これは9000万年前の地球
地質学者が白亜紀後期と呼ぶ時代だ
気候が温暖になった時代で
恐竜が地上を支配していた
彼らは食物連鎖の頂点に立っていた
大きな変化が訪れるまで
大陸が割れ 地殻に裂け目ができると
水が流れ 海になった
水の温かいところで藻が繁殖した
そして死に 底に大量に降り積もった
川が洗い流した沈殿物で
藻たちの死骸は埋められた
圧力によって温まると
ここで化学反応が発生し
化石燃料となった
石油や天然ガスだ
同じことが陸でも起き 石炭ができた
何百万年かかって作られたものを
今 数年で消費している
現代の生活は 資源に依存している
驚くべき数の人が 当然のように
1860年以来
2兆バレルもの石油が発見され
今までに約半分が使われた
石油はまず 発見が必要だ
昔は それは簡単だった
アメリカで最初に発見されたのは
1900年のこと
その後も続々と
アメリカ中を調べ
大量の石油 天然ガス 石炭を発見した
アメリカは石油大国となり
やがて産業超大国となった
一度掘り始めれば
なくなるのは時間の問題だ
生産率は油井ごとに異なり
その平均を取ると
グラフはベルカーブを描く
一般に 石油の発見から40年後に
生産量はピークを迎え
その後は下がり続ける
1950年代
地質学者のキング・ハバートは
石油生産のピークを予測し
発見から40年後だとした
信じる人は少なかった
しかし 1970年
石油生産はピークを迎え 減り始めた
ハバートは正しかったのだ
この時点から アメリカは石油を輸入
それにより脆弱性が生まれ
1973年には経済が混乱し
79年 オイルショックが起きた
最も石油が発見されたのは1930年代
技術は進歩したが
新しい油田の発見は減り続けている
アンワルで発見した石油も
17ヶ月しか出続けなかった
メキシコ湾の新しい供給も
国内需要の数ヶ月分程度だ
国の需要を満たせる
油田がなくなってきている
データでは 今
世界の石油生産はピークに来ている
世界の石油発見のピークは1960年代
以降40年間
新油田の発見は減り続けた
65の主要産出国の内 54が
すでに生産のピークにある
近い将来 他の国もこれに続く
世界の石油減少の勢いは
3年毎にサウジアラビアが
失われていくほどだ
1960年代
石油は一人あたり6バレルあったが
40年後の今 それは半減しつつある
石油生産がピークを迎え
需要が伸びれば
ガソリン価格は跳ね上がり
車本体より高くなるだろう
現代の都市は石油に依存している
道路は石油から作られ
屋根にも使われる
多くの地域では
冬の暖房 夏の冷房が不可欠だ
郊外の生活には車が必須だ
仕事に 買い物に
住宅地と商業地域が離れているため
車が欠かせない
多くの地域が
豊富な石油を前提に設計されている
化石燃料由来の化学物質は
無数の製品で必要不可欠だ
現代的な農業も石油に依存している
病院 航空 水道設備も
アメリカ軍は それだけで
年間140万バレルを使っている
石油はプラスチックの生成に必要で
コンピューターなどの重要な部品だ
そして経済が成長するには
燃料の供給が欠かせない
私たちの石油依存度は高く
供給が少し途絶えただけで
生活は多大な影響を受ける
エネルギー
エネルギーとは仕事をする能力だ
現代アメリカ人は 一日に
奴隷150人分の労働力を利用している
エネルギーを持つ物質が 燃料だ
物質によりその量は異なり
これをエネルギー密度と言う
最も重要な燃料は石油だ
世界で年間300億バレル
1マイル立方体分使われる
そのエネルギー量は 原発52基を
50年稼働させた分に等しい
石油はアメリカの電力の1.6%を作り
輸送の96%を担っている
2008年 石油の3分の2は輸入だった
輸入国はカナダ メキシコ
サウジサラビア ベネズエラ
ナイジェリア イラク アンゴラだ
石油はいくらか独特だ
まずエネルギー密度
1バレルで人間の労働力
3年分のエネルギーを持つ
常温で液体のため
輸送や使用の勝手が良い
エネルギーを得るには
エネルギーを使う
少量で より多くを得る必要がある
これをEROEIと呼ぶ
エネルギー収支比の略だ
伝統的な石油採掘では
発見も 汲むのも簡単だったので
業者は1バレルの使用で
100バレルを得た
石油のEROEIは 100だ
容易に発見できなくなると
採掘場所は深海へ 遠方へと離れ
必要なエネルギーが増えた
現在の石油は不純なので
精製費用もかかる
現在の石油のEROEIは10だ
得る分より多く燃料を使うのなら
意味がなくなる
石油に変換できる燃料はあるが
変換の度に
いくらかエネルギーが失われる
その燃料とは新型石油
タールサンドやシェールだ
タールサンドは主にカナダにあり
シェールは3分の2がアメリカにある
両方 石油へと変換できるが
大量の熱と水を必要とする
それがEROEIを下げ 5から1.5になる
シェールは質が悪く
シリアルの3分の1しか力がない
石炭は大量にあり
世界の電力の半分を作る
年間で2マイル立方体分だ
しかし2040年に生産がピークになる
石炭は長年アメリカを支えてきたが
取り過ぎで 質が下がってきている
高品質の無煙炭はなくなり
今あるのは低品質の石炭だ
地表近くは枯渇したため
より深く掘る必要もある
また 掘りすぎると山が消え
環境破壊になる
天然ガスは石油と同時期に現れた
北米のガス発見のピークは1950年で
産出のピークは70年代初期
発見のグラフを23年分移動させれば
天然ガスの将来が明らかになる
新技術による天然ガスの生産量で
従来型生産の減少を打ち消せるが
天然ガスには問題点がある
価格が低いと利益がでないのだ
そして2030年には 産出量が
ピークを迎えると思われる
ウランはまだ大量に存在するが
世界の全電力を生み出すためには
原発が1万基必要だ
その場合ウランは
20年で尽きてしまうだろう
また 高速増殖炉の実験では
フランス 日本の失敗は 高く付いた
核融合は技術的にまだ幼い
他の発電はどうか
風力は EROEIは高いが断続的
水力は安定的だが
ダムを増やすのは難しい
伝統的地熱発電は
地球の熱い所で可能だが
場所が限られる
実験段階のEGSシステムでは
6マイルまで深く掘り
水を送って加熱することで
電力を生み出せる
MITの最新研究によれば
2050年には 全電力の10%を
供給する見込みだ
波力は場所が海岸限定で
波のエネルギー密度も地域で異なる
陸への送電には技術的課題があり
海水塩による腐食の問題もある
バイオ燃料は成長中だ
木材にはエネルギーがあり
世界で年3.7マイル立方体分使われる
燃料となる穀物を作るのに
石油を使うため
エネルギー的利益は少ない
とうもろこしをエタノールにすれば
2020年には
石油の10分の1程度をまかなえるが
それには国土の3%を使う
3分の1なら
今ある農場の3倍の面積が
石油消費をすべてをまかなうなら
さらにその倍は必要になる
水素は石炭や水から抽出できるが
使うエネルギーの方が多く
経済的に成り立たない
太陽光発電は全部で
火力発電所2基分程度ある
一つのパネルを作るのには
4トンの石炭が必要だ
世界の需要をまかなうには
14万平方マイル面積が要る
2007年時点ではまだ4平方マイルだ
集光型太陽光発電には可能性があり
現在小規模運営されている
気候の制限を受けるため
長距離に渡って送電する必要がある
すべての代替燃料が
石油動力の機械に頼るか
石油由来の物質を使う
将来的に新発明があっても
こう問われる
それは商業的に成り立つか
エネルギー密度はどうか
貯めたり分けたりできるか
安定的か 継続的か
国家の規模で可能か
難問は解決できるのか
EROEIは
環境への影響は
規模を間違えやすいが
石油が10億バレルあっても
世界需要の12日分でしかない
化石燃料からの脱却は大事業だ
2007年 電力の48.5%は
石炭が作っている
21.6%が天然ガス
1.6%が石油
19.4%が原子力
5.8%が水力だ
他は2.5%でしかない
化石燃料に代わる発電は
多種混合型だろうか
技術の大進歩が必要だ
政治や企業の協力も
大規模投資 国際的合意も
45兆ドル投じる必要がある
輸送
製造
農業へ
その移行の執行機関も要る
すべて達成すれば
今の生活は続けられるだろうか
成長
瓶の中に菌が住んでいた
増殖して1分で倍になる
11時に1個だった菌は
12時に瓶一杯になる
半分になるのは11時59分で 今ここだ
菌は危険に気づき
新しい瓶を3つ見つけた
問題は解決したかに見えた
12時に瓶が一杯になり
12時01分 2つ目が一杯に
12時02分 すべて一杯になった
これが私たちの問題であり
指数関数的成長だ
人類が石炭や石油を使い始めた時
急成長が始まった
時間とともに度合いは増す
成長率1%なら 70年で2倍になる
2%なら35年で2倍に
10%なら たった7年で2倍になる
現在のように平均3%なら
23年毎に倍増する
その度に 必要な資源も
それまでの合計分増える
経済が成長していくためには
資源の供給も増やす必要がある
銀行はお金を作ってそれを貸す
借り手はそれでビジネスを育て
借金を返す
その時の利子が成長を要求する
お金は借金として作られる
ほとんどのお金が利子付きの借金だ
新しく大きな世代が
継続的に成長を生み出し
借金を返さなければ
世界経済は崩壊する
ネズミ講のように 拡大しないと死ぬ
このシステムによる
経済成長は目覚ましかった
GDP ダムの数 水使用量
肥料消費 都市人口 紙消費量
車の数 通信量 観光
世界人口は70億に達し
2050年には90億に達する見込みだ
地球が平らで無限なら 問題はない
しかし地球は丸く 有限で
成長はいつか限界を迎える
成長には弊害もあった
大気中の窒素化合物やメタンの増加
オゾン層破壊 洪水の増加
海洋汚染 窒素流出
熱帯雨林や森林の減少
居住地域の拡大に 絶滅危惧種の増加
チェス盤に米粒を置いたとしよう
1マスに1粒 2つ目に2粒
3つ目にまた倍の4粒
4つ目にさらに倍の8粒 これを続け
各マスに前の倍の数を置いていくと
最後は天文学的数の米が必要になる
922京
3372兆
368億
5477万
6000粒だ
人類が過去1万年耕した米より多い
現代経済もこれと同様
数十年で倍増する
今チェス盤のどの辺だろう
エネルギーの他
文明に不可欠な資源がある
きれいな水 表土 食料 森林
様々な鉱物や金属
成長は重要資源の供給に制限される
たるを作り 水で満たしたとすると
水量は一番低い板で決まる
一番少ない資源が成長を決めるのだ
人類は現在
光合成の40%を使っている
80%には増やせても
160%までは増やせない
食料
食料供給は石油に依存している
WW1以前 農業はすべて有機的だった
石油によって肥料が発達し
食料生産量は大幅に増えた
それによって人口も増えた
人工肥料の使用が
より多くの人口の扶養を可能にした
化石燃料は農業機器の他
輸送 冷凍 梱包 料理にも使われる
現代農業は石油を食料へ
食料を人へと変換した
化石燃料の7カロリーが
食料の1カロリーになる
食料は 農地から人々へと
1500マイルも運ばれる
石油減少以外にも
いくつかの脅威が存在する
安い燃料や技術改良は
大量の漁獲を可能にした
漁獲量は80年代ピークを迎え
漁業はより遠海に向かった
また 流れ出した人口肥料が
川や海を汚染し 魚を住めなくした
このままいくと2048年には
魚は消滅する
酸性雨は土壌の栄養素を流出させる
カルシウムやマグネシウムなどだ
水不足の脅威もある
多くの農家が地下水を利用している
何千年かけ貯まった水も
汲み上げるのは数十年だ
アメリカのオガララ帯水層では
水が枯渇してしまい 生産量が落ちた
さらに 灌漑は土壌に塩を溜め込み
塩化を引き起こす
砂漠化の主要因だ
表土喪失の脅威もある
200年前 表土は6フィートあった
今では 度重なる耕作により
ほぼ半分しかない
灌漑はまた サビ病菌を育てる
この菌は穀物の80%を破壊可能だ
緑の革命の父ボーローグは言った
黒さび病は人間社会を破壊できる
バイオ燃料の使用は
食料生産の減少を意味する
土地には収容能力があり
人や動物の住める数は限られている
種の数が土地の能力を超えれば
自然の限度の数に戻るまで死ぬ
世界はこの終末を
新天地を見つけることで回避し
石油で生産も増やせられた
成長を続けるには
今以上の資源が必要だが
地球は一つだけだ
人口増加のため 2050年には
食料生産を2倍にする必要がある
すでに10億人が飢えている
今後90億人を養わねばならない時
石油や天然ガスは今より減っている
ハッピーエンド
世界は指数関数的に成長してきた
再生不可能な燃料や鉱物を消費し
再生可能な水や森林 土壌や魚は
再生するより早く消費して
成長率が1%でも
経済は70年で倍になる
問題はさらに複雑だ
グローバル化により 人々は
輸入品を買うようになったが
その長い供給ラインは
有限の石油頼みだ
必需品も遠くの国に依存
都市は化石燃料に依存
貸付で成り立つ銀行は
人々を返済の循環に入れ
成長を強いる
どうすればいいのだろうか
工夫すれば危機は防げるだろうか
技術 知的な成長
リサイクル 電気自動車
代替燃料や 投票で
節約にはなっても 地球は救えない
石油の使用をやめても
価格が下がり 他の人が買うだけだ
効率的なエンジンが発明されても
より多くのエネルギーが使われる
19世紀 経済学者のジェヴォンズは
より良い蒸気機関が
より石炭を使うと気づいた
蒸気機関が広まり
石炭消費全体は増えるのだ
資源を使って成長する限り
いつか資源は尽きる
新技術で解決できると考えがちだが
技術はエネルギーではない
技術は資源の代わりにはならず
むしろ消費する
コンピューターは車の
10分の1のエネルギーを使う
より高度な技術ほど
希少な鉱物を必要とするが
これも限界が近い
世界のレアアースの97%は
中国が生産している
世界最大の鉱山があるのだ
ここの鉱物を使うものは
航空機エンジン ハードドライブ
車のバッテリー レーザー
ポータブルX線 原子炉格納容器
コンパクトディスク バイクモーター
低エネルギー電球 光ファイバー
薄型ディスプレイなどだ
中国は輸出を制限し
需要を釣り上げている
持続可能な成長と呼ばれるものも
非再生可能な鉱物を使っている限り
長続きしない
リサイクルも解決にはならない
効率は100%にはほど遠い
リサイクルしているのは一部だけで
大部分は捨てている
電気自動車に変えても
電気を化石燃料で作る限り
解決にならない
また 車は生産過程で石油を使う
タイヤ一つだけでも7ガロン使う
2010年 世界には8億台の車がある
このままいけば
2025年には20億台に達する
この数では どの燃料でも
支えられそうにない
経済学者は 自由市場が
代替燃料を志向すると思っているが
主要な代替燃料自体が減少している
代替燃料への移行にかかる
時間も考慮すべきだ
エネルギー省の報告では
最低でも20年の準備が必要だと言う
エネルギー不足
資源枯渇
表土喪失
これらの原因にあるのは一つの問題
成長だ
制度が成長を要求し続ける限り
改革は成功しないだろう
未来はどうなるのだろうか
楽観主義者は思う
成長は無限に続いていくと
悲観主義者は思う
石器時代に向かっていると
その中間かもしれない
社会は単純な状態に戻り
エネルギーは使わなくなる
生活は大変になるだろう
肉体労働や農業
あらゆる生産活動が厳しくなる
私たちはどう備えるべきだろうか
輸入製品には頼らないようにする
自分の足を使う
少ない電力に慣れる
借金するのをやめ 銀行を離れる
大型店で買う代わりに
地元商店を支援する
食品は地元産のを買う
芝を刈り 庭で自分の食料を育てる
食べ残しをしない
地域振興券を使い 経済を小さくして
自給自足することを学ぶ
これは崩壊を防ぐだけでなく
生活を改善する機会でもある
私たちは自立する必要がある
先祖たちのように