遺伝子特許業界と争い、勝利を収めるまで
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0:01 - 0:052005年 ある秋の日の午後のことです
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0:05 - 0:09私はアメリカ自由人権協会で
科学顧問として勤務していました -
0:09 - 0:12仕事は大好きでしたが
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0:12 - 0:14その頃は少し
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0:14 - 0:16やる気を失っていました
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0:17 - 0:21それで ふらっと廊下に出て
同僚のクリス・ハンセンの部屋に行きました -
0:22 - 0:26クリスは30年以上も
アメリカ自由人権協会で働いてきたので -
0:26 - 0:29組織の知識が豊富で
見識もありました -
0:30 - 0:33だから「行き詰った気がする」と
クリスに打ち明けたのです -
0:34 - 0:36私は科学と市民の自由の間に起こる
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0:36 - 0:41いろいろな問題を調査してきました
すごく面白い仕事です -
0:41 - 0:45ただ 協会がもっと深く
こういった問題に関わって -
0:45 - 0:47影響力を持ってほしかったのです
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0:50 - 0:52クリスはズバリと言いました
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0:52 - 0:55「君が手がけている問題で
トップ5は何だい?」 -
0:56 - 0:58「そうね 遺伝差別と
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0:58 - 1:01生殖技術
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1:01 - 1:03バイオバンク それから
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1:03 - 1:05そう すごい問題があった
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1:05 - 1:07fMRIを嘘発見器に使うこと
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1:07 - 1:09それから遺伝子特許ね」
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1:10 - 1:11「遺伝子特許?」
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1:12 - 1:14「そう ヒト遺伝子の特許を取るの」
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1:14 - 1:16「そんなばかな!
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1:16 - 1:18アメリカ政府が人体の一部に
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1:18 - 1:21特許を認めているって言うのかい?
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1:22 - 1:23それは おかしいだろう」
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1:24 - 1:27そこで自分の部屋に戻って
クリスに記事を3つ送りました -
1:28 - 1:3120分後 彼がすごい勢いで
私の部屋に入ってきて言いました -
1:31 - 1:35「本当だ! 誰を訴える?」
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1:35 - 1:37(笑)
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1:38 - 1:40クリスは凄腕の弁護士ですが
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1:40 - 1:43特許法については ほとんど知識が無く
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1:43 - 1:45遺伝学については何も知りませんでした
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1:46 - 1:48私は 遺伝学の知識はありますが
弁護士ではないし -
1:48 - 1:50ましてや特許弁護士でもありません
-
1:50 - 1:54だから提訴するには
たくさん学ぶことがあるのは明らかでした -
1:54 - 1:57まず理解する必要があったのは
遺伝子特許では -
1:57 - 1:59何に特許が与えられるかでした
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2:00 - 2:04普通 遺伝子特許は
数十の特許請求を含みますが -
2:04 - 2:08中でも物議を醸しているのは
いわゆる「単離DNA」 つまり -
2:09 - 2:13細胞から取り出されたDNAの断片です
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2:14 - 2:15遺伝子特許 擁護派は こう主張します
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2:15 - 2:19「我々が特許を取るのは
身体の中にある遺伝子ではなく -
2:19 - 2:21単離された遺伝子だ」
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2:21 - 2:22確かに そうですが
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2:22 - 2:29問題なのは 遺伝子を利用するには
必ず単離しなければならないことです -
2:31 - 2:35そして 特許の対象となるのは
単離した特定の遺伝子だけでなく -
2:35 - 2:38その遺伝子のあらゆる変異を
含むのです -
2:38 - 2:40これは何を意味するのでしょう?
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2:40 - 2:43自分の遺伝子を医師に渡して
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2:43 - 2:45検査を依頼し
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2:45 - 2:47変異の有無を調べてもらうことは
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2:48 - 2:50特許権者の許可がない限り
不可能になります -
2:50 - 2:55さらに その遺伝子を使った
研究や臨床試験を止めさせる権利を -
2:55 - 2:58特許権者は持っています
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2:59 - 3:01特許権者の多くは
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3:01 - 3:02私企業ですが 彼らが
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3:02 - 3:06ヒトゲノムの一部を確保できるなら
被害を受けるのは患者です -
3:07 - 3:08アビゲイルの例を見てみましょう
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3:08 - 3:1110歳だった彼女は「QT延長症候群」でした
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3:11 - 3:14これは深刻な心臓病で 治療しないと
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3:14 - 3:16突然死する場合があります
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3:17 - 3:21この病気に関係する
2つの遺伝子の特許を持つ企業が -
3:21 - 3:23この症候群を診断する検査を
開発しました -
3:23 - 3:26ところが この企業は倒産し
検査は実施されませんでした -
3:27 - 3:29別の研究所が実施を試みましたが
-
3:29 - 3:32特許を持っていた企業は
その研究所を -
3:32 - 3:33特許侵害で訴えると脅し
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3:33 - 3:34その結果
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3:34 - 3:372年間 検査ができませんでした
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3:38 - 3:39その間に
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3:39 - 3:43アビゲイルはQT延長症候群の
診断を受けられず 亡くなりました -
3:44 - 3:47遺伝子特許には明らかに問題があり
患者を苦しめていました -
3:47 - 3:50でもこの状況に対抗する
手段はあったのでしょうか? -
3:50 - 3:52調べてわかったのですが
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3:52 - 3:55最高裁は多くの訴訟を通じて
特許適格性のない物が -
3:55 - 3:58存在することを明確にしてます
-
3:59 - 4:01特許が取れないのは天然物 すなわち
-
4:02 - 4:06空気や水、鉱物、元素周期表に
載っている物質などです -
4:07 - 4:09また自然法則について
特許は取れません -
4:10 - 4:12万有引力の法則や E=mc^2 はだめです
-
4:13 - 4:18こういった極めて根本的な自然界の存在は
誰でも自由に使えるべきであり -
4:18 - 4:20誰かに独占されてはいけません
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4:20 - 4:23そして生命の基本構造であるDNAは
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4:23 - 4:25私たちを形作る
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4:25 - 4:28すべてのたんぱく質をコードしているので
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4:28 - 4:31私たちは それを天然物であり
自然法則だと考えたのです -
4:31 - 4:34それが私たちの体内にあろうが
-
4:34 - 4:36試験管の中にあろうが関係ありません
-
4:37 - 4:38この問題を徹底的に掘り下げるため
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4:38 - 4:42私たちは国中を飛び回って
いろいろな専門家と話しました -
4:43 - 4:46科学者や 医療の専門家
法律家や 特許法の専門家たちです -
4:47 - 4:51ほとんどの人が政策面でも
理論上 法律面でも -
4:51 - 4:53私たちが正しいという判断でした
-
4:54 - 4:55でも専門家は全員
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4:55 - 4:58遺伝子特許を相手に訴えて 勝つ見込みは
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4:58 - 5:00ほぼゼロと考えていました
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5:02 - 5:03なぜでしょうか
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5:03 - 5:06実は特許庁は遺伝子特許を
20年以上前から -
5:06 - 5:08認めていて
-
5:09 - 5:12ヒト遺伝子の特許は
文字通り 数千件あったのです -
5:13 - 5:16特許による参入障壁が
深く根付いていて -
5:17 - 5:20バイオ産業は
この慣行を基に成長していました -
5:20 - 5:23遺伝特許を禁ずる法案は
何年にも渡って -
5:23 - 5:25議会に提出されていましたが
-
5:25 - 5:27完全に行き詰まっていました
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5:27 - 5:29要するに
-
5:29 - 5:32裁判所が これらの特許を
覆すことはないだろうと言うのです -
5:33 - 5:38クリスも私も困難なことから
逃げるタイプではありませんでした -
5:38 - 5:41それに「正しいだけではだめ」などと
言われると なおさら -
5:41 - 5:43勝負を受けて立つのが
当然に思えました -
5:44 - 5:46だから証拠収集を始めたのです
-
5:47 - 5:51特許訴訟の一般的な形では
例えば A社が B社を -
5:51 - 5:54とても細かく難解な
技術上の問題を巡って訴えます -
5:55 - 5:57でも私たちは
そういう訴訟に関心はなく -
5:57 - 6:00このテーマは
はるかに重大だと考えました -
6:00 - 6:02科学の自由と医療の進歩
そして患者の権利に関する -
6:02 - 6:04問題だったからです
-
6:04 - 6:07だから私たちは この訴訟の方向性を
-
6:07 - 6:09一般的な特許訴訟ではなく
公民権訴訟という扱いに -
6:10 - 6:12近付けることにしました
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6:13 - 6:16まず 特許権を積極的に主張していた
-
6:16 - 6:18遺伝子特許の保有者を特定するとともに
-
6:18 - 6:22大規模な原告団と
専門家の集団を組織して -
6:22 - 6:24裁判所に このような特許が
-
6:24 - 6:28あらゆる面で患者や技術革新に害を及ぼすと
主張する準備をしました -
6:29 - 6:33そして訴訟相手の第一候補
ミリアド・ジェネティクス社を見つけました -
6:33 - 6:35ユタ州ソルトレイクを
拠点とする企業です -
6:37 - 6:39ミリアド社は2種類の遺伝子
-
6:39 - 6:42BRCA1と BRCA2遺伝子の
特許を持っていました -
6:43 - 6:46この遺伝子に ある種の変異がある女性は
-
6:46 - 6:49乳がんや卵巣がんを発症するリスクが
-
6:49 - 6:51かなり高くなります
-
6:52 - 6:54ミリアド社は この特許を使って
-
6:54 - 6:58アメリカにおけるBRCA検査の
排他的独占権を維持しようとしており -
6:59 - 7:03この検査をしようとしていた
複数の研究所に待ったをかけました -
7:03 - 7:05ミリアド社は検査に3千ドルを超える
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7:05 - 7:07高額な費用を請求しました
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7:07 - 7:09また世界の科学界に対して
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7:09 - 7:12臨床データを非公開にしてしまいました
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7:13 - 7:14さらにひどいことに
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7:14 - 7:17数年間に渡って ミリアド社は
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7:17 - 7:21フランスの研究グループが
新たに特定した変異を検査項目に加え -
7:21 - 7:24検査を更新することを
拒否し続けたのです -
7:25 - 7:28推計によれば 数年に渡る
-
7:28 - 7:29この期間中に
-
7:29 - 7:33検査を受けた女性の
実に12%が -
7:33 - 7:35誤った結果を受け取っていました
-
7:36 - 7:40陽性の可能性があるのに
陰性という結果を受けていたのです -
7:41 - 7:43彼女はキャスリーン・マクシアン
-
7:44 - 7:47彼女の妹 アイリーンは
40歳の時に乳がんを発症し -
7:47 - 7:49ミリアド社の検査を受けました
-
7:50 - 7:52結果は陰性で
-
7:52 - 7:53家族は安心しました
-
7:53 - 7:57結果によると アイリーンのがんは
おそらく家族からの遺伝ではなく -
7:57 - 8:00家族は検査を受けなくてもよいと
思ったからです -
8:01 - 8:02ところが2年後
-
8:02 - 8:06キャスリーンは卵巣がんが
かなり進行していると診断されました -
8:07 - 8:11キャスリーンの妹は
誤って陰性と判定された -
8:11 - 8:1412%の女性の1人だったのです
-
8:14 - 8:17もしアイリーンが
正しい検査結果を受けていれば -
8:17 - 8:20キャスリーンも検査を受け
-
8:20 - 8:23卵巣がんは予防できていた
かもしれません -
8:25 - 8:26ミリアド社に狙いを定めると
-
8:26 - 8:30この問題を解明できる専門家を含む
原告団を組織する -
8:30 - 8:32必要が出てきました
-
8:32 - 8:35最終的に 20人の
意欲的な原告が集まりました -
8:35 - 8:37遺伝子カウンセラーや
-
8:37 - 8:40特許侵害の停止通告書を受けた
遺伝学者 -
8:41 - 8:43支援組織や
-
8:44 - 8:47合わせて15万人の
科学者と医療関係者を代表する -
8:47 - 8:504つの科学団体や
-
8:51 - 8:54特許のせいで ミリアド社の検査を
受けるお金がなかったり -
8:54 - 8:57セカンドオピニオンを聞きたくても
聞けなかった -
8:57 - 8:59女性たちも個人的に参加しました
-
9:00 - 9:04訴訟の準備で とても大変だったことは
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9:04 - 9:07科学について どう解りやすく
伝えるかということでした -
9:07 - 9:11ミリアド社がしたことは
「発明」ではなく -
9:11 - 9:14単離されたBRCA遺伝子は
天然物だと立証するために -
9:15 - 9:18基本的な概念を
いくつか説明する必要がありました -
9:18 - 9:20遺伝子とは何か? DNAとは何か?
-
9:20 - 9:24どのようにDNAを単離し
なぜ それは発明とは言えないのか? -
9:25 - 9:29私たちは何時間も
原告団や専門家と一緒に -
9:29 - 9:32そういった概念をシンプルかつ
正確に説明する方法を -
9:32 - 9:34考えました
-
9:34 - 9:38その結果 比喩に頼ることが
多くなりました -
9:38 - 9:39例えば「金」の比喩です
-
9:40 - 9:42単離されたDNAとは
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9:42 - 9:45金を山から掘り出すことや
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9:45 - 9:47川底から採集するのに似ています
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9:47 - 9:51金の採掘方法の特許を取ることは
できるかもしれませんが -
9:51 - 9:53金自体の特許は取れません
-
9:54 - 9:57山から金を掘り出すには
重労働と大変な努力が -
9:57 - 9:59必要かもしれませんが
-
9:59 - 10:01それでも特許は取れません
金なのですから -
10:01 - 10:03金は掘り出しさえすれば
-
10:03 - 10:05あらゆる用途に使えます
-
10:05 - 10:08山の中にある時は
利用できませんが -
10:08 - 10:10掘り出せば
例えば宝飾品を作れます -
10:10 - 10:12それでも特許は取れません
金は金なのです -
10:13 - 10:172009年になって
訴訟を起こす準備ができました -
10:18 - 10:22ニューヨーク南部地区
連邦裁判所に提訴し -
10:22 - 10:26無作為の割当で
ロバート・スウィート判事が担当になりました -
10:27 - 10:302010年3月 スウィート判事は
意見を公表しました -
10:31 - 10:32152ページに渡るものです
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10:33 - 10:35私たちの完全な勝訴でした
-
10:36 - 10:37裁判官の意見を読むと
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10:37 - 10:42この訴訟の科学的な内容を
とても雄弁に説明していることに驚きました -
10:43 - 10:45私たちの準備書面は
結構いい出来でしたが -
10:45 - 10:47そこまでではなかったのですから
-
10:48 - 10:51では 判事はどうやって
この件を これほど短期間に 深く -
10:51 - 10:52理解したのでしょう?
-
10:52 - 10:56私たちには どうやったのか
わかりませんでした -
10:56 - 10:57後でわかったのですが
-
10:57 - 11:01当時スウィート判事の下で働いていた
事務官は -
11:01 - 11:02単に弁護士だっただけではなく
-
11:02 - 11:04科学者でもありました
-
11:04 - 11:05しかも ただの科学者ではなく
-
11:05 - 11:09分子生物学の博士号を持っていたのです
-
11:09 - 11:10(笑)
-
11:10 - 11:13思いがけない幸運でした
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11:14 - 11:15ミリアド社は
-
11:15 - 11:18連邦巡回控訴裁判所に控訴しました
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11:18 - 11:21ここから事態は面白くなってきます
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11:21 - 11:25まずはじめに この訴訟の重要な局面で
-
11:25 - 11:28アメリカ政府が立場を変えました
-
11:29 - 11:32政府は 地区裁判所ではミリアド社を
擁護する書面を提出していました -
11:33 - 11:38ところが控訴審で政府は
特許庁とは正反対の立場をとり -
11:38 - 11:40書面で こう述べました
-
11:40 - 11:44地区裁判所の判断に基づいて
この件を再検討した結果 -
11:44 - 11:47単離DNAは 特許の対象にならないと
結論づけたのです -
11:48 - 11:50これは とても重要なことで
-
11:50 - 11:51予想外でした
-
11:53 - 11:55連邦巡回控訴裁判所は
-
11:55 - 11:57すべての特許訴訟を審理しており
-
11:57 - 12:00特許保護を かなり重視することで
知られています -
12:00 - 12:03ですから こんな目覚ましい
進展があっても -
12:03 - 12:04敗訴を覚悟していましたが
-
12:04 - 12:06その通りになりました
-
12:06 - 12:08「ほぼ」敗訴です
-
12:08 - 12:11判断が2対1に分かれたからです
-
12:12 - 12:14ただ 2人の判事が
敗訴判決を下した理由は -
12:14 - 12:17それぞれ まったく異なるものでした
-
12:17 - 12:191人目のローリー判事は
-
12:19 - 12:22自分なりの新しい生物学上の
仮説を立てましたが -
12:22 - 12:23これは見当違いでした
-
12:23 - 12:24(笑)
-
12:24 - 12:27ミリアド社が新しい化学物質を
作ったと判断したのです -
12:27 - 12:28これは まったく意味をなしません
-
12:29 - 12:31ミリアド社も そんな主張はしておらず
唐突な判断でした -
12:32 - 12:34もう一人のムーア判事は
-
12:34 - 12:38単離DNAが天然物という点で
基本的には私たちに賛成しましたが -
12:38 - 12:41「バイオ産業を混乱させたくない」と
いう意見でした -
12:42 - 12:453人目のブライソン判事は
-
12:45 - 12:46私たちを支持しました
-
12:48 - 12:50そこで次に最高裁に
再審理の申し立てをしました -
12:50 - 12:53最高裁に申し立てをする場合
-
12:53 - 12:56裁判所に回答してもらう
質問を提出する必要があります -
12:57 - 13:00普通 この質問は
非常に長い文章になります -
13:00 - 13:03丸1ページも続く文章に「この点で」とか
「それゆえ」といった -
13:03 - 13:06文句が延々と並ぶのです
-
13:06 - 13:10一方 私たちが提出した質問は
史上 最も短いものでしょう -
13:11 - 13:13たったこれだけです
-
13:14 - 13:16「ヒト遺伝子の特許は取れるか?」
-
13:17 - 13:20これをどう思うか
クリスが最初に聞いてきた時 -
13:20 - 13:21私はこう答えました
「どうでしょう — -
13:21 - 13:24『単離DNAの特許は取れるか?』と
言うべきでは」 -
13:25 - 13:26「いいや
-
13:26 - 13:317年前 君がこの件を
私のところに持ってきた時と -
13:31 - 13:34同じ反応を
裁判官にも味わわせたいんだ」 -
13:35 - 13:37これには私も反論できませんでした
-
13:38 - 13:41申し立てのうち 最高裁が審理するのは
-
13:41 - 13:43およそ1%ですが
-
13:43 - 13:44私たちの申し立ては受理されました
-
13:46 - 13:50口頭弁論の日になり
私は本当に興奮していました -
13:50 - 13:51外に長い列ができました
-
13:51 - 13:54裁判所で傍聴しようと
午前2時半から -
13:54 - 13:56人が並んでいたのです
-
13:56 - 13:582つの乳がん患者支援団体
-
13:58 - 14:00Breast Cancer Action と FORCE は
-
14:00 - 14:02裁判所前の階段でデモをしていました
-
14:03 - 14:06クリスと私は廊下で
静かに座っていました -
14:07 - 14:10クリスにとって一世一代の
重要な訴訟で口頭弁論をする -
14:10 - 14:12直前のことです
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14:13 - 14:15明らかに彼より 私の方が緊張していました
-
14:16 - 14:21でも私が法廷へ足を踏み入れると
聞こえていた外の喧騒は静まりました -
14:21 - 14:24見渡すと見慣れた顔が並んでいました
-
14:24 - 14:26個人的に依頼をしてきて
-
14:26 - 14:28極めて私的な話をしてくれた女性たちや
-
14:29 - 14:33忙しい中 長い時間を割いて
この法廷闘争に身を捧げてくれた -
14:33 - 14:35遺伝子学者たち
-
14:35 - 14:38様々な医療団体や
-
14:38 - 14:40患者支援団体
-
14:40 - 14:42環境団体や宗教団体で
-
14:42 - 14:45この件の法廷助言書を提出してくれた
代表者たちもいました -
14:47 - 14:50そこにはヒトゲノム計画のリーダー
3名もいました -
14:50 - 14:52その中の1人はDNAの共同発見者
-
14:52 - 14:54ジェームズ・ワトソン その人です
-
14:54 - 14:56彼も裁判所に助言書を提出し
-
14:56 - 14:59遺伝子特許を
「狂気の沙汰」と言いました -
14:59 - 15:01(笑)
-
15:01 - 15:05この法廷に代表を送った
様々な団体が -
15:05 - 15:08この日の実現を目指して
それぞれ 貢献してきたこと自体 -
15:08 - 15:11問題の重要性を雄弁に語っていました
-
15:11 - 15:14口頭弁論自体 人を惹きつけました
-
15:14 - 15:16クリスの弁論は見事でした
-
15:16 - 15:17でも私にとって
-
15:17 - 15:21最もスリリングだったのは
単離DNAに取り組む最高裁判事たちの -
15:21 - 15:23姿を見たことでした
-
15:23 - 15:26様々なたとえを駆使して
活発に議論する様子は -
15:26 - 15:29私たち弁護団が
過去7年間してきたのと -
15:29 - 15:31まったく同じでした
-
15:32 - 15:34ケイガン判事は DNAの単離を
-
15:34 - 15:37アマゾンの薬草から
成分を抽出することにたとえました -
15:39 - 15:43ロバーツ判事は DNAの単離は
木からバットを作るのとは違うと述べました -
15:44 - 15:46それから私の特にお気に入りの場面ですが
-
15:47 - 15:52ソトマイヨール判事は 単離DNAは
「ただ そこに自然があるだけ」と述べたのです -
15:52 - 15:53(笑)
-
15:53 - 15:56その日 法廷を出る時
かなり自信はありましたが -
15:56 - 15:59これほどの結果は
予想していませんでした -
16:01 - 16:029対0の勝訴です
-
16:03 - 16:07「自然に生じるDNAの断片は
天然物であり -
16:07 - 16:10単離されただけでは
特許保護適格性を持たない -
16:10 - 16:12またミリアド社は
-
16:12 - 16:14何かを創作したとは言えない」
-
16:16 - 16:18この判決が出て24時間以内に
-
16:18 - 16:205つの研究所が
-
16:20 - 16:23BRCA遺伝子検査を
開始すると発表しました -
16:23 - 16:27ミリアド社より低価格で
実施するという所もいくつかありました -
16:27 - 16:30ミリアド社より包括的な検査を
-
16:30 - 16:32提供する研究所もありました
-
16:32 - 16:35一方 判決の影響は
ミリアド社問題に留まらず -
16:35 - 16:40ヒト遺伝子に特許を認めるという
アメリカで25年間続いた慣例に -
16:40 - 16:41終止符を打ち
-
16:41 - 16:46また 生物医学上の発見や発明における
大きな障壁を取り払っています -
16:46 - 16:51さらに アビゲイルやキャスリーンや
アイリーンのような患者たちが -
16:51 - 16:54必要な検査を受けられるようになりました
-
16:55 - 16:58裁判所が判決を下してから
数週間後 -
16:58 - 17:00私あてに小包が送られてきました
-
17:01 - 17:03デューク大学教授の
-
17:03 - 17:05ボブ・クックディーガンからでした
-
17:05 - 17:08クリスと私が訴訟を起こすことを
検討し始めた頃 -
17:08 - 17:11最初に会いに行った人の1人です
-
17:12 - 17:15開けてみると小さなぬいぐるみが
入っていました -
17:16 - 17:19(笑)
-
17:22 - 17:24私たちは大きなリスクを負って
訴訟を起こしました -
17:25 - 17:27リスクを負う勇気を与えてくれたのは
-
17:27 - 17:30正しいことをしているという信念でした
-
17:30 - 17:34訴訟のプロセスは 結審まで
8年近くかかり -
17:34 - 17:36途中 何度も急展開がありました
-
17:37 - 17:38運も多少は関係あるでしょうが
-
17:39 - 17:42私たちが いろいろな団体をつなぎ
-
17:42 - 17:44同盟を築いていったことで
-
17:44 - 17:45「豚も空を飛べた」のです
-
17:46 - 17:47ありがとう
-
17:47 - 17:52(拍手)
- Title:
- 遺伝子特許業界と争い、勝利を収めるまで
- Speaker:
- ターニャ・シモンチェリ
- Description:
-
ヒト遺伝子の特許は取れるでしょうか?2005年にターニャ・シモンチェリは初めてこの複雑な問題を検討し始めましたが、その頃はアメリカ特許法で可能とされていました。そのせいで特許権者には、特許を取得した遺伝子を解読したり、検査したり、調べることを止めさせる権利が与えられていたのです。この法律は患者に害を及ぼす上に、生体医療のイノベーションに対する障壁になることを憂慮して、アメリカ自由人権協会のシモンチェリと同僚たちはこれに立ち向かいました。誰もが負けると考えた訴訟をあえて起こし、最高裁にたどり着くまでの緊張感あふれる話をお聞きください。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 18:05
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