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【24分解説】パンセ|パスカル 不幸を引き寄せない、1つの習慣と注意点 ~天才科学者の考察~

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    はい!どうもアバタローです。
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    本日はフランスの哲学者
    ブレーズ・パスカルの
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    [パンセ]について紹介を致します。
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    17世紀の終わりに発刊されて以来
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    欧米においては
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    聖書に次いで
    広く読まれている作品であり、
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    ”人間は考える葦である” という
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    あの名言が刻まれた
    世界的名著になります。
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    パスカルの鋭い人間観察を特徴とする本書は、
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    哲学に関心を持っている方だけではなく
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    人間関係に悩んでいる方。
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    孤独の中で苦しんでいる方。
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    自分の人生に対して
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    満たされない気持ちを
    抱えている方にとっても
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    おおいにご参考いただける1冊です。
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    ただ「パンセ」は、
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    とても面白い作品ではあるのですが
    内容が難しくて、
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    そう簡単には読めないのです。
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    それでいて、「上・中・下巻」
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    解説・補足全て合わせますと
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    1500ページを超す分量があります。
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    更に、「歴史」「宗教」
    作品の「成立背景」など、
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    予備知識を持った上で臨まないと
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    まったく歯が立たない、
    とても手ごわい作品なのです。
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    そのため学校の授業などで
    名前を知る機会はあっても、
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    その中身まで
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    丁寧な説明を受ける機会というのは、
    なかなか無いと思われます。
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    そこで、この動画では、
    [パンセ]と言う作品を
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    幅広い層の方に楽しんでいただけるよう、
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    3つのテーマに沿って分かりやすく
    紹介をして行きたいと思います。
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    1つ目が
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    [人間最大の悪徳]
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    2つ目が
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    [他者に認められたい心]
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    最後3つ目が
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    [不幸を生み出すものの正体]です。
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    もちろんご視聴にあたって
    難しい予備知識は一切要りません。
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    いつも通り手ぶらでOKですので、
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    お茶でも飲みながらリラックスして、
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    どうぞ最後まで
    お付き合いいただければと思います。
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    それでは、参りましょう。
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    ブレーズ・パスカル。
    [パンセ]
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    まずは、この動画の
    全体像からお示し致します。
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    はじめに「パンセ」の著者である
    ブレーズ・パスカルと、
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    この作品が誕生するに至った
    背景についてお話しを致します。
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    「パンセ」は前提知識が肝になりますので、
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    いつもより時間を取って
    丁寧に進めて行きます。
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    その後に作品の内容を
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    3つのテーマに沿ってお伝えし、
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    最後に、”人間は考える葦である”という
    名言に込められた意味について
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    解説を加えて終わりたいと思います。
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    では早速、1つ目から見ていきましょう。
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    ブレーズ・パスカル、彼は1623年、
    [Blaise Pascal(1623-62)]
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    フランス中部の山岳地帯にある
    クレルモンという場所で生まれました。
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    父親は徴税官。
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    母親は地元の裕福な商人の娘ということで
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    経済的には何不自由ない
    恵まれた家庭であったようです。
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    ところが、パスカル本人は
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    2歳の時に重たい病気にかかったことが原因で
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    虚弱体質になってしまったり、
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    さらに3歳の時には
    母親を亡くしてしまったりと、
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    肉体的にも精神的にも
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    決して楽ではない人生を
    歩んで行くことになります。
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    そんな、幼くして苦難を
    背負ってしまったパスカルに
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    彼の父親が与えたもの。
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    それは、自分の人生を賭けた教育でした。
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    パスカルの父親は、
    税金の専門家だったのですが、
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    それと同時に、物理や数学にも長けた
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    アマチュアの科学者でもありました。
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    そこで、学校に行かせることなく
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    自らが教師となり、
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    我が子に英才教育を施したのです。
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    更に、友人の科学者や数学者を自宅に招いては、
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    日々、議論を交わしていた為、
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    時折、息子のパスカルもその教養の深い
    大人たちの輪の中に入っては、
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    知的な刺激を受けていました。
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    その結果、彼は
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    「神童」と呼ばれるほどにその才能を開花させ、
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    わずか12歳にして三角形の内角の和が
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    180度であることを自力で証明し、
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    更に16歳の時に
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    「円錐曲線試論」と呼ばれる
    数学の論文を発表します。
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    学校の授業で習う
    「パスカルの定理」というのは、
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    実は、当時の彼が書いた、
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    この論文の中に
    含まれているものになります。
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    また、30歳の時には、
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    「圧力の伝わり方の法則」
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    通称、「パスカルの原理」を発見しますが
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    これによって、パスカルの名前が
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    後に「圧力の値」を示す単位として採用されます。
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    天気予報で気圧の説明がされる時、
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    ”〇〇ヘクトパスカル”
    という言葉を耳にしますが、
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    これは、彼の名前に因んだものになります。
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    では、そんな現代にまで
    影響を与え続けている天才科学者パスカルは、
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    一体、いつから何をきっかけに
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    哲学に興味を持ち始めたのでしょうか。
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    結論から言いますと、28歳の時に
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    父親が他界したことが
    大きな要因の一つと言われています。
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    パスカルにとって、自分の父親は、
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    才能を花開かせてくれた恩人であり、
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    また、最大の理解者でもありました。
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    そういった、唯一無二の
    存在を失ったことで
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    彼は自分がいま
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    とてつもない孤独の中で
    生きているのではないかと気付き、
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    強烈な不安感に襲われたのです。
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    研究一筋で取り組んできて、成果は出してきた。
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    十分すぎるほどの自己実現を果たして来た。
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    けれど、なぜこんなにも
    私の心は満たされないんだろう。
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    なぜ、こんなにもこの世界は
    生きづらいんだろう。
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    そうだ!私の研究対象を
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    これまでの自然科学ではなく、
    人間に変えてみたらどうだろう。
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    このように彼は、
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    大きな方向転換を決意し、
    「人間とは何か」
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    「生きるとは何か」といった
    根源的な問いを追求する
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    「哲学」という新たな道を
    切り開いて行くことになるのです。
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    では、代表作である[パンセ]とは、
    一体どういう作品なのでしょうか。
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    これは、答えから先に申し上げてしまいますと、
    混乱を招く可能性がありますので
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    まずは、2つのことを先に
    抑えていただきたいと思います。
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    1つ目は、何かといいますと、
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    パスカルの宗教です。
    [パスカルは敬虔なキリスト教徒であった]
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    先ほど見て来たように
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    彼は数学と自然科学の天才でした。
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    しかし、神という存在を強く信じている
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    敬虔なキリスト教徒でもあったのです。
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    因みに、パスカルの父親も兄妹も
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    家族全員、みなが敬虔なクリスチャンです。
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    親子揃って理数系ではあるのですが、
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    神という存在はそもそも
    理性で捉えられる存在ではなく、
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    心で感じるものという思想が
    彼らの中にはあったのです。
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    そして、もう1つが
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    パスカルが生きた時代です。
    [17世紀のヨーロッパ]
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    彼が活躍したのは
    17世紀のヨーロッパです。
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    当時のヨーロッパと言えば
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    そうです!「科学革命」です。
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    「地動説」を唱えたガリレオ・ガリレイ。
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    「万有引力の法則」を発見した
    アイザック・ニュートン。
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    「方法序説」を表したルネ・デカルト。
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    こういった近代科学の先駆けとなる
    スーパースターが大暴れをしている、
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    世はまさに「大科学革命時代」なのです。
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    これによって、何が起こったかと言えば、
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    人間の「心」の変化です。
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    これまで、当たり前のように信じて来た
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    「神」という絶対的な存在に
    疑いの目を向け始め、
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    信仰という行為から人々の心が、
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    徐々に離れて行ったのです。
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    では、そんな中、
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    敬虔なキリスト教徒であったパスカルは、
    どうだったのでしょうか。
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    キリスト教を捨て、
    信仰を諦めたのかというと
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    勿論そうではありません。
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    それどころか、神を信じない人間たちに
    キリスト教信仰の正当性を
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    分からせてやりたいという熱い思いが
    心の中で煮えたぎっていたのです。
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    そして、パスカルが32歳の時、
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    遂に彼の思想を決定づける
    ミラクルイベントが発生します。
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    それは1656年3月24日、パリにある
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    ポールロワイヤル修道院で起こりました。
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    パスカルの姪である
    10歳の少女マルグリット。
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    彼女は3年以上
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    涙嚢炎(るいのうえん)と呼ばれる
    目の病気を患っていました。
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    目から喉にかけて酷い炎症をおこし、
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    失明どころか
    命すら落としかねないほど、
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    症状は悪化していたと言います。
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    そんな中、
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    キリストが処刑の時に被らされていた
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    荊(いばら)の一部部分と信じられていた
    聖荊(せいけい)に触れたことで
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    なんと!マルグリットの涙嚢炎が
    完治してしまったというのです。
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    嘘か誠か
    実際のところは分かりませんが、
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    これは後に、「聖荊(せいけい)の奇跡」と呼ばれ、
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    当時の宗教界を揺るがすほどの
    大事件となったそうです。
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    パスカルは、自分と血縁関係にある
    姪っ子に起こった奇跡に、
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    凄まじい衝撃を受けると共に
    その思想を確固たるものとします。
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    そして、自分の知性と全生命力をかけて、
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    キリスト教信仰の
    正当性を訴える為の作品を書き、
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    「理性が猛威を振るう時代にぶつけてやる!」と、
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    一大決心をするのです。
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    そんな執念をもって
    原稿を書き上げていったパスカルですが、
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    なんと!完成に至る前に
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    39歳という若さで亡くなってしまいます。
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    さぞかし無念であったと思われますが、
    唯一の救いは、
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    彼の施策がびっしり書き込まれた
    文章の断片だけは、
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    キレイに残っていたのです。
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    そこで、遺族たちが中心となって
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    パスカルの意志が宿った文章の欠片を繋ぎ合わせ
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    未完に終わった幻の著作に編集を施し、
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    命を吹き込むことに成功します。
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    それが、これから皆さまと一緒に読んでいく
    [パンセ]という作品なのです。
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    因みに「パンセ」というのは、
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    「思考」とか、
    「思索」を意味する
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    フランス語です。
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    この作品は前後の繫がりのない
  • 8:24 - 8:26
    断片的な文章の集合体なのですが、
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    パスカルの人間観察と
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    キリスト教信仰にまつわる記述というように、
  • 8:31 - 8:33
    大きく2つに分けることができます。
  • 8:33 - 8:35
    ただ、この動画では冒頭に申し上げましたように
  • 8:35 - 8:37
    前者に焦点を当て
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    [人間最大の悪徳]
  • 8:39 - 8:40
    [他者に認められたい心]
  • 8:40 - 8:42
    [不幸を生み出すものの正体]
  • 8:42 - 8:45
    という、3つのテーマに沿って
    進めて参りたいと思います。
  • 8:45 - 8:47
    では、早速1つ目のテーマ。
  • 8:47 - 8:50
    [人間最大の悪徳]から見ていきましょう。
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    自分しか愛さず、
    自分しか尊敬しないこと。
  • 8:54 - 8:57
    それが自己愛の本質であり、
    「自我」の本質である。
  • 8:57 - 9:01
    偉大な人間でありたいが、
    実際は取るに足りない。
  • 9:01 - 9:05
    幸福な人間でありたいが、
    実際は惨めである。
  • 9:05 - 9:10
    愛と尊敬の対象でありたいが、実際は
    「嫌悪」と「侮蔑」の対象である。
  • 9:10 - 9:13
    こういった困惑した状況は、
  • 9:13 - 9:14
    人間の心の中に
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    あるモノを生み出す。
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    それは、最も不正で
    最も罪深い情念だ。
  • 9:19 - 9:23
    こういった状態に置かれた人間は、
    自分自身を責め、
  • 9:23 - 9:28
    自分の欠点を露わにする真実に対して、
    極度の憎しみを抱く。
  • 9:28 - 9:32
    そして、この真実を
    ”握りつぶしてやりたい!” と願うのだ。
  • 9:32 - 9:36
    しかし、真実は真実であり、
    それが消えることもなければ
  • 9:36 - 9:39
    他のものに
    置き換わったりすることもない。
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    そこで人間は、その真実に対し
    どんな行動をとるかと言えば、
  • 9:43 - 9:48
    自分と他人の知る限りにおいて、
    それを破壊しようと試みる。
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    つまり、自分の欠点を
    他人に知られないように、
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    必死で覆い隠そうとするのだ。
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    人間というのは、自分の欠点を
    誰かに指摘されることを嫌うし、
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    人に見破られてしまうのも
    耐えられない生き物だ。
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    確かに、欠点ばかりであることは悪いことだが、
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    そのことを認めない態度は、
    それ以上に悪いことだ。
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    なぜなら、悪いことの上に、
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    更に意図的な誤魔化しを
    加えているからだ。
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    誰だって他人に騙されたら
    嫌な気持ちがするだろう。
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    例えば、あなたの知り合いで、
    自分を本来の実力以上に見せかけ
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    より多くの尊敬を集めたい、と
    願っている人が居たらどうだろう。
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    それを正しい態度であると、感じるだろうか。
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    少なくとも、私はそうは思わない。
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    それならば、私たちが他人を騙し、
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    本来の自分よりも大きく見せて、
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    評価を上げようとすることは、
    正しい態度ではないのだ。
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    はい!ここで止めます。
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    [人間にとって、最大の悪徳は
    「自己愛」である]
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    これが、パスカルの出した結論です。
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    では、そもそも「自己愛」とは
    何なんでしょうか?
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    それは、自分だけを愛し、
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    自分だけを尊敬しようとする
    態度のことです。
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    そして、自己愛の中心にあるもの。
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    それが「自我」なのだ、と言っているんです。
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    つまり、人間は誰しも
    「自我」を持っている以上、
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    最大の悪徳である
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    「自己愛」を抱えながら生きている
    ということになります。
  • 11:04 - 11:06
    ただ大事なのは、ここからです。
  • 11:06 - 11:07
    パスカルは、別の断章で
  • 11:07 - 11:11
    [自我は憎むべきもの]であると
    主張しているんです。
  • 11:11 - 11:13
    自我は憎むべきもの...
  • 11:13 - 11:16
    ちょっと何が言いたいのか
    分かりにくいですねぇ。
  • 11:16 - 11:17
    彼の理屈によると、
  • 11:17 - 11:20
    どうやら自我は、
    2つの性質があるようです。
  • 11:20 - 11:21
    ひとつが
  • 11:21 - 11:25
    [1.自分を全ての物事の中心にしようとする]
    点です。
  • 11:25 - 11:27
    要するに、自我の働きによって
  • 11:27 - 11:31
    自己中心的な考えや態度を
    とってしまうというわけです。
  • 11:31 - 11:34
    ただ、神の存在を中心に
    考えているパスカルにとって、
  • 11:34 - 11:39
    こういった自己中心的な性質を持つ自我は、
    ハッキリ言ってしまえば、
  • 11:39 - 11:44
    信仰の障害物であり、
    あまり歓迎できるものではないのです。
  • 11:44 - 11:45
    ですから、彼は自我を
  • 11:45 - 11:51
    それ自体が不正なものであると、
    たいへん厳しい言葉で表現したわけです。
  • 11:51 - 11:53
    そして、自我のもうひとつの性質は、
  • 11:53 - 11:55
    [2.他人を従わせようとする]点です。
  • 11:55 - 11:58
    例えば、誰かにマウンティングされてしまったら
  • 11:58 - 12:00
    とても嫌な気持ちがすると思います。
  • 12:00 - 12:04
    つまり、自我は他人に対いて暴君になろうとする
  • 12:04 - 12:07
    不快な性質をもつものだ、というわけです。
  • 12:07 - 12:09
    このような理由からパスカルは、
  • 12:09 - 12:12
    自我を憎むべき対象として捉えていたのです。
  • 12:12 - 12:13
    ただ、どうでしょう。
  • 12:13 - 12:15
    確かにそういった自我を丸出しにして、
  • 12:15 - 12:18
    人を不快にさせてしまう方も
    居るかもしれませんが、
  • 12:18 - 12:19
    余計な自我を抑えて、
  • 12:19 - 12:23
    他者に対して、親切な
    行動がとれる人だっているわけです。
  • 12:23 - 12:28
    ですから、自我を憎めというのは、
    流石に表現としては、言い過ぎではないかと
  • 12:28 - 12:31
    そのように思われた方も
    いらっしゃるのではないでしょうか。
  • 12:31 - 12:33
    ただ、余計な自我を抑えて、
  • 12:33 - 12:36
    他人を思いやる親切な行動をとったとしても
  • 12:36 - 12:38
    それは、不快なものを取り除いたに過ぎず、
  • 12:38 - 12:41
    自我そのものが、不正であることには変わりはない
  • 12:41 - 12:43
    というのがパスカルの考えなんです。
  • 12:43 - 12:45
    さらに言うと、自我を抑えて
  • 12:45 - 12:48
    他人を思いやる親切な行動をとったとしても
  • 12:48 - 12:51
    それは、他人によく思われたい虚栄心であって、
  • 12:51 - 12:53
    その虚栄心を突き詰めていけば、
  • 12:53 - 12:56
    結局は、他者からの評価を意識しているので
  • 12:56 - 13:00
    根本にあるのは、結局「自己愛」じゃないかと
    そのように言われてしまうのです。
  • 13:00 - 13:03
    このようにパスカルは、人間の本質を鋭く突き
  • 13:03 - 13:06
    読者に何とも言えない内省を
    迫って来るのです。
  • 13:06 - 13:08
    では、人が他人に「認められたい」とか、
  • 13:08 - 13:12
    「褒められたい」と思うことは、
    果たして悪い事なんでしょうか。
  • 13:12 - 13:14
    また人間は、虚栄心を捨てるべきだと
  • 13:14 - 13:17
    パスカルはそのような主張を
    しているのでしょうか。
  • 13:17 - 13:19
    それでは、ふたつ目のテーマである
  • 13:19 - 13:21
    [他者に認められたい心]に移り
  • 13:21 - 13:23
    彼の本心を探っていきましょう。
  • 13:23 - 13:27
    人間の思い上がりというのは、
    厄介なものだ。
  • 13:27 - 13:30
    全世界の人間に、自分のことを知って貰いたい。
  • 13:30 - 13:32
    更には、自分が死んだ後も
  • 13:32 - 13:34
    自分のことを知られていたい
    と願っているのだ。
  • 13:34 - 13:40
    にも拘わらず、自分の周りにいる
    5,6人に評価されるだけで満足してしまう
  • 13:40 - 13:42
    実に軽薄な生き物じゃないか。
  • 13:42 - 13:44
    人間は、誰しも虚栄心を持っている。
  • 13:44 - 13:47
    兵士も、料理人も、湾岸で働く労働者も
  • 13:47 - 13:49
    それぞれ自慢ばかりして、
  • 13:49 - 13:51
    自分を褒めてくれる人間を欲しがっている。
  • 13:51 - 13:54
    哲学者だって、賞賛してくれる人が欲しいし
  • 13:54 - 13:58
    批判を書くような人も
    批判が的確だと褒められたいし、
  • 13:58 - 14:02
    更に、その批判を読んだ者も
    それを読んだことを褒められたがっている。
  • 14:02 - 14:04
    これを書いている、私だって同じだ。
  • 14:04 - 14:07
    心の何処かで、
    そうした願望を持っている。
  • 14:07 - 14:10
    また、人間の好奇心も私に言わせれば、
  • 14:10 - 14:12
    大抵は、虚栄心によるものだ。
  • 14:12 - 14:14
    人が何かを知りたがるのは何のためだ。
  • 14:14 - 14:17
    それについて誰かに話すためだろう。
  • 14:17 - 14:19
    さもなければ、遠い海の果てまで
  • 14:19 - 14:22
    大航海の旅に出ようなんて誰も思わない。
  • 14:22 - 14:24
    自分が見たこと、自分が聞いたこと。
  • 14:24 - 14:26
    それをいつか人に伝えたい。
  • 14:26 - 14:31
    そういった希望もないままに、
    ただ純粋な楽しみだけで、
  • 14:31 - 14:33
    好奇心など広がるはずはないのだ。
  • 14:33 - 14:37
    人間の最大の卑しさというのは、
    名誉の追求だ。
  • 14:37 - 14:38
    しかし、裏を返せば
  • 14:38 - 14:42
    それは人間の優秀さを示す
    最大の印でもある。
  • 14:42 - 14:44
    この世界にどれほどの
    所有物を持っていようが、
  • 14:44 - 14:48
    どれほど健康で
    快適な生活に恵まれていようが、
  • 14:48 - 14:52
    他者からの尊敬が手に入らない限り
    人間は何処までも満足しない。
  • 14:52 - 14:56
    何をもってしても
    この欲望から逃げ切ることはできないのだ。
  • 14:56 - 15:00
    これこそ、人間の心の
    最も消し難い性質と言えるだろう。
  • 15:00 - 15:01
    はい!ここで止めます。
  • 15:01 - 15:06
    つまりパスカルは、人間のもつ「虚栄心」や
    「承認欲求」そのものを
  • 15:06 - 15:08
    全否定しているわけではないのです。
  • 15:08 - 15:12
    それによって新しい技術を発明したり、
    文明を発展させたりすることで、
  • 15:12 - 15:16
    人類は進歩してきましたし、
    それは事実なのです。
  • 15:16 - 15:20
    ですから、虚栄心は
    人間の「卑しさ」の象徴であると同時に
  • 15:20 - 15:23
    「優秀さ」の象徴でもある説き、その上で、
  • 15:23 - 15:26
    [人間の心の最も消し難い性質]
    と言っているんです。
  • 15:26 - 15:30
    つまり、虚栄心というのは、
    純粋な「善」でも「悪」でもなく
  • 15:30 - 15:32
    受け入れるべき人間の
    性(サガ)と言えるわけです。
  • 15:32 - 15:35
    ただ、ここまでの話しを
    あらためて振り返ってみますと、
  • 15:35 - 15:38
    人間は、何処まで行っても心が晴れない
  • 15:38 - 15:41
    不幸で虚しい存在であるように
    思えてしまいます。
  • 15:41 - 15:45
    では、パスカルは一体、
    人間の「幸・不幸」について
  • 15:45 - 15:47
    どのような考えをもっていたのでしょうか。
  • 15:47 - 15:49
    それでは、3つ目のテーマ。
  • 15:49 - 15:51
    [不幸を生み出すものの正体]について
    見ていきましょう。
  • 15:51 - 15:53
    人間の不幸の全ては、
  • 15:53 - 15:56
    ただ一つのことに由来するものと思われる。
  • 15:56 - 15:57
    それは、すなわち
  • 15:57 - 16:00
    部屋の中で、ひとり静かに
    留まっていられないことだ。
  • 16:00 - 16:02
    一生遊んで暮らせるだけの
  • 16:02 - 16:06
    十分な財産を持っている
    国の権力者を見てみるがいい。
  • 16:06 - 16:09
    なぜ彼は、わざわざ海を越えたり、
  • 16:09 - 16:11
    戦に出かけたりするのだろうか。
  • 16:11 - 16:13
    それは、彼が自分の家の中で、
  • 16:13 - 16:16
    ただジッとしているのが
    苦痛で堪らないからだ。
  • 16:16 - 16:18
    社交の場に足を運ぶこと。
  • 16:18 - 16:19
    ギャンブルをすること。
  • 16:19 - 16:22
    こういった気晴らしを一切求めず、
  • 16:22 - 16:24
    ただ、家の中でジッとしていたところで、
  • 16:24 - 16:26
    人間の心は満たされない。
  • 16:26 - 16:28
    たとえ、一国の王であったとしても
  • 16:28 - 16:32
    何の気晴らしもなければ、
    今後、起こりうる反乱や
  • 16:32 - 16:34
    避けることのできない「病」や「死」といった
  • 16:34 - 16:37
    余計なことばかりが
    頭に浮かんできてしまうだろう。
  • 16:37 - 16:40
    つまり、「気を紛らわす」 という
    行為が無ければ、
  • 16:40 - 16:43
    「王」という、最高に
    恵まれた地位にいる人間であっても
  • 16:43 - 16:45
    たちまち不幸になる。
  • 16:45 - 16:47
    自由に賭け事をしたり、
  • 16:47 - 16:50
    気を紛らわしたりできる
    最下層の家来よりも
  • 16:50 - 16:51
    最上位にいる王の方が
  • 16:51 - 16:53
    よっぽど不幸になってしまうのだ。
  • 16:53 - 16:57
    だから人間活動の中には、
    賭け事とか、誰かとの会話、
  • 16:57 - 17:03
    戦争、名誉ある職の追求といったことが
    こんなにも求められるのである。
  • 17:03 - 17:07
    ただ、こういった行動ひとつひとつに
    幸福の源泉があるわけではない。
  • 17:07 - 17:09
    真の幸福とは、
  • 17:09 - 17:11
    賭け事で儲ける金でもなければ
  • 17:11 - 17:14
    狩りによって
    獲物を得ることでもないのだ。
  • 17:14 - 17:17
    何の苦労もせず「ホラッ、くれてやる」
    と言われたところで、
  • 17:17 - 17:19
    心は決して満たされないだろう。
  • 17:19 - 17:20
    人間が求めるのは、
  • 17:20 - 17:23
    不幸な状態が頭に浮かんできてしまうような
  • 17:23 - 17:25
    のんびりとした時間ではない。
  • 17:25 - 17:27
    ただ、自分の不幸を忘れさせ
  • 17:27 - 17:29
    気を紛らわせてくれる
  • 17:29 - 17:31
    「騒ぎ」を求めているのである。
  • 17:31 - 17:32
    はい!ここで止めます。
  • 17:32 - 17:35
    家の中でやることがなく、
    ジッとひとりでいると、
  • 17:35 - 17:39
    人間は余計なことを考え、その結果、
  • 17:39 - 17:40
    不幸な状態に陥ってしまう。
  • 17:40 - 17:42
    これがパスカルの考えです。
  • 17:42 - 17:44
    確かに暇すぎると、
  • 17:44 - 17:46
    思い出したくない人の顔が浮かんできたり、
  • 17:46 - 17:48
    将来のことが不安になったり、
  • 17:48 - 17:51
    過ちを犯した自分を責めたり、恥じたり、
  • 17:51 - 17:53
    何かとネガティブモードに
    なってしまいがちです。
  • 17:53 - 17:55
    ただ、パスカルは
  • 17:55 - 17:56
    これは、あなただけじゃなくて、
  • 17:56 - 17:59
    王様だって、誰だって
    人間みんな同じなんだよと
  • 17:59 - 18:00
    そう言っていました。
  • 18:00 - 18:03
    そこでパスカルは、その解決策として
  • 18:03 - 18:07
    自分の気を紛らわす
    気晴らしの必要性を説いていました。
  • 18:07 - 18:09
    ただ、彼の言っている「気晴らし」というのは、
  • 18:09 - 18:13
    ストレス解消の娯楽だけを
    指しているのではありません。
  • 18:13 - 18:14
    会社やバイト先に行って、
  • 18:14 - 18:17
    一生懸命、仕事をすること。
  • 18:17 - 18:19
    家の中で、テキパキと家事を行うこと。
  • 18:19 - 18:23
    こういった活動も含めて、パスカルは
    「気晴らし」と呼んでいるんです。
  • 18:23 - 18:26
    つまり、何か作業に没頭し、
  • 18:26 - 18:28
    自分の意識が不幸な状態に向かないよう、
  • 18:28 - 18:32
    気持ちを紛れさせる活動全般を
    彼は「気晴らし」と呼び、
  • 18:32 - 18:36
    人間はこれなしでは、
    生きて行けない存在なんだ、と説いたんです。
  • 18:36 - 18:38
    ただ、話しはこれで終わりません。
  • 18:38 - 18:39
    パスカルは本書で、
  • 18:39 - 18:42
    気晴らしは人間を不幸から遠ざける為に、
  • 18:42 - 18:45
    絶対に必要だという
    主張を展開しておきながら
  • 18:45 - 18:46
    また、違うところでは、
  • 18:46 - 18:51
    気晴らしは、人間の悲惨さの
    最たるものであるという主張もしているのです。
  • 18:51 - 18:55
    ちょっと、混乱しそうですが、これは
    一体どういうことでしょうか。
  • 18:55 - 18:56
    結論から言いますと
  • 18:56 - 18:58
    気晴らしは不幸から目を反らし、
  • 18:58 - 19:02
    気持ちを紛れさせる、
    という行動がある一方で、
  • 19:02 - 19:06
    自分自身を冷静に顧みることを
    忘れさせてしまうという、
  • 19:06 - 19:07
    副作用もあるんです。
  • 19:07 - 19:09
    例えば、朝から晩まで仕事漬け。
  • 19:09 - 19:12
    或いは、ギャンブル漬けという生活でしたら
  • 19:12 - 19:15
    確かに、余計なことを考える時間は
    無いと言えます。
  • 19:15 - 19:19
    ただ、それによって
    自分と対話する余白まで無くなってしまい、
  • 19:19 - 19:22
    その結果、新しい人生の可能性や
  • 19:22 - 19:25
    方向性を見出だすチャンスを
    失ってしまうのです。
  • 19:25 - 19:29
    例えば、パスカルの人生を
    思い出してみてください。
  • 19:29 - 19:31
    彼は30歳手前まで、
  • 19:31 - 19:35
    数学や自然科学の研究という
    気晴らしに没頭していました。
  • 19:35 - 19:38
    しかし、父親の死という
    出来事によって余白が生まれ、
  • 19:38 - 19:42
    それによって自分の人生を深く見つめ直し、
  • 19:42 - 19:44
    哲学という新たな道が開かれたわけです。
  • 19:44 - 19:48
    つまり、「どう生きるか」 という
    人生の重要課題を発見するには、
  • 19:48 - 19:53
    自分の人生を「気晴らし」だけで
    埋め尽くしてはいけない、ということになるんです。
  • 19:53 - 19:55
    ただ、ここまで言われてしまいますと、
  • 19:55 - 19:58
    結局私たちは、
    どうすればいいのですかと。
  • 19:58 - 20:01
    何処にも逃げ道が
    ないじゃないですかと。
  • 20:01 - 20:03
    そのように突っ込みたくなりますが、
  • 20:03 - 20:06
    パスカルからしてみれば、
    そういった読者の反応は
  • 20:06 - 20:08
    想定の範囲内です。
  • 20:08 - 20:10
    彼はこのあと、
    更に考察を深めていき
  • 20:10 - 20:13
    最終的に完全に出口を塞いだ上で、
  • 20:13 - 20:18
    ホラッ!だから私たちは
    「神を信じるしかないのですよ」と。
  • 20:18 - 20:21
    読者を目的の場所まで誘う
    設計になってるんです。
  • 20:21 - 20:22
    ただ、この動画は、
  • 20:22 - 20:26
    あくまで彼の人間観察に注目して
    進めていますので、
  • 20:26 - 20:28
    これ以上の深掘りは致しません。
  • 20:28 - 20:30
    なので、このテーマの結論としては
  • 20:30 - 20:34
    不幸を避けるための対抗手段として
    「気晴らし」は有効でありますが、
  • 20:34 - 20:38
    そればかりに偏ると、
    自らを省みる時間が無くなるので
  • 20:38 - 20:41
    注意しましょう、とういところを
    落としどころにしたいと思います。
  • 20:42 - 20:44
    3つのテーマに関しては、これでお終いです。
  • 20:44 - 20:46
    最後にパスカルのあの名言。
  • 20:46 - 20:49
    [人間は考える葦である]
  • 20:49 - 20:52
    というフレーズが登場する
    パートに触れて終わりたいと思います。
  • 20:52 - 20:54
    たいへん有名な言葉ですが、
  • 20:54 - 20:57
    これには一体どんな意味が
    込められているのでしょうか。
  • 20:57 - 20:58
    では早速、みていきましょう。
  • 20:58 - 21:01
    人間は一本の葦に過ぎない。
  • 21:01 - 21:04
    自然の内で最もか弱いものだ。
  • 21:04 - 21:07
    だが、それは考える葦だ。
  • 21:07 - 21:11
    人間を押し潰すのに
    宇宙全体が武装する必要はない。
  • 21:11 - 21:13
    「一吹きの蒸気」
  • 21:13 - 21:14
    「一滴の水」
  • 21:14 - 21:17
    それだけで、人間を殺すのには十分だ。
  • 21:17 - 21:19
    しかし、宇宙に押し潰されようとも
  • 21:19 - 21:22
    人間は自分を殺すものよりも更に尊い。
  • 21:22 - 21:24
    なぜなら人間は、
  • 21:24 - 21:27
    自分がいずれ死ぬことを知っているからだ。
  • 21:27 - 21:30
    また、自分よりも宇宙の方が大きく、
  • 21:30 - 21:33
    優位な存在であることを分かっているからだ。
  • 21:33 - 21:36
    しかし、宇宙は
    そんなことを考えたりはしない。
  • 21:36 - 21:39
    つまり、私たちの尊厳の根拠というのは、
  • 21:39 - 21:42
    この、「考える」という
    行為の内にあるものなのだ。
  • 21:42 - 21:45
    だから、よく考えることに努めよう。
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    ここに、「道徳の原理」がある。
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    はい!ここで止めます。
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    言ってることが分かるようで
    分からないパートですが、
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    先に申し上げておきますと、
    人間はほかの動植物と違って、
  • 21:55 - 22:01
    「考える」という機能が付いているから
    尊い存在なのだ、という意味ではありません。
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    ここはよく、誤解されるポイントになります。
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    実は、このパートとは別にパスカルは、
    [パンセ]の中で、
  • 22:07 - 22:08
    次のように述べています。
  • 22:08 - 22:12
    人間というものは、どう見ても
    考えるために作られている。
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    考えることが人間の尊厳の全てなのだ。
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    人間の価値の全て、その義務の全ては、
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    正しく考えることにある。
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    はい、どうでしょう。
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    要するに、何でもかんでも考えていれば
    それでよし!という訳ではなく、
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    人間の価値の全て、義務の全ては
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    「正しく考えることにある」と、
    パスカルはそう言っているんです。
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    では、「正しく考える」とは
    何なんでしょうか。
  • 22:37 - 22:39
    それは、自分の人生に
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    いつか終わりの時間がやって来るという、
  • 22:41 - 22:44
    悲惨な運命を自覚し、その上で、
  • 22:44 - 22:46
    今の自分のあるべき姿や
  • 22:46 - 22:49
    これからの自分の生き方について考えること。
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    それが彼の言っている
    「正しい思考の働かせ方」であり、
  • 22:53 - 22:55
    その中にこそ、
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    人間の尊厳の根拠があるのだ
    と言っているんです。
  • 22:58 - 23:00
    つまり、思考ができる人間を
  • 23:00 - 23:03
    ただ、「素晴らしい」と
    謳っているわけではないのです。
  • 23:03 - 23:05
    それどころか、パスカルは本書の中で、
  • 23:05 - 23:09
    多くの人は、自分たちの背負っている運命を忘れ
  • 23:09 - 23:12
    正しく思考を働かせていないと、
    嘆いているんです。
  • 23:13 - 23:15
    つまり、「人間は考える葦である」 という
  • 23:15 - 23:16
    言葉の中には
  • 23:16 - 23:20
    正しい思考を手放してしまった
    人間に対する「警告」と
  • 23:20 - 23:25
    本来の尊厳を取り戻して欲しい、という
    「期待」が込められていたというわけです。
  • 23:25 - 23:26
    人はどうあるべきで、
  • 23:26 - 23:29
    そして、どう生きるべきなのでしょうか。
  • 23:29 - 23:32
    パスカルは、一本の葦に過ぎない人間に
  • 23:32 - 23:33
    今もそうやって
  • 23:33 - 23:34
    問いを投げ続けているのです。
  • 23:35 - 23:38
    というわけで、パスカルの[パンセ]
    以上でございます。
  • 23:38 - 23:40
    いかがでしたでしょうか。
  • 23:40 - 23:42
    前回紹介いたしました[思考の整理学]は、
  • 23:42 - 23:46
    「考えることの楽しさを知って貰う」
    というテーマでした。
  • 23:46 - 23:50
    なので今回は、
    「考えること」そのものを考え
  • 23:50 - 23:52
    つまり、人間にとって「考える」って、
  • 23:52 - 23:55
    どういうことなんだろうという
    問いを投げかけてくれる、
  • 23:55 - 23:58
    そんな哲学の古典的名作を選んでみました。
  • 23:58 - 24:00
    ご興味のある方は是非、
    チェックしてみてください。
  • 24:00 - 24:04
    面白かった、参考になったという方は
    高評価・コメントなどいただけますと嬉しいです。
  • 24:04 - 24:07
    また、チャンネル登録も
    よろしくお願い致します。
  • 24:07 - 24:09
    ではまた、次の動画でお会い致しましょう。
  • 24:09 - 24:10
    ありがとうございました。
Title:
【24分解説】パンセ|パスカル 不幸を引き寄せない、1つの習慣と注意点 ~天才科学者の考察~
Description:

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Video Language:
Japanese
Duration:
24:11

Japanese subtitles

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