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薬でうつ病やPTSDを予防することは可能か? | レベッカ・ブラックマン | TEDxNewYork

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    ここは結核病棟です
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    この写真が撮影された
    1800年代後半には
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    全人口の7人に1人が
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    結核で亡くなっていました
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    原因はまったく不明でした
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    仮説はありましたが
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    この病気にかかるのは
    体質のせい というものでした
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    また 結核は美化された病でした
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    「労咳」とも呼ばれ
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    詩人や芸術家や知識人の
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    病とされました
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    結核が感受性を高め
    創造力を与えると
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    本気で考える人もいたほどです
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    1950年代には
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    結核が感染力の高い
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    細菌による感染症と判明し
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    ロマンチックな面は
    薄れましたが
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    そのおかげで
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    治療薬を開発できる
    可能性が出てきました
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    その後 新薬イプロニアジドが
    発見されました
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    医師たちが 治療に
    大きな期待を持って
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    この薬を投与すると
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    患者が陽気になりました
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    患者は より社交的で
    活発になったのです
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    ある報告書には 患者が
    「廊下で踊っていた」と書いてあります
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    ただ 残念なことに
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    それは必ずしも回復の兆しではなく
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    多くの人が亡くなっていきました
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    別の報告書では 患者の「不自然な
    多幸感」を報告しています
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    こうして世界初の
    抗うつ薬が発見されたのです
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    科学の世界では
    偶然の発見は珍しくありませんが
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    それには単なる幸運を
    超えるものが必要です
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    発見するには 対象を
    認識できなければなりません
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    これからする話は
    私が神経学者として
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    実際に経験したことです
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    その経験には「思いがけない幸運」の
    正反対である
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    「必然的な幸運」が伴いました
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    その前に もう少し背景を
    説明しましょう
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    1950年代以降 幸いなことに
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    別の薬品が開発されて
    結核治療が実現しました
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    他の国はともかく
    少なくともアメリカでは
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    結核療養所は閉鎖され
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    今では 結核を恐れる人など
    ほとんどいないでしょう
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    一方 1900年代初頭の
    感染症の状況と
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    ほぼ同じことが
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    現在の精神疾患をめぐる
    状況にも当てはまります
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    私たちの周りに
    まん延しているのは
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    うつ病や 心的外傷後ストレス障害
    PTSDといった気分障害です
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    アメリカでは
    成人の4人に1人が
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    精神疾患を患っているので
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    仮に自分自身や身内は
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    患者でなかったとしても
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    知り合いの中に
    公言はしていないけれど
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    経験がある人がいる
    可能性が高いのです
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    現在うつ病は 世界中で
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    HIV・エイズやマラリア
    糖尿病や戦争を超える
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    障害の主な原因になっています
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    また 1950年代の結核と同様
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    まだ原因はわかっていません
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    一度 発症すると慢性化し
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    生涯 続く上に
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    治療法も見つかっていません
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    2番目に発見された抗うつ薬も
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    1950年代に偶然見つかったもので
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    抗ヒスタミン薬として開発され
    人を躁状態にする作用がある薬 —
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    イミプラミンです
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    結核病棟の例でも
    抗ヒスタミン薬の例でも
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    ある効果を期待して
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    設計された薬 例えば
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    結核治療とか
    アレルギー反応を抑制する薬が
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    うつ病の治療のような
    まったく違うことに使えると
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    認識することが不可欠でした
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    そして このような薬の転用は
    実際は かなり難しいのです
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    医師たちは イプロニアジドが持つ
    気分を高揚させる効果を 最初目にした時
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    そういう風には
    まったく認識していませんでした
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    医師はこの薬を
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    結核治療薬として捉えることに
    慣れすぎていたため
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    その効果を単なる副作用
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    それも有害な副作用として
    記載しただけでした
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    ご覧の通り
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    1954年に記録された患者の多くが
    過度の多幸感を経験しています
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    そして 医師たちは
    この多幸感が結核からの回復を
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    妨げるのではないかという
    懸念を抱きました
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    だからイプロニアジドの使用は
    患者が重症で
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    感情が安定している場合にのみ
    推奨されたのです
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    もちろん これは抗うつ薬として
    使う場合とは正反対です
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    医師は結核という1つの病気の視点から
    薬を見ることに慣れすぎて
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    他の病気に対する
    より大きな可能性を見逃していました
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    ただ公平に言えば
    医師だけのせいとは言えません
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    「機能的固着」がバイアスとして
    影響を与えるのです
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    これは ある物を
    習慣的な使用法や機能からしか
  • 4:53 - 4:56
    捉えられない傾向を指します
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    もう1つの問題は
    メンタルセットです
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    これは私たちが
    あらかじめ持っている
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    問題解決に向けての
    構想のようなものです
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    そして これが転用を
    とても難しくします
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    だからこそ 何でも転用できる
    能力を持った人間が
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    テレビドラマの主人公になったんです
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    (笑)
    [マクガイバー]
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    イプロニアジドもイミプラミンも
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    その効果は極めて強力で
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    躁状態になったり
    廊下で踊ったりするほどでした
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    これでは 目につくのも当然ですが
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    何か見落としてきたのでは
    という疑問が湧いてきます
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    イプロニアジドとイミプラミンは
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    単なる転用の一例というだけでなく
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    とても重要な
    2つの共通点があるのです
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    1つ目は どちらにも
    重大な副作用があります
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    それには肝毒性
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    20kgを超える体重増加
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    自殺念慮が挙げられます
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    2つ目に どちらも
    セロトニンの量を増やします
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    セロトニンとは
    脳の一種の化学信号すなわち
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    神経伝達物質です
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    この どちらか一方であれば
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    それほど重大では
    なかったかもしれませんが
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    2つ揃うと より安全な薬の
    開発が必要になりました
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    そしてセロトニンが
    有力な手がかりに見えたのです
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    そこで セロトニン神経系に
    より直接 働きかける薬
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    「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」
    略して SSRI が開発され
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    中でも有名なのがプロザックです
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    これは30年前のことですが
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    それ以来 研究の中心は
    薬の最適化だけでした
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    SSRI はそれ以前の薬に
    比べるとましですが
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    それでも副作用が多く
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    体重増加や不眠や
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    自殺念慮があります
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    しかも効き目が現れるまで
    かなり時間がかかり
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    4〜6週間くらいかかる
    患者も多いのです
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    それも効き目がある時の話で
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    こういう薬が効かない患者も
    たくさんいます
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    つまり 2016年現在
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    まだ どんな気分障害にも有効な
    治療法はなく
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    症状を抑える薬しかありません
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    これは 感染症に対して
    抗生物質の代わりに
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    鎮痛剤を使うようなものです
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    痛み止めを使うと
    症状は良くなりますが
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    原因である病気の治療には
    まったく役立ちません
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    私たちの思考が柔軟になったおかげで
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    イプロニアジドとイミプラミンが
    このように転用できると
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    認識することができ それが
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    セロトニン仮説に
    つながりましたが
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    皮肉にも 今度はその仮説に
    固執するようになったのです
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    これはSSRIの CMで描かれた
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    脳の信号 セロトニンです
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    一応 お伝えしますが
    これはイメージです
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    科学ではバイアスを取り除くために
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    二重盲検法による試験を行い
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    結果について統計的な先入観が
    入らないようにします
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    ところがバイアスは
    研究対象や研究方法の中に
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    ひそかに紛れ込んできます
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    私たちはこれまで30年に渡って
    セロトニンに注目し
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    他のものを しばしば無視してきました
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    まだ治療法はありませんが
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    もし うつ病がセロトニンだけの
    問題ではなかったら?
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    それが主な要因ですらなかったら?
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    そうなると どれだけ時間や
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    お金や努力を注ぎ込もうとも
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    治療法にはたどり着かないでしょう
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    ここ数年で医師たちが発見したのは
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    恐らくSSRI以来 初の
    本当に新しい抗うつ薬 —
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    カリプソルです
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    この薬は即効性があり
    数時間とか1日で効き目が現れ
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    セロトニンには作用しません
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    別の神経伝達物質である
    グルタミン酸に作用します
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    しかも これも転用されたものです
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    元々は外科手術の麻酔薬として
    使用されていました
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    ただ 他の薬では
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    すぐに効果が認識されたのに
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    カリプソルが抗うつ薬だと
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    判明するまでに
    20年かかりました
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    抗うつ薬として この薬は
    おそらく他の薬より
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    優れているにも関わらずです
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    たぶんカリプソルが
    抗うつ剤として あまりに優れすぎて
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    わかりにくかったのでしょう
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    効果の兆しである
    躁状態が見られなかったのです
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    2013年にコロンビア大学で
  • 8:53 - 8:54
    私は同僚の
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    クリスティン・アン・デニー博士と
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    抗うつ薬としてのカリプソルの効果を
    マウスで研究していました
  • 9:01 - 9:03
    カリプソルは半減期が非常に短く
  • 9:04 - 9:07
    数時間で体内から排出されます
  • 9:07 - 9:08
    まだパイロット試験段階だったので
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    マウスに注射して
  • 9:10 - 9:12
    1週間経ってから
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    別の実験をすることで
    経費を節約していました
  • 9:15 - 9:17
    私がやっていた実験に
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    マウスにストレスを与え
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    うつ病のモデルとして
    使うものがありました
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    最初は まったく効き目が
    ないようでした
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    だから そこで
    やめていたかもしれません
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    ただ何年も このうつ病モデルの
    実験を続けたところ
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    データが何かおかしいのです
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    どうも腑に落ちませんでした
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    そこで遡って
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    カリプソルを1週間前に
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    注射されていたかどうかという点から
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    データを再分析しました
  • 9:42 - 9:44
    すると結果は こうなりました
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    一番左を見てください
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    マウスを新しい環境である
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    この箱に入れると 興奮して
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    歩き回ったり 周囲を探ったりします
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    ピンクの線は実際にマウスが歩いた
    距離を表しています
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    さらに 鉛筆立てに
    もう1匹マウスを入れて
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    2匹が交流できるようにします
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    念のため
    これもイメージです
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    普通のマウスなら周囲を探ります
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    交流もします
  • 10:12 - 10:13
    どうなるか 見てみましょう
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    うつ病モデルとして
    マウスにストレスを与えると
  • 10:16 - 10:17
    中央の箱が そうですが
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    交流はなく 周囲も探りません
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    だいたい後ろの隅
    カップの後ろに隠れています
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    ところがカリプソルを
    1回注射された右のマウスは
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    周囲を探り 交流しました
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    まるでストレスなど
    与えられなかったように見えますが
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    それは ありえません
  • 10:37 - 10:39
    さて ここでやめてもよかったのですが
  • 10:40 - 10:44
    クリスティンも 以前から
    カリプソルを麻酔として使っていて
  • 10:44 - 10:46
    数年前から気づいていました
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    この薬には
    細胞や ある行動に対して
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    奇妙な効果があって
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    しかも投与から数週間 程度
  • 10:52 - 10:54
    効果が続くらしいのです
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    私たちは
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    ありえない話ではないとは
    思いましたが
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    かなり疑っていました
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    そこで確証がない時に
    科学者がすること つまり
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    再実験したのです
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    覚えているのは
    私が動物実験室で
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    ネズミを箱から箱へと移しながら
    実験し クリスティンは
  • 11:10 - 11:14
    膝の上にパソコンを置いて
    ネズミの視界に入らないように
  • 11:14 - 11:15
    床に座りながら
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    リアルタイムでデータを
    分析していた様子です
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    それから 実験室で
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    本当はダメなんですが
    2人で叫んだのを覚えています
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    実験がうまくいったのです
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    対象のネズミは —
    言い方は色々あるでしょうが
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    ストレスから守られているというか
    不自然な多幸感を示していて
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    私たちはとても興奮しました
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    ただ うまくいき過ぎに思えて
    疑念がわいてきたので
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    再実験したのです
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    その後 PTSDモデルで実験し
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    ストレス・ホルモンを投与する
  • 11:46 - 11:48
    生理学的モデルでも試しました
  • 11:48 - 11:50
    授業でも学生に実験させ
  • 11:50 - 11:54
    地球の裏側 フランスの協力者にも
    実験してもらいました
  • 11:55 - 11:58
    そして実験の度に
    同じ結果が確認できたのです
  • 11:58 - 12:01
    どうもカリプソルを1度注射すると
  • 12:01 - 12:04
    何週間もストレスから
    守られるようでした
  • 12:04 - 12:06
    結果を公表したのは
    つい1年前ですが
  • 12:06 - 12:10
    それ以降 色々な研究施設が
    それぞれ効果を確認しています
  • 12:11 - 12:13
    さて うつ病の原因は不明ですが
  • 12:13 - 12:17
    わかっているのは
    症例の80%が
  • 12:17 - 12:20
    ストレスがきっかけで
    発症していることです
  • 12:20 - 12:22
    うつ病とPTSDは別の病気ですが
  • 12:22 - 12:24
    両者に共通するのは この点です
  • 12:24 - 12:26
    激しい戦闘や自然災害
  • 12:26 - 12:29
    地域社会での暴力や性的暴行といった
  • 12:29 - 12:31
    心的外傷性ストレスは
  • 12:31 - 12:33
    PTSDの原因になりますが
  • 12:34 - 12:40
    ストレスに晒された人が全員
    気分障害を発症するとは限りません
  • 12:40 - 12:43
    ストレスを経験しても
    立ち直って回復し
  • 12:43 - 12:47
    うつ病やPTSDを発症しない力を
  • 12:48 - 12:50
    「ストレス耐性」と呼びますが
  • 12:50 - 12:52
    これには個人差があります
  • 12:52 - 12:55
    ストレス耐性とは
    受動的特性のようなもので
  • 12:55 - 12:58
    気分障害の感受性因子や
    危険因子が欠如した状態だと
  • 12:58 - 13:00
    私たちは考えてきましたが
  • 13:01 - 13:02
    もしも身に付けられる
    ものだとしたら?
  • 13:03 - 13:05
    おそらく鎧をつけるように
  • 13:05 - 13:07
    ストレス耐性を
    強化できるかもしれません
  • 13:08 - 13:13
    私たちが偶然発見したのは
    ストレス耐性を強める 初の薬でした
  • 13:14 - 13:17
    先ほど お話しした通り
    この薬を少し与えるだけで
  • 13:17 - 13:18
    効果は何週間も 持続しますが
  • 13:18 - 13:21
    これは抗うつ薬には
    見られないことです
  • 13:21 - 13:26
    一方 これは免疫ワクチンの効果に
    少し似ています
  • 13:26 - 13:29
    免疫ワクチンでは
    注射を打ってから
  • 13:29 - 13:33
    何週間、何か月、何年も経って
  • 13:33 - 13:35
    実際に細菌に晒された時
  • 13:35 - 13:37
    体を守るのはワクチンではありません
  • 13:37 - 13:39
    自分の免疫システムが
  • 13:39 - 13:43
    抵抗力や耐性を高め
    細菌を撃退するので
  • 13:43 - 13:45
    感染しなくなるのです
  • 13:45 - 13:48
    これは 普通の治療法とは
    だいぶ違うでしょう?
  • 13:48 - 13:52
    普通の治療法では
    細菌に晒され 感染し
  • 13:52 - 13:56
    病気になると 治療するために
    例えば抗生物質を飲みますが
  • 13:56 - 13:59
    そういう薬は実際に細菌を
    殺す働きがあります
  • 14:00 - 14:02
    また 先ほど話した
    苦痛緩和剤のような
  • 14:02 - 14:05
    症状を抑えるものを
    飲むことになりますが
  • 14:05 - 14:08
    その薬は 原因である
    感染症は治療せず
  • 14:08 - 14:11
    気分が良いのは
    薬が効いている間だけなので
  • 14:11 - 14:13
    飲み続ける必要があります
  • 14:13 - 14:16
    うつ病やPTSDの場合
  • 14:16 - 14:18
    ストレスに晒され
    起きるのですが
  • 14:18 - 14:21
    苦痛緩和ケアだけが
    唯一の治療法です
  • 14:21 - 14:23
    抗うつ薬は症状を抑えるだけで
  • 14:23 - 14:26
    病気が続く限り
    基本的にはその薬を
  • 14:26 - 14:28
    飲み続ける必要があり
  • 14:28 - 14:30
    その期間は一生に及ぶ
    場合も多いのです
  • 14:31 - 14:35
    私たちは この耐性強化薬 カリプソルを
    「パラワクチン」つまり
  • 14:35 - 14:37
    ワクチンに似たものと呼んでいます
  • 14:37 - 14:39
    なぜなら これは
    ストレスから身を守ってくれる
  • 14:39 - 14:41
    可能性があるように見え
  • 14:41 - 14:45
    マウスが うつ病やPTSDを
    発症するのを
  • 14:45 - 14:47
    防いでくれている
    かもしれないからです
  • 14:48 - 14:51
    また 抗うつ薬が全部
    パラワクチンになるわけではありません
  • 14:52 - 14:54
    プロザックも試しましたが
  • 14:54 - 14:55
    効果は見られませんでした
  • 14:56 - 14:59
    もし実験結果が人間にも
    当てはまるとすれば
  • 14:59 - 15:02
    ストレスが原因となる
  • 15:02 - 15:04
    うつ病やPTSDといった疾患の
  • 15:04 - 15:08
    リスクがある人々を
    守れるかもしれません
  • 15:08 - 15:11
    緊急救急隊員や消防士
  • 15:11 - 15:15
    難民、受刑者と看守、兵士など
  • 15:15 - 15:17
    あらゆる人々です
  • 15:18 - 15:22
    こういった病気が
    どのくらい広がっているかというと
  • 15:23 - 15:26
    2010年の世界の疾病負荷は
  • 15:26 - 15:30
    推定2.5兆ドルでしたが
  • 15:30 - 15:32
    これらは慢性の病気なので
  • 15:32 - 15:35
    コストは積み重なり
    わずか15年後には
  • 15:35 - 15:38
    6兆ドルにも上ると
    予想されています
  • 15:39 - 15:41
    先程お話した通り
  • 15:41 - 15:45
    私たちにバイアスがあるせいで
    薬の転用が難しい場合があります
  • 15:46 - 15:47
    実は カリプソルは別名
  • 15:48 - 15:49
    ケタミンといいます
  • 15:50 - 15:52
    さらに もう1つの名前は
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    スペシャルK —
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    クラブドラッグで麻薬です
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    また 今でも世界中で麻酔薬として
  • 16:01 - 16:04
    子供にも戦場でも使われています
  • 16:04 - 16:07
    多くの新興国で
    この薬が使われているのは
  • 16:07 - 16:08
    呼吸を抑制しないという
    利点があるからです
  • 16:08 - 16:13
    世界保健機関の必須医薬品リストにも
    掲載されています
  • 16:14 - 16:17
    最初からパラワクチンとして
    ケタミンを発見していたら
  • 16:18 - 16:21
    開発は容易だったでしょうが
  • 16:21 - 16:25
    凝り固まった従来の思考法から
  • 16:25 - 16:27
    逃れる必要があるのが現状です
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    幸い これは私たちが発見した
    予防的でパラワクチンの効果を持つ
  • 16:33 - 16:36
    唯一の化合物というわけでは
    ありませんが
  • 16:37 - 16:39
    発見した他の薬
    あるいは化合物は
  • 16:40 - 16:42
    新たに発見されたものばかりで
  • 16:42 - 16:46
    人に投与できるようになるとしても
    それ以前に
  • 16:46 - 16:49
    FDAの認可プロセスを
    一通り経なければなりません
  • 16:49 - 16:51
    完了までには数年かかるでしょう
  • 16:51 - 16:53
    もっと早く手に入れたければ
  • 16:53 - 16:56
    既にFDAの認可を得た
    ケタミンがあります
  • 16:56 - 16:58
    ジェネリック医薬品があって
    広く利用可能です
  • 16:58 - 17:02
    つまり わずかな経費と時間で
    製造できます
  • 17:03 - 17:08
    ただ 実際には 機能的固着や
    メンタルセット以上に
  • 17:08 - 17:11
    薬の転用を妨げている
    ものがあります
  • 17:11 - 17:13
    政策です
  • 17:13 - 17:15
    薬の特許が切れて
  • 17:15 - 17:19
    ジェネリックになり独占できなくなると
    そういう薬を製造する
  • 17:19 - 17:22
    積極的な動機は薄れます
  • 17:22 - 17:23
    儲からないからです
  • 17:23 - 17:26
    これはケタミンに限らず
    どの薬にも当てはまります
  • 17:28 - 17:33
    それでも 薬を使って精神疾患を
    治療するのではなく
  • 17:33 - 17:37
    予防するという考え方自体は
    精神医学では
  • 17:37 - 17:39
    まったく新しいものです
  • 17:40 - 17:45
    この先 20年後、50年後、100年後には
  • 17:45 - 17:49
    現在のうつ病やPTSDにまつわる状況を
  • 17:49 - 17:52
    私たちが結核療養所を振り返るように
    過去の遺物として
  • 17:52 - 17:54
    振り返れるようになるでしょう
  • 17:54 - 17:59
    これは蔓延する精神障害を
    なくせる兆しかもしれません
  • 18:00 - 18:04
    ただ 科学に詳しい
    ある偉大な人は こう言いました
  • 18:05 - 18:07
    「確実と思うのは愚者 —
  • 18:07 - 18:09
    推測し続けるのが賢者」
  • 18:10 - 18:11
    [マクガイバー]
  • 18:11 - 18:12
    ありがとう
  • 18:12 - 18:15
    (拍手)
Title:
薬でうつ病やPTSDを予防することは可能か? | レベッカ・ブラックマン | TEDxNewYork
Description:

より優れた医薬品の開発は、偶然でありながら、革新的な発見によって道が切り開かれてきました。科学がどう進歩するかを巧みに語りながら、神経学者レベッカ・ブラックマンが、広がりつつあるうつ病やPTSDといった精神疾患を解決する可能性を持つ、偶然発見された革新的な治療法について話します。さらに、その予想を超えた、物議をかもす展開をお聞きください。

このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
18:18

Japanese subtitles

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