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知能機械の時代に、どう仕事のスキルを身に付けるか?

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    午前6時30分
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    クリスティンは担当の前立腺患者を
    手術室に連れて行くところでした
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    彼女は研修医で
    外科専門医を目指しています
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    今は学ぶことが仕事です
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    今日行われる 勃起機能を残すための
    非常に繊細な神経温存の摘出手術を
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    彼女はぜひとも自ら
    執刀したいと望んでいます
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    しかし それができるかは指導医次第で
    その指導医はまだ来ていません
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    彼女と手術スタッフは患者を麻酔で眠らせ
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    最初の20センチの下腹部切開を
    彼女が主導します
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    切開部をクランプで固定すると
    彼女は看護師に指導医を呼ぶように指示します
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    彼が到着し 手術着に着替えると
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    その時点から クリスティンと指導医の
    4本の手はほとんど患者の体内で
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    指導医の下でクリスティンが
    進めていきます
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    前立腺の摘出が終わると―
    指導医は神経温存術を少しさせてくれましたー
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    彼は術衣を脱ぎ
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    書類を書き始めます
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    8時15分には
    クリスティンは縫合にかかります
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    それを肩越しに覗き込んでいた
    若手研修医に
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    彼女は縫合の最後を任せます
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    クリスティンは満足です
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    患者も容態を回復するでしょう
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    そして外科医として彼女は
    6時30分時点より明らかに成長しています
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    これは極端な事例でしたが
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    仕事の覚え方は多くの場合
    クリスティンと同じでしょう
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    熟練者を少し観察し
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    仕事の中でも
    簡単でリスクの少ないことをやってみて
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    熟練者が指導して
    もう大丈夫と判断したら
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    リスクが高く困難な作業に進むのです
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    私はずっと こうした学びに
    魅了されてきました
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    私たちを人間たらしめる
    根本的なものと感じていたのです
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    見習い コーチング メンターシップ
    OJTなど呼び方は様々です
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    外科医の間では「見る、する、教える」
    と言われています
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    どれもプロセスは同じで
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    もう何千年も世界中でスキル習得は
    主にその方法でされてきました
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    でも今 私たちは
    それを阻むような形でAIを使っています
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    生産性向上のため
    自らの学びを犠牲にしているのです
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    MIT研究時代に外科で
    この事象を初めて確認しました
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    しかし現在では様々な産業で
    様々なAIにより
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    どこででも起きているとの
    確証を得ています
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    もし何もしなかったら
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    AIを扱おうとしている
    ほとんどの人が壁にぶつかります
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    先ほどの外科手術で考えてみましょう
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    6か月後
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    同じ午前6時30分に クリスティンが
    別の前立腺患者を運び込む先は
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    ロボット化された手術室です
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    指導医の主導で
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    4本のアームがある数百キロのロボットを
    患者に取り付けます
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    指導医とクリスティンは2人とも術衣を脱ぎ
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    3、4メートル離れた制御台に向かいます
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    クリスティンは見ているだけです
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    このロボットがあれば 指導医は
    すべての処置を単独でできますので
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    基本的に彼がすべてを行います
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    彼女に練習が必要なことは分かっています
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    彼女にさせたいのですが
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    彼女にさせると時間もかかり
    ミスが増えるため
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    患者を優先しているのです
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    この担当割では神経近傍の執刀をできる望みは
    クリスティンにはありませんでした
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    4時間の手術で15分操作できれば
    ラッキーと言ったところです
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    彼女がうっかり間違えると
    指導医が画面にタッチして
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    また ただ見るだけになってしまい
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    教室の隅に立たされたような
    気分になるのです
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    ロボットと仕事に関する
    過去8年に行ったすべての研究は
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    この重大で未解決の問題に
    端を発しています
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    知能機械の時代に働く方法を
    どのように習得するのか?
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    これを探るため 2年半の間
    何十人もの研修医と外科医が
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    従来の手術とロボット支援手術を
    するのを観察して聴取し
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    技術習得を目指す研修医と
    色々話をしました
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    全米のトップ18の教育病院を調べましたが
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    どこでも話は一緒でした
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    ほとんどの研修医は
    クリスティンと同じ状況でした
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    「見る」機会は多いものの
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    「する」機会はほとんどありませんでした
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    実際に苦闘することができず
    習得できていなかったのです
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    これは外科医にはとても重大な事実ですが
    一般的な広がりも知る必要がありました
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    AIの利用が仕事の学習を阻害する例は
    他にもあるのでしょうか?
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    それを見出すため 私は小規模ながら拡大中の
    若手研究者グループと連携しました
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    彼らは AIが使われる仕事について
    現場調査をしていました
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    スタートアップ企業や警備
    投資銀行 オンライン教育など
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    多彩な職場環境を対象としたものです
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    私のように最低でも1年間
    何百時間もの観察と聴取を行い
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    調査対象者のそばで一緒に
    働くこともしばしばでした
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    互いのデータを共有し
    私は規則性がないか調べました
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    業界や職種やAIの種類に拠らず
    話は一緒でした
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    組織はAIで成果を出そうと
    熱心に試みていますが
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    結果として学ぼうとする人を
    熟練者の仕事から引き剥がしていました
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    スタートアップのマネージャーは
    顧客対応を外部委託しています
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    警察官は犯罪予測をどう扱うかを
    熟練者の支援なしに学ばねばなりませんでした
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    若手の銀行員は
    複雑な分析から切り離され
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    教授はオンライン講座を
    何の助けもなく作らねばなりませんでした
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    これらすべての効果が
    外科手術と同様でした
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    実務を通じて学ぶことが
    より難しくなっているのです
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    そしてこれで話は終わりません
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    マッキンゼーの推定では
    2030年までに5~10億人が
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    日常業務でAIを活用しないと
    いけなくなるとしています
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    それまでの間しばらくは
    実地での学びも継続するでしょう
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    アクセンチュアの最新の労働者調査では
    ほとんどの労働者は正式な訓練ではなく
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    実務をこなしながら
    重要なスキルを学んでいます
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    将来への潜在的な影響について
    多く語られますが
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    AIについて 現時点で
    一番大きな影響があると思われるのは
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    実地での学習が一番必要であるにもかかわらず
    それを妨げる形で
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    AIを使っているということです
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    どこでも 仕事を学ぶ方法を
    見出している人は ごく少数でした
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    彼らはルールを破るか
    曲げるかして学んでいます
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    認められた方法が実効的でないから
    ルールを曲げるなり破るなりして
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    熟練者との実地訓練を
    成し遂げているのです
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    私の例で言えば 医大で
    ロボット支援手術をする研修医は
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    総合診療医となるための教育を
    犠牲にしていました
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    彼らはシミュレータや手術の記録に
    何百時間も余分な時間をかけていますが
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    本来は手術室で学ぶべきことです
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    そして最も大切なことは
    熟練者の限られた監督の下で
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    苦心して実際の手技をやってみる方法を
    見つけていることです
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    そのやり方は ルールを曲げ
    表舞台には出ないことから
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    「影の学習(Shadow Learning)」
    と呼んでいます
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    成果が上がるので
    周りの人も黙認します
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    彼らは選りすぐりの優等生であることを
    忘れないでください
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    明らかにこれは良くないことで
    ずっと続けられるものでもありません
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    仕事上で必要な技術を学ぶために
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    解雇のリスクを抱えるべきではありません
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    一方でそのような人たちから
    学ぶ必要があります
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    彼らは学ぶために
    重大なリスクを取りました
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    仕事の中でもがき 挑戦することを
    続ける必要性を理解し
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    自分の能力をわずかに超えるような
    困難な問題に
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    立ち向かえるようにすべきと
    考えたのです
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    彼らはまた熟練者に
    そばにいてもらうようにし
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    ヒントをもらったり
    大惨事を防ぐようにしていました
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    苦闘と熟練者の支援という組み合わせを
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    AIを導入した職場に築きましょう
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    分かりやすい実例をご紹介します
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    ロボットの出現前は
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    爆発物処理技術者は
    簡易爆発物を処理すべく近付きます
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    若手職員は数十メートル離れたところで
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    ただ見守っていて 技術者が安全を確認し
    危険区域への立ち入りを
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    許可して初めて支援に出ます
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    現在では爆発物処理車に
    2人は隣同士で座ります
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    一緒に映像を見て
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    離れた場所にいるロボットを操作し
    技術者は口頭で作業を誘導します
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    学習者はロボット出現前より
    良く学べます
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    この方法は外科やスタートアップ 警備
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    投資銀行 オンライン教育
    それ以外にも広げられます
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    幸いなことに そのための
    新たな道具があります
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    インターネットやクラウドにより
    学習者に1人ずつ熟練者がつく必要はなくなり
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    物理的にそばにいなくても
    同じ組織にいなくても良くなりました
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    また手助けできるAIを作ることもできます
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    学習者が苦闘できるようにコーチし
    熟練者がコーチできるようにコーチし
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    それらの2つのグループを
    ネットワークで繋ぐのです
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    この様なシステムを
    使っている人もいますが
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    大抵は正式なトレーニングばかりでした
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    でも もっと危機的なのは
    実地での学習のほうです
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    改善できるはずです
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    今 求められているのは
    私たちがAIの驚くべき能力を
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    最大限に生かせる仕事を
    もっとうまく創っていくと共に
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    それと同時に
    自らのスキルも高めることです
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    これこそ 私が子供の頃に
    夢見ていた未来です
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    そして それを創り出すのは今なのです
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    ありがとうございました
  • 9:34 - 9:37
    (拍手)
Title:
知能機械の時代に、どう仕事のスキルを身に付けるか?
Speaker:
マット・ビーン
Description:

何千年もの間、世界中でスキルを身に付ける方法は変わってきませんでした。熟練者の下で訓練し、まずはちょっとした容易な作業をやり、次にリスクが高く難しい作業へと進みます。でも昨今、私たちはそのやり方を阻むような形でAIを使っており、生産性を追求するあまり学習を犠牲にしているのだ、と組織エスノグラファーのマット・ビーンは説きます。何ができるのでしょうか? ビーンは、現状を転換し、分散型かつ機械強化型のメンターシップという形でAIの優れた能力を最大限に活用し、私たちのスキルも同時に高めるというビジョンを紹介します。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
09:50

Japanese subtitles

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