20,637 (笑) 151 00:07:20,661 --> 00:07:22,807 これについて調べるんだったら 152 00:07:22,831 --> 00:07:28,378 岩のように振る舞う微生物を 研究する生物学者になって 153 00:07:28,402 --> 00:07:31,776 地質学から取り組み始める べきかと思います 154 00:07:31,800 --> 00:07:35,240 では 地質学で一番イカしてるのは 何でしょう? 155 00:07:35,252 --> 00:07:36,460 火山です 156 00:07:36,484 --> 00:07:37,735 (笑) 157 00:07:37,759 --> 00:07:41,890 これはコスタリカにある ポアス火山の内側を撮したものです 158 00:07:41,890 --> 00:07:43,716 火山の多くは 159 00:07:43,716 --> 00:07:47,466 海洋プレートが大陸プレートに ぶつかることでできます 160 00:07:47,470 --> 00:07:51,646 海洋プレートが 大陸プレートの下に沈み込むとき 161 00:07:51,646 --> 00:07:53,761 濡れタオルを 絞ったときのように 162 00:07:53,761 --> 00:07:56,126 水や二酸化炭素 その他の物質が 163 00:07:56,126 --> 00:07:57,946 絞り出されます 164 00:07:58,382 --> 00:08:02,064 沈み込み帯は地球深部への 入り口のようなもので 165 00:08:02,088 --> 00:08:05,849 地表と地下の世界の間を 物質が行き来します 166 00:08:05,873 --> 00:08:08,901 最近コスタリカの研究者から 167 00:08:08,925 --> 00:08:12,028 一緒に火山の調査をしようと 招待されて 168 00:08:12,052 --> 00:08:16,650 もちろん応じました コスタリカは素敵なところだし 169 00:08:16,674 --> 00:08:20,164 沈み込み帯の上に 位置していますから 170 00:08:20,478 --> 00:08:23,272 私達には知りたいことがありました 171 00:08:23,296 --> 00:08:25,684 深く埋もれた 海洋プレートからの 172 00:08:25,708 --> 00:08:28,684 二酸化炭素が 出てくるのは 173 00:08:28,708 --> 00:08:30,815 火山からだけで 174 00:08:30,839 --> 00:08:34,133 沈み込み帯全体に 分散していないのはなぜか? 175 00:08:34,157 --> 00:08:36,640 微生物はそれに何か 関わりがあるのか? 176 00:08:36,664 --> 00:08:39,961 この写真は ポアス火山の中にいる 177 00:08:39,961 --> 00:08:42,495 私と共同研究者の ドナト・ジョヴァネッリです 178 00:08:42,519 --> 00:08:46,121 私達の脇にある湖は バッテリー液並の酸です 179 00:08:46,145 --> 00:08:50,177 この写真を撮ったときに pHを測ったので分かります 180 00:08:50,362 --> 00:08:52,737 火口内で調査していて 181 00:08:52,737 --> 00:08:57,550 ふとコスタリカの研究者 カルロス・ラミレスに聞いてみました 182 00:08:57,550 --> 00:09:03,154 「これが今噴火し始めたら どうすればいいのかしら?」 183 00:09:03,269 --> 00:09:06,412 彼は「良い質問だね 簡単さ 184 00:09:06,436 --> 00:09:09,514 振り向いて 眺めを楽しめばいい」 185 00:09:09,538 --> 00:09:10,831 (笑) 186 00:09:10,855 --> 00:09:12,762 「それが最後の眺めになるから」 187 00:09:12,762 --> 00:09:13,561 (笑) 188 00:09:13,585 --> 00:09:17,030 ちょっと大袈裟に 聞こえるかもしれませんが 189 00:09:17,054 --> 00:09:21,521 私があの湖の脇にいた54日後に 190 00:09:21,521 --> 00:09:23,252 こんなことがありました 191 00:09:23,276 --> 00:09:24,434 (聴衆から驚きの声) 192 00:09:25,204 --> 00:09:26,854 びびりますよね? 193 00:09:26,878 --> 00:09:28,028 (笑) 194 00:09:28,934 --> 00:09:33,287 この火山では六十何年ぶりかの 大きな噴火で 195 00:09:33,311 --> 00:09:35,795 この映像のしばらく後に 196 00:09:35,819 --> 00:09:38,462 撮影していた カメラが吹き飛び 197 00:09:38,486 --> 00:09:40,906 私達がサンプルを 取っていた湖は 198 00:09:40,930 --> 00:09:42,800 すっかり蒸発しました 199 00:09:42,815 --> 00:09:44,607 ただ私達が火山の 中にいた日には 200 00:09:44,607 --> 00:09:47,015 こういうことが 起きないだろうことは 201 00:09:47,015 --> 00:09:48,922 かなり確信がありました 202 00:09:48,922 --> 00:09:51,329 コスタリカ火山・地震観測所 (OVSICORI) が 203 00:09:51,329 --> 00:09:53,792 注意深く火山活動を 監視していて 204 00:09:53,792 --> 00:09:56,892 その組織の科学者も あの日は同行していたからです 205 00:09:56,916 --> 00:09:58,810 この火山の噴火は 206 00:09:58,810 --> 00:10:04,426 海洋プレートからの二酸化炭素が 出てくるところを見たければ 207 00:10:04,450 --> 00:10:07,553 火山を見ればよいことを 示しているようですが 208 00:10:07,577 --> 00:10:09,846 コスタリカに行くと 209 00:10:09,870 --> 00:10:12,610 火山の他にも 気持ちの良い小さな温泉が 210 00:10:12,610 --> 00:10:15,888 そこらじゅうにあることに 気付きます 211 00:10:16,069 --> 00:10:18,153 温泉の水の一部は 212 00:10:18,153 --> 00:10:21,664 深く埋もれた海洋プレートから 沸き上がってきたものです 213 00:10:21,688 --> 00:10:23,138 私達の仮説では 214 00:10:23,138 --> 00:10:26,397 二酸化炭素も一緒に 出てきているはずだけど 215 00:10:26,397 --> 00:10:29,662 地中深くの何かが それを取り除いているんです 216 00:10:29,662 --> 00:10:33,799 それで私達は2週間 コスタリカ中を車で回って 217 00:10:33,823 --> 00:10:36,634 見付けた温泉すべてから サンプルを取りました 218 00:10:36,634 --> 00:10:38,418 すごく大変でした 219 00:10:38,442 --> 00:10:44,038 その後の2年間を 測定とデータ分析に費やしました 220 00:10:44,038 --> 00:10:46,615 科学者でない人のために 言いますと 221 00:10:46,615 --> 00:10:48,562 大きな発見というのは 222 00:10:48,562 --> 00:10:51,597 素敵な温泉や舞台の上にいるときに 起きるものではありません 223 00:10:51,597 --> 00:10:54,154 ごちゃごちゃした コンピューター画面と睨めっこし 224 00:10:54,154 --> 00:10:56,715 難しい装置に取り組み 225 00:10:56,715 --> 00:10:58,567 データに訳が分からなくなって 226 00:10:58,567 --> 00:11:01,212 スカイプで同僚に相談する中で 生まれるものです 227 00:11:01,236 --> 00:11:02,991 科学的発見というのも 228 00:11:02,991 --> 00:11:06,729 地中深くの微生物みたいに すごくゆっくりとしたものなんです 229 00:11:07,267 --> 00:11:10,616 でも今回は それが報われました 230 00:11:10,640 --> 00:11:13,862 深く埋もれた 海洋プレートから 231 00:11:13,862 --> 00:11:18,125 膨大な二酸化炭素が出てきていることを 発見したんです 232 00:11:18,149 --> 00:11:20,768 そして その二酸化炭素が 大気に放出されるのを抑え 233 00:11:20,768 --> 00:11:23,441 地中に保持しているのが 234 00:11:23,441 --> 00:11:25,271 地下深いところ 235 00:11:25,271 --> 00:11:29,053 コスタリカのかわいい ナマケモノやオオハシたちの下にいる 236 00:11:29,053 --> 00:11:31,343 化学合成無機栄養生物なんです 237 00:11:31,343 --> 00:11:34,753 この微生物の周囲で起きる 化学的な過程によって 238 00:11:34,753 --> 00:11:37,489 二酸化炭素が 炭酸塩鉱物に変わり 239 00:11:37,489 --> 00:11:39,657 地下に閉じ込められて いるのです 240 00:11:39,657 --> 00:11:41,885 そこで疑問が生じます 241 00:11:41,909 --> 00:11:44,174 地下で起きるその過程が 242 00:11:44,174 --> 00:11:47,909 下から来る二酸化炭素の吸収に そんなに優れているなら 243 00:11:47,909 --> 00:11:50,849 地表で私達が抱えている 二酸化炭素の問題も 244 00:11:50,849 --> 00:11:53,038 それでどうにか できないか? 245 00:11:53,038 --> 00:11:57,145 人類が大気に放出する 膨大な二酸化炭素によって 246 00:11:57,145 --> 00:12:00,303 今いる生物を支える 地球の力が 247 00:12:00,303 --> 00:12:02,713 損なわれつつあります 248 00:12:02,713 --> 00:12:05,306 二酸化炭素が 大気に放出されないよう 249 00:12:05,306 --> 00:12:08,258 根源で二酸化炭素を 取り除く方法を開発しようと 250 00:12:08,258 --> 00:12:11,037 科学者や技術者や 起業家が取り組んでいます 251 00:12:11,037 --> 00:12:13,198 取り除いた二酸化炭素を どうにかする必要があります 252 00:12:13,198 --> 00:12:14,379 そのため 253 00:12:14,379 --> 00:12:17,365 地中にある炭素が 保持されている場所の 254 00:12:17,365 --> 00:12:19,879 研究を続ける 必要があります 255 00:12:19,903 --> 00:12:22,390 そこで炭素が どうなるか知るために 256 00:12:22,390 --> 00:12:25,211 地下深くの微生物は 何かを保持させるには 257 00:12:25,211 --> 00:12:27,836 ゆっくりすぎて 問題かもしれないし 258 00:12:27,836 --> 00:12:31,664 あるいは微生物が二酸化炭素を 固体の鉱物に変えるのに 259 00:12:31,664 --> 00:12:33,688 役立つかもしれません 260 00:12:33,712 --> 00:12:36,132 私達がコスタリカでした 1つの研究から 261 00:12:36,156 --> 00:12:38,742 そのような大きな進歩が 起きうるのだとしたら 262 00:12:38,742 --> 00:12:41,963 他にどんな発見が地下で待ち受けているか 考えてみてください 263 00:12:41,963 --> 00:12:47,556 この地質・生物・化学の新分野 地下深くの生物学は 264 00:12:47,580 --> 00:12:49,121 それを何と呼ぶにせよ 265 00:12:49,145 --> 00:12:50,982 大きな影響を もたらすことでしょう 266 00:12:51,006 --> 00:12:53,379 気候変動を緩和するだけでなく 267 00:12:53,403 --> 00:12:57,595 生命と地球がどう 共進化してきたかの理解や 268 00:12:57,613 --> 00:13:02,311 工業や医学への応用に 役立つものの発見 269 00:13:02,335 --> 00:13:04,597 地震の予知や 270 00:13:04,621 --> 00:13:06,819 地球外生命の発見 271 00:13:06,843 --> 00:13:10,559 生命の起原の理解にも 繋がるかもしれません 272 00:13:10,827 --> 00:13:13,972 さいわい 私が1人でやる 必要はありません 273 00:13:13,972 --> 00:13:17,287 世界中に素晴らしい 研究者がいて 274 00:13:17,311 --> 00:13:20,993 地下深くの世界の 謎の解明に挑んでいます 275 00:13:21,831 --> 00:13:26,525 地下深くに埋もれた 生物なんて 276 00:13:26,525 --> 00:13:31,299 日常生活からは遠く隔たっていて 無関係だと思うかもしれませんが 277 00:13:31,299 --> 00:13:35,051 この奇妙で ゆっくりした生物は 278 00:13:35,075 --> 00:13:38,504 地球の生命の 大いなる謎への答えを 279 00:13:38,504 --> 00:13:40,175 持っているかも しれないのです 280 00:13:40,175 --> 00:13:41,516 ありがとうございました 281 00:13:41,516 --> 00:13:46,444 (拍手)