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刑務所で起きた「詩」という奇跡 | クリスティーナ・ドメネック | TEDxRíodelaPlata

  • 0:24 - 0:30
    詩人であるためには
    地獄を経験しなければならないと言われます
  • 0:33 - 0:38
    私がその刑務所を初めて訪れた時
  • 0:38 - 0:45
    南京錠の音も ドアの閉まる音も
    独房の鉄格子の音も
  • 0:45 - 0:49
    その他想像していた物事全てにも
    驚きませんでした
  • 0:49 - 0:54
    多分 その刑務所が
    とても開放的な環境にあったからでしょう
  • 0:54 - 0:56
    空も見えて
  • 0:56 - 1:00
    カモメが頭上を飛ぶと
    海のそばにいるような
  • 1:00 - 1:03
    ビーチ付近にいるような気がします
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    でも実は そのカモメたちは
    近くのゴミ溜めに餌を探しているのですけどね
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    さらに中に進むと 不意に
    廊下を横切って行く受刑者が目に入りました
  • 1:17 - 1:21
    その光景に私は
    現実から一歩引いて見た時
  • 1:21 - 1:25
    もし 違う人生や 生い立ちや
    巡り合わせがあったら
  • 1:25 - 1:30
    自分も受刑者の1人になっていた可能性は
    大いにあり得ると思いました
  • 1:31 - 1:36
    なぜなら誰も そう誰も
    生まれる場所を選べないからです
  • 1:38 - 1:43
    2009年に
    あるプロジェクトに招かれ
  • 1:43 - 1:48
    サン・マルティン国立大学が
    第48刑務所で運営する—
  • 1:49 - 1:51
    文芸創作ワークショップを任せられました
  • 1:52 - 1:59
    刑務所の端にある一角が提供され
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    そこに大学のセンターが建ちました
  • 2:05 - 2:07
    初めて受刑者たちと話した時
  • 2:07 - 2:11
    なぜ文芸創作ワークショップを
    受けたいのか尋ねてみました
  • 2:11 - 2:14
    すると 言いたいけど言えない事や
    やりたいけどできない事を
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    全て紙に書き留めたいのだという
    答えが返ってきました
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    すぐさま私はこの刑務所に
    詩の世界を紹介しようと心に決めました
  • 2:26 - 2:30
    そして こう提案しました
    「もし詩というものをご存知なら
  • 2:30 - 2:32
    一緒に書きましょう」
  • 2:32 - 2:37
    だけど 詩というものが実際何なのか
    知っている人はいませんでした
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    受刑者たちからも提案がありました
    「大学講義を受けている受刑者に限らず
  • 2:43 - 2:46
    受刑者全員がこのワークショップを
  • 2:46 - 2:48
    受けられるようにするべきだ」
  • 2:49 - 2:53
    そこで私は
    「このワークショップを始めるためには
  • 2:53 - 2:57
    全員に共通するツールをを見つけなくては」
    と言いました
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    そのツールとは「言葉」でした
  • 3:00 - 3:05
    言葉は持っているし ワークショップもある
    詩も作れるだろうと思ったのです
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    しかし計算外だったのは 世の中の不平等が
    刑務所内にも存在することでした
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    多くの受刑者は高校さえ出ていません
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    多くが筆記体を使えず
    活字体もやっとです
  • 3:24 - 3:28
    スラスラと書くこともできません
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    そこで私たちは短い詩から始めました
    とても短くて とても力強い詩
  • 3:35 - 3:39
    1人の詩人 そして次の詩人へと
    作品を読み進めました
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    短い詩を読んでいると
    詩的な表現とは
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    ロジックを壊して
    新たなシステムを作ることだと
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    全員が気づき始めます
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    ロジックを壊すことは
    自分たちがそれまで
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    刷り込まれてきたシステムを
    崩すことにもなります
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    こうして 新たなシステムが出現し
    新たな文法が生まれ
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    理解がとても速くなりました
    本当に速くなったのです
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    詩的表現を使えば言いたいことが何であっても
    確実に表現することができるのです
  • 4:20 - 4:25
    詩人であるためには
    地獄を経験しなければならないと言われます
  • 4:26 - 4:30
    受刑者たちは
    沢山の地獄を経験しています
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    ある受刑者が こう発表しました
    「刑務所の中で眠ることはない
  • 4:35 - 4:40
    牢屋の中では絶対に眠れない
    まぶたを閉じるなんて永遠にできない」
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    そこで 私は受刑者たちの前で
    このように少し黙り
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    そして こう言いました
    「皆さん それが詩というものです
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    これが皆さんを取り巻く
    刑務所の世界です
  • 4:58 - 5:00
    “眠ることはない”と語ること
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    そのものから恐怖がにじみ出ています
    書かれていないもの全てが詩と言えるのです」
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    そして私たちは
    その地獄を利用することから始めました
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    ダンテの詩に登場する
    「暴力者の地獄」へ飛び込んだのです
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    自ら慣れ親しんできた
    その地獄の谷で
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    受刑者たちは 詩の世界なら
    壁を消し去ることも
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    窓が話をするようになるようにも
    影の中に隠れたりもできるのだと学びました
  • 5:32 - 5:37
    ワークショップの初年度が終了した時
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    私たちは小さな修了式を開きました
  • 5:39 - 5:42
    大好きな仕事が終わった時に
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    お祝いに打ち上げをやるようなものです
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    家族や友人たちや
    大学関係者を呼んで
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    受刑者たちが詩を読み
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    修了証書と拍手をもらうだけの
    とてもシンプルな式でした
  • 6:01 - 6:09
    今日 帰る前に ただ1つお伝えしたいのは
    その時のことです
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    私の横に立つ受刑者たちは
    なかには大男もいれば
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    非常に年若く しかし
    とても自意識の強い者まで様々でしたが
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    誰もが手に紙を握り
    小さい子のように震え 汗をかきながら
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    自分の詩を
    ひどくかすれた声で読みました
  • 6:33 - 6:39
    その時 強く思ったことがあります
    彼らのほとんどにとって
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    何かをやり遂げて拍手をもらうのは
    これが初めてのはずだと思ったのです
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    刑務所の中では
    できない物事があります
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    刑務所の中で 夢は見れません
    刑務所の中で 泣くこともできません
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    「時間」や「未来」や「願い」
    などの言葉は
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    事実上 禁句なのです
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    それでも私たちは あえて夢を見ました
    それも大きな夢です
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    受刑者たちに
    本を書いてもらうことにしたのです
  • 7:18 - 7:22
    ただ本を書くのではなく
    自分たちで製本するというものです
  • 7:22 - 7:24
    2010年末のことでした
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    その後 私たちは
    本をもう1冊出すという賭けに出ました
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    この本も自分たちで製本しました
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    そっちは つい最近で
    昨年末のことです
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    週を追うごとに 目に見えて
    受刑者たちが別の人間になっていきます
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    別人に生まれ変わっていくのです
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    言葉が それまで味わったこともなく
    想像さえできなかった「尊厳」を与え
  • 7:52 - 7:54
    受刑者たちを力づけているのです
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    それまでは自分たちに尊厳があるなんて
    思ってもみなかったのですからね
  • 8:00 - 8:05
    ワークショップ中は 全員お馴染みの
    地獄の中で誰もが何かを提供します
  • 8:06 - 8:09
    手と心を開き
    自分たちにあるものや
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    できることを提供します
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    誰もが全員 平等にです
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    こうすることで誰もが
    少なくとも 少しでも
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    自分たちの多くが 刑務所に
    行き着いてしまう元凶である—
  • 8:23 - 8:30
    「社会の巨大なほころび」を
    修復していると感じられるのです
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    第48刑務所でのワークショップで
    非常に優れた詩人が作った詩が
  • 8:39 - 8:45
    記憶に残っています
    ニコラス・ドラドという受刑者です
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    「この巨大な傷口を縫うには
    無限の糸が必要になるだろう」
  • 8:56 - 9:01
    社会から疎外されるという「傷」を
    繕ってくれるのが詩です
  • 9:02 - 9:07
    詩の世界は様々な物事への扉を開き
    鏡のような役割を果たします
  • 9:07 - 9:10
    詩という鏡を作り出します
  • 9:10 - 9:15
    そこに映る自分の姿を確認し
    詩に映し出される自分を観察し
  • 9:15 - 9:19
    自分が何者なのかを書き
    書いたものが自分自身を形作ります
  • 9:19 - 9:26
    書くためには 書くことが可能になる時間を
    最大活用する必要があります
  • 9:26 - 9:29
    書いている時に経験する自由は
    桁違いですからね
  • 9:30 - 9:33
    自分の頭の中を探らねばなりません
  • 9:33 - 9:37
    創作中には絶対に奪われることのない
    わずかな自由を探すわけです
  • 9:37 - 9:41
    刑務所の中でさえ自由になれるということに
    気づくことは有意義です
  • 9:41 - 9:46
    自分が過ごすこの素晴らしい空間に
    存在する鉄格子は
  • 9:46 - 9:50
    「鉄格子」という言葉でしかないことや
  • 9:51 - 9:55
    その言葉の芯に光を灯す時
    この地獄にいる私たち全員が
  • 9:55 - 9:58
    幸せに身を焦がすのだと
    気づくことに意味があるのです
  • 9:59 - 10:02
    (拍手)
  • 10:26 - 10:32
    さて ここまで 刑務所についてや
    毎週 私が経験している事について
  • 10:32 - 10:37
    どれだけ私が楽しみ 受刑者と共に
    変わっていっているか沢山お話ししました
  • 10:37 - 10:42
    でも実際に 私が毎週
    楽しんでいることや
  • 10:42 - 10:46
    現在の私をいう人間を作ってくれたものを
    皆さんが少しの間でも
  • 10:46 - 10:50
    リアルな体験として感じられたらと
    願ってやみません
  • 10:53 - 10:56
    (拍手)
  • 11:02 - 11:06
    (マルティン・ブフタマンテ)
    「時間が流す涙を心が噛み砕く
  • 11:06 - 11:09
    光に目が眩み
  • 11:09 - 11:13
    存在のスピードを隠してしまう
  • 11:13 - 11:14
    そこには悠然と進む光景がある
  • 11:14 - 11:18
    心は葛藤し しかし持ちこたえる
  • 11:18 - 11:22
    悲しい目で見つめられ
    心にひびが入り
  • 11:22 - 11:24
    炎を広げる嵐に乗って
  • 11:25 - 11:28
    恥ずかしさでしぼんだ胸を張る
  • 11:28 - 11:32
    ただ朗読し続けるだけが
    手段ではないと知っており
  • 11:32 - 11:35
    終わりのない青を望んでもいる
  • 11:35 - 11:39
    心は腰を落ち着けて
    あれこれと考えを巡らせ
  • 11:39 - 11:42
    平凡であることを
    避けようと葛藤したり
  • 11:42 - 11:45
    傷つくことなく愛そうとする
  • 11:45 - 11:49
    太陽を吸って
    勇気を吐き出し
  • 11:49 - 11:53
    屈服し
    道理を求めて旅をする
  • 11:53 - 11:56
    心は沼地の中で戦い
  • 11:56 - 11:59
    地獄をつな渡りする
  • 11:59 - 12:03
    疲れ果てても
    安易さの誘惑には負けず
  • 12:04 - 12:06
    酩酊というガタガタの階段を歩き
  • 12:06 - 12:08
    目を覚まし
  • 12:08 - 12:09
    静寂を覚ます」
  • 12:10 - 12:12
    俺はマルティン・ブフタマンテ
  • 12:12 - 12:15
    サン・マルティンの第48刑務所の
    囚人です
  • 12:16 - 12:18
    今日は仮釈放の日です
  • 12:19 - 12:21
    詩と文学は
    俺の人生を変えてくれました
  • 12:21 - 12:22
    詩と文学は
    俺の人生を変えてくれました
  • 12:22 - 12:24
    本当にありがとう!
    (拍手)
  • 12:24 - 12:25
    (クリスティーナ・ドメネック)
    ありがとう!
  • 12:25 - 12:27
    (拍手)
Title:
刑務所で起きた「詩」という奇跡 | クリスティーナ・ドメネック | TEDxRíodelaPlata
Description:

刑務所における、言葉と詩の力を描いたトークです。
ライターであり哲学者でもあるクリスティーナ・ドメネックは、子供や大人をはじめ、さらにブエノスアイレスの第48刑務所に設置されたサン・マルティン国立大学のコースで受刑者に読み書きを教えています。言葉の力で精神を解放し、そして世界を変えていこうというアイデアを紹介します。

このビデオはTEDカンファレンスとは独立して運営されるTEDxイベントにおいて収録されたものです。

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Video Language:
Spanish
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
12:55

Japanese subtitles

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