なぜヒトには３つ目の瞼があるのか？ ― ドルサ・アミール

目頭のところにピンク色のものが隠れていますよね？実は３つ目の瞼の名残なのです。ヒトにおいては退化しており、もはや本来の目的を果たしていません。ヒトの体には、他にもいくつかの退化した構造があり、我々の祖先のうちのある種から次の種へと静かに受け継がれてきました。しかし、なぜこんなにも長く受け継がれてきたのでしょうか？ドルサ・アミールが調査します。

講師：ドルサ・アミール
監督：アヴィ・オファー
＊このビデオの教材：https://ed.ted.com/lessons/why-do-humans-have-a-third-eyelid-dorsa-amin

目頭のところにピンク色のものが
隠れていますよね？

これは３つ目の瞼の名残で

半月皺襞（はんつきしゅうへき）といいます

鳥やいくつかの哺乳類に
顕著にみられるもので

埃や塵が目に入らないように
風よけワイパーの役割を果たしています

しかしヒトにおいては
機能していません

退化したものであり もはや
本来の目的を果たしていないのです

ヒトの体には
半月皺襞のような退化した構造が

他にもいくつかあります

ホモ・サピエンスが登場する
ずっと以前に退化したのですが

我々の祖先のある種から次の種へと
静かに受け継がれてきました

では なぜ長い間
受け継がれてきたのでしょうか？

この質問に答えるのに
自然選択について理解すると良いでしょう

自然選択とは
与えられた環境の中で

生物が生き延び 繁殖することに
好都合な性質が

高い確率で
次世代に受け継がれることをいいます

環境が変わるにつれ
かつて役に立っていた性質は 害になり得ます

このような性質は淘汰されやすく

やがて 個体群から
消えてしまいます

しかし 性質が積極的に
害を及ぼさない限り

役に立たなくても淘汰されずに
受け継がれるのです

尾骨を見てみましょう

進化生物学者は
気候が乾燥するにつれ

草原が現れ

尻尾(しっぽ)を携えた祖先が木を降りて
地上を歩きはじめたと考えています

木に登っているときに
役に立っていた尻尾は

地上を歩く能力の
邪魔になりはじめたのです

よって 変異により
尻尾の長さが短くなった祖先が

地上での生活を成功させ

短い尻尾を次世代に継承できるほど
長く生き延びることができたのです

おそらくこの変化は
2000万年ほど前に

何百万年の時間をかけて
徐々に起こり

我々の祖先についていた
外側に出ている尻尾は消え去ったのです

現在 ヒトの胎児が成長するにつれ
尻尾が消滅することがわかっています

しかし おそらく
何の害もないという理由で

短い尾骨が残っているのです

実際に 他の特定の筋肉の
固定点としての

ちょっとした機能を果しています

85パーセントほどのヒトに
長掌筋という退化した筋肉があります

これが あるかを見るには

手を平らな面に置いて
小指と親指をつけてください

手首の真ん中に
浮かび上がった小さい帯は

現在は機能していない筋肉に
付随している腱です

この場合 長掌筋のないヒトがいるからこそ
機能を突き止めることができたのです

退化した性質は消え去る誘因がなければ
残るものですが

所有し続ける誘因もないので

偶然に起こる変異によって
その機能が個体群の一部から

排除されることがあります

我々の霊長類の親戚を見ると

地上で より多くの時間を
過ごす種の中には

長掌筋のないものがいますが

木の上でより多くの時間を過ごす種には
必ず長掌筋があります

枝から枝へと飛び移るのに
役に立っていたのが

地上に降りてきたときに
必要がなくなったと考えられています

一方 盲腸は祖先が植物物質を
消化するために使われた

腸管系の一部であった可能性があり

食生活が変わるにつれ腸管系の一部が
縮小しはじめたのかもしれません

盲腸は他の退化した機能とは違い
常に害がないということではなく

危険なほどの炎症を
起こすことがあります

ヒトの歴史において 盲腸の破裂は
死刑宣告に匹敵します

では なぜ継承され続けてきたのでしょうか？

ゆっくりと淘汰されている
最中だった可能性がありますし

盲腸を小さくする変異が
起きなかったのかもしれません

あるいは 他の恩恵ー

例えば 食べ物を消化させるための
菌の貯蔵庫なのかもしれません

しかし 実際はなぜ盲腸が存在し続けるのか
よくわかっていません

進化は不完全な過程なのです

ヒトは何百万年もの試行錯誤や
偶然の産物であり

進化の遺物が多く残されており
進化の歴史を物語っています