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暮らしの中にストア哲学を|マッシモ・ピリウーチ| TEDxAthens

  • 0:14 - 0:15
    想像してください
  • 0:15 - 0:21
    2300年前ごろに
    アテネの街を歩いてると
  • 0:21 - 0:25
    キティオンのゼノンに
    出会うかもしれません
  • 0:25 - 0:27
    彼はフェニキア商人でした
  • 0:27 - 0:31
    とても羽振りがよかったのですが
    船が難破し 全てが台無しになり
  • 0:31 - 0:33
    持っていたものを 全部失いました
  • 0:33 - 0:36
    どうにかアテネに着き
    何をしたと思いますか?
  • 0:36 - 0:41
    ゼノンは まず本屋に立ち寄り
    読書を始めたのです
  • 0:41 - 0:46
    クセノフォンの『ソクラテスの思い出』
    という本です
  • 0:46 - 0:49
    ゼノンはこの本に大変興味を持ち
    本屋に尋ねました
  • 0:49 - 0:51
    「どこに行ったら
    この本の中の誰か
  • 0:51 - 0:53
    この哲学者たちの誰かに
    会えますか?」
  • 0:53 - 0:55
    本屋は振り返って言いました
  • 0:55 - 0:58
    「ほら あそこに1人
    歩いてますよ」
  • 0:58 - 1:01
    古代のアテネだから 哲学者が
    普通に通りかかるのです
  • 1:01 - 1:03
    (笑)
  • 1:03 - 1:07
    通りかかったのは
    キュニコス派のクラテスです
  • 1:07 - 1:09
    ゼノンはクラテスの弟子になり
  • 1:09 - 1:13
    多くの一流の哲学者たちと
    アテネで勉強を続けます
  • 1:13 - 1:16
    そしてゼノンは
    自分の学校を開きました
  • 1:17 - 1:18
    後に「ストア派」として
    知られますが
  • 1:18 - 1:21
    それは「ストア」つまり市場で
    哲学を語り合ったからです
  • 1:21 - 1:24
    決まった場所に集う 他の学派 —
    プラトンのアカデミーや
  • 1:24 - 1:28
    アリストレスのリセウム —
    とは異なり
  • 1:28 - 1:30
    ストア哲学者は聴衆に混じり
  • 1:30 - 1:33
    人生について また人生を
    より良いものにする方法を説きました
  • 1:34 - 1:37
    ストア哲学は古代哲学の主流の
    1つとなります
  • 1:37 - 1:39
    ストア哲学は 初めに
    ヘレニズム世界に
  • 1:39 - 1:43
    そして共和制ローマ
    後に ローマ帝国に広まります
  • 1:43 - 1:45
    ストア派からこの時代の
    主な思想家が生まれます
  • 1:46 - 1:49
    その中の1人 セネカは政治家で
  • 1:49 - 1:52
    劇作家でもあり
    シェイクスピアに影響を与えました
  • 1:52 - 1:56
    セネカは 皇帝ネロの
    不運な顧問でもあり
  • 1:56 - 1:58
    そのせいで
    セネカは不幸な結末を迎えます
  • 1:59 - 2:05
    マルクス・アウレリウスは
    歴史上 珍しい哲人皇帝でした
  • 2:05 - 2:07
    個人的な日記『自省録』を書き
  • 2:07 - 2:12
    これは 現在 世界中の多くの人に
    読まれています
  • 2:13 - 2:16
    古代哲学にしては珍しく
  • 2:16 - 2:18
    ストア哲学は
    多くの女性を惹きつけ
  • 2:18 - 2:21
    古代ローマの多くの婦人たちが
    コンビビアを開きました
  • 2:21 - 2:24
    いわば 友人たちとの
    集会のようなものです
  • 2:24 - 2:25
    ストア哲学について語り合い
  • 2:25 - 2:28
    多くの婦人たちが
    哲学を生活に取り入れました
  • 2:28 - 2:31
    その中で有名なのが
    ポルキア・カトニスです
  • 2:31 - 2:35
    偶然にもユリウス・カエサルの
    最大の敵である
  • 2:35 - 2:38
    小カトーの娘であるとともに
  • 2:38 - 2:43
    カエサルに陰謀を企てた
    ブルータスの妻でもあります
  • 2:43 - 2:45
    彼女の人生には
    多くの試練がありましたが
  • 2:45 - 2:48
    ストア哲学のやり方で
    その試練に立ち向かいました
  • 2:50 - 2:54
    さて キリスト教の勃興により
    ストア哲学も含め
  • 2:54 - 2:57
    古代哲学の学派は最終的に
    すべて衰退してしまいます
  • 2:57 - 3:01
    しかし ストア哲学は その後2千年間
    人々に影響を与え続けます
  • 3:01 - 3:05
    今日でもストア哲学が多くの人にとって
    馴染みがある理念なのは
  • 3:05 - 3:07
    キリスト教に影響を与えたからです
  • 3:07 - 3:10
    キリスト教の創始者であるともいえる
    タルソスのパウロに始まり
  • 3:10 - 3:13
    中世 最も大きい影響を与えた
    神学者
  • 3:13 - 3:15
    トマス・アクィナスに継承され
  • 3:15 - 3:18
    近代では 最も重要な近代哲学者の
    1人であるといってもいい
  • 3:18 - 3:22
    デカルトを通して近代へとつながり
  • 3:22 - 3:26
    さらに ストア哲学から倫理的考えを得た
    スピノザに受け継がれました
  • 3:31 - 3:33
    さて 歴史については
    このくらいにして
  • 3:33 - 3:34
    ストア哲学とは何か?
  • 3:34 - 3:37
    まず 大前提として
  • 3:37 - 3:40
    自然に従って生きる
    という考えがあります
  • 3:40 - 3:44
    しかし 裸で森に走っていって
    木に抱きついたりしないでください
  • 3:44 - 3:46
    そういうことではありません
  • 3:47 - 3:51
    ストア哲学者は人間の本質を
    真剣にとらえる必要があると考えました
  • 3:51 - 3:54
    そして 人間の本質には
    基本的に2つの面があります
  • 3:54 - 3:57
    1つ目は 非常に社会的な動物であること
  • 3:57 - 4:02
    人間は必要なら1人でも生き延びられますが
    集団の中でこそ 本領を発揮します
  • 4:02 - 4:05
    健全な社会的つながりがあってこそ
    本領を発揮します
  • 4:05 - 4:06
    2つ目は 理性が備わっていること
  • 4:06 - 4:09
    もちろん 人間がつねに理性的に
    行動するわけではないし
  • 4:09 - 4:12
    反対に 実際は
    理性を保とうと苦労しますが
  • 4:12 - 4:15
    とにかく理性を備えています
  • 4:15 - 4:16
    ストア哲学者は
  • 4:16 - 4:19
    実際に送ることができる最高の人生とは
  • 4:19 - 4:23
    理性や知性をもって
    社会生活を改善するもの
  • 4:23 - 4:26
    他者の生活を改善するものだと
    考えていました
  • 4:27 - 4:30
    ストア哲学には
    基本的な2本の柱があります
  • 4:30 - 4:34
    後で説明しますが
    これは実際に生活に取り入れられます
  • 4:34 - 4:38
    1つ目は4つの基本的美徳です
  • 4:38 - 4:40
    実践的な知恵 勇気 公正さ 自制です
  • 4:41 - 4:45
    実践的な知恵とは 自分にとって
    良いことと 悪いことが 分かることです
  • 4:45 - 4:48
    勇気とは物理的なことだけでなく
    特に道徳的なことです
  • 4:48 - 4:50
    立ち上がり
    正しいことをする勇気です
  • 4:51 - 4:54
    公正さは 何が正しいことなのか
  • 4:54 - 4:57
    他者とどう関わるか また扱うかの
    指針となる徳です
  • 4:57 - 4:58
    そして 自制とは
  • 4:58 - 5:00
    常に適度に物事を行うという理念で
  • 5:00 - 5:02
    過不足なく行うことです
  • 5:05 - 5:08
    2つ目は
    「コントロールの二分法」です
  • 5:08 - 5:10
    これは 基本的な理念で
  • 5:10 - 5:13
    自分次第であるものと
    そうでないものがある という考え方です
  • 5:13 - 5:17
    この見方により
    全ての行動を 2つに大別できるので
  • 5:17 - 5:20
    1つ目のことだけ考え
    2つ目のことは考えません
  • 5:20 - 5:25
    例えば スライドを自分で変えられると思って
    このトークに来ましたが
  • 5:25 - 5:28
    お分かりのように
    私のコントロール外のことでした
  • 5:28 - 5:30
    気にしているかって?
    いいえ
  • 5:33 - 5:35
    エピクテトスをご紹介します
  • 5:35 - 5:40
    最も重要な
    古代ストア哲学者の1人で
  • 5:40 - 5:41
    元は奴隷でした
  • 5:41 - 5:45
    現在のトルコ共和国のパムッカレ
    当時のヒエラポリスに生まれました
  • 5:45 - 5:48
    彼は獲得されましたー
    実際 名前は「獲得された」です
  • 5:48 - 5:51
    本名は不明で 「エピクテトス」は
    単に「獲得された」という意味です
  • 5:51 - 5:54
    ローマの皇帝ネロの宮殿に
    連れて来られましたが
  • 5:55 - 5:57
    非常に優秀で
    後に奴隷から解放されます
  • 5:57 - 5:59
    頭のいい男で
  • 5:59 - 6:03
    ローマの路上で
    ストア哲学を説き始めます
  • 6:03 - 6:06
    そんなことをしたので
    鼻を殴られたました
  • 6:06 - 6:08
    そして この方法は良くないと
    考えました
  • 6:09 - 6:11
    方法を変えるのは
    制御できることです
  • 6:11 - 6:13
    また初めからやり直し
    自分の学校を開きます
  • 6:13 - 6:15
    学校は大いに成功しましたが
  • 6:15 - 6:18
    後に皇帝ドミティアヌスが
    ストア哲学者をローマから追放します
  • 6:18 - 6:21
    今で言う
    「権力者に真実を申し立てる」ことを
  • 6:21 - 6:23
    皇帝は歓迎しなかったからです
  • 6:23 - 6:27
    その後 エピクテトスは
    ギリシャ北西部のニコポリスに移住し
  • 6:27 - 6:28
    学校をもう一度開き
  • 6:28 - 6:31
    古代で最も有名な
    教育者の1人になります
  • 6:31 - 6:33
    私がエピクテトスを
    気に入っているのは
  • 6:33 - 6:36
    無愛想で ブラックユーモアの
    センスがあるからです
  • 6:36 - 6:38
    まもなく それをご紹介しましょう
  • 6:38 - 6:41
    『語録』という本からの引用です
  • 6:41 - 6:43
    「いつかは死ぬことになる
  • 6:43 - 6:45
    それが今というなら 今 死のう
  • 6:45 - 6:48
    後に というなら 今は昼食をとろう
  • 6:48 - 6:50
    昼食の時間だからだ
  • 6:50 - 6:52
    後に 死ぬときが来たら考えよう」
  • 6:53 - 6:55
    死ぬことを心配しないで
    昼食の心配をしよう
  • 6:55 - 6:56
    (笑)
  • 6:56 - 6:59
    死は確実なことで
    コントロールできません
  • 6:59 - 7:01
    反対に 昼食は
    コントロールできます
  • 7:05 - 7:07
    先程 コントロールの二分化が
  • 7:07 - 7:10
    ストア哲学の
    2本の柱の1本だと言いました
  • 7:10 - 7:13
    エピクテトスはこう説明しています
  • 7:13 - 7:17
    「私達の力が及ぶものと
    及ばないものがある
  • 7:17 - 7:20
    意見 衝動 欲求は 力の及ぶもの
  • 7:20 - 7:23
    つまり 自分の行ないは
    全て自分次第である
  • 7:24 - 7:27
    しかし 自分の身体 財産 評判は
    力の及ばないもの
  • 7:27 - 7:30
    つまり自分次第ではない」
  • 7:30 - 7:33
    でも ちょっと待ってください
  • 7:33 - 7:34
    おかしいですよね
  • 7:34 - 7:37
    身体 財産 評判は
    自分の力が及ばないといっています
  • 7:37 - 7:39
    どういうことですか?
  • 7:39 - 7:41
    ジムに通い 身体に良い食事を摂れるので
  • 7:41 - 7:43
    当然 自分の身体には 力が及びます
  • 7:43 - 7:45
    ただし ウイルスに侵されない限りは
  • 7:46 - 7:48
    事故で足の骨を折らない限りは
  • 7:48 - 7:51
    つまり 自分で様々なことはでき
  • 7:51 - 7:55
    健康 評判などのために
    いろいろ決めることはできますが
  • 7:55 - 7:58
    結果をコントロールすることはできません
  • 7:59 - 8:00
    実際には どういうことですか?
  • 8:00 - 8:04
    つまり 人生を歩む上で
    内なる目標をもち
  • 8:04 - 8:07
    結果は コントロール外だから
    気にしません
  • 8:07 - 8:10
    しかし 意志と努力は
    コントロールできるから
  • 8:10 - 8:13
    それらに注意を向けるということです
  • 8:13 - 8:15
    ストア哲学者が
    うまい比喩を用いています
  • 8:15 - 8:17
    弓の射手です
  • 8:17 - 8:19
    弓矢で的を射ようとするとき
  • 8:19 - 8:21
    コントロールできることは 何ですか?
  • 8:21 - 8:25
    まず 弓の練習です
    何時間でも練習できます
  • 8:25 - 8:28
    また できる限り良質な
    弓と矢を選ぶこともできます
  • 8:28 - 8:31
    そして 弓矢の手入れをすること
  • 8:31 - 8:35
    矢を放つ瞬間まで集中すること
  • 8:36 - 8:39
    しかし それから後のことは
    コントロールできません
  • 8:39 - 8:41
    突風が吹き
    最高の射撃がだめになったり
  • 8:41 - 8:44
    的が敵の兵士なら
    動いたりすることもあり
  • 8:44 - 8:46
    そのせいで 的を外すこともあります
  • 8:46 - 8:47
    どうすればいいのですか?
  • 8:47 - 8:48
    キケロが言うには
  • 8:48 - 8:53
    実際に的を射当てることは
    選んでもいいが 追い求めるべきではない
  • 8:53 - 8:56
    結果によって自信を
    左右されないようにし
  • 8:56 - 9:02
    コントロールできること つまり
    努力を自信につなげるのです
  • 9:03 - 9:06
    実際 こう考えると
  • 9:06 - 9:09
    現代の生活で
    大方の見方を変えることができます
  • 9:09 - 9:11
    いくつかの例を紹介します
  • 9:12 - 9:14
    仕事で昇進の候補に
    なっているとします
  • 9:14 - 9:18
    普通は 昇進できるかどうか
    心配しますよね
  • 9:19 - 9:22
    ストア哲学では
    これは間違った考え方です
  • 9:22 - 9:24
    昇進すること自体は
    コントロールできません
  • 9:24 - 9:28
    上司が朝から機嫌が悪く
    イライラしていて
  • 9:28 - 9:32
    他のことに気を取られていて
    面接がうまくいかないとか
  • 9:32 - 9:37
    自分がよく仕事ができても
    その昇進に より適切な人がいることもあり
  • 9:37 - 9:39
    これは 自分でコントロールできません
  • 9:39 - 9:40
    自分でできるのは
  • 9:40 - 9:42
    当然 面接の準備にベストを尽くし
  • 9:42 - 9:44
    できる限り良いレジュメを用意し
  • 9:44 - 9:47
    昇進に見合うよう
    仕事に精を出すことなどです
  • 9:47 - 9:49
    コントロールの中心を定め
  • 9:49 - 9:52
    そこに 努力を集中すべきなのです
  • 9:52 - 9:54
    次に 恋愛関係について考えます
  • 9:54 - 9:57
    誰もが愛されたいと願いますが
    それは どうにもできません
  • 9:57 - 10:01
    相手が自分を愛するか愛さないかは
    向こうがコントロールすることです
  • 10:01 - 10:04
    自分ができることは
    できるだけ好感を与えるようにしたり
  • 10:04 - 10:06
    優しくしたり
    相手の力になったりすることです
  • 10:06 - 10:08
    相手が自分とずっと一緒にいるかどうかは
  • 10:09 - 10:11
    コントロールできないことです
  • 10:14 - 10:17
    エピクテトスが言うには
    この考えを真摯に受け入れるなら
  • 10:17 - 10:19
    幸せな人生を送ることができます
  • 10:19 - 10:23
    なぜなら 幸せの大部分は
    心の平穏にあり
  • 10:23 - 10:25
    最善を尽くしたこと
  • 10:25 - 10:28
    もうこれ以上は
    できないということを
  • 10:28 - 10:30
    常に確信し
    人生を歩むことにあるのです
  • 10:30 - 10:34
    別の引用です「何が自分に
    属するか しないか分かっていれば」
  • 10:34 - 10:37
    つまり コントロール出来ることと
    出来ないことが分かっていれば
  • 10:37 - 10:40
    「決して 強要されたり
    妨害されることはない
  • 10:40 - 10:42
    また 他者を責めたり
    批判することもなく
  • 10:42 - 10:44
    全てのことは自発的に
    行われるのだ 」と
  • 10:44 - 10:46
    それが実現できれば
  • 10:46 - 10:50
    コントロール不可能なことについて
    人が互いを責め合う世界より
  • 10:51 - 10:53
    ずっと素晴らしい世界に
    なることでしょう
  • 10:54 - 10:57
    同僚である フォーダム大学の
    ブライアン・ジョンソンが
  • 10:57 - 11:02
    エピクテトスの理念を 道徳的役割の
    ひとつのあり方として こう説明しています
  • 11:02 - 11:05
    人は みな人生で
    様々な役割を担っていて
  • 11:05 - 11:07
    幸福な人生に必要なのは
  • 11:07 - 11:10
    できる限り
    その役割のバランスを取ることだ
  • 11:10 - 11:13
    基本となる 3つの役割があります
  • 11:13 - 11:15
    1つ目は人間としての
    基本的な役割です
  • 11:15 - 11:17
    私達は皆 人間国家の一員です
  • 11:17 - 11:21
    ストア哲学者が初めて「コスモポリタン」
    という言葉を使いました
  • 11:21 - 11:25
    文字通り「世界国家の市民」
    という意味です
  • 11:26 - 11:28
    私達は皆人間で 同じ場所に存在し
  • 11:28 - 11:30
    それぞれ務めを担っています
  • 11:31 - 11:34
    境遇により 人には
    それぞれ役割があります
  • 11:34 - 11:37
    誰かの息子だったり 娘だったり
  • 11:37 - 11:41
    それは自分の選択ではなく
    たまたま そうなったのです
  • 11:41 - 11:44
    そして それぞれの境遇の中で
    自分が選ぶ役割があります
  • 11:44 - 11:48
    ある職業に就いたり
    母親や父親になったりなど
  • 11:48 - 11:53
    これら3つの役割は
    次のように説明できます
  • 11:53 - 11:55
    人間としての基本的役割は
    何にも勝ります
  • 11:55 - 11:58
    何をするにしても
    まず こう自問してください
  • 11:58 - 11:59
    それは人道的なことか
  • 11:59 - 12:01
    人道的でなければ 行わないでください
  • 12:02 - 12:04
    簡単な評価基準です
  • 12:04 - 12:07
    基準に沿って ふるいにかけると
    行うことが減ります
  • 12:07 - 12:09
    エネルギーが節約できます
  • 12:09 - 12:11
    残りは バランスよく行えばいいのです
  • 12:11 - 12:14
    それぞれの役割には
    折り合いが必要です
  • 12:14 - 12:17
    もちろん 誰もが
    最高の母親 父親 息子 娘
  • 12:17 - 12:19
    また同僚 友人でありたいと
    願っていますが
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    折り合いが必要です
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    ストア哲学は役割の
    バランスの取り方について
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    多くのことを教えてくれます
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    役割をどう果たせばいいのですか?
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    一番大事なのは 誠実に
    役割を務めることです
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    どういうことですか?
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    エピクテトスが これも説明しています
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    「自分を知っているのは
    自分自身であり
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    自分が自分自身にとって
    どれだけ価値があり
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    自分自身をいくらで売っているのかを
    知っている
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    自分の誠実さを
    いくらで売るのか考えなさい
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    しかし 神に誓って
    それを安売りしてはいけない」
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    完璧を目指せと
    言っているのではなく
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    とにかく
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    ただ最善をつくすべきだ
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    売れるものは自分だけだから
    妥協して自分を安売りするな と
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    そうです
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    自分を売ってしまったら
    後にはもう何も残らない
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    完璧にならなくてもいいが
    ただ 昨日よりも 少しよくなろう
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    一歩ずつでいいから
    そういう考え方です
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    では いくつかの例を
    ご紹介しましょう
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    エピクテトスによる話です
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    ある父親がいて 娘が病気になり
    ひどく取り乱します
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    耐えられずに 家を出てしまい
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    妻に娘の世話を任せてしまいます
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    エピクテトスは言います
    「ちょっと待って
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    あなたのしていることは
    正しいですか?」
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    父親は少し考えて 言います
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    「ええ 自然に従って 行動しました
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    私は取り乱していて
    耐えられなかったのです」
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    この例で考えるべきことは
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    自分にとって自然なのは感情ですが
    混同してはいけません
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    感情をコントロールすることはできません
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    娘が病気になり 取り乱したとして
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    その気持ちに関して 出来ることや
    すべきことは たぶん ありません
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    しかし そのことと
    娘への道徳的な義務とは異なります
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    娘の父親なら
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    そこにいるべきなのです
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    たとえ辛くて
    感情のエネルギーを消耗しても
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    この話の中で
    2つの美徳が作用します
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    1つは勇気であり
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    実際に正しい行いをすること
    娘のそばにいることです
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    もう1つは公正さです
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    自分の娘に対して正しい行いを
    することです
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    繰り返しますが 人は様々な社会的役割の
    均衡を取る必要があります
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    それはあと2つの美徳に
    関係があります
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    まず 実践的な知恵
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    自分に良いことかどうか
    分別する美徳です
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    次に 自制です
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    全ての行動を適度にし
    物事のバランスを取る考え方です
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    エピクテトスを引用すると
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    「他の社会的役割について
    よく考えなさい
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    若いなら 若いとはどういう意味か
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    年老いているなら
    それは何を意味しているのか
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    父親なら
    父親であるとはどういうことか
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    それぞれの肩書に
    ふさわしい行動を考えるべきだ」
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    自分が俳優で
    役を演じると考えてください
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    役は 明確には決まっていません
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    例えば 母親の役なら
    幾通りにでも演じることができます
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    常識に従って
    演じる必要はありません
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    自分が正しいと思うやり方で
    ただ演じればいいのです
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    しかし 母親や父親であるなら
    その本分があります
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    実際 この本分をどう尽くすかは
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    自分次第です
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    ですが 本分があるのは確かです
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    では どうすれば人生で
    うまく役割を果たせますか?
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    様々な方法があります
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    ストア哲学は 実践的な訓練が
    多くあることで有名ですが
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    基本的に 最善の方法の1つは
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    実際に 立派な行いをしている人物
    つまり ロールモデルになる人物
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    行動が模範となり
    人生の指針にできる人物を思い浮かべ
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    手本にして
    自分の生き方を変えてください
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    古代の人々は 実際に出会ったり
    人から聞いて知った人物
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    架空の人物も手本にしました
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    当時 ロールモデルで人気だったのは
    小カトーです
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    もうお話しましたが
    ポルキア・カトニスの父親で
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    非常に高潔な人物でした
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    当時 ローマで
    人々が誤った行動をした時に
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    つまり間違いを犯し
    期待される行動をしなかった時に
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    「皆が皆 カトーになれるわけないさ」
    と言ったものでした
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    彼は言い訳に使われました
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    「あんなに良くはなれない」と
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    それは確かにそうですが
    目指すことはできます
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    古代でロールモデルとして
    人気だったのが オデュッセウスです
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    彼は妻と子供の待つ
    故郷に帰るため
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    途中 永遠の命の誘惑を
    2度断ち切り
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    10年もの長旅を乗り切ります
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    そして 現代にも
    ロールモデルとなる人物が多くいます
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    私が好きな人物は
    ネルソン・マンデラです
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    ご存知のように
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    アパルトヘイト廃止を訴え
    20年以上 獄中生活を送ります
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    当然 獄中にいる間
    彼は憤りを感じます
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    しかし 彼の人生で
    転換期がありました
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    囚人の仲間が
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    マルクス・アウレリウスの
    『自省録』を持ち込んだのです
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    マンデラはそれを読み こう悟ります
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    怒りや憎しみから 道は開かれない
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    それが監禁者や
    拷問の担当者であっても
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    人々に手を差し出すことで
    道は開かれるのだ と
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    その悟りは彼の人生を
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    さらには 南アフリカ国民の人生をも
    変えたのです
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    もう1人 私の好きなロールモデルは
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    スーザン・ファウラーです
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    2年ほど前
    配車サービス会社 Uber内部の
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    当時 横行していた セクハラ文化を
    告発するため立ち上がりました
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    本人自身 キャリアや交友関係で
    大きなリスクを負いました
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    ストア哲学の見地から
    告発したのです
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    私は たまたま彼女と知り合いで
    彼女は 実際 ストア哲学を実践しています
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    フィクションの世界で 私の好きな
    ロールモデルはスパイダーマンで
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    「偉大な力には 大きな責任がついてくる」と
    言ったことは 有名です
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    私達はスーパーヒーローではないので
    偉大な力はありませんが
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    並の力はあります
  • 17:43 - 17:46
    選択をする力はありますので
  • 17:46 - 17:51
    その力には 最良の選択をするという
    責任が伴ってきます
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    エピクテトスの概念は
    こう説明できます
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    人は ちょうど
    古代ギリシャの俳優のように
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    いろいろな仮面を持ち
    絶えず それをつけ変えているのです
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    同じ俳優が 違う仮面を被って
    舞台に登場し
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    観客は 仮面を見て
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    俳優が
    今どの役を演じているかを知り
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    そして 彼自身は
    違う役を演じていると自覚するのです
  • 18:16 - 18:20
    つまり 幸せな人生とは
    バランスの取れた人生であり
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    できるだけ良い俳優となり
    全ての役を演じる人生なのです
  • 18:25 - 18:26
    ありがとうございました
  • 18:26 - 18:28
    (拍手)
Title:
暮らしの中にストア哲学を|マッシモ・ピリウーチ| TEDxAthens
Description:

マッシモ・ピリウーチが古代ギリシャ・ローマ哲学であるストア哲学を紐解きつつ、それをひとつの生き方として実践することにより、人生をいかにより良いものにするかを論じます。

マッシモ・ピリウーチは進化生物学博士であり哲学博士です。現在はニューヨーク市立大学の哲学科K.D. イラニ教授です。専門は生物哲学、科学と哲学の関係学、疑似科学、ストア哲学。また、2つのブログを運営しています。『Plato's Footnote(プラトーの脚注)』は、哲学全般について、『Be a Stoic(ストア哲学者になろう)』は、自身が実践哲学としてのストア哲学を探求するブログです。ベストセラー『迷いを断つためのストア哲学』を含む著書多数。

このビデオはTEDカンファレンスとは独立して運営されるTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは https://www.ted.com/tedxをご覧ください。

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English
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
18:39

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