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極めて危険な一瞬を回避できる手術器具

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    手術室に初めて入って
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    実際に手術を見学するまで
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    どんなものなのか
    イメージも浮かびませんでした
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    当時 大学の工学部の学生で
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    テレビで見たようなものを
    想像していました
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    不吉な音楽が流れる中で
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    外科医の額からは汗が噴き出している
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    でも 実際は全く違いました
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    そこで流れていた音楽は
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    マドンナのベストヒットだったと思います
    （笑）
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    手術スタッフ同士で
    よく会話もしています
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    患者の心拍数などだけではなく
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    スポーツの話とか
    週末に何をするかとか
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    それ以後 手術というものを見学する度に
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    このようなものだと分かってきました
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    いつも通りの日常的な風景があるだけです
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    でも たまに
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    音楽が止み
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    突然皆が静かになって
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    全員が何かに注目することあります
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    これは 何か重大で 注意を要する危険なことが
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    起こっているサインです
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    最初にそれを目撃したのは
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    腹腔鏡手術と呼ばれる
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    手術の最中でした
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    ご存知ない方のために
    簡単に説明すると
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    腹腔鏡手術では一般の手術のように
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    大きく開腹する代わりに
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    外科医は このような
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    小さな穴を 3箇所以上開け
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    そこに この様な長くて細い器具と
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    カメラも挿入して
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    患者の体内の空間で
    手術を行うものです
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    この手術の利点は
    細菌感染のリスクや
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    痛みが大幅に減り
    回復も早いことです
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    でも欠点もあります
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    腹壁に小さな穴を開けるのに
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    先の尖った細長い
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    「トロッカー」という器具を使いますが
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    これを外科医が どのように使うかというと
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    患者のお腹にあて
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    腹壁に穴が開くまで
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    押すわけです
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    手術室のスタッフ全員が
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    この器具に注目していたのは
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    この過程で細心の注意を払い
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    器具が腹壁を突き破ったときに
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    その下にある臓器や血管まで傷つけないように
    する必要があったからです
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    日常よくある問題と同じですね
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    日常よくある問題と同じですね
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    （笑）
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    皆さんも経験ありますね？
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    （拍手）
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    ストローがもう少しで
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    突き刺さるというとき
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    反対側まで突き破って
    パックを持つ手に
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    突き刺さってしまうとか
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    ジュースが ドバッと噴出するかとか
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    不安な気分になりましたよね？
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    皆さんもストローを手に 毎回
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    私が手術室で見たものと
    物理的には同じ事を
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    やっていたわけです
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    実はこれが本当に問題であることが分かりました
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    2003年にFDAが
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    トロッカーの刺入が低侵襲手術の
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    最も危険な作業であると発表し
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    再び2009年にはトロッカーが
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    腹腔鏡手術に伴う重大な問題の
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    過半数以上に関係するという論文も発表されました
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    にもかかわらず
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    この器具は過去25年
    同じものが使われているのです
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    そこで 大学院では
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    これをテーマに研究することにしました
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    何に取り組んでいるかを
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    友達に解ってもらおうとして
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    「アパートの壁に何かを掛けるために
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    ドリルで穴を開けていて
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    ドリルが内壁を突き破った瞬間
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    刃が突然 突き抜けてしまった
    経験があるだろう？」と言うと
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    刃が突然 突き抜けてしまった
    経験があるだろう？」と言うと
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    彼は私の方を見て こう言いました
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    「頭蓋骨にドリルで穴を開けるときと同じだね？」
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    これにはビックリしました（笑）
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    実際調べてみると
    頭の手術にはドリルを使うんです
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    脳神経科の手術の多くは
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    頭蓋骨にドリルで穴を開けることから
    始まります
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    外科医が気をつけないと
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    ドリルの刃が脳内に突き進んでしまいます
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    これを知り 考え始めました
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    頭蓋骨に穴を開けたり
    腹腔鏡手術
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    他にも何かあるんじゃないか?
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    だって 医者に行けば 何かで必ず
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    ブチッと刺されますからね？
    （笑）
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    実際 医療の現場では
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    刺す行為は日常的にあります
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    体の様々な組織を刺す医療行為を
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    いくつか調べてみました
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    ここでは３つだけ 見てみましょう
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    腹腔鏡手術 硬膜外麻酔
    開頭手術ですが
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    これらの手術だけで
    アメリカでは年間
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    3万件もの問題が
    報告されています
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    これは 何とかした方が良いと
    思ったわけです
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    これらの処置に使用される
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    器具をいくつかお見せしましょう
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    硬膜外麻酔に
    使われる針がこれです
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    これで背骨の間から靱帯を穿刺して
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    出産時などの麻酔薬を注入します
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    これは 骨髄生検に使われる器具です
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    骨の中に突き刺して
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    骨髄や骨病変のサンプルを採取します
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    こちらは 南北戦争時代の銃剣です
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    （笑）
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    これが 医療器具だと紹介しても
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    きっと誰も疑わないでしょうね
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    似たようなものですから
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    調べれば調べるほど
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    さらに良い方法があるべきだと
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    思うようになりました
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    これらの人体に穴を開ける器具に
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    共通の問題も見えてきました
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    物理的な問題です
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    物理的に何が起こっているのでしょう？
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    再び壁に穴を開けるのを見てみましょう
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    ドリルで壁に対して力をかけていますね？
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    ニュートンの法則によれば
    この時 壁が押し返す力は
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    同じ強さで逆向きです
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    穴を開ける過程では
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    この2つの力は釣り合っています
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    でも ドリルの刃が
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    壁を貫通した瞬間
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    壁はもう押し返す力が無くなります
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    でも その変化に人間が反応できないため
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    ほんのミリ秒間
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    反応が起こるまで
    ドリルを押し続けることになり
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    その一方的な力によって
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    刃が突っ込んでしまうわけです
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    でも もし貫通の瞬間に
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    ドリルの刃を引っ込められたら
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    加速的に前進するのを
    避けられるでしょうか？
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    これを研究の課題にしました
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    組織に穴を開けるための
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    先の尖った器具があるとします
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    その先端を引っ込める
    最も簡単な方法は何でしょう？
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    私はバネだと思いました
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    バネが伸びながら
    器具の先端が出るようにして
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    組織を貫通する直前に
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    バネが先端を引っこめるという仕組みです
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    穴が開く瞬間まで
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    引っ込まないようにするには
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    こんな仕掛けを使いました
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    器具の先端が組織に押し当てられていると
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    この仕掛けは外側に広がって
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    壁との間に生まれた摩擦から
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    固定されバネが器具の先端を
    引き戻すのを防ぎます
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    でも穴が貫通した瞬間
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    組織が先端部を押し返せなくなり
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    このメカニズムが解除され
    バネが先端部を引っ込めます
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    これをスロー再生しておみせします
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    毎秒2000フレームで撮影しました
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    映像の下の方に見える器具の先端が
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    穴を開けるところです
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    穴が貫通した途端
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    このようにロックが解除され
    先端が引き戻されます
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    もう一度 クローズアップ映像を
    お見せします
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    尖った刃の先端が見えますが
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    ゴムの膜をやぶった瞬間に
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    刃は白い鞘の中に引っ込んでしまいます
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    見えますね
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    貫通の後これに要する時間は100分の4秒
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    しかも このデバイスは一般的な
    「突き破り」防止のデザインで
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    頭蓋骨に穴を開けたり
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    腹腔鏡手術専用ではないので
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    様々な医療の現場で使えます
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    スケールを変えることもできます
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    でも これは改良を重ねた結果です
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    これは最初の試作品で
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    そう アイスキャンディーの棒で作りました
    （笑）
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    上にあるのは輪ゴムです
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    30分ほどでこれを作って
    上手くいくと分かったので
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    このアイデアを使って
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    ２年間 このプロジェクトに
    取り組むことを決めました
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    この研究のきっかけは
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    この問題が頭を離れず
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    夜も眠れなかったからです
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    でも 誰でも気になることだと思います
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    刺される機会はそこら中にありますから
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    いつ この問題に遭遇するかわかりません
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    手術を初めて見学したあの日
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    自分がトロッカーのお世話になるとは
    思いもしませんでした
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    去年のことですが
    ギリシャ旅行中に盲腸になり
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    アテネの病院に入院しました
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    そこで 執刀医に
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    「腹腔鏡手術を行う」とを告げられました
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    小さな穴から盲腸を取り出すのです
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    回復にどのくらいかかるかや
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    予後などの説明を受けた後
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    何か質問はあるかと訊かれ
    唯一 尋ねたのは
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    「 どんなトロッカーをお使いですか？」
    ということでした
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    腹腔鏡手術を
    うまく言い表した言葉があります
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    H. C. ヤコビウスという医者の言葉で
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    「危険なのは穴を開けること自体だ」
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    なぜこの言葉が印象的かというと
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    人間に初めて腹腔鏡手術を行った
    H. C. ヤコビウスによって
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    1912年に書き残された言葉だからです
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    この問題が100年もの間
    患者を傷つけたり 殺したりしてきたわけです
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    この世にある様々な問題には
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    専門家が日夜休まず
    努力をしているはずだと思うものですが
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    実はそうとは限らないのです
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    このような問題を見つけ
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    解決できるように努めるべきなのです
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    ですから 何か気になる問題に遭遇して
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    夜も寝られなかったら
  • 8:55 - 8:58
    その問題にのめりこんでみて下さい
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    沢山の人の命を救えるかもしれません
  • 9:01 - 9:04
    （拍手）
Title:
極めて危険な一瞬を回避できる手術器具
Speaker:
ニコライ・ベグ
Description:

多くの手術は皮膚に穴をあけることから始まり、このときに体内の組織を傷つける危険が伴います。機械工学のエンジニアであるニコライ・ベグは、手術で頻繁に使われるトロッカーと呼ばれる医療器具の物理的なメカニズムに注目し、これを改良しました。日常的に行われる手術の危険性を軽減することができる発明です。
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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
09:21

Japanese subtitles

Revisions

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