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← 深海の謎は生命への理解を変える

生命はどれだけ地下深くまで存在するのか。それをどうやって見つけるのか。微生物学者のカレン・ロイドが地下深部の微生物を紹介します。海底よりさらに深い場所で、動物よりはるか以前から生きていた小さな生命。研究室では繁殖せず、われわれ人間とはまったく違う 時間とエネルギーとの関わりを持つ この謎めいた微生物群についてのトークをお楽しみください。

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Showing Revision 25 created 07/12/2020 by Ryohei Tashiro.

  1. 私はテネシー大学の海洋微生物学者です
  2. 今日はある微生物について話します
  3. とても不思議で興味深く
  4. 地球上の生命とはどんなものかという
    これまでの考えを変えるものかもしれません
  5. 質問します

  6. もし潜水艦で
    海底まで行けたら楽しいだろうなと
  7. 思ったことがある人は
    手を挙げてください
  8. そうですよね
  9. ほとんど全員ですね
    海は最高ですから
  10. では次に
    今 手を挙げた人の中で

  11. 海底に行きたい理由は そこに沈む
    「ドロ」が素晴らしいからで
  12. それに少しでも近づきたいから
    という人は手を挙げてください
  13. (笑)

  14. 誰もいない

  15. この部屋で私だけですね
  16. 私はいつもそんなことを考えています

  17. 寝てる間を除いて ずっと
  18. 生命はどれだけ地下深くまで存在するのか
  19. それをどうやって見つけるかを
    研究しています
  20. 地球上の生命には
  21. まだまだ根本的な疑問があるからです
  22. 1980年代 英国の科学者の
    ジョン・パークスは

  23. 似たようなことを考えていました
  24. そして あるクレイジーな考えに至りました
  25. 広大で深く広がる「微生物の生命圏」が
  26. 海底よりさらに数百メートルの「地下」に
    広がっているという考えです
  27. 素晴らしいですが
  28. 唯一の問題は
    誰も信じなかったということです
  29. その理由はおそらく
  30. 海底下の堆積層は地球上で
    もっとも退屈な場所だからでしょう
  31. (笑)

  32. 光も酸素もなく

  33. おそらくこれが最悪で
  34. 文字通り何百万年も
    食物の供給がないのですからね
  35. 生物学の博士号を持っていなくても
  36. 生物を探しに行くには
    適さない場所だとわかりますね
  37. (笑)

  38. しかし2002年

  39. スティーブン・ドントは
    周囲の人々を口説いて
  40. ジョイデス・レゾリューションという
    採掘船に乗って
  41. 調査の旅に出ました
  42. 彼はデンマークのB・B・ヨルゲンセンと共に
    計画を実行し
  43. ついに 純粋な海底下の堆積層のサンプルを
    手に入れました
  44. 海底表面の微生物の混入のない
    純粋なものです
  45. この船は 海底から さらに
    何千メートルも下を採掘でき
  46. 海底の地盤から
    一連の長いコアを取り出します
  47. コアはご覧のように
  48. 私たち科学者チームが運んでいる
    パイプの中に入っています
  49. 私たちは船上で そのコアを処理して
  50. 研究室に持ち帰り
  51. さらに詳しい研究をします
  52. ドントが仲間と共に

  53. その貴重な海底そのままのサンプルを
  54. 顕微鏡で調べてみると
  55. このようなものが見えました
  56. これは正確には 博士課程の
    J・ボンジョルノが
  57. 別の調査で 採掘したものです
  58. 背景のぼんやりしたものは
    深海の泥です
  59. 緑の蛍光色に染まった点々が
  60. 実際の生きた微生物です
  61. ここからは 微生物の
    少々残念な話になります

  62. 顕微鏡で見ると
    すべて同じに見えるのです
  63. ざっくり言えばですが
  64. 本当におもしろい生物―
    たとえば
  65. ウランで呼吸するものや
    ロケット燃料を生み出すものが
  66. 手元にいるとしましょう
  67. それもみんな 泥に混ざった状態で
  68. 顕微鏡で眺めると
  69. ただの点にしか見えないのです
  70. 本当にがっかりしますよ
  71. 見た目では区別できないので
  72. 指紋で見分けるように DNAで
  73. 種類を識別することにしました
  74. その方法を説明します

  75. これは本物のデータではありませんが
  76. それぞれの生物が互いにまったく
    別の種であった場合を
  77. 表したものです
  78. それぞれの種ごとに DNA配列の要素として
  79. A G C T が並んでる状態です
  80. まったくバラバラなので
  81. それぞれの間に
    何の関係もないことを示します
  82. 本物のDNAのデータだと
  83. 共通の遺伝子配列があり
    こんな感じになります
  84. 完全に近いぐらいに揃っています
  85. これほどたくさんの縦の列で
  86. ここはC ここはTと揃うことが
  87. 偶然 起こる可能性は極めて小さいものです
  88. つまり すべてに同じ祖先がいて
  89. つながりがあることを示しています
  90. では何の DNA か見てみましょう

  91. 上の2列は 人間とチンパンジーです
  92. つながりがあるのはご存知のとおりですね
  93. (笑)

  94. しかし 私たちは
    たとえば マツの木や

  95. アウトドアで生水をのんだときに
  96. 胃腸炎を引き起こす寄生虫 ジアルディアとも
    つながりがあるのです
  97. さらには 大腸菌や
  98. 致命的な日和見菌である
    C・ディフィシル菌とも
  99. 私たちは仲間なのです
  100. もちろん
  101. 産業廃棄物を分解する
    デハロコッコイデスのような良性の細菌とも
  102. つながっています
  103. このような DNA 解析をして
  104. すべての生物の類似性や違いをもとに
  105. おたがいの関係性がわかるように
  106. 系統樹をつくると このようになります
  107. 一目見て
  108. 人間やジアルディア
  109. ウサギやマツが
  110. すべて兄弟のようなものだとわかります
  111. 細菌は遠い親戚ですね
  112. つまり
  113. 私たち地球上の生物はすべて仲間なのです
  114. つまり 私は日々
  115. サルトルの「実存的孤独」に対して
  116. 科学的な反証データを積み重ねています
  117. 私たちが初めて海底下の堆積層から

  118. DNAサンプルを手にしたときに
    知りたかったことは
  119. それがどこに位置するかでした
  120. 私たちが最初に発見したのは
  121. エイリアンではないことでした
  122. そのDNAは 地球上の他の生物と
  123. 同様の配列なのですからね
  124. ではその微生物群は系統樹の
    どこにあてはまるのでしょうか
  125. まず気がつくのは
  126. たくさん種類がいることです
  127. 厳しい環境で生き延びた
    単一の生物種ではなかったのです
  128. むしろ たくさんと言えるでしょう
  129. 次ですが お気付きでしょうか
  130. これまで知られている
    どの生物とも違うということです
  131. それぞれは互いに違う種の生物で
  132. これまでに知られているどの種とも違い
  133. その隔たりは
    たとえばヒトとマツの違いほどです
  134. ジョン・パークスは正しかったのです
  135. 彼と私たちは
    80年代以前は誰も知らなかった
  136. まったく新しく多様性に富む
  137. 微生物の生態系を発見したのです
  138. そして これからが本番です
  139. 次にやることは 培養皿で
    これらの未知の種を培養して
  140. 微生物学的にしかるべき実験に
    進むわけです
  141. しかし どう頑張ってもそれらは繁殖しません
  142. 15年を経て何度も採掘航海を行った
    今に至っても
  143. いまだかつて
    この海底下の微生物の培養に
  144. 成功した人はいないのです
  145. 試行が足りないのではありません
  146. 残念に思えますが
  147. これ自体 未知の何かを意味するので
    ワクワクすることだと思っています
  148. たとえば同僚たちと
    こんな良いアイデアを思いつきました
  149. レシピ本を読むように遺伝子を読んで
  150. それらに必要な栄養を特定して
    与えれば 繁殖するはずです
  151. しかし遺伝子から導き出された餌は
  152. すでに 私たちが与えた餌そのものだったので
  153. これは完全に失敗でした
  154. 培養皿の上で必要なものは
    与えられていない 何か別のものなのです
  155. その後 世界中からさまざまなデータを集め
  156. USC の研究者である
    ダグ・ラロウと ヤン・アメンドは
  157. ある量を推定することができました
  158. 微生物の細胞1つが
    1日に必要とするエネルギーは
  159. たったの1ゼプトワットだということです
  160. スマホを出して調べる前に言うと
  161. ゼプトというのは 10のマイナス21乗です
  162. 人間には
    1日に100ワットのエネルギーが必要です
  163. 人間には
    1日に100ワットのエネルギーが必要です
  164. 100ワットというのは
  165. パイナップルを
  166. 腰くらいの高さから地面に
    881,632回 落とすことに相当します
  167. 腰くらいの高さから地面に
    881,632回 落とすことに相当します
  168. それをタービンにつないで
  169. 取り出せるエネルギーが
    人間の1日の消費カロリーです
  170. この表現で
    ゼプトワットを表しましょう
  171. 一粒の塩があるとします
  172. そして その1000分の1くらいの
    とても小さな粒を
  173. 想像してみてください
  174. それを 1ナノメートル落とします
  175. 1ナノメートルは
    目に見える光の波長の100分の1です
  176. それを1日1回です
  177. それだけで この微生物たちは
    生きていけるのです
  178. 生命を維持するのに必要なエネルギーとして
  179. 想定されていたよりも
    ずっと小さなエネルギーです
  180. しかしどういうわけか
    驚くべきことに 見事に
  181. それで十分なのです
  182. もし地中の微生物にとっての
    エネルギーのレベルが
  183. 想定外のものであれば
  184. 「時間」のレベルも
  185. 想定外になるはずです
  186. わずかなエネルギー勾配で生きる生物に
  187. 急速な成長は 無理でしょう
  188. もしそれらが人間の喉に寄生しようとしても
  189. 細胞分裂さえできず
  190. 急速に増殖するレンサ球菌によって
    滅ぼされてしまうでしょう
  191. したがって人間の喉には
    そういう微生物がいないということです
  192. おそらく海底下が退屈な場所であることは
  193. 微生物にとっては 強みであるでしょう
  194. 嵐に流されることはないし
  195. 海藻に栄養を奪われることもない
  196. そこにいるだけで いいのですから
  197. おそらく培養皿の上に なかったものは
  198. 栄養分ではなく
  199. 物質でさえないかもしれません
  200. 本当に必要なのは
  201. 「時間」なのかもしれません
  202. でも 時間を与えることは不可能でしょうね
  203. もし 培養皿を学生らに引き継いで
  204. 彼らがまた
    次の世代に引き継いでいったとしても
  205. 何千年もかけなければなりません
  206. 海底下の環境を正確に再現し
  207. 不純物の繁殖を防ぐ必要があり
    実施は不可能です
  208. でも ある意味 私たちは
    培養に成功していたのかもしれません
  209. 食料を与えられて
    こう言ったのかもしれません
  210. 「ありがとう 急いで新しい細胞を作るよ
  211. 100年後に」
  212. (笑)
  213. では逆に
  214. なぜその他の生物は「速い」のでしょうか?
  215. なぜ細胞は1日で死に
  216. 人間は100年しか生きられないのでしょうか
  217. 宇宙の時間を考えると
  218. 不自然なくらい短いと思いませんか?
  219. でもこれは不自然ではないのです
  220. この寿命はあるものによって決まるのです
  221. それは太陽です
  222. ひとたび 生命が 光合成で
    太陽エネルギーを利用し始めると
  223. 生命はすべて 昼と夜のサイクルに
    合わせたものとなります
  224. こうして太陽が
  225. 急ぐ理由とエネルギー源を
  226. 生命に与えました
  227. 地球上の生物を
    循環器系として見れば
  228. 太陽は心臓にあたります
  229. でも海底下は違います
  230. 完全に太陽からは
    切り離された循環器系です
  231. 非常にゆっくりした
    地質学のリズムによって動いているのです
  232. 現時点では理論上 細胞に寿命はありません
  233. ほんの少しでもエネルギー勾配があれば
  234. 理論上1つの細胞は
  235. 10万年以上 生きることができます
  236. 何年もかけて 壊れた部品を
    交換していけばよいのですから
  237. そういう生き方をする微生物に
    培養皿で繁殖しろと望むのは
  238. 忙しい太陽のリズムにあわせて
    生きろということです
  239. もっと他にしたいことが
    あるかもしれないのに
  240. (笑)
  241. もしそのライフサイクルを
    解明できたらと想像してみてください
  242. もしその過程に
    生物医学や産業的に応用できる
  243. きわめて持続性のある化合物が含まれていたら
  244. もしそのきわめて遅い成長のメカニズムを
  245. 解明できたら
  246. それを がん細胞の増殖を遅らせるのに
    使えるかもしれません
  247. わかりませんけどね
  248. 正直 すべて憶測ですが
  249. ひとつ確実なのは
  250. 世界中の海底の下には
  251. 100の10億倍の10億倍の10億倍個もの
  252. 微生物の細胞が生息しているということです
  253. その総量を重さで測れば
  254. 地球上の人類の重さの200倍になります
  255. そしてこれらの微生物が扱う
    時間とエネルギーは
  256. 根本的に 私たちとは違うのです
  257. 微生物にとっての1日は
  258. 私たちにとっての1000年かもしれません
  259. 太陽は関係ありません
  260. 成長を急ぐこともありません
  261. 私の培養皿なんて 気にもしてないでしょう
  262. (笑)
  263. でも 研究の手法を創造的に探し続けることで
  264. いつか生命の謎を
  265. すべての生命の謎を
  266. 解明できるかもしれません
  267. ありがとうございました
  268. (拍手)