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「か」 から 「と」へ|荘子 万能|TEDxYouth@Seta

  • 0:30 - 0:33
    人はなぜ悩むのでしょうか?
  • 0:33 - 0:37
    そのことについて ずっと考え続けてきました
  • 0:38 - 0:43
    いま僕の結論としては 人は「か」だから悩む
  • 0:44 - 0:49
    「か」ではなくて「と」の世界になったら
    その悩みは消えていく
  • 0:49 - 0:53
    そういうような経験を
    皆さんに共有したいなと思います
  • 0:55 - 1:00
    僕は 両親が台湾出身で
    京都で生まれ育ちました
  • 1:00 - 1:06
    何不自由なく 何の疑問もなく
    日本人として育ってきたんですけども
  • 1:06 - 1:10
    あるとき 小3くらいのときですね
  • 1:11 - 1:17
    正月休みが明けたときに
    クラスのみんなが集まって話をしている
  • 1:17 - 1:20
    そのときに おじいちゃまとか
    おばあちゃまの家に行って
  • 1:20 - 1:23
    お雑煮を食べておもちが丸かったの とか
  • 1:23 - 1:27
    いやうちは四角だったよとか
    いうふうに言うんですね
  • 1:27 - 1:28
    「ちょっと待てよ」と
  • 1:28 - 1:32
    「いや うちお雑煮って
    食べたことないねんやけど」って
  • 1:32 - 1:36
    「おもちって何?お雑煮に
    入ってるもんなん?」みたいな
  • 1:36 - 1:43
    「あれ 僕ずっと日本人やと思って過ごして
    きたけども 日本人じゃないのかな?」って
  • 1:44 - 1:50
    でも 例えば台湾に行って
    両親の親戚や家族 友だちに会って
  • 1:50 - 1:55
    台湾語を喋れるわけでもない 
    中国語を喋れるわけでもない中で
  • 1:55 - 1:59
    「あれ 自分は台湾人でもないのかな?」と
  • 1:59 - 2:05
    自分は日本人なのか 台湾人なのかという
    「か」にすごく苦しめられてきました
  • 2:07 - 2:13
    いま日本で仕事をして
    そしてそれを台湾でも仕事をするようになると
  • 2:13 - 2:16
    「自分は日本人でもあり
    台湾人でもある」ということに
  • 2:16 - 2:19
    すごく大きな価値がある
    ということに気づきました
  • 2:20 - 2:22
    僕は台湾で講演をするときに必ず
  • 2:23 - 2:29
    (台湾語の自己紹介)
  • 2:29 - 2:30
    というふうに言うんですけども これは
  • 2:30 - 2:35
    「私のお父さんお母さんは台湾人です 
    台湾語をちょっと喋れます
  • 2:35 - 2:37
    でも日本で生まれました」
  • 2:37 - 2:38
    これを一言いうだけで
  • 2:38 - 2:43
    皆さんすごく笑ってくれて
    やりやすくなるんですね
  • 2:43 - 2:45
    日本人であり 台湾人であるという
  • 2:45 - 2:51
    「と」の価値が自分にはあるんだ
    ということにすごく救われました
  • 2:51 - 2:56
    日本人なのか 台湾人なのか
    というふうな「か」で悩み苦しみ
  • 2:56 - 3:01
    そして日本人と台湾人とという
    「と」の世界に救われたんですね
  • 3:02 - 3:07
    僕は2年前まで医学生として
    医学を勉強していたんですけども
  • 3:07 - 3:12
    初めて 病院に医学生として
    勉強を始めたときに
  • 3:12 - 3:15
    自分は患者さんの立場で見たらいいのか
  • 3:15 - 3:19
    それとも医師の立場で見たらいいのか
    その「か」に悩みました
  • 3:20 - 3:24
    医師の立場として見るには
    あまりにも経験や知識が足りない
  • 3:25 - 3:28
    でも 患者さんの立場で見るにしても
  • 3:28 - 3:31
    別にその病気を自分が
    経験しているわけでもないし
  • 3:31 - 3:32
    その家族でもない
  • 3:33 - 3:36
    どこに自分の価値があるんかな
    ということに悩みました
  • 3:38 - 3:41
    それが 「あ ちょっと待てよ」と
  • 3:41 - 3:44
    患者さんの立場も持っているし
    医師の立場も持っている
  • 3:44 - 3:46
    その視点をどちらも持っている
    ということの価値が
  • 3:46 - 3:49
    医学生にはあるということに
    気づいたんですね
  • 3:49 - 3:53
    例えば 患者さんには
    医師には言えないけども
  • 3:53 - 3:57
    回ってくる医学生 学生さんぐらいには
    言えるみたいなことがあるんです
  • 3:58 - 4:03
    逆もまたしかりで 医師の方も
    患者さんには直接的過ぎて言えないけれども
  • 4:03 - 4:06
    医学生には教えられるみたいなことがある
  • 4:06 - 4:13
    その両方の立場と視点と考えを持ちうることが
    医学生の大きな価値なんだと気づきました
  • 4:13 - 4:17
    患者と医師とどちらの視点を
    持てばいいのかということから
  • 4:17 - 4:22
    患者と医師とどちらの視点も持てるという
    医学生の価値に気づいたんですね
  • 4:23 - 4:29
    また今 僕は名古屋のある病院で
    医師として働いていますけれども
  • 4:29 - 4:33
    どういう医療をやるか
    それをどうやるかということに関して
  • 4:34 - 4:36
    どう決めていくものなのでしょうか?
  • 4:36 - 4:39
    医療の意思決定とはどういうふうに
    されていくものなのでしょうか?
  • 4:40 - 4:46
    患者さんが決めるのか 医師が決めるのか
    というようなシーンがいっぱいあります
  • 4:47 - 4:51
    例えば 乳がんの若いお母さん
  • 4:51 - 4:55
    10歳くらいの子どもがいる人の場合で言うと
  • 4:56 - 5:02
    医師がこの人に対して手術をするか
    薬をするかということに対しては
  • 5:02 - 5:08
    例えばこのがんがどれくらい進行しているか
    転移はあるか 他の症状はないか
  • 5:08 - 5:12
    そういった客観的なものを
    ベースに考えるんですね
  • 5:12 - 5:15
    でも一方で患者さんに聞いてみると
  • 5:15 - 5:18
    そういった客観的なものではなくて
    むしろ主観的なもの
  • 5:19 - 5:22
    自分がもし 手術を受けて
    おっぱいがなくなったら
  • 5:23 - 5:27
    初めて自分の子どもを
    息子をお風呂に入れるときに
  • 5:27 - 5:30
    自分のないおっぱいについて
    どう説明したらいいですか?
  • 5:30 - 5:32
    ここから入るんですね
  • 5:33 - 5:37
    医師は 客観的なものから
    考えるかもしれません
  • 5:37 - 5:42
    でも 主観的なものを患者さんは
    より大事にするっていう中で
  • 5:42 - 5:45
    患者さんが決めるのか
    医師が決めるのかということが
  • 5:45 - 5:46
    すごく問題になります
  • 5:47 - 5:52
    そこを 患者さんと医師とが
    どう一緒に決めることができるのかということを
  • 5:52 - 5:54
    僕らは考えないといけないと思います
  • 5:55 - 5:59
    それは 「何をやるか」
    「何をやらないか」ではなくて
  • 5:59 - 6:02
    「それをなぜやるか」
    そして「なぜやらないか」ということを
  • 6:02 - 6:05
    お互いに共有しながら
    話し合って決めていくことです
  • 6:06 - 6:11
    その結論が 手術になるか 薬になるかが
    大事なことではありません
  • 6:11 - 6:17
    その決めていく過程を
    患者さんと医師が一緒に共有していく
  • 6:17 - 6:19
    そういうことに意味があるんです
  • 6:19 - 6:21
    だから 患者さんか医師かではなくて
  • 6:21 - 6:26
    患者さんと医師とが医療 どういう医療を
    受けるかっていうのを決めていく
  • 6:26 - 6:29
    そういう必要が僕はあると思います
  • 6:30 - 6:34
    また これからの世代を生きる僕たちは
  • 6:35 - 6:37
    どんな仕事に就いていっても
  • 6:37 - 6:41
    AIというものについて
    無関係ではいられないと思います
  • 6:41 - 6:45
    いろんな新聞やニュース記事を紐解けば
  • 6:46 - 6:50
    「AIが人の仕事を奪う」
    「人はAIによって置き換わる」
  • 6:50 - 6:51
    医師もそうです
  • 6:51 - 6:56
    「AIは 医師の仕事を奪っていくだろう」
    「医師はAIに代替される」
  • 6:56 - 6:58
    そういう話ばっかりですね
  • 6:58 - 7:02
    いわゆる AIか医師かの話が
    いっぱいあると思います
  • 7:04 - 7:08
    ディープラーニングの父と呼ばれる
    ジェフェリー・E・ヒントン教授はですね
  • 7:08 - 7:12
    2016年 『ニューヨーカー』
    という雑誌のコラムに
  • 7:13 - 7:18
    画像をベースにして判断する
    放射線科医という医師は
  • 7:19 - 7:22
    もうその育成をやめるべきだ
    というふうに書いているんですね
  • 7:22 - 7:26
    なぜなら AIがすべてを代替できるから
    というふうに言っています
  • 7:26 - 7:33
    まさに彼も AIか医師かというような
    世界観で生きていたのかなと思います
  • 7:34 - 7:39
    ただ実は その1年後に
    ジェフェリー・E・ヒントン教授は
  • 7:39 - 7:42
    同じ『ニューヨーカー』の雑誌に
    コラムを寄せています
  • 7:43 - 7:46
    「医師の役割は進化するんだ」と
  • 7:46 - 7:52
    単なる画像を見る人からそれ以上のものに
    進化していくというふうに言っています
  • 7:52 - 7:58
    僕たちが考えないといけないのは
    AIか医師か AIか人か ではなくて
  • 7:58 - 8:01
    AIと医師とを どういうふうに
    繋いでいくことができるか
  • 8:01 - 8:04
    AIと人とをどうやって繋いで
    新たな価値を生んでいくか
  • 8:04 - 8:07
    それを僕たちは考えないといけない
    というふうに思います
  • 8:09 - 8:16
    また 新しいお札の肖像画になる
    渋沢栄一さんという人がですね
  • 8:17 - 8:21
    数百社の会社を作る支援をする中で
  • 8:22 - 8:26
    「会社経営とは何か?」
    というような本を書いています
  • 8:26 - 8:31
    そのタイトルが『論語か算盤』ではなくて
    『論語と算盤』なんですけども
  • 8:31 - 8:36
    会社経営とは算盤をはじきながら
    利益を追求していかないといけない
  • 8:37 - 8:40
    なぜなら 利益を追求していかないと
    会社はつぶれてしまうから
  • 8:41 - 8:43
    一方で 『論語』のような
  • 8:43 - 8:48
    哲学や道徳や価値観に
    基づいたものをベースに
  • 8:49 - 8:52
    「この会社がどういう
    社会的な価値を生み出すのか?」
  • 8:52 - 8:55
    「どういう役割を担うか?」
    ということを考えないと
  • 8:55 - 8:57
    存在する意義がないと言っているんですね
  • 8:58 - 9:03
    『論語か算盤』ではなくて
    『論語と算盤』であるということが大事です
  • 9:04 - 9:08
    僕もある医療系のキャンペーンですね
  • 9:08 - 9:12
    クラウドファンディングという
    いろんな人からお金を集めて
  • 9:12 - 9:15
    何か啓発キャンペーンをやる
    ということをやったんですけども
  • 9:15 - 9:18
    「医学系のキャンペーンで
    お金を集めるとは何事や?」と
  • 9:19 - 9:22
    「お前はお金のためにやってんのか?」
    というように言われたことがあります
  • 9:23 - 9:28
    それって僕たちは もしかしたら
    お金のためか 人のためか 社会のためかって
  • 9:28 - 9:33
    どれかしか実現できないと
    思ってるんじゃないでしょうか?
  • 9:34 - 9:36
    生きていくためにはお金が必要です
  • 9:36 - 9:40
    でも一方で それを何のために使うのか
    っていうことも同時に考える
  • 9:41 - 9:45
    『論語か算盤』ではなくて
    『論語と算盤』ということを
  • 9:45 - 9:48
    僕たちは実践していかないと
    いけないじゃないかと思います
  • 9:51 - 9:53
    ここ数年 —
  • 9:53 - 9:55
    僕は今26歳なんですけども —
  • 9:56 - 10:02
    同世代の何人かが自ら命を絶ちました
  • 10:04 - 10:05
    彼らのことを思うと
  • 10:07 - 10:13
    「生きるか死ぬか」という
    「か」にすごく苛まれて
  • 10:13 - 10:17
    追い詰められて 追い立てられたんじゃないかな
    というふうに思います
  • 10:18 - 10:21
    シェイクスピアの有名な言葉でも
  • 10:22 - 10:26
    「生きるか死ぬか それが問題だ」
    というふうな言葉がありますが
  • 10:26 - 10:30
    「生きるか死ぬか」
    それが本当に問題なのでしょうか?
  • 10:32 - 10:35
    僕は「生きるということ」と
    「死ぬということ」が
  • 10:35 - 10:38
    共にあるあり方が
    あるんじゃないかと思います
  • 10:40 - 10:42
    生きづらさを抱えて
    あるところでは生きていけない —
  • 10:42 - 10:46
    苦しい つらい 死にたい 消えてしまいたい
    と思うことがあるでしょう
  • 10:47 - 10:53
    ただ それでも そこの自分が死んだとしても
    他で生きている —
  • 10:53 - 10:57
    名前を変えてもいいし
    今までのすべてを捨ててもいいし
  • 10:57 - 11:00
    でも そこでも どこかでは生きている
  • 11:00 - 11:04
    そういった「生きるということ」と
    「死ぬということ」が
  • 11:04 - 11:07
    どちらかではなくて どちらともある
  • 11:07 - 11:11
    そういうあり方が僕はあるんじゃないかな
    というふうに思っています
  • 11:13 - 11:19
    なぜ「か」が「と」になることで
    新たな価値が生まれるのでしょうか?
  • 11:19 - 11:22
    それは「か」という世界の中では
  • 11:23 - 11:27
    交わらず 分断され
    どちらかしか選べなかったものが
  • 11:28 - 11:35
    「と」の中では お互いが繋がり
    そしてどちらの性質も持ち
  • 11:35 - 11:37
    そして重なり合ったところに
  • 11:37 - 11:43
    新たな価値が 新たな分野が 新たな概念が
    生まれるからだと思います
  • 11:43 - 11:45
    そうした「と」には
  • 11:46 - 11:50
    間をつないで その間から
    新しいものを生み出していく
  • 11:50 - 11:53
    そんな力があるんだと思います
  • 11:54 - 11:56
    この「間」という字
  • 11:57 - 12:01
    僕たちにはすでに備わっている
    言葉じゃないかなと思います
  • 12:01 - 12:04
    僕たちは人間です
  • 12:05 - 12:08
    人でもありますけども 人間でもあります
  • 12:09 - 12:11
    人は1人かもしれないし
  • 12:12 - 12:15
    1人で生きていかないといけない
    ときもあるかもしれないけれども
  • 12:15 - 12:19
    何かと何かの間に立って それを繋いでいく
  • 12:20 - 12:23
    そういった存在であるということが
    この人間という言葉に
  • 12:23 - 12:26
    含まれているのじゃないかと
    僕はそれを見出したいと思います
  • 12:28 - 12:31
    そんな何かと何かとの間を繋いで
  • 12:32 - 12:35
    「か」の世界ではなくて「と」の世界を
  • 12:35 - 12:39
    ともに同じ人間として ともに作っていく
  • 12:39 - 12:41
    そんな仲間になってください
  • 12:41 - 12:43
    ありがとうございました
  • 12:43 - 12:45
    (拍手)
Title:
「か」 から 「と」へ|荘子 万能|TEDxYouth@Seta
Description:

右に行くか、左に行くか。お金を得るか、社会貢献するか。進学するか、働くか。AIか、ヒトか。日本人か、外国人か。私たちの人生は、多くの「か」に囲まれています。「か」によって、私たちは選択を迫られ、ときに追い詰められます。どちら「か」ではなく、どちらもをつなぐ「と」にすることはできないでしょうか。このトークは、「か」で悩み、「と」に救われた話です。

荘子万能は、1992年京都市生まれ。医師。台湾人の両親の元、日本で生まれ、台湾人か日本人かというアイデンティティの「ゆらぎ」を経験したことから、様々な領域の間を繋ぐ生き方を志しています。
Facebook: facebook.com/mano.soshi
Twitter: @mamamaman0

このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。

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Video Language:
Japanese
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
12:50

Japanese subtitles

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