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この動画では、ニュートンの運動の第1法則について、
話していきたいと思う。
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これが、そのラテン語で書かれた法則を
英語に訳したもの。
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第1法則
「全ての物体は、外力が加わらないかぎり、
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静止した状態を維持するか、
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一様に直線的な運動をする。」
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つまり、これを言いかえると、
全てのものは、力が加えられて、状態が変化しない限り、
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静止した状態を維持するか、一定の速度で動き続ける。
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特に「不均衡な力」を受けない限り。
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この「不均衡な力」については、後で説明しよう。
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それじゃあ、ここに、
完全に静止している状態の物体があるとしよう。
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こういう物体は、前にも登場したね。
それじゃあ、岩があるとしようか。
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岩が1つある場所にあって、草の上にしようかな。
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それを観察したところ、動きそうにもないし
何かが起きそうにもない。
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その岩に何も力が加わらなければ、
岩はそこから動かないはずだ。
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法則の最初の部分は、わかりやすいよね。
「全ての物体は、静止した状態を維持する。」ってとこ。
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ここでは、後半の部分はおいとこう。
何も力が加わらない場合を考える。
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力が加わらないかぎり、岩が動かないのは、当たり前だよね。
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もし誰かがそれを押したり、転がしたり、
何かした場合は別だけど。
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第1法則で、ピンとこないのは、後半の部分。
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全ての物体は、外力が加わらないかぎり、
静止した状態を維持する。
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または、「一様に直線的な運動を続ける。」
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これがニュートンの第1法則だけど、一度これはおいておこう。
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なんでって、ここにいるニュートンを、
先に紹介したいからね。
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でもこれがニュートンなら、
なんでこっちの写真の人物の方が、大きいんでしょう?
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それは実は、ニュートンの第1法則は、この人物が見つけた
「慣性の法則」を言い直しただけだからなんだ。
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そしてこの人物は、ニュートンと並ぶ
文明の巨人、ガリレオ・ガリレイだ。
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彼が最初に、慣性の法則を導き出した人物なんだ。
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ニュートンは、それをちょっと言い直して
他の自分の法則と、セットにしたってわけ。
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もちろん、彼は他にも数多くのことを、成しとげたけどね。
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だから、ニュートンの第1法則の功績は、
本当はガリレオに、あるんだね。
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だから、ここでは彼を大きくのっけたわけ。
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まぁでも、まだ法則の半分までしか、来てないよ!
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今のところ、静止した物体は、外から力を加えられないかぎり
静止を続ける、ってことを確認したとこだ。
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別の言い方をすると、
「不均衡な力を加えられないかぎり」ってこと。
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なんでここで「不均衡な力」って言うかというと、
物体にかかる2つの力が、
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均衡する(つりあう)こともあるからなんだ。
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たとえば、ある一定の力で、
私がこちら側から、岩を押したとしよう。
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そしてまったく大きさの力で、キミが反対側から押したとする。
その場合、岩は動かないよね。
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岩を動かすには、一方の力より大きな力で、
反対側に力を加えるしかない。
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それが、「不均衡な力」ってこと。
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たとえば、1トンの…
ちょっと岩は、例がよくないな。
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氷にしようか。氷なら、動きやすいしね。
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氷の上に、氷があるとしよう。
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氷の床があって、その上にもう1つ氷がのっているとしよう。
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もう一度、これはもう大丈夫だよね。
力が加わらないかぎり、氷は動かない。
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けど、私がこちら側から一定の力で、氷を押して
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キミが反対側から、同じ大きさの力で押したら
何が起こる?
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氷は、動かないね。
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これが、「均衡した力」だ。
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均衡した(つりあった)力
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氷の状態、静止した状態を変えるには、
不均衡な力を加えるしかない。
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こちら側にちょっと力を加えて、
それ以上の力を反対側から加えれば、
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氷は動き出すね。その方向に加速していく。
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でもここの話は、分かりやすいよね。
静止している物体は、不均衡な力を加えられないかぎり
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静止し続ける。
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分かりくいのは、この部分。
「一様に直線的な運動を続ける。」
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これは言いかえると、
一定の速度で、ってこと。
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一定の速度でだ。
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つまり、一定の速度で運動している物体は、
永遠に一定の速度を保ち続ける、ってこと。
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不均衡な力を、加えられないかぎりね。
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やっぱり、ピンとこない。
だって、私たちの経験からすると、
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たとえば、この氷を押したとして、
いつかは、止まっちゃうよね。
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永遠には移動し続けない。
たとえ、この氷の床が無限に続いていたとしても
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氷は、どこかで止まるはずだ。
もしくは、テニスポールを投げたとしても、どこかで止まるよね。
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いつかは止まってしまう。
ボーリングの球でも、何でもだ!
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少なくとも人生の中で、そんなこと見たことない。
いつかは、きっと止まるはずだ。
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だから、ピンとこないんだよ。
動いているものは、永遠にその運動を続ける。
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本能的には、何かを動かし続けたければ
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力を加え続ける必要がある、動き続けるように
たくさんのエネルギーを加え続けないと、いけないんだ。
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燃料を燃やして、運転してエネルギーを使わないかぎり
クルマも永遠に動き続けたりしない。
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じゃあ、こいつらは何を言ってるんだ?
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それじゃあ、こう考えてみよう。
こう考えてみたことが、この科学者たちの洞察力の
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すごいところだと思うけど、
ここにある全てのものが、永遠に動き続けると考えてみるんだ。
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ボールも永遠に動き続ける、
氷も永遠に動き続ける。
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それを止めるような、不均衡な力が加わらないかぎりね。
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それじゃあ、氷の場合。
氷の上の氷に、それほど摩擦(まさつ)はないけど、
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いくらか、2つの氷の間には摩擦があるはずだ。
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そしてこの場合、この摩擦力が
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氷が動く方向に反して、はたらくことになる。
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摩擦は、実際には原子レベルの話になるんだけどね。
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氷の中に、格子状の水分子があるとしよう。
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そしてこれが、氷の表面の格子状になった水分子だとする。
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そこには、お互いにでこぼこがある。
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見た感じだと、なめらかだけど、
実際には、完全になめらかではない。
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そのでこぼこが、わずかな熱を発生させる。
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そしてそれが、運動に反してはたらくことになるんだ。
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なので、ここではたらく摩擦力によって
運動が止まってしまうわけなんだ。
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そういうのは、摩擦力だけじゃない。
空気抵抗なんかも、そうだね。
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氷も空気中にある、あらゆる分子に当たりながら
運動をしている。
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初めは分からないくらいだけど、
それが永遠に運動を続けることを、さまたげている。
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これと同じことが、空気中のボールにも起こっているんだね。
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それに重力で、ボールもいつかは地面に落ちてしまう。
この重力も、ボールにはたらく力の1つ。
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けど地面に落ちたからって、永遠に転がり続けるわけじゃない。
今度は、摩擦力がはたらくからね。
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特に地面が草なんかだと、それが運動を止める力として、
はたらいてしまう。
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たとえ空気中でも、速度は落ちていく。
一定の速度を保ち続けることは、不可能だ。
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物体にぶつかりつづける、空気中の分子があるからね。
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それが、減速させる力として、はたらくんだ。
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そう考えると、この科学者たちの本当にすごいところは、
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重力ない状態、速度に影響する空気のない状態を
想像できたとこだろう。
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そして、そんな状態では、
物体が運動を続けることまでも、想像できたんだ。
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なんでガリレオが、そんな考えができたかって言うと
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彼が、惑星の軌道を研究していたからだろうね。
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そして、それを理論化することで
宇宙には空気がないんじゃないかと、考えた。
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だから、惑星は軌道を
ずっと回り続けることができるんじゃないか、ってね。
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もちろん運動の方向は変わるけど、
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惑星の運動速度が、落ちることはない。
宇宙には、惑星を減速させるようなものがないからだね。
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まぁ、彼らの偉大さが少しでも
少しでも分かってくれると、嬉しいな。
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だってこの法則、理解しやすいとこもあったけど
全く理解しづらいところも、あったよね。
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特に、「一様に直線的な運動を続ける」ってとこ。
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もうちょっと分かりやすくするために…
重力も空気もなくなったとしよう。
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ボールを投げれば、
ボールは永遠にその方向に進んでいく状態だ。
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それを止めるような、不均衡な力が加わらないかぎりね。
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これを日常生活でも想像しやすい、別の方法で考えてみよう。
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私が飛行機にいたとする、
しかも、完全に一定の速度で進む飛行機。
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その飛行機には、まったくゆれがない。
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私は飛行機のここに座って、一定の速度で進んでいく。
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なめらかに、ゆれもなく。
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この飛行機には窓もなくて、私は飛行機が進んでいるか
確かめる方法がないとしよう。
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この飛行機には、窓がないって考えて。
そして、完全に一定の速度で進むんだ。
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そして、ゆれも全くない。
音も何も聞こえない。
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エンジンの音も聞こえないんだ。
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そうすると、飛行機が動いてるのを、感じる方法はないよね。
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だって、私がわかる範囲では、
飛行機が進んでいる状態と
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地面に静止している状態は、完全に同じように感じるからね。
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これで本能的に、2つの状態がとても似ていることを
感じられるんじゃないかな。
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つまり、一定の速度で運動している状態と、
静止している状態。
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本当にどっちか、分からなくちゃうはずだよね。