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【27分解説】夜と霧|フランクル 自分の人生を肯定できないあなたへ ~絶望的な世界を生き抜く唯一の思想~

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    はい!どうもアバタローです。
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    本日は、ビクトール・フランクルの
    [夜と霧]
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    こちらをご紹介いたします。
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    どんな作品かと言いますと
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    自分の未来に対して希望が持てず
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    生きる意味を見失ってしまった人を
    救い出してくれる
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    世界的名著になります。
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    フランクルは
    著名な精神科のドクターであり
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    また、心理学の専門家です。
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    皆さまよくご存じの[アドラー]
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    そして、[フロイト][ユング]
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    彼らは[世界三大心理学者]
    と呼ばれていますが
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    フランクルは、それに次ぐ
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    [第四の巨頭]とも言われる人物になります。
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    そんな彼が、第二次世界大戦中
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    ナチスによって捕らえられ
    強制収容所に入れられた時の
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    体験について書かれたもの。
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    それが[夜と霧]という作品です。
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    因みに、このタイトルの
    [夜と霧]というのは
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    ヒトラーによって発せられた
    ”作戦名” のことです。
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    自分たちに敵対する者を捕まえるとき
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    まるで、夜の霧の中に消えるように
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    ひっそりと、跡形もなく
    連行されることから
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    そのように呼ばれていました。
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    ただ「ナチス」とか
    「強制収容所」と聞きますと
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    あれ、今日の話って
    凄く怖い話なんじゃないの?
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    暗い話なんじゃないの?と
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    ご心配された方も居るかもしれません。
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    ですが、ご安心ください。
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    この作品は、収容所の恐ろしさや
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    戦争の悲惨さを訴えることを目的として
    書かれたものではございません。
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    絶望の極致に置かれた人間たちの
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    メンタルに焦点が当てられた
    作品なんです。
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    収容所という、受け入れがたい
    理不尽な環境の中で
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    人々の心は、どのように変化をしていき
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    どのようなことに、苦しんでいたのか。
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    また、何を心の支えとし
    どんな考えをもって
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    未来に希望を見出そうとしたのか。
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    [夜と霧]には
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    こういった、いま正に知っておきたい
    生き方のヒントが多く含まれており
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    重たいテーマではありますが
    読む人の心を軽くしてくれる
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    不思議な力があるのです。
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    この動画をご視聴いただくにあたって
    予備知識は一切いりませんので、
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    是非、安心して最後まで
    お付き合いいただければと思います。
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    それでは参りましょう。
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    ビクトール・フランクル
    [夜と霧]
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    まず、この動画の
    全体像からお示し致します。
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    はじめに、この作品を読む前に
    知っておくべき前提知識として、
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    著者のフランクルとは一体、どんな人物で
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    どういった経緯で
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    強制収容所に入ることになってしまったのか
    についてお話をします。
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    それを踏まえたうえで
    [夜と霧]の中身に入っていき
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    最後は、フランクル思想を知る上で欠かせない
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    [ブーヘンヴァルトの歌]について
    触れて終わりたいと思います。
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    では早速、フランクルについて
    見て行きましょう。
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    ビクトール・フランクル
    [フランクル]
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    彼は、1905年
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    オーストリアの首都
    ウィーンに生まれたユダヤ人です。
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    [人間の生きる意味を問い続けたユダヤ人精神科医]
    幼少期から非常に好奇心旺盛であったフランクルは
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    人間の ”生きる意味” という
    壮大なテーマに興味を持ち
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    更に、アドラーや
    フロイトなどの影響を受けることで
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    精神科医になったといいます。
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    また、医師として
    彼の最大の功績の1つは
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    [ロゴセラピー]と呼ばれる心理療法を
    開発したことです。
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    ロゴセラピーとは
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    自分の生きる意味を実感できず
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    毎日、「虚しい」「苦しい」といった
    感情を持った人に対して
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    ”生きる意味” を見つけ出すサポートをする。
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    そういった「心理療法」のことを指します。
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    そして、彼は自ら開発した
    ロゴセラピーを実践し
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    人生に絶望した人の心の救済に
    全生涯を捧げ
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    1997年の92歳のときに
    天寿を全うしました。
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    [世のため人のために尽くし続けた偉人]
    あのマザー・テレサから
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    ノーベル平和賞の
    推薦を受けたこともあるほど
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    世の為、人の為に尽くし続けた偉人。
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    それが、ビクトール・フランクルです。
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    ただ、そんな彼が
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    強制収容所に入れられてしまうというのは
    なかなか、信じがたい事実です。
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    [フランクルが強制収容された経緯とは?]
    なので今から、彼が
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    強制収容所に入るまでの経緯について
    お話をいたします。
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    時は今から遡ること
    約90年前。
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    1933年のドイツでのことです。
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    [ナチスが政権与党となった]
    ここで、ある大きな
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    政治的変化が起こりました。
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    なんと、長らく政権野党であった
    国家社会主義ドイツ労働者党。
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    通称「ナチス」が
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    その年の1月30日
    遂に与党となったのです。
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    もちろん、政権のトップは
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    皆様ご存じの
    アドルフ・ヒトラーです。
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    [ユダヤ人を排除するための政策]
    そして、彼は
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    ユダヤ人を排除するための政策を
    次々と打っていきました。
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    何故、ヒトラーは
    そんなことをしたのでしょうか。
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    凄く簡単に言いますと
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    共通の敵を作ることで
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    当時バラバラだった
    ドイツ国民の心を一つにし
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    国をまとめ上げようとしたのです。
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    [我らはアーリア人である]
    具体的には、自分たちは
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    アーリア人と呼ばれる
    優性民族であり
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    劣等民族であるユダヤ人を迫害し
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    国外に追い出し
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    「我々で、ヨーロッパを統一しませんか」
    と言い出したわけです。
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    [ユダヤ人への迫害は年々エスカレート]
    ナチスが政権与党となった初期の頃は
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    ユダヤ人が経営するお店を妨害するとか
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    レストランに入れないとか
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    そういうレベルの嫌がらせが
    多かったのですが
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    徐々にこれが
    エスカレートしていきます。
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    [1935年ニュルンベルク法の制定]
    1935年には、ニュルンベルク法と呼ばれる
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    ユダヤ人の公民権を奪う
    人種差別法が制定されます。
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    これによってユダヤ人と
    ドイツ人の結婚が禁じられ
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    更に、ユダヤ人は公共的な場所。
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    例えば、「庭園」「劇場」「プール」
    などへの出入りが禁止されてしまいます。
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    [1938年、ユダヤ人の青年がドイツ大使館襲撃]
    そして、1938年11月。
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    フランスの首都
    パリにあるドイツ大使館で
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    書記官がユダヤ人青年によって
    射殺されるという事件が起こりました。
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    因みに、その青年は
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    自分の家族を
    ナチスによって迫害され
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    その恨みから、書記官を襲ったと言います。
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    こうなりますと、当然
    ドイツに居る国民たちは
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    けしからん!と大激怒です。
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    [ドイツ本国で大暴動!]
    そして、国内にあったユダヤ教会や商店街が
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    次々と襲撃されるという、大暴動が起こり
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    90人以上のユダヤ人の方が
    亡くなってしまったと言います。
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    破壊された家や、商店街の窓ガラスが
    ドイツ中の道路を埋め尽くし
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    それが月明かりによって照らされ
    まるで、水晶のように光っていたことから
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    その事件は
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    [水晶の夜(クリスタル・ナハト)]
    と名付けられました。
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    これによって、
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    [ユダヤ人追放の動きが加速し第二次世界大戦へ]
    ドイツ国内におけるユダヤ人追放の動きは
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    更に、加速していくこととなったのです。
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    そして、その流れのまま
    翌年1939年。
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    ドイツ軍が、ポーランドに
    侵攻したことを契機に
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    第二次世界大戦が勃発します。
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    ナチスも、自分たちが占領した
    地域のユダヤ人を
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    はじめは追放したり
    隔離したりしていたのですが
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    [戦線膠着で、ナチスは方針を一変]
    戦線が膠着するにつれて、方針を一変させます。
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    なんと!「殺処分する」という
    えげつない方向に舵を切り始めたのです。
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    これが、ナチスによる大量虐殺。
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    所謂[ホロコースト]の始まりです。
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    [ホロコーストの始まり]
    因みに、ホロコーストとは
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    元々ギリシャ語で
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    「焼かれた生贄」という意味になります。
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    水面下で行われてきた
    ユダヤ人狩りが
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    遂に、ここから
    本格化していくことになるわけです。
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    [フランクル(36歳)にも魔の手が…]
    そして1941年
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    当時36歳であった
    ビクトール・フランクルの元にも
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    ナチス当局から軍司令部への
    出頭命令が下ります。
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    そして、1942年。
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    遂に、連れて行かれてしまうわけです。
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    [最悪のタイミングで絶望の世界へ]
    因みに、当時のフランクルは
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    数年前に自分の病院を立ち上げたばかりで
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    更に結婚もしたばかり
    という状況でございます。
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    そんなタイミングで彼は
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    これ以上ない絶望の世界に
    呑み込まれて行くことになるのです。
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    続きまして、彼が捕まってから
    解放に至るまでの大まかな流れを
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    スライドにお示しします。
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    ちょっと、カタカナが多いですが
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    これらの名前は全く
    覚えておかないで大丈夫ですので
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    そこは、ご安心ください。
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    [1.テレージエンシュタット]
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    ここは、今もチェコにあります。
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    1942年の9月から
    自分の両親と奥さんと一緒に
  • 7:31 - 7:34
    フランクルは、2年程ここに
    収容されることになります。
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    実は、フランクルのお父さんは
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    当時、80歳を超すほどのご高齢であったんですが
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    非常に栄養状態の悪い生活を
    強いられたことによって
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    ここで、餓死をさせられてしまうのです。
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    そして、ふたつ目がポーランドにある
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    [2.アウシュヴィッツ]です。
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    絶滅収容所として
    非常に悪名高い所ですね。
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    ここで、フランクルは
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    自分のお母さんと
    お兄さんを失ってしまいます。
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    滞在期間は、4日ほどです。
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    その後、ドイツ南部
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    バイエルン地方にある
    「ダッハウ」と呼ばれる強制収容所の
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    [3.ダッハウ(カウフェリング第3支所)]
    という所に送られ
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    最後は、病人収容所である
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    [4.ダッハウ(カウフェリング第6支所)]に行き
  • 8:11 - 8:13
    1945年の4月に
  • 8:13 - 8:16
    ようやく解放
    という流れになります。
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    ここで、抑えておいていただきたいのは
    [夜と霧]の舞台が
  • 8:20 - 8:24
    アウシュビッツ以降
    特にダッハウ強制収容所の
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    「支所」であるという点です。
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    もっとハッキリ言いますと
    この作品のメインステージは
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    アウシュヴィッツではありません。
  • 8:30 - 8:31
    支所です!
  • 8:31 - 8:34
    ここは、よく誤解されますので
    ご注意いただければと思います。
  • 8:35 - 8:36
    ここまで、よろしいでしょうか。
  • 8:36 - 8:38
    以上の流れを踏まえたうえで
  • 8:38 - 8:41
    さっそく作品の
    中身に入っていきたいと思います。
  • 8:41 - 8:42
    では、行きましょう。
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    [強制収容所における一心理学者の体験]
    私は、一心理学者として
  • 8:44 - 8:48
    強制収容所で体験したことを
    述べたいと思う。
  • 8:48 - 8:50
    ただ、何も私は
  • 8:50 - 8:53
    身の毛のよだつ恐ろしい話を
    したいのではない。
  • 8:54 - 8:56
    そこにいた囚人たちが、収容所の中で
  • 8:56 - 8:59
    どのような苦労を
    抱えて過ごしてきたのか。
  • 9:00 - 9:03
    そういった、心の問題を取り扱いたいのだ。
  • 9:03 - 9:05
    [番号が振られただけの一人の囚人]
    [119104]
  • 9:05 - 9:06
    忘れもしない。
  • 9:06 - 9:08
    これは、私の囚人番号だ。
  • 9:08 - 9:10
    強制収容所において
  • 9:10 - 9:13
    私は、心理学者でも
    ましてや、医者でもなかった。
  • 9:13 - 9:18
    ただ、番号が振られただけの
    一人の囚人でしかなかったのだ。
  • 9:18 - 9:22
    ではまず、私がアウシュヴィッツに
    送られた時の様子から話しをしていこう。
  • 9:22 - 9:26
    1つの貨物車両に
    80人ほどの人間たちと
  • 9:26 - 9:29
    その荷物が息苦しいほどに
    隙間なく入れられ
  • 9:29 - 9:32
    私たちは、ある場所へと
    輸送させられた。
  • 9:32 - 9:35
    辛うじて、窓の一番上から
  • 9:35 - 9:36
    薄暗い空を
  • 9:36 - 9:38
    眺めることができたのを
    覚えている。
  • 9:38 - 9:41
    一体我々は
    何処に連れていかれるのか。
  • 9:41 - 9:44
    軍需工場で強制労働でも
    させられるのか。
  • 9:44 - 9:48
    そうやって、狭い空間の中で
    言葉を交わし合った。
  • 9:48 - 9:52
    しばらくすると、列車は
    開けた平地に止まろうとしていた。
  • 9:52 - 9:54
    「何処だ!」
    「ここは一体、何処なんだ」
  • 9:54 - 9:57
    そんな言い知れぬ空気が
    列車内を覆う中
  • 9:57 - 10:01
    群衆の中から、突然
    ひとつの叫び声があがった。
  • 10:01 - 10:02
    「ここに立札があるぞ!」
  • 10:02 - 10:04
    [AUSCHWITZ]
    「アウシュヴィッツ」
  • 10:04 - 10:05
    「アウシュヴィッツだ!」
  • 10:05 - 10:08
    [アウシュヴィッツは1つの概念]
    この瞬間どれほど、心臓が止まると思ったか。
  • 10:08 - 10:10
    アウシュヴィッツはひとつの「概念」だった。
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    何かよく分からないけれど
  • 10:12 - 10:14
    しかし、それだけに恐怖しかなかった。
  • 10:14 - 10:18
    停車場に着くと、エレガントな
    紳士のような将校が現れた。
  • 10:18 - 10:22
    そして、我々を指さしながら
    何やら指示を出し始めたのだ。
  • 10:22 - 10:24
    私はこの時、知る由もなかった。
  • 10:24 - 10:29
    あの男の指の動き一つ一つが
    命の選別であったということを...
  • 10:29 - 10:32
    [裸の存在]
    この時、輸送された約90パーセントの人が
  • 10:32 - 10:37
    数時間も経たないうちにガス室に送られ
    命を奪われた。
  • 10:37 - 10:41
    一方、私を含む残りの人間たちは
    風呂場に連れていかれ
  • 10:41 - 10:42
    全身の毛を剃られた。
  • 10:42 - 10:45
    そして文字通り
    裸の存在となったのだ。
  • 10:45 - 10:47
    はい!ここで止めましょう。
  • 10:47 - 10:49
    [貨物列車から降りると命の選別が始まった]
    非常に恐ろしい世界です。
  • 10:49 - 10:53
    列車から降りますと、最初にあったのは
    ”命の選別” でした。
  • 10:53 - 10:54
    ここで、フランクルは
  • 10:54 - 10:57
    偶然にも、生き残ることが
    出来たわけですが
  • 10:57 - 10:59
    それは一体、なぜでしょうか。
    [労働者として使える者だけが命を許された]
  • 10:59 - 11:02
    [労働者として使える者だけが命を許された]
    結論から言いますと、労働者として”使える” と
  • 11:02 - 11:03
    判断されたからです。
  • 11:03 - 11:07
    逆に、労働者として”使えない”
    と思われた人のことごとくは
  • 11:07 - 11:10
    最初の段階でふるいに
    掛けられてしまった、というわけです。
  • 11:11 - 11:13
    このとき囚人たちは
    「収容ショック」といって
  • 11:13 - 11:16
    とてつもない、恐怖体験をすることになります。
  • 11:16 - 11:19
    囚人によっては
    収容所を取り囲んでいる
  • 11:19 - 11:21
    高電圧が流れている鉄条網に走って
  • 11:21 - 11:24
    自害を試みることもあったようです。
  • 11:24 - 11:26
    [死の恐怖すら消えていく]
    ですが、しばらくしますと
  • 11:26 - 11:29
    死の恐怖がなくなっていき
    自分で命を絶つことすら
  • 11:29 - 11:31
    考えなくなっていく、といいます。
  • 11:31 - 11:34
    [心を強く保とうとするフランクル]
    フランクルは、自分の命だけは諦めないと
  • 11:34 - 11:38
    気持ちを強く保っているのですが
    いつ、心が崩壊しても
  • 11:38 - 11:41
    おかしくない状態で
    収容所生活を送っていました。
  • 11:41 - 11:44
    そんな中、先輩囚人がこっそりと
  • 11:44 - 11:47
    フランクル達が
    寝泊まりしている所にやってきます。
  • 11:47 - 11:50
    そして、生きる為のアドバイスを
    授けてくれるのです。
  • 11:50 - 11:53
    では、そのシーンから
    続きを見て行きましょう。
  • 11:53 - 11:56
    先輩囚人:いいか!
    僕は、君たちに1つのことを忠告する
  • 11:56 - 11:59
    それは「ヒゲを剃れ!」ということだ。
  • 11:59 - 12:00
    できれば毎日。
  • 12:00 - 12:02
    剃るものは、何だっていい。
  • 12:02 - 12:05
    僕は、その辺に落ちている
    ガラス片でやっている。
  • 12:05 - 12:06
    あと病気になるな。
  • 12:06 - 12:08
    病気であっても、それを悟られるな。
  • 12:08 - 12:11
    命を奪われたくなければ、とにかく
  • 12:11 - 12:14
    労働が可能である
    という印象を相手に与えろ。
  • 12:14 - 12:18
    コイツは動けない、と判断されたら
    もう、俺たちはお終いなんだ。
  • 12:18 - 12:19
    いいか!
    もう一度言うぞ!
  • 12:19 - 12:20
    ヒゲを剃れ!
  • 12:20 - 12:22
    そして、いつも
    真っすぐ立って歩け!
  • 12:22 - 12:23
    はい!ここで止めましょう。
  • 12:23 - 12:26
    [囚人たちの心は次の段階へ進む]
    どれだけ理不尽で、残酷な環境の中で
  • 12:26 - 12:29
    フランクル達が生きていたかが
    よく分かります。
  • 12:29 - 12:32
    収容された当初は
    「苦しい」とか、「怖い」とか。
  • 12:32 - 12:35
    様々な感情の浮き沈みを
    体験するそうです。
  • 12:35 - 12:37
    しかし、それが長引いてきますと
  • 12:37 - 12:41
    今度は逆に、何も感じなくなるという
    新たな状態に移っていきます。
  • 12:41 - 12:46
    つまり、自分が生きている世界に対して
    「無感動」「無関心」
  • 12:46 - 12:48
    「無感覚」になって行くというのです。
  • 12:48 - 12:51
    [無感動、無関心、無感覚]
    こうなりますと、自分の家族や仲間が
  • 12:51 - 12:54
    殴られていても、一切
    目を反らさなくなるといいます。
  • 12:54 - 12:56
    黙ってただ眺める。
  • 12:57 - 12:59
    そこには「嫌悪感」も
    「恐怖」も「同情」もない。
  • 12:59 - 13:02
    何にも感じることができないのです。
  • 13:02 - 13:05
    更に、収容所の世界において
    「苦しんでいる人」
  • 13:05 - 13:07
    「病んでいる人」「死につつある人」
  • 13:07 - 13:10
    そして、「死んでいる人」というのは
    全く珍しくなく
  • 13:10 - 13:13
    むしろ、当たり前すぎる光景であるため
  • 13:13 - 13:16
    人としての心が徐々に
    動かなくなってくるのです。
  • 13:16 - 13:19
    フランクルは、この
    感情が動かなくなる状態のことを
  • 13:19 - 13:24
    [心を包む最も必要な鎧]であったと
    表現しています。
  • 13:24 - 13:28
    つまり、自分の肉体が生命を
    維持するという
  • 13:28 - 13:31
    ただ、その目的だけに
    集中する、というモードに入るんです。
  • 13:31 - 13:36
    その結果、生命維持に
    直接関係のない心の機能が
  • 13:36 - 13:38
    シャットダウンしてしまう
    というわけです。
  • 13:38 - 13:42
    一旦、そのモードに入りますと
    人は食べるとか、寝るとか。
  • 13:42 - 13:44
    [原始的な欲求だけに支配される]
    そういった原始的な欲求だけに
  • 13:44 - 13:46
    支配されることになった、と言います。
  • 13:46 - 13:49
    ただ、当時の囚人たちは
    一日に水のようなスープと
  • 13:49 - 13:53
    パンのかけらくらいしか
    食事を与えられていなかったため
  • 13:53 - 13:55
    [収容所は絶望の極限であった]
    原始的な欲求のほとんどは
  • 13:55 - 13:57
    「食欲」が占めていたと言います。
  • 13:57 - 13:59
    当然、地獄のような
    飢餓状態におかれますから
  • 13:59 - 14:03
    一人残らず屍のように
    痩せこけていきます。
  • 14:03 - 14:06
    更に、その状態で蹴られたり
    殴られたりしながら
    [収容所は絶望の極限であった]
  • 14:06 - 14:09
    朝から晩まで
    強制労働をさせられ
  • 14:09 - 14:12
    使えないと判断されれば
    処理されてしまう。
  • 14:12 - 14:15
    それが収容された者たちの
    世界だったんです。
  • 14:15 - 14:17
    [離れ離れになった妻の面影が突然現れた]
    そんな極限状態の中
  • 14:17 - 14:19
    フランクルは、不思議な体験をします。
  • 14:19 - 14:23
    なんと!自分の目の前に
    奥さんの面影が現れ
  • 14:23 - 14:26
    そして、言葉を交わし合ったというのです。
  • 14:26 - 14:29
    この場面は[夜と霧]という作品の中でも
  • 14:29 - 14:32
    特に胸が締め付けられるところになります。
  • 14:32 - 14:35
    では、そこから
    続きを見て行きましょう。
  • 14:35 - 14:37
    私は妻と語った。
  • 14:37 - 14:39
    そして、彼女が答えるのを聞き
  • 14:39 - 14:41
    彼女が笑うのを見た。
  • 14:41 - 14:43
    たとえ、その場に居なくても
  • 14:43 - 14:45
    彼女の眼差しは
  • 14:45 - 14:48
    今さに昇ろうとしている太陽よりも
  • 14:48 - 14:49
    私を照らしてくれた。
  • 14:49 - 14:51
    そのとき、私は気付いたのだ。
  • 14:51 - 14:53
    [愛こそが人間にとって最高のものである]
    愛こそが人間にとって
  • 14:53 - 14:55
    最高のものだということを。
  • 14:55 - 14:58
    たとえ、この世に
    何一つ残っていなくても
  • 14:58 - 15:02
    人間は愛する人の面影を
    心に宿すだけで救われるのだ。
  • 15:02 - 15:06
    このとき私は、自分の妻が
    生きているかどうかも知らなかったし
  • 15:06 - 15:08
    知る必要もなかった。
  • 15:08 - 15:13
    私は深い愛情をもって
    彼女の面影を見つめ続けた。
  • 15:13 - 15:15
    彼女は、まだ生きているのか。
  • 15:15 - 15:17
    それとも、もうこの世にいないのか。
  • 15:17 - 15:19
    そんな事実は
    もはや問題ではなかった。
  • 15:19 - 15:22
    たとえ、愛する妻が
    亡くなっていたと分かっていても
  • 15:22 - 15:27
    それでも私は、彼女の面影を
    見つめ続けていただろう。
  • 15:27 - 15:31
    何時間も凍った地面を掘り続けても
    監視兵に怒鳴られても
  • 15:31 - 15:33
    [妻と言葉を交わし続けた]
    私は彼女と言葉を交わした。
  • 15:33 - 15:36
    そして、その度に
    妻の存在を強く感じた。
  • 15:36 - 15:39
    彼女を抱きしめることが
    出来るのではないか。
  • 15:39 - 15:42
    手を伸ばせば触れることが
    出来るのではないか。
  • 15:42 - 15:45
    そんな感情が強く
    私を襲うたび思うのだった。
  • 15:45 - 15:47
    彼女はきっと、そこにいる。
  • 15:47 - 15:49
    そこにいるのだ。
  • 15:49 - 15:50
    [フランクルは愛によって生かされた]
    はい!ここで止めましょう。
  • 15:51 - 15:52
    つまり、フランクルは
  • 15:52 - 15:56
    いつ精神が崩壊しても
    おかしくない極限状態の中で
  • 15:56 - 15:58
    愛によって生かされたのです。
  • 15:59 - 16:03
    そして、どれほど人間にとって愛が
    大切なものであるかということを
  • 16:03 - 16:06
    頭ではなく、心から痛感したというのです。
  • 16:06 - 16:11
    ただ、非常に申し上げにくいのですが
    実は、このときフランクルの奥さんは
  • 16:11 - 16:15
    別の収容所に移送され
    そこで処刑されてしまっているのです。
  • 16:15 - 16:20
    それを知らない状態で彼は
    ただ、愛する奥さんの面影を心に宿し
  • 16:20 - 16:22
    見つめ続けていた、というわけです。
  • 16:22 - 16:24
    [ルキウス・アンナエウス・セネカ]
    因みに、以前紹介した
  • 16:24 - 16:26
    古代ローマの哲学者セネカは
  • 16:26 - 16:29
    過去は唯一、運命に支配されない
  • 16:29 - 16:33
    誰からも奪われない
    神聖な時間だ、と言っていました。
  • 16:33 - 16:36
    彼の言葉の重さが、ここに来て
    ズシン!と響いてきます。
  • 16:36 - 16:39
    [フランクルは「過去」によって生かされた]
    つまり、フランクルは、身ぐるみを全て剥がされ
  • 16:39 - 16:43
    財産も、家族も、尊厳も
    何もかも奪われたのですが
  • 16:43 - 16:45
    唯一、過去だけは
    侵害されなかったんです。
  • 16:45 - 16:50
    そして、彼は極限状態の中で
    自分にとって最も大切な「過去」
  • 16:50 - 16:55
    つまり、愛する奥さんという存在を
    自分の記憶から引っ張ってきました。
  • 16:55 - 17:00
    そして、会話ができてしまうくらい
    彼女の存在を自分の心のスクリーンに
  • 17:00 - 17:04
    強く投影させ、それによって
    自らを支えていたわけです。
  • 17:05 - 17:07
    ただ、気を強く保っている
    フランクルですが
  • 17:07 - 17:11
    それでも心が折れそうになる瞬間は
    何度かあったようです。
  • 17:11 - 17:15
    [何が精神的にきつかったのか?]
    その中でも、特にこれはキツイと思われる要素を
  • 17:15 - 17:17
    彼は、本書でひとつ挙げています。
  • 17:18 - 17:21
    それは、フランクルだけではなく
    他の囚人たちも
  • 17:21 - 17:25
    「確かにその通りである」と
    意見が一致したと言います。
  • 17:26 - 17:29
    [何が精神的にきつかったのか?]
    皆さんは、何が囚人たちのメンタルを
  • 17:29 - 17:31
    最も苦しめたと思いますか。
  • 17:31 - 17:32
    答えを言いますと
  • 17:32 - 17:34
    [「期日」が無かったこと]です。
  • 17:34 - 17:37
    私らは、いつまでこの収容所にいて
  • 17:37 - 17:38
    いつ、解放されるんですか。
  • 17:38 - 17:40
    一体、いつになったら
  • 17:40 - 17:43
    今まで通りの生活に戻れるんですか。
  • 17:43 - 17:44
    こうやって
  • 17:44 - 17:45
    終わりの日が見えないこと
  • 17:45 - 17:49
    出口が見えないことが
    何よりも辛かったと
  • 17:49 - 17:52
    彼らは口を揃えて
    そう言っているのです。
  • 17:52 - 17:56
    更に、収容所という
    極端に活動が制限された環境の中で
  • 17:56 - 17:59
    無限の時間を感じるのは
    並大抵ではない
  • 17:59 - 18:01
    精神的ストレスであったと言います。
  • 18:01 - 18:04
    [収束時期について様々な情報が流れた]
    そんな中、”もう直ぐ戦争が終わるらしいよ”
  • 18:04 - 18:07
    ”あと、6週間で出られるらしいよ” と
    終息の見込みに関する色んな噂が
  • 18:07 - 18:11
    終息の見込みに関する色んな噂が
    収容所内に流れては
  • 18:11 - 18:13
    また、引き延ばされる。
  • 18:13 - 18:14
    これの繰り返しです。
  • 18:14 - 18:17
    [期待と幻滅の無限ループ]
    こういった、期待と幻滅の
  • 18:17 - 18:21
    無限ループに置かれると
    人はいずれ心が壊れてしまう。
  • 18:21 - 18:22
    フランクルは
    そう言っているのです。
  • 18:22 - 18:25
    そして、彼はまた
    次のように語り始めます。
  • 18:25 - 18:28
    1944年のクリスマス。
  • 18:28 - 18:31
    そして、1945年の新年。
  • 18:31 - 18:35
    [かつてない大量の死亡者]
    この間に、未だかつてない大量の死亡者が出た。
  • 18:35 - 18:37
    強制収容所にいた医者によると
  • 18:37 - 18:42
    それは、過酷な労働条件や
    悪化した栄養状態。
  • 18:42 - 18:46
    或いは、伝染病などで
    説明がつくものでは、なかったそうだ。
  • 18:46 - 18:48
    [素朴な希望]
    むしろ、その原因とは
  • 18:48 - 18:50
    囚人たちが、クリスマスや新年には
  • 18:50 - 18:54
    きっと、状況も良くなって
    家に帰れるだろうと
  • 18:54 - 18:57
    素朴な希望に
    身を寄せたからなのだ。
  • 18:58 - 19:00
    もう直ぐ、クリスマスだというのに
  • 19:00 - 19:02
    収容所から流れて来る
    ニュースと言えば
  • 19:02 - 19:06
    いつも暗い話ばかりで
    明るい記事など一切なかった。
  • 19:06 - 19:10
    [囚人たちは失望と落胆によって抵抗力を落とした]
    そうやって、囚人たちはどんどん失望し落胆し
  • 19:10 - 19:12
    そして、抵抗力を落として行ったのだ。
  • 19:13 - 19:15
    凄まじい収容所生活において
  • 19:15 - 19:18
    自分の内側にある
    抵抗力を落とすことは
  • 19:18 - 19:20
    そのまま、命を落とすことに繋がる。
  • 19:20 - 19:23
    [抵抗力を維持するには?]
    だから、自分たちの抵抗力が落ちないよう
  • 19:23 - 19:26
    どうにか気持ちだけは
    維持しなければならない。
  • 19:26 - 19:29
    その為には、自分は何としてでも
  • 19:29 - 19:31
    生き延びなければならないという
  • 19:31 - 19:35
    [人生の目的意識]が
    必要だったのだ。
  • 19:35 - 19:37
    はい!ここで止めましょう。
  • 19:37 - 19:39
    [苦しみや辛さに見合うだけの意義が必要]
    どんな人であれ、苦しいとき
  • 19:39 - 19:43
    辛いときはありますが
    それを乗り越えるためには
  • 19:43 - 19:47
    その苦しさや、辛さに見合うだけの
    意義が必要だと
  • 19:47 - 19:48
    フランクルは、言っているのです。
  • 19:49 - 19:50
    耐え抜く意味。
  • 19:50 - 19:51
    頑張り通す意義。
  • 19:51 - 19:55
    それが無ければ
    苦しさや辛さに耐えられず
  • 19:55 - 19:57
    心が折れてしまうわけです。
  • 19:57 - 20:00
    好きな仕事だから
    辛い時でも頑張れた。
  • 20:00 - 20:04
    応援してくれる仲間がいたから
    苦しかったけど頑張れた。
  • 20:04 - 20:07
    皆さんにも、そんなご経験が
    あるのではないでしょうか。
  • 20:07 - 20:10
    [心が崩壊してしまった囚人たち]
    ただ、心が崩壊してしまった囚人たちは
  • 20:10 - 20:13
    どれだけ励ましても、どれだけ慰めても
  • 20:13 - 20:14
    何も言葉を
  • 20:14 - 20:17
    受け取らなくなってしまったと言います。
  • 20:17 - 20:18
    そして、こんな未来に
  • 20:18 - 20:22
    期待のできない人生を
    なぜ、生きなきゃいけないんだ。
  • 20:22 - 20:25
    生きていたって
    意味なんかないじゃないかと
  • 20:25 - 20:27
    口にするように
    なっていったそうです。
  • 20:27 - 20:30
    [生きる意味を見失ってしまったらどうするのか]
    では、こういった状態に陥ってしまったら
  • 20:30 - 20:32
    一体、どうすればよいのでしょうか。
  • 20:32 - 20:35
    この問いに対し
    フランクルは本書で
  • 20:35 - 20:37
    見事な回答を
    提示してくれています。
  • 20:37 - 20:39
    では、その続きから見て行きましょう。
  • 20:39 - 20:42
    [自分の人生に問を投げるのを止めましょう]
    これからの未来に、一体なにが期待できるんだろう。
  • 20:42 - 20:45
    自分の生きている意味って、何だろう。
  • 20:45 - 20:49
    そうやって、自分の人生に
    問いを投げるのは
  • 20:49 - 20:50
    実は、正しい態度ではない。
  • 20:50 - 20:53
    むしろ、私たちが人生から
  • 20:53 - 20:55
    「君は、これからどうするんだ」と
  • 20:55 - 20:57
    期待され、問われているんだ。
  • 20:57 - 20:59
    [人生からの問いかけに対し「行動」でこたえる]
    人生は、私たちに毎日
  • 20:59 - 21:01
    さまざまな問いを投げかけて来る。
  • 21:01 - 21:03
    そして、その度に私たちは
  • 21:03 - 21:09
    その問いに対して、口先ではなく
    行動によって答えなければならない。
  • 21:09 - 21:12
    生きるということは
    自分に課せられた使命に対し
  • 21:12 - 21:15
    責任をもって
    全うする事なのだ。
  • 21:15 - 21:19
    人生から要求されることは
    人によって異なるし
  • 21:19 - 21:21
    その瞬間によって、変化もする。
  • 21:21 - 21:24
    だから、人生にどんな意味がるだろうと
  • 21:24 - 21:27
    どれほど考えようが
    答えなど見つかりはしない。
  • 21:27 - 21:29
    [人生からの問いかけは、常に具体的である]
    人生からの問いかけ
  • 21:29 - 21:33
    すなわち、運命とは
    決して漠然としたものではなく
  • 21:33 - 21:35
    常に、具体的な状況となって
  • 21:35 - 21:38
    私たちの目の前に現れる。
  • 21:38 - 21:39
    そして、その度に
  • 21:39 - 21:42
    「さぁ、君はどう行動する」と
    問いかけられているのだ。
  • 21:42 - 21:47
    したがって、今まさに苦しみという課題が
    与えられているのならば
  • 21:47 - 21:51
    そこに対して、人間は
    「運命」を見出さなければならない。
  • 21:51 - 21:54
    [どんな苦しみであっても、それは授かった運命]
    私たちは、自分以外の誰かの苦しみを
  • 21:54 - 21:56
    代わりに背負うことはできない。
  • 21:56 - 21:59
    その運命を授かった本人が
  • 21:59 - 22:02
    その苦しみを背負い
    担わなければならない。
  • 22:02 - 22:04
    [「苦しみ」という課題の中にある君だけの業績]
    しかし、その苦しみの中にこそ
  • 22:04 - 22:09
    本人だけしか達成できない
    唯一無二の、業績があるのだ。
  • 22:09 - 22:14
    こんなことを聞くと、なんて現実離れした
    考え方だと思うかもしれない。
  • 22:14 - 22:18
    しかし、この考え方は
    地獄のような強制収容所生活において
  • 22:18 - 22:22
    我々を絶望させない、唯一の
    思想だったのだ。
  • 22:22 - 22:24
    [フランクル思想の真髄]
    はい!ここで止めましょう。
  • 22:24 - 22:28
    なかなか、ガツン!と響くものが
    あったのではないでしょうか。
  • 22:28 - 22:31
    と言いますのも
    いま、紹介したパートは
  • 22:31 - 22:34
    フランクル思想の
    まさに中心的な部分なのです。
    [フランクル思想の真髄]
  • 22:34 - 22:36
    もう一度整理しますと
  • 22:36 - 22:39
    自分の人生に意義を見出せずに「苦しい」
  • 22:39 - 22:41
    [人間は人生から問われている存在である]
    そういう時は、その考えを
  • 22:41 - 22:43
    クルリと反転させて、人間の方が
  • 22:43 - 22:46
    逆に、人生か
    ら問われている存在であると
  • 22:46 - 22:50
    思考を切り替えてくださいね
    と言っているわけです。
  • 22:50 - 22:51
    [人生に対する絶対肯定]
    また、苦しみにも
  • 22:51 - 22:55
    運命を見出してという
    力強い言葉もありましたが
  • 22:55 - 22:59
    彼が人生というものに対して
    絶対に肯定するという
  • 22:59 - 23:02
    揺るぎないスタンスを
    取っているのが伺えます。
  • 23:02 - 23:03
    [人生における重要な考え方]
    そして、フランクルは
  • 23:03 - 23:08
    人生における重要な考え方を
    もうひとつ、本書で示してくれています。
  • 23:08 - 23:10
    それは、この先の未来に
  • 23:10 - 23:14
    [自分のことを待ってくれている
    存在を意識する]ということです。
  • 23:14 - 23:16
    [待ってくれている存在とはなんでもOK]
    この「待ってくれる存在」というのは
  • 23:16 - 23:18
    人でもモノでも、何でもいいのです。
  • 23:18 - 23:22
    ある人は、いずれ巡り合う
    運命のパートナーや
  • 23:22 - 23:24
    自分の子供や、孫かもしれませんし
  • 23:24 - 23:25
    また、ある人は
  • 23:25 - 23:28
    一生涯、誇りをもって打ち込める仕事。
  • 23:28 - 23:30
    或いは、趣味かもしれません。
  • 23:30 - 23:34
    つまり、未来に待っている「存在」というのは
    人それぞれ、違うのです。
  • 23:34 - 23:37
    そして、未来の世界は
    自分がやって来るのを
  • 23:37 - 23:38
    期待しながら待ってくれている。
  • 23:38 - 23:42
    そうやって、自分を待つ
    何かの存在に意識を向け
  • 23:42 - 23:44
    未来に責任を感じていれば
  • 23:44 - 23:48
    人は絶対に自分の命を
    自ら諦めたりはしない。
  • 23:48 - 23:49
    だから、今
  • 23:49 - 23:51
    この瞬間を乗り越えてください。
  • 23:51 - 23:55
    「我々は人生に、試されているんです」と
    フランクルは解いたのです。
  • 23:56 - 23:59
    ここで[夜と霧]についてはお終いです。
  • 23:59 - 24:01
    では最後に、フランクル思想を理解するうえで
  • 24:01 - 24:03
    非常に重要な
  • 24:03 - 24:05
    [ブーヘンヴァルトの歌]について
  • 24:05 - 24:07
    紹介して終わりたいと思います。
  • 24:07 - 24:08
    [ブーヘンヴァルト強制収容所]
    「ブーヘンヴァルト」というのは
  • 24:08 - 24:11
    ドイツの強制収容所の名前です。
  • 24:11 - 24:14
    場所は、フランクルがいた
    ダッハウ強制収容所から
  • 24:14 - 24:17
    400キロメートルほど離れた所にあります。
  • 24:17 - 24:19
    [囚人がつくり、囚人が歌った行進曲]
    そして、そこにいた囚人たちが
  • 24:19 - 24:20
    歌った行進曲。
  • 24:20 - 24:22
    それが[ブーヘンヴァルトの歌]です。
  • 24:22 - 24:26
    その歌詞の一部を読み上げますので、
    ちょっと、聞いてみてください。
  • 24:26 - 24:27
    [ブーヘンヴァルトよ]
  • 24:27 - 24:30
    [私は、お前を
    忘れることが出来ない]
  • 24:30 - 24:32
    [お前は、私の運命だったのだ]
  • 24:33 - 24:35
    [お前から去った者だけが分かる]
  • 24:35 - 24:37
    [自由がどれほど素晴らしいか]
  • 24:37 - 24:38
    [ブーヘンヴァルトよ]
  • 24:38 - 24:41
    [私は嘆いたり、悲しんだりはしない]
  • 24:41 - 24:45
    [私達の運命が
    いかなるものであろうとも
  • 24:45 - 24:47
    私達はそれでも
  • 24:47 - 24:48
    人生にイエスと言おう]
  • 24:48 - 24:49
    [なぜならその日は
  • 24:49 - 24:51
    いつか来るから]
  • 24:51 - 24:53
    [私達が自由になる日が
  • 24:53 - 24:56
    私達はそれでも人生にイエスと言おう]
  • 24:56 - 24:57
    [なぜならその日は
  • 24:57 - 24:58
    いつか来るから]
  • 24:58 - 25:00
    [それでも人生にイエスと言おう]
    こんな感じの、歌でございます。
  • 25:00 - 25:02
    先ほどフランクルは
  • 25:02 - 25:05
    「苦しみ」という課題を
    運命として捉えましょう。
  • 25:05 - 25:08
    そこに、自分だけの
    業績を見出しましょう。
  • 25:08 - 25:12
    なぜなら、この考え方こそが
    強制収容所のような環境でも、
  • 25:12 - 25:16
    人間を唯一絶望させない
    思想だったんですよ、と言っていました。
  • 25:16 - 25:20
    そんな中、ブーヘンヴァルトの囚人たちは、
    どうしようもない状況下であっても
  • 25:20 - 25:24
    私達は、それでも
    人生に「イエス」と言おうと歌い
  • 25:24 - 25:27
    自分たちの運命を受け入れ、肯定し、
  • 25:27 - 25:30
    自由になれる日が
    我々を待っているのだと
  • 25:30 - 25:32
    叫び続けたのです。
  • 25:32 - 25:35
    つまり、どんなに苦しい人生であっても、
  • 25:35 - 25:36
    どんなに辛い人生あっても
  • 25:36 - 25:41
    すべて人生からの問いかけである、と説く
    フランクルの思想を
  • 25:41 - 25:44
    [ブーヘンヴァルトの歌]は
    見事に表現していると言えます。
  • 25:44 - 25:47
    そして、フランクルは1945年4月
  • 25:47 - 25:51
    遂に、収容所から解放され
    9月に終戦を迎えます。
  • 25:51 - 25:55
    そのあと彼は、わずか9日間で
    [夜と霧]を書き終え
  • 25:55 - 25:57
    世界に衝撃を与えました。
  • 25:57 - 26:02
    更に、自身の収容所体験について
    世界中で講演活動を行い
  • 26:02 - 26:08
    人生の意味を見出せずに嘆いている人に
    勇気を与え続けたといいます。
  • 26:08 - 26:13
    その講演録は、後に書籍となり
    [夜と霧]に次ぐ、彼の代表作として
  • 26:13 - 26:15
    世界中で読み継がれることとなるのです。
  • 26:15 - 26:19
    フランクルは、その本のタイトルを
    [ブーヘンヴァルトの歌]から取り
  • 26:19 - 26:22
    [それでも人生にイエスと言う]
    と名付けました。
  • 26:22 - 26:26
    もし、この動画で[夜と霧]に
    ご興味を持っていただいた方は
  • 26:27 - 26:31
    是非、こちらの作品も
    併せてご一読いただければと思います。
  • 26:31 - 26:33
    心が苦しくて耐えられない時。
  • 26:33 - 26:37
    きっと、フランクルの言葉が
    あなたのことを守ってくれるはずです。
  • 26:38 - 26:39
    というわけで、[夜と霧]
  • 26:39 - 26:41
    以上でございます。
  • 26:41 - 26:42
    いかがでしたでしょうか。
  • 26:42 - 26:46
    重たいテーマでしたけれども
    意外に後味は
  • 26:46 - 26:48
    悪くなかったのではないでしょうか。
  • 26:48 - 26:51
    また、以前紹介した「ニーチェの思想」と
  • 26:51 - 26:55
    今回の話との関連性に気づいた方。
  • 26:55 - 26:56
    恐らくいらっしゃると思います。
  • 26:56 - 26:58
    フランクル思想の中心にある
  • 26:58 - 27:02
    [それでも人生にイエスと言う]
    というこの言葉は
  • 27:02 - 27:06
    ニーチェ哲学のテーマである
    [生の肯定]そのものなんです。
  • 27:06 - 27:10
    ニーチェは、人生の意義を
    見出せなくなってしまう状態のことを
  • 27:10 - 27:12
    「ニヒリズム」と呼びました。
  • 27:12 - 27:14
    そして、それを克服するために
  • 27:14 - 27:19
    「超人思想」や「永遠回帰」といった
    概念を持ち出したわけですが
  • 27:19 - 27:20
    まさに、フランクルは
  • 27:20 - 27:23
    極限状態で、それを体現した人と言えます。
  • 27:23 - 27:25
    [夜と霧]の中には、
  • 27:25 - 27:28
    何度かニーチェの言葉を
    引用するシーンがありますので
  • 27:28 - 27:31
    恐らく思想的影響を
    受けているものと思われます。
  • 27:31 - 27:34
    そういったところにも
    ご注目いただきながら読んでいただくと
  • 27:34 - 27:37
    より作品を楽しんで
    いただけるのではないかなと思います。
  • 27:37 - 27:39
    面白かった、参考になったという方は、
  • 27:39 - 27:42
    高評価・コメントなど
    いただけますと嬉しいです。
  • 27:42 - 27:45
    また、チャンネル登録も
    よろしくお願い致します。
  • 27:45 - 27:47
    ではまた、次の動画でお会いしましょう。
  • 27:47 - 27:48
    ありがとうございました。
Title:
【27分解説】夜と霧|フランクル 自分の人生を肯定できないあなたへ ~絶望的な世界を生き抜く唯一の思想~
Description:

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Video Language:
Japanese
Duration:
27:48
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