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健全な決断をするのはなぜ難しいのか

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    2007年4月の出来事です
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    ニュージャージー州知事だった
    ジョン・コーザイン氏は
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    恐ろしい自動車事故に遭いました
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    彼がこのSUVの助手席に
    乗っていたところ
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    ガーデンステート・パークウェイで
    車が衝突しました
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    彼は 近くの外傷センターへ
    搬送されました
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    何箇所もの骨折や
    裂傷を負った状態でした
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    即座の手術と
    7単位もの輸血
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    人工呼吸器の助けが
    必要になり
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    その後も何度も
    手術をすることになりました
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    彼が生き残ったのは
    驚くべきことです
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    でも もっと驚くべきなのは
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    彼がシートベルトを
    していなかったことかもしれません
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    実際 彼はシートベルトを
    つけたことがありませんでした
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    コ―ザイン知事の運転手を務めた
    州警察の警官は
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    シートベルトをつけるよう
    いつも頼んでいましたが
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    彼はしませんでした
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    コーザイン氏は
    ニュージャージー州知事になる前は
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    同州選出の上院議員であり
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    その前は ゴールドマンサックスの
    CEOで
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    同社の株式公開を行い
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    何億ドルも稼ぎました
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    皆さんが 彼のことを
    政治的にどう考え
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    その稼ぎ方を
    どう思っていようとも
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    彼がバカだと言う人は
    いないでしょう
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    しかし 彼は事故の現場に
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    シートベルトをせずにいたのです
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    シートベルトが命を救うことは
    誰でも知っていることなのに
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    この話は 健康に関する行動の
    改善に対する我々のアプローチの
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    根本的な弱点を
    示しています
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    私たちが医師や患者に伝える
    ほぼ全ての事柄は
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    「人間は合理的に行動する」
    という考えに基づいています
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    もし あなたから情報をもらえば
    私はそれを頭の中で処理し
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    その結果として
    私の行いが変わると
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    シートベルトが命を救うことを
    彼は知らなかったのでしょうか?
  • 1:35 - 1:37
    彼だけ聞いてなかったのでしょうか?
  • 1:37 - 1:38
    (笑)
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    ジョン・コーザイン氏に
    不足していたのは知識ではなく
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    行動だったのです
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    常識知らずだった
    わけではありません
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    行動に移さなかっただけです
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    心というのは「高抵抗の通り道」だと
    私は思っています
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    情報で 人の考えを変えるのは
    難しいですが
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    情報で 人の行動を変えるのは
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    さらに難しいのです
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    健康や医療を
    大きく改善するには
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    健康や医療に関わる行動を
    大きく改善するしかありません
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    もしあなたが 私の膝蓋腱を
    打腱器で叩いたら
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    私の脚は前方に動き
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    私が意識的に動かすよりも
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    ずっと速く確実に動くでしょう
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    これは反射です
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    私たちがすべきことは
    同じような「反射的行動」を探し
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    それを医療に組み込むことです
  • 2:34 - 2:35
    しかし問題は
  • 2:35 - 2:38
    人を動機づける
    最も典型的な方法は
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    教育の考えに
    基づいたものだということです
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    人々が取るべき行動を
    取らなかったのは
  • 2:44 - 2:46
    知らなかったからだと
    考えるのです
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    「喫煙が体に良くないと知っていれば
    吸わないはずだ」と
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    あるいは 経済学的に考えます
  • 2:52 - 2:55
    そこでの前提は
    私たちは 常に
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    自分のあらゆる行動について
    損得を計算していて
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    それによって完璧に正しい合理的な
    意思決定をしているというものです
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    もし それが本当なら
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    医者のための完璧な
    支払いシステムや
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    患者のための完璧な 自己負担や
    控除の仕組みを用意さえすれば
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    全てうまくいくはずです
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    実は もっと良い方法が
    行動経済学にあります
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    行動経済学者は 人間の
    非合理性を認識しています
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    私たちは 感情をもとに
    判断を下し
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    また フレーミングや
    社会的状況に影響を受けます
  • 3:22 - 3:26
    自分の長期的な利益を常に最優先にして
    行動しているわけではありません
  • 3:26 - 3:29
    しかし 行動経済学の
    すごいところは
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    人間が非合理的だと
    明らかにしたことではななく
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    人間の非合理性はかなり予測可能だと
    明らかにしたことです
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    この 人の心理的な欠点の
    予測可能性こそが
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    それを克服する戦略を立てる上で
    役に立つのです
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    分かっていれば
    備えができるというものです
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    実際 行動経済学者は よく
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    私たちを困らせている
    まさにその反射的行動を
  • 3:52 - 3:56
    逆に私たちの力になるよう
    利用しています
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    非合理性の例として
    「現在バイアス」というのがあります
  • 4:01 - 4:05
    遠い未来の ずっと重要な結果よりも
    目の前の結果の方が
  • 4:05 - 4:09
    より強い動機付けになるという
    心理です
  • 4:10 - 4:13
    私がダイエット中だとしたら―
    いつもそうなんですが
  • 4:13 - 4:14
    (笑)
  • 4:14 - 4:19
    誰かが 美味しそうなチョコケーキを
    勧めてきたとき
  • 4:19 - 4:22
    私は そのケーキを食べるべき
    ではないと わかっています
  • 4:22 - 4:27
    そのケーキが 下っ腹のお肉になるのは
    知っています
  • 4:27 - 4:30
    その手の食べ物はみんなそうです
  • 4:30 - 4:32
    でも チョコケーキは
    とっても美味しそうで
  • 4:32 - 4:33
    しかも 目の前にあり
  • 4:33 - 4:36
    ダイエットは明日からでも
    始められます
  • 4:36 - 4:38
    私は コメディアンの
    スティーブン・ライトが好きでした
  • 4:38 - 4:40
    彼はよく 禅っぽい警句を
    飛ばしていました
  • 4:40 - 4:42
    私のお気に入りはこうです
  • 4:42 - 4:44
    「努力は将来報われるが
  • 4:44 - 4:47
    怠惰は今すぐ報われる」
  • 4:47 - 4:48
    (笑)
  • 4:48 - 4:51
    現在バイアスは
    患者にもあります
  • 4:51 - 4:53
    あなたが高血圧だとしましょう
  • 4:53 - 4:56
    心臓発作はどうしても
    避けたいと思い
  • 4:56 - 4:58
    降圧薬を飲むことが
  • 4:58 - 5:01
    リスクを下げるのに一番だと
    知っていたとしても
  • 5:01 - 5:06
    回避される発作は 「遠い未来」で
    薬を飲むのは 「今すぐ」です
  • 5:06 - 5:10
    高血圧の薬を処方された
    患者の ほぼ半数は
  • 5:10 - 5:13
    1年以内に
    飲むのをやめてしまいます
  • 5:13 - 5:15
    この問題ひとつを
    解決するだけで
  • 5:15 - 5:19
    どれだけ多くの命を救えるか
    考えてみて下さい
  • 5:20 - 5:25
    私たちはまた 確率の小さなことを
    過大評価しがちです
  • 5:25 - 5:27
    宝くじが人気ある理由です
  • 5:27 - 5:30
    投資対効果は
    極めて低いわけですが
  • 5:30 - 5:32
    皆さんの中にも 宝くじを
    買う方がいるかもしれません
  • 5:32 - 5:35
    楽しいですよね
    大金が当たるかもしれません
  • 5:35 - 5:36
    でも 率直に認めましょう
  • 5:36 - 5:40
    退職後の蓄えの投資先としては
    はなはだひどいものだと
  • 5:40 - 5:43
    こんなバンパーステッカーを見ました
    ホントの話です
  • 5:43 - 5:48
    「宝くじは計算のできない
    人間にかけられる税金だ」
  • 5:48 - 5:50
    (笑)
  • 5:50 - 5:52
    計算ができない
    のではなくて
  • 5:52 - 5:55
    計算を感じることが
    できないのです
  • 5:55 - 5:57
    また 私たちは
    後悔に気をかけ過ぎます
  • 5:58 - 6:01
    チャンスを逃すのを
    嫌う気持ちが強いんです
  • 6:01 - 6:03
    最近 こんな宝くじがありました
  • 6:03 - 6:04
    メガ・大当たり宝くじ
    というもので
  • 6:04 - 6:07
    大当たりすれば
    10億ドル以上も貰えます
  • 6:07 - 6:10
    私の職場では くじを買うため
    全員が資金を出し合います
  • 6:10 - 6:12
    私は 一切手を出しません
  • 6:12 - 6:14
    こんなことを呟きながら
    職場を歩き回るんです
  • 6:14 - 6:17
    「宝くじは計算のできない
    人間にかけられる税金だ」
  • 6:17 - 6:18
    (笑)
  • 6:18 - 6:20
    でも ふと思うんです
  • 6:20 - 6:21
    待てよ
  • 6:21 - 6:23
    もし 当たったらどうしよう?
  • 6:23 - 6:25
    (笑)
  • 6:25 - 6:27
    翌日 職場に現れるのは
    私だけです
  • 6:27 - 6:28
    (笑)
  • 6:28 - 6:31
    別に 同僚に当たってほしくない
    わけではありません
  • 6:31 - 6:33
    私抜きで 当たって
    ほしくないだけです
  • 6:34 - 6:37
    財布から20ドル札を取り出して
  • 6:37 - 6:39
    シュレッダーにかけたほうが
    早いです
  • 6:39 - 6:41
    結果は同じでしょうから
  • 6:41 - 6:43
    私は 参加すべきでないと
    わかっていながら
  • 6:43 - 6:46
    20ドル札を
    渡してしまい
  • 6:46 - 6:48
    二度と返ってくることは
    ありませんでした
  • 6:48 - 6:49
    (笑)
  • 6:49 - 6:53
    私たちは 患者相手の実験を
    何度も行いました
  • 6:53 - 6:55
    彼らに 電子薬瓶を渡すんです
  • 6:55 - 6:58
    これで 彼らが薬を飲んだかどうか
    知ることができ
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    飲んだご褒美に
    宝くじをあげます
  • 7:02 - 7:03
    賞金です
  • 7:03 - 7:06
    しかし 賞金を
    もらうためには
  • 7:06 - 7:08
    前日に 薬を
    飲んでいなければなりません
  • 7:08 - 7:11
    飲んでなかった場合には
    こんなメッセージが来ます
  • 7:11 - 7:13
    「100ドル当たった
    かもしれないのに
  • 7:13 - 7:16
    昨日 薬を飲まなかったから
    くじはなしです」
  • 7:16 - 7:19
    もちろんですが
    患者は 残念がります
  • 7:19 - 7:21
    チャンスを逃すという感覚が
    イヤなのでしょう
  • 7:21 - 7:23
    そして 後悔するのを
    わかっているから
  • 7:23 - 7:25
    それを避けたいと思い
  • 7:25 - 7:28
    薬を飲む可能性が
    ずっと高くなります
  • 7:28 - 7:32
    後悔を嫌う感覚の利用というのは
    機能するのです
  • 7:32 - 7:35
    これはもっと一般的な知見に
    繋がります
  • 7:35 - 7:38
    人がどのように非合理的であるか
    理解していれば
  • 7:38 - 7:42
    相手をずっと助けやすくなる
    ということです
  • 7:42 - 7:47
    こういった類の非合理性は
    男子トイレでも使えます
  • 7:47 - 7:50
    男子トイレを見る機会が
    あまりない方のために
  • 7:50 - 7:54
    男子トイレがどんなだったか
    お見せしましょう
  • 7:54 - 7:55
    (笑)
  • 7:55 - 7:57
    床がおしっこまみれです
  • 7:57 - 7:59
    (笑)
  • 7:59 - 8:02
    この問題を解決するには
  • 8:02 - 8:06
    便器の中に ハエの絵を
    描けばいいんです
  • 8:06 - 8:09
    (笑)(拍手)
  • 8:09 - 8:11
    実に理にかなってますね
  • 8:11 - 8:12
    (笑)
  • 8:12 - 8:14
    ハエがいた!
  • 8:14 - 8:16
    当てて見せるぞ!
  • 8:16 - 8:19
    (笑)
  • 8:19 - 8:21
    さあ流れていけ
  • 8:21 - 8:23
    (笑)
  • 8:23 - 8:25
    当然 聞きたくなりますよね
  • 8:25 - 8:29
    ハエを狙えるくらいなら
    なんで 床にこぼすの?
  • 8:29 - 8:31
    床におしっこするんだったら
  • 8:31 - 8:32
    なんで便器の前なの?
  • 8:32 - 8:33
    どこでもいいじゃない?
  • 8:33 - 8:34
    (笑)
  • 8:34 - 8:38
    同じことは
    医療にも当てはまります
  • 8:39 - 8:41
    これは うちの病院での話ですが
  • 8:41 - 8:44
    医師が ジェネリック薬があるのに
  • 8:44 - 8:47
    ブランド薬を処方する
    という問題がありました
  • 8:47 - 8:51
    このグラフの線は
    それぞれ異なる薬で
  • 8:51 - 8:56
    ジェネリック薬が処方される
    頻度を表しています
  • 8:56 - 8:59
    一番上の薬では100%
    ジェネリック薬が処方されていて
  • 8:59 - 9:03
    一番下の薬では ジェネリック薬の
    処方率が20%を下回っています
  • 9:03 - 9:07
    医師と話し合ったり
    教育セッションを設けたりしても
  • 9:07 - 9:08
    うまくいかず
  • 9:08 - 9:10
    全ての線は
    ほぼ横ばいです
  • 9:11 - 9:16
    それが 電子カルテにソフトウェアを
    インストールして
  • 9:16 - 9:19
    ブランド薬の代わりに
    ジェネリック薬が
  • 9:19 - 9:22
    既定値になるようにしたところ―
  • 9:22 - 9:24
    素人目にもわかるはずですが
  • 9:24 - 9:27
    問題が一瞬で解決されました
  • 9:27 - 9:29
    そしてその状態を
    保っています
  • 9:29 - 9:33
    事実 このプログラムを始めてから
    2年半経ちましたが
  • 9:33 - 9:36
    病院は 3200万ドル節約できました
  • 9:36 - 9:39
    凄くないですか?
    3200「万」ドルです
  • 9:39 - 9:41
    やったことはただ
  • 9:41 - 9:48
    医師が 本来やりたかったことを
    しやすいようにするということです
  • 9:49 - 9:53
    損したくない気持ちを利用するのも
    よく機能します
  • 9:54 - 9:58
    人々にもっと散歩してもらうための
    コンテストで それをやりました
  • 9:59 - 10:03
    少なくとも7,000歩は
    歩いてほしかったので
  • 10:03 - 10:06
    彼らの携帯にある加速度計で
    歩数を測りました
  • 10:07 - 10:09
    対照群のAグループは
  • 10:09 - 10:12
    7,000歩 歩いたかどうか
    言われるだけです
  • 10:13 - 10:16
    Bグループには
    金銭的インセンティブがあり
  • 10:16 - 10:21
    7,000歩 歩いた日は
    1.4ドル貰えます
  • 10:21 - 10:23
    Cグループも 同じ
    金額が貰えますが
  • 10:23 - 10:27
    得ではなく損として
    提示されます
  • 10:27 - 10:29
    1日1.4ドルは
    1か月で42ドルですから
  • 10:29 - 10:36
    月初めに42ドルを
    彼らの見られる仮想口座に入金し
  • 10:36 - 10:41
    7,000歩 歩かなかった日には
    1.4ドルを そこから減らします
  • 10:41 - 10:42
    経済学者なら
  • 10:42 - 10:45
    インセンティブはどちらでも
    一緒だと言うでしょう
  • 10:45 - 10:50
    毎日7,000歩 歩くたびに
    1.4ドル分豊かになるのだからと
  • 10:50 - 10:53
    しかし 行動経済学者は
    両者は違うと言うでしょう
  • 10:53 - 10:57
    人は1.4ドル得することよりも
    1.4ドルの損を避けることに
  • 10:57 - 11:00
    より強く動機づけられるからです
  • 11:00 - 11:02
    結果は まさにそうなりました
  • 11:03 - 11:07
    毎日7,000歩 歩くことで
    1.4ドル貰ったグループの人たちは
  • 11:07 - 11:10
    目標達成率が対照群と
    変わりませんでした
  • 11:10 - 11:12
    金銭的インセンティブは
    効かなかったのです
  • 11:12 - 11:15
    しかし 損の形で提示される
    インセンティブでは
  • 11:15 - 11:18
    目標達成日が
    50%以上増えました
  • 11:18 - 11:21
    経済学的には意味不明ですが
    心理学的には理にかなっています
  • 11:21 - 11:24
    得る喜びより 失う恐怖の方が
    強いものなのです
  • 11:24 - 11:26
    今では このやり方を活かして
  • 11:26 - 11:29
    患者がもっと歩いたり
    減量したり
  • 11:29 - 11:32
    薬をちゃんと飲むことができるよう
    サポートしています
  • 11:32 - 11:34
    お金がモチベーションになるのは
  • 11:34 - 11:35
    皆知っています
  • 11:35 - 11:40
    しかし 人の心理と組み合わせることで
    ずっと大きな影響力を出せるのです
  • 11:41 - 11:43
    言うまでもなく お金には
    良くない点もあります
  • 11:43 - 11:47
    それに関して託児所の
    面白い事例があります
  • 11:47 - 11:52
    託児所で一番やっちゃいけないのは
    子どもの迎えが遅くなることです
  • 11:52 - 11:54
    誰にとっても不幸です
  • 11:54 - 11:56
    子どもは泣き出します
    あなたが愛さないものだから
  • 11:56 - 11:57
    (笑)
  • 11:57 - 12:00
    先生は 帰りが遅くなるので
    嬉しくありません
  • 12:00 - 12:02
    親のあなたも罪悪感を感じます
  • 12:02 - 12:06
    イスラエルのある託児所では
    この問題を解決しようと
  • 12:06 - 12:09
    アメリカの託児所の多くが
    実践していることを取り入れました
  • 12:09 - 12:12
    迎えの遅い親に罰金を科す
    というものです
  • 12:12 - 12:15
    罰金は10シケル ー
  • 12:15 - 12:17
    300円くらいです
  • 12:17 - 12:19
    どうなったと思います?
  • 12:19 - 12:21
    遅い迎えが「増えた」のです
  • 12:22 - 12:25
    考えてみれば当然です
  • 12:25 - 12:26
    なんてお得なの!
  • 12:26 - 12:28
    たった10シケルで―
  • 12:28 - 12:29
    (笑)
  • 12:29 - 12:31
    子供を一晩
    預かってもらえるなんて!
  • 12:31 - 12:33
    (笑)
  • 12:33 - 12:37
    遅れないようにしないと という
    強い内的動機付けを奪い
  • 12:37 - 12:39
    安い値段で置き換えたのです
  • 12:39 - 12:40
    さらに悪いことに
  • 12:40 - 12:44
    間違いに気付いた彼らは
    罰金を廃止しましたが
  • 12:44 - 12:47
    遅い迎えが多い状況は
    変わりませんでした
  • 12:47 - 12:50
    社会契約を毒してしまったのです
  • 12:50 - 12:54
    医療では強い内的動機付けが
    たくさんあります
  • 12:54 - 12:58
    医者も患者も 正しいことをしたい
    と思っています
  • 12:58 - 13:01
    金銭的インセンティブは
    役に立ち得ますが
  • 13:01 - 13:05
    医療においては
    お金に期待しすぎない方がいいでしょう
  • 13:06 - 13:10
    おそらく 健康に関わる行動に
    最も強く影響を与えるものは
  • 13:10 - 13:13
    社会的な相互作用です
  • 13:13 - 13:15
    社会的な関わりは
    医療において力を発揮し
  • 13:15 - 13:17
    二つの方向で
    働きます
  • 13:18 - 13:22
    まず 人間は根本的に
    他人の目を気にします
  • 13:22 - 13:26
    そのため 人の行動を変える
    最も強力な方法の1つは
  • 13:26 - 13:30
    他人に行動が見られる
    ようにすることです
  • 13:30 - 13:34
    私たちは 見られているかいないかで
    行動の仕方が変わります
  • 13:34 - 13:35
    レストランによっては
  • 13:35 - 13:39
    手洗い場がトイレの中にはなく
    外にあって
  • 13:39 - 13:43
    手を洗ったかどうか
    皆から見えるようになっています
  • 13:43 - 13:45
    データはありませんが
  • 13:45 - 13:49
    そういった配置の方が
    手を洗う人が多いことでしょう
  • 13:49 - 13:52
    見られているときには
    最善の行いをするものです
  • 13:52 - 13:55
    実際 フロリダ病院の集中治療室で
    行われた
  • 13:55 - 13:58
    驚くべき研究があります
  • 13:58 - 14:01
    そこでは 手を洗う頻度が低く
    言うまでもなく危険でした
  • 14:01 - 14:03
    感染を広げるかも
    しれませんから
  • 14:03 - 14:08
    そこで 研究者たちは
    洗面所の上に目の写真を貼りました
  • 14:08 - 14:11
    本物の人間ではなく
    ただの写真
  • 14:11 - 14:14
    それも顔全体ですらなく
    「見ているぞ」という目だけです
  • 14:14 - 14:15
    (笑)
  • 14:15 - 14:17
    手を洗う率は
    2倍以上に上がりました
  • 14:17 - 14:20
    私たちは 他人からどう思われているかを
    とても気にするようで
  • 14:20 - 14:25
    人から見られることを想像するだけで
    行動を改善するんです
  • 14:26 - 14:29
    また私たちは
    他人の目を気にするだけでなく
  • 14:29 - 14:33
    基本的に他人の取る行動を
    手本にしています
  • 14:34 - 14:36
    ここでシートベルトの
    話に戻りますが
  • 14:37 - 14:42
    幼い頃 アダム・ウェスト主演の
    テレビシリーズ「バットマン」が好きでした
  • 14:42 - 14:45
    バットマンとロビンは
    何をするにも超カッコよく
  • 14:45 - 14:48
    もちろん バットモービルは
    最高にクールでした
  • 14:48 - 14:52
    番組は1966年から
    1968年まで放送されましたが
  • 14:52 - 14:56
    当時 シートベルトは
    任意の付属品でした
  • 14:57 - 15:00
    そこで 番組プロデューサーは
    あるとても重要なことをしました
  • 15:00 - 15:02
    バットマンとロビンが
    バットモービルに乗る時
  • 15:02 - 15:05
    カメラの焦点を
    彼らの膝に合わせ
  • 15:05 - 15:07
    シートベルトを付ける場面を
    見せるようにしたのです
  • 15:07 - 15:10
    バットマンとロビンが
    シートベルトをしているんだから
  • 15:10 - 15:12
    私もシートベルトをするのは
    間違いないです
  • 15:12 - 15:15
    あの番組は たくさんの命を
    救ったと思います
  • 15:15 - 15:17
    お手本は医療にも生かせます
  • 15:17 - 15:23
    医師は 他の医師がどう使うかを見て
    抗生物質をより適切に使うようになります
  • 15:23 - 15:28
    医療における活動の多くは
    隠れていて他の人に見えません
  • 15:28 - 15:30
    しかし 医者だって
    社会的な生き物です
  • 15:30 - 15:35
    他の医者の行動を見て
    より良い治療を行うようになります
  • 15:35 - 15:38
    医療においても
    社会的影響は効果的です
  • 15:38 - 15:42
    後悔や 損を嫌う気持ちを利用するのも
    同じように効果的です
  • 15:42 - 15:45
    皆が皆 常に合理的だと
    考えていたのなら
  • 15:45 - 15:49
    こうした手段があるとは
    思わないでしょう
  • 15:49 - 15:52
    言っておきますが 合理性がダメだと
    言っているわけではありません
  • 15:52 - 15:54
    それこそ非合理的です
  • 15:55 - 15:59
    しかし 私たちは皆知っています
    心の非合理的な部分こそが
  • 15:59 - 16:03
    勇気や創造力 ひらめき ー
  • 16:03 - 16:05
    情熱を生むのだと
  • 16:05 - 16:07
    また こんなことも知っています
  • 16:07 - 16:11
    人の健康に関わる行動を
    改善するには
  • 16:12 - 16:16
    非合理的な部分を無視したり
    抗ったりするよりも
  • 16:16 - 16:19
    それを活かすようにする方が
    ずっと効果的だと
  • 16:19 - 16:21
    医療においては
  • 16:21 - 16:26
    人間の非合理性の理解もまた
    道具のひとつだということです
  • 16:26 - 16:28
    その非合理性をうまく
    利用することこそが
  • 16:28 - 16:32
    最も合理的な行動なのかもしれません
  • 16:32 - 16:34
    ご静聴ありがとうございました
  • 16:34 - 16:38
    (拍手)
Title:
健全な決断をするのはなぜ難しいのか
Speaker:
デイヴィッド・アッシュ
Description:

私たちは、健康に悪いと知っていながらなぜ愚かな決断をするのでしょうか。この率直で面白い話の中で、行動経済学者で保健政策の専門家のデイヴィッド・アッシュが、私たちの行動が時に「非常に予測できる形で」非合理的である理由を説明します。そしてより良い選択をし、医療システム全体を改善するために、この非合理性をどう生かせるかを教えてくれます。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
16:53

Japanese subtitles

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