0:00:00.000,0:00:03.000 困難な交渉の話になると 0:00:03.000,0:00:05.000 中東に伝わる -- 0:00:05.000,0:00:07.000 お気に入りの話が浮かびます 0:00:07.000,0:00:10.000 ある男が3人の息子に17頭のラクダを残しました 0:00:10.000,0:00:13.000 長男に半分 0:00:13.000,0:00:15.000 次男に3分の1 0:00:15.000,0:00:17.000 三男に9分の1です 0:00:17.000,0:00:19.000 3人の息子は交渉を始めました 0:00:19.000,0:00:21.000 17は2で割れない 0:00:21.000,0:00:23.000 3でも割れない 0:00:23.000,0:00:25.000 9でも割れない 0:00:25.000,0:00:27.000 兄弟間の緊張が高まり始めて 0:00:27.000,0:00:29.000 ついにどうしようもなくなり 0:00:29.000,0:00:32.000 頭の良い老婆に相談しました 0:00:32.000,0:00:34.000 老婆は長い間考え 0:00:34.000,0:00:36.000 戻ってきて言いました 0:00:36.000,0:00:38.000 「力になれるか分からないが 0:00:38.000,0:00:40.000 とりあえず必要なら私のラクダをやろう」 0:00:40.000,0:00:42.000 ラクダは18頭になりました 0:00:42.000,0:00:45.000 長男は18頭の半分にあたる9頭をもらいました 0:00:45.000,0:00:48.000 次男は18頭の3分の1にあたる6頭をもらいました 0:00:48.000,0:00:50.000 三男は18頭の9分の1にあたる -- 0:00:50.000,0:00:52.000 2頭をもらいました 0:00:52.000,0:00:54.000 合計17頭です 0:00:54.000,0:00:56.000 1頭余ったので 0:00:56.000,0:00:58.000 老婆に返しました 0:00:58.000,0:01:00.000 (笑い) 0:01:00.000,0:01:02.000 少し考えてみると 0:01:02.000,0:01:04.000 この話は 0:01:04.000,0:01:07.000 私たちを巻き込む多くの困難な交渉に似ています 0:01:07.000,0:01:09.000 17頭のラクダでは解決できません 0:01:09.000,0:01:11.000 とにかく必要なのは 0:01:11.000,0:01:14.000 老婆のように一歩引いて 0:01:14.000,0:01:16.000 新しい視点から状況を見つめ 0:01:16.000,0:01:19.000 18頭目のラクダに気づくことです 0:01:20.000,0:01:22.000 世界の紛争で 0:01:22.000,0:01:25.000 18頭目のラクダを見つけることが 私の生涯の使命です 0:01:25.000,0:01:28.000 人類は あの3兄弟に似ていると思います 0:01:28.000,0:01:30.000 私たちは一つの家族です 0:01:30.000,0:01:32.000 それは科学的に明らかです 0:01:32.000,0:01:34.000 通信革命のおかげで 0:01:34.000,0:01:37.000 地球上にいる1万5千の部族みんなが 0:01:37.000,0:01:40.000 連絡を取り合えます 0:01:40.000,0:01:42.000 大家族の集いです 0:01:42.000,0:01:44.000 もちろん家族の集いによくあるように 0:01:44.000,0:01:46.000 平和でもなく気楽でもありません 0:01:46.000,0:01:48.000 紛争が多いのです 0:01:48.000,0:01:50.000 そこで疑問が浮かびます 0:01:50.000,0:01:52.000 どうすれば不和を解消できるでしょうか? 0:01:52.000,0:01:54.000 人間は紛争をするものであり 0:01:54.000,0:01:56.000 恐るべき破壊力の兵器が 0:01:56.000,0:01:58.000 人間の知性から生み出される中で 0:01:58.000,0:02:01.000 どうすれば深刻な不和を解消できるのでしょうか? 0:02:01.000,0:02:03.000 それが問題です 0:02:03.000,0:02:06.000 ここ30年から40年の 0:02:06.000,0:02:08.000 大半の期間を費やして 0:02:08.000,0:02:10.000 世界中を訪れて 0:02:10.000,0:02:13.000 紛争を体験してきました 0:02:13.000,0:02:16.000 ユーゴスラビア 中東 0:02:16.000,0:02:18.000 チェチェン ベネズエラなど 0:02:18.000,0:02:21.000 地球上で最もやっかいな紛争地域をいくつか訪れたのです 0:02:21.000,0:02:23.000 先ほどの問題を自問し続け 0:02:23.000,0:02:25.000 平和を導く秘策が何かについて 0:02:25.000,0:02:27.000 何かしらの答えが出たと思います 0:02:27.000,0:02:30.000 実に単純なことです 0:02:30.000,0:02:33.000 簡単ではありませんが単純なことです 0:02:33.000,0:02:35.000 新しくもありません 0:02:35.000,0:02:37.000 最も古くから伝わる人類の遺産の一つです 0:02:37.000,0:02:40.000 平和を導く秘策は私たちなのです 0:02:40.000,0:02:42.000 あらゆる紛争を取り巻く -- 0:02:42.000,0:02:44.000 周辺社会にいるのが 0:02:44.000,0:02:46.000 私たちであり 0:02:46.000,0:02:48.000 私たちが建設的な役割を果たせるのです 0:02:48.000,0:02:51.000 一つだけ例を挙げてみましょう 0:02:52.000,0:02:54.000 20年ほど前 南アフリカで 0:02:54.000,0:02:56.000 紛争当事者と話合いをしていたとき 0:02:56.000,0:02:58.000 特別な月を過ごしました 0:02:58.000,0:03:00.000 サン人のいくつかのグループと 0:03:00.000,0:03:02.000 生活を共にしたのです 0:03:02.000,0:03:05.000 サン人や サン人の紛争解決方法に興味がありました 0:03:06.000,0:03:08.000 というのも 知られている限りでは 0:03:08.000,0:03:10.000 狩猟者であり採集者であるサン人は 0:03:10.000,0:03:12.000 人類史の99パーセントを占める古代人と 0:03:12.000,0:03:15.000 とても似通った生活をしているからです 0:03:15.000,0:03:18.000 男たちはみな 狩りに使う毒矢を持っています 0:03:18.000,0:03:20.000 死に至らしめるものです 0:03:20.000,0:03:22.000 いったい どうやって不和を解決するのでしょう? 0:03:22.000,0:03:24.000 実は 0:03:24.000,0:03:27.000 サン人の社会では 緊張が高まると 0:03:27.000,0:03:30.000 誰かが毒矢を茂みに隠し 0:03:30.000,0:03:34.000 皆が 円を描いて座ります 0:03:34.000,0:03:37.000 座って 話合いを重ねます 0:03:37.000,0:03:39.000 2日 3日あるいは 4日かかるかもしれませんが 0:03:39.000,0:03:41.000 解決策が見つかるまで 0:03:41.000,0:03:43.000 できれば和解にいたるまでは 0:03:43.000,0:03:45.000 休みません 0:03:45.000,0:03:47.000 張り詰めたままなら 0:03:47.000,0:03:49.000 誰かを親せきのところに送り出して 0:03:49.000,0:03:51.000 頭を冷やさせます 0:03:51.000,0:03:53.000 人間の気性というものがありながら 0:03:53.000,0:03:56.000 我々が今日まで生きながらえているのは 0:03:56.000,0:03:58.000 このシステムのおかげではないでしょうか 0:03:58.000,0:04:01.000 このシステムを第3の立場と呼びましょう 0:04:01.000,0:04:03.000 たいてい 0:04:03.000,0:04:06.000 紛争といえば 0:04:06.000,0:04:08.000 2者の立場を考えます 0:04:08.000,0:04:10.000 アラブ諸国とイスラエル 労働者と経営者 0:04:10.000,0:04:13.000 夫と妻 共和党と民主党 などです 0:04:13.000,0:04:15.000 そして いつも見落とすのが 0:04:15.000,0:04:17.000 第3の立場です 0:04:17.000,0:04:19.000 紛争では第3の立場にいるのは私たちであり 0:04:19.000,0:04:21.000 周辺社会であり 0:04:21.000,0:04:23.000 友人であり 同盟国であり 0:04:23.000,0:04:25.000 家族であり 隣人なのです 0:04:25.000,0:04:28.000 私たちは信じられないほど建設的な役割を果たせるのです 0:04:28.000,0:04:30.000 第3の立場が力になれる -- 0:04:30.000,0:04:33.000 最も基本的な方法とは 0:04:33.000,0:04:36.000 真に危機にひんするものを当事者に自覚させることです 0:04:36.000,0:04:38.000 子どもたちのため 家族のため 0:04:38.000,0:04:41.000 社会のため 未来のため 0:04:41.000,0:04:44.000 しばらく紛争をやめて 話合いを始めましょう 0:04:44.000,0:04:46.000 やはり 0:04:46.000,0:04:48.000 紛争に巻き込まれると 0:04:48.000,0:04:50.000 広い視野を失ってしまうからです 0:04:50.000,0:04:52.000 すぐ反撃してしまいます 0:04:52.000,0:04:55.000 人間は すぐ反撃する機械です 0:04:55.000,0:04:57.000 よく言われるように 0:04:57.000,0:04:59.000 怒ると人は最も雄弁になり 0:04:59.000,0:05:02.000 いつまでも後悔するのです 0:05:02.000,0:05:05.000 第3の立場がそれに気づかせてくれます 0:05:05.000,0:05:07.000 第3の立場がバルコニーに導いてくれます 0:05:07.000,0:05:10.000 バルコニーとは広い視野の例えで 0:05:10.000,0:05:13.000 目標を見失わずにいられる場所のことです 0:05:13.000,0:05:16.000 私の交渉経験を少し紹介しましょう 0:05:16.000,0:05:19.000 何年か前 まとめ役として 0:05:19.000,0:05:21.000 とても困難な交渉に参加していました 0:05:21.000,0:05:23.000 ロシアの代表者と 0:05:23.000,0:05:25.000 チェチェンの代表者との交渉でした 0:05:25.000,0:05:27.000 ご存じのような戦争状態にあるなかで 0:05:27.000,0:05:29.000 私たちが会ったのは 0:05:29.000,0:05:31.000 オランダのハーグにある平和宮でした 0:05:31.000,0:05:34.000 ユーゴスラビア紛争の戦犯裁判が開かれていたのと 0:05:34.000,0:05:36.000 同じ部屋でした 0:05:36.000,0:05:38.000 会談は前途多難なスタートを切りました 0:05:38.000,0:05:40.000 チェチェンの副大統領が 0:05:40.000,0:05:43.000 ロシアの代表者を指さして こう話し始めたのです 0:05:43.000,0:05:45.000 「戦争犯罪に問われるのだから 0:05:45.000,0:05:47.000 そのまま座っていなさい」 0:05:47.000,0:05:49.000 話し続けてから 私に向かってこう言いました 0:05:49.000,0:05:51.000 「アメリカ人だったね 0:05:51.000,0:05:54.000 プエルトリコでやっていることをよく考えなさい」 0:05:54.000,0:05:57.000 急いで思い返しました「プエルトリコ?何だっけ」 0:05:57.000,0:05:59.000 反撃する気持ちがわき始めましたが 0:05:59.000,0:06:02.000 「バルコニー」に立つことを意識してみました 0:06:02.000,0:06:04.000 チェチェンの副大統領は話をやめ 0:06:04.000,0:06:06.000 全員が私の反応を伺っていました 0:06:06.000,0:06:09.000 「バルコニー」に立つと 彼の指摘に感謝できました 0:06:09.000,0:06:12.000 「我が国の批評をしてくれてありがとう 0:06:12.000,0:06:14.000 これは我々が友好的だという印ですから 0:06:14.000,0:06:17.000 お互い 率直に話し合えますね でも -- 0:06:17.000,0:06:20.000 プエルトリコや過去の話をしに来たのではありません 0:06:20.000,0:06:23.000 チェチェンで起きている苦難や流血を止める策を 0:06:23.000,0:06:26.000 見いだせるか確認しに集まったのです」 0:06:26.000,0:06:29.000 会談は本筋に戻りました 0:06:29.000,0:06:31.000 これが第3の立場の役割です 0:06:31.000,0:06:33.000 つまり当事者を「バルコニー」に立たせるのです 0:06:33.000,0:06:36.000 世界で最も困難で手に負えないと考えられている -- 0:06:36.000,0:06:38.000 紛争について 0:06:38.000,0:06:40.000 少し考えてみましょう 0:06:40.000,0:06:42.000 それは中東です 0:06:42.000,0:06:45.000 第3の立場は どこなのでしょう? 0:06:45.000,0:06:47.000 どうすれば「バルコニー」に立てるのでしょう? 0:06:47.000,0:06:49.000 中東紛争の解決策があるような -- 0:06:49.000,0:06:51.000 ふりをするつもりはありませんが 0:06:51.000,0:06:53.000 最初の一歩を踏み出したと思うのです 0:06:53.000,0:06:55.000 文字通り最初の一歩です 0:06:55.000,0:06:58.000 第3の立場として私たち誰もができることです 0:06:58.000,0:07:00.000 まず質問ですが 0:07:00.000,0:07:02.000 この中で 0:07:02.000,0:07:04.000 昨年 0:07:04.000,0:07:07.000 中東について心配し 何かできることがあるか -- 0:07:07.000,0:07:09.000 考えた人は何人ぐらいいますか? 0:07:09.000,0:07:11.000 ちょっと聞きたいだけです 何人でしょう? 0:07:11.000,0:07:14.000 大多数の方が考えたようですね 0:07:14.000,0:07:16.000 とても遠く離れているのに 0:07:16.000,0:07:19.000 なぜ それほど この紛争に注目するのでしょうか? 0:07:19.000,0:07:21.000 死者の数でしょうか? 0:07:21.000,0:07:23.000 アフリカでは紛争で亡くなる人は 0:07:23.000,0:07:25.000 中東の100倍です 0:07:25.000,0:07:27.000 死者の数ではなく 物語なのです 0:07:27.000,0:07:29.000 この物語に 直接 -- 0:07:29.000,0:07:31.000 関係している気持ちになるからです 0:07:31.000,0:07:33.000 キリスト教徒も イスラム教徒も ユダヤ教徒も 0:07:33.000,0:07:35.000 宗教心のある人も ない人も 0:07:35.000,0:07:37.000 個人的に関係性を感じるのです 0:07:37.000,0:07:40.000 物語は重要です 人類学者としてそう思います 0:07:40.000,0:07:43.000 物語は知識を伝えるために使います 0:07:43.000,0:07:45.000 物語は生活に意味を持たせます 0:07:45.000,0:07:47.000 TEDでは物語が語られています 0:07:47.000,0:07:49.000 物語が鍵を握っています 0:07:49.000,0:07:52.000 私の提案は こうです 0:07:52.000,0:07:54.000 中東での政治問題を 0:07:54.000,0:07:56.000 解決しようじゃありませんか 0:07:56.000,0:07:59.000 でも 物語にも注目しましょう 0:07:59.000,0:08:01.000 すべての根源を見てみましょう 0:08:01.000,0:08:03.000 第3の立場を使えるか検討してみましょう 0:08:03.000,0:08:06.000 それにどんな意味があるの? どんな物語があるの? 0:08:06.000,0:08:08.000 人類学者として分かるのですが 0:08:08.000,0:08:11.000 どんな文化にも起源を伝える物語があります 0:08:11.000,0:08:13.000 中東の起源を伝える物語は何なのでしょう? 0:08:13.000,0:08:15.000 こんな話があります 0:08:15.000,0:08:18.000 4千年前 一人の男が家族と一緒に 0:08:18.000,0:08:20.000 中東を歩いていました 0:08:20.000,0:08:23.000 今の世界は その時代と同じではありません 0:08:23.000,0:08:25.000 その男は ご存じのとおり 0:08:25.000,0:08:27.000 アブラハムです 0:08:27.000,0:08:29.000 アブラハムが象徴しているのは結びつきです 0:08:29.000,0:08:31.000 家族の結びつきです 0:08:31.000,0:08:33.000 アブラハムは私たち全員の祖先ですが 0:08:33.000,0:08:35.000 アブラハムが伝えることは それだけではありません 0:08:35.000,0:08:38.000 根本的な教えには結びつきも含まれているのです 0:08:38.000,0:08:41.000 何人とも相互に関連し 結びついていると伝えています 0:08:41.000,0:08:44.000 アブラハムの根源的な価値観は 見知らぬ人への -- 0:08:44.000,0:08:46.000 尊敬や思いやりにあります 0:08:46.000,0:08:49.000 もてなしの心こそ アブラハムが語られる理由なのです 0:08:49.000,0:08:51.000 そういった意味では 0:08:51.000,0:08:53.000 アブラハムは 中東において 0:08:53.000,0:08:55.000 第3の立場を表す象徴なのです 0:08:55.000,0:08:58.000 私たちは より大きな全体の中の 一員なのだと 0:08:58.000,0:09:00.000 アブラハムが気付かせてくれます 0:09:00.000,0:09:02.000 では このことについて 0:09:02.000,0:09:04.000 少し考えてみましょう 0:09:04.000,0:09:07.000 今 私たちは テロ行為による惨劇に見舞われています 0:09:07.000,0:09:09.000 テロとは何でしょうか? 0:09:09.000,0:09:12.000 テロとは つまり 見知らぬ悪意のない人を 0:09:12.000,0:09:15.000 恐怖を抱かせようと殺しにくる敵として 0:09:15.000,0:09:17.000 扱うことを意味します 0:09:17.000,0:09:19.000 テロの反対は何でしょう? 0:09:19.000,0:09:21.000 見知らぬ悪意のない人を 0:09:21.000,0:09:23.000 友人として扱い 0:09:23.000,0:09:26.000 温かく家に招き入れ 0:09:26.000,0:09:28.000 理解や 尊敬や 愛の種を 0:09:28.000,0:09:31.000 まいて 育てることです 0:09:31.000,0:09:33.000 そこで アブラハムの物語を 0:09:33.000,0:09:36.000 第3の立場にまつわる話として 0:09:36.000,0:09:38.000 とらえてはどうでしょう? 0:09:38.000,0:09:40.000 アブラハムは 0:09:40.000,0:09:43.000 もてなしの心を象徴しているのですから 0:09:43.000,0:09:46.000 テロの抑止剤と考えてはどうでしょう? 0:09:46.000,0:09:48.000 宗教的な不寛容に対する 0:09:48.000,0:09:50.000 ワクチンと考えてはどうでしょう? 0:09:50.000,0:09:53.000 どうやって この物語を この世界に取り入れましょう? 0:09:53.000,0:09:55.000 物語を伝えるだけでは足りません 0:09:55.000,0:09:57.000 力はありますが 0:09:57.000,0:09:59.000 物語を体験する必要があります 0:09:59.000,0:10:02.000 物語を実践できることが必要です でも どうやって? 0:10:02.000,0:10:05.000 私が考えた実践方法 -- 0:10:05.000,0:10:07.000 それが ここで第一歩を刻むのです 0:10:07.000,0:10:09.000 これを実践する単純な方法は 0:10:09.000,0:10:12.000 歩くことです 0:10:12.000,0:10:15.000 アブラハムの足跡をたどるのです 0:10:15.000,0:10:18.000 アブラハムの足跡を もう一度歩くのです 0:10:18.000,0:10:21.000 歩くことには真の力があります 0:10:21.000,0:10:24.000 人類学者としてみれば 我々は歩くから人間なのです 0:10:24.000,0:10:26.000 面白いことに 歩くときは 0:10:26.000,0:10:28.000 横に並んで 0:10:28.000,0:10:31.000 同じ方向に歩いて行くのです 0:10:31.000,0:10:33.000 向かい合わせになって 0:10:33.000,0:10:36.000 これぐらい近づいたら 0:10:36.000,0:10:39.000 危機感を感じるでしょうけど 0:10:39.000,0:10:41.000 肩を並べて歩くときは 0:10:41.000,0:10:43.000 肩が触れても 0:10:43.000,0:10:45.000 大丈夫です 0:10:45.000,0:10:47.000 歩きながら争う人はいません 0:10:47.000,0:10:50.000 だから 交渉に行き詰まったときには よく -- 0:10:50.000,0:10:52.000 森を散歩したりするのです 0:10:52.000,0:10:54.000 そこで 0:10:54.000,0:10:56.000 道を活気づけたらいいんじゃないだろうかと 0:10:56.000,0:10:58.000 思いつきました 0:10:58.000,0:11:01.000 シルクロードや アパラチアン トレイルのように 0:11:01.000,0:11:03.000 アブラハムの歩いた道を 0:11:03.000,0:11:05.000 活気づけるのです 0:11:05.000,0:11:07.000 人はこういいます 「とんでもない 無理だ 0:11:07.000,0:11:10.000 アブラハムの足跡をたどるなんて無理だ 危険すぎるよ 0:11:10.000,0:11:12.000 国境をたくさん越えなくちゃいけない 0:11:12.000,0:11:14.000 中東の10か国以上を通るんだよ 0:11:14.000,0:11:16.000 全部を結んでいるんだから」 0:11:16.000,0:11:18.000 ハーバードで調査し 0:11:18.000,0:11:20.000 必要な検討を重ねて 0:11:20.000,0:11:22.000 数年前 私たちの仲間の 0:11:22.000,0:11:24.000 10か国近くから集まった25人が 0:11:24.000,0:11:26.000 足跡をたどれるか確かめることにしました 0:11:26.000,0:11:29.000 生誕の地ウルファから出発です 0:11:29.000,0:11:32.000 メソポタミア北部にあって トルコ南部に位置しています 0:11:32.000,0:11:35.000 バスに乗り 歩き 0:11:35.000,0:11:37.000 ハランに着きました 0:11:37.000,0:11:40.000 聖書によると アブラハムが旅を始めた地です 0:11:40.000,0:11:42.000 国境を越えてシリアに入り アレッポを訪れました 0:11:42.000,0:11:44.000 アブラハムにちなんで名付けられたそうです 0:11:44.000,0:11:46.000 その後 ダマスカスに行きました 0:11:46.000,0:11:48.000 アブラハムと歴史的に長いつながりのある地です 0:11:48.000,0:11:51.000 それから 北ヨルダンを訪れ 0:11:51.000,0:11:53.000 エルサレムに着きました 0:11:53.000,0:11:56.000 アブラハムと深く関係する地です そしてベツレヘムから 0:11:56.000,0:11:58.000 ついに アブラハムが埋葬された地 -- 0:11:58.000,0:12:00.000 ヘブロンに着きました 0:12:00.000,0:12:02.000 生地から墓場まで 問題なく歩けました 0:12:02.000,0:12:05.000 可能なことを証明したのです すばらしい旅でした 0:12:05.000,0:12:07.000 お聞きしたいのですが 0:12:07.000,0:12:09.000 いったい何人ぐらいの方が 0:12:09.000,0:12:11.000 見知らぬ隣国に行き 0:12:11.000,0:12:13.000 見知らぬ地を訪れ 0:12:13.000,0:12:16.000 全く誰かも分からない人が近づいてきて 0:12:16.000,0:12:19.000 親切にしてくれて 0:12:19.000,0:12:21.000 家に招待してくれて 飲物をくれて 0:12:21.000,0:12:23.000 コーヒーや食事を出されたことがあるでしょうか? 0:12:23.000,0:12:25.000 そんな経験をされた方は何人いますか? 0:12:25.000,0:12:27.000 これがアブラハムの足跡の 0:12:27.000,0:12:29.000 核心なのです 0:12:29.000,0:12:31.000 敵意があると疑っていた -- 0:12:31.000,0:12:33.000 こういった中東の村を訪れると 0:12:33.000,0:12:35.000 完全にアブラハムを思わせるような 0:12:35.000,0:12:37.000 最高にすばらしいもてなしを受けるのです 0:12:37.000,0:12:39.000 「父アブラハムの名において 0:12:39.000,0:12:41.000 ごちそうさせてください」 0:12:41.000,0:12:43.000 この地の人々にとって 0:12:43.000,0:12:46.000 アブラハムは聖書に記された象徴であるだけでなく 0:12:46.000,0:12:49.000 生きているのです 生きた存在なのです 0:12:49.000,0:12:51.000 簡単にお話ししますと 0:12:51.000,0:12:53.000 ここ2年ほど 0:12:53.000,0:12:55.000 何千もの人が 0:12:55.000,0:12:57.000 中東でアブラハムの足跡の一部を 0:12:57.000,0:12:59.000 歩くようになって 0:12:59.000,0:13:02.000 そこに暮らす人々のもてなしを享受しているのです 0:13:02.000,0:13:04.000 イスラエル パキスタン 0:13:04.000,0:13:06.000 ヨルダン トルコ シリア 0:13:06.000,0:13:08.000 などで歩き始めています 0:13:08.000,0:13:10.000 すばらしい体験です 0:13:10.000,0:13:12.000 男性も 女性も 若者も 年配者もです 0:13:12.000,0:13:15.000 面白いことに 男性よりも女性が多いのです 0:13:15.000,0:13:17.000 歩くことができない人 -- 0:13:17.000,0:13:19.000 すぐに訪れることができない人のために 0:13:19.000,0:13:21.000 いろいろな都市や それぞれの地域で 0:13:21.000,0:13:23.000 歩く企画が開かれています 0:13:23.000,0:13:25.000 例えば シンシナティでは 0:13:25.000,0:13:27.000 教会から モスクや シナゴーグへと歩き 0:13:27.000,0:13:29.000 一緒にアブラハムゆかりの食事をとります 0:13:29.000,0:13:31.000 アブラハムの足跡をたどる日です 0:13:31.000,0:13:33.000 ブラジルのサンパウロでは 0:13:33.000,0:13:35.000 さまざまなコミュニティーが一体となって 0:13:35.000,0:13:37.000 何千という人がアブラハムの足跡を擬似的に走る -- 0:13:37.000,0:13:39.000 毎年のイベントに発展しました 0:13:39.000,0:13:42.000 マスコミも気に入り とても敬意を払ってくれます 0:13:42.000,0:13:44.000 ものすごく注目してくれるのは 0:13:44.000,0:13:46.000 目に見える活動だからです 0:13:46.000,0:13:48.000 さらに 見知らぬ人に対する 0:13:48.000,0:13:50.000 アブラハムの もてなしの心や 0:13:50.000,0:13:52.000 思いやりの気持ちを普及させる活動だからです 0:13:52.000,0:13:54.000 ちょうど2週間ほど前には 0:13:54.000,0:13:56.000 NPRがラジオで取り上げていました 0:13:56.000,0:13:58.000 先月には これについて 0:13:58.000,0:14:00.000 ガーディアン紙に記事が掲載されました 0:14:00.000,0:14:03.000 マンチェスター ガーディアン紙です 0:14:03.000,0:14:06.000 2ページ全部をさいて 0:14:06.000,0:14:09.000 村人のこんな意見を載せていました 0:14:09.000,0:14:12.000 「歩くことで 私たちが世界につながるのです」 0:14:12.000,0:14:15.000 生活に息づく光のようだと言ったのです 0:14:15.000,0:14:17.000 これが 我々に希望をもたらしてくれました 0:14:17.000,0:14:19.000 これが この活動の意義なのです 0:14:19.000,0:14:22.000 でも 心理的な意義だけではありません 0:14:22.000,0:14:24.000 経済的な意義もあります 0:14:24.000,0:14:26.000 歩く人たちが お金を使うからです 0:14:26.000,0:14:29.000 こちらの ウム アハマッドという女性は 0:14:29.000,0:14:32.000 北ヨルダンを通る道に住んでいます 0:14:32.000,0:14:34.000 とても貧しく 0:14:34.000,0:14:37.000 目が少し不自由で 夫が働けず 0:14:37.000,0:14:40.000 子どもが7人います 0:14:40.000,0:14:42.000 できるのは料理です 0:14:42.000,0:14:45.000 そこで 村を通って歩く人たちのために 0:14:45.000,0:14:48.000 料理を作り始め 家で食べてもらうようになりました 0:14:48.000,0:14:50.000 床に座ります 0:14:50.000,0:14:52.000 テーブルクロスさえありませんが 0:14:52.000,0:14:54.000 近くの田園地帯でとれた -- 0:14:54.000,0:14:57.000 新鮮なハーブを使って 最高においしい料理を作ります 0:14:57.000,0:14:59.000 歩いている人がどんどん訪れて 0:14:59.000,0:15:01.000 最近では 家族を養える収入が 0:15:01.000,0:15:03.000 手に入り始めました 0:15:03.000,0:15:06.000 彼女は 我々の一団に こう言ってきました 0:15:06.000,0:15:09.000 「かつて 村人は 私を見るのもためらっていましたが 0:15:09.000,0:15:11.000 あなた方のおかげで 0:15:11.000,0:15:13.000 私の存在が認められました」 0:15:13.000,0:15:16.000 アブラハムの足跡がもつ潜在的な力によるものです 0:15:16.000,0:15:18.000 文字通り 何百種類ものコミュニティーが 0:15:18.000,0:15:21.000 中東やアブラハムの足跡のいたる所に広がっています 0:15:22.000,0:15:25.000 潜在的な力とは つまりゲームを変えることです 0:15:25.000,0:15:27.000 ゲームを変えるには 骨組みを変えることが必要です 0:15:27.000,0:15:29.000 つまり ものの見方を変えるのです 0:15:29.000,0:15:31.000 骨組みを 0:15:31.000,0:15:34.000 敵意から もてなしの心に変え 0:15:34.000,0:15:37.000 テロから 観光に変えるのです 0:15:37.000,0:15:39.000 その意味で アブラハムの足跡は 0:15:39.000,0:15:41.000 ゲームを変えるものなのです 0:15:41.000,0:15:43.000 ある物を お見せしましょう 0:15:43.000,0:15:45.000 小さなドングリです 0:15:45.000,0:15:47.000 今年の初め 0:15:47.000,0:15:49.000 足跡をたどっているときに拾いました 0:15:49.000,0:15:51.000 ドングリは 樫の木に関係があります 0:15:51.000,0:15:53.000 樫の木に育ちます 0:15:53.000,0:15:55.000 アブラハムにも関係があります 0:15:55.000,0:15:57.000 あの足跡は 今はドングリのようなものです 0:15:57.000,0:15:59.000 まだ初期段階なのです 0:15:59.000,0:16:01.000 どんな樫の木になるでしょう? 0:16:01.000,0:16:03.000 子どものころ 私は 0:16:03.000,0:16:05.000 ここシカゴで生まれてから 0:16:05.000,0:16:07.000 大半をヨーロッパですごしました 0:16:07.000,0:16:09.000 みなさんが 1945年の 0:16:09.000,0:16:11.000 戦争で荒廃した 0:16:11.000,0:16:14.000 ロンドンや ベルリンで 0:16:14.000,0:16:16.000 こう言ったとしましょう 0:16:16.000,0:16:18.000 「60年後には 0:16:18.000,0:16:20.000 地球上で最も平和で繁栄した町になるよ」 0:16:20.000,0:16:22.000 そうしたら 町の人に 0:16:22.000,0:16:24.000 正真正銘の変人だと言われたことでしょう 0:16:24.000,0:16:28.000 でも ヨーロッパという共通のアイデンティティーと 0:16:28.000,0:16:30.000 共通の経済のおかげで実現できたのです 0:16:30.000,0:16:33.000 そこで疑問です ヨーロッパでできたのだから 0:16:33.000,0:16:35.000 中東でもできるのでは? 0:16:35.000,0:16:37.000 アブラハムの物語という 0:16:37.000,0:16:39.000 共通のアイデンティティーの力を借り 0:16:39.000,0:16:41.000 観光に重点を置いた -- 0:16:41.000,0:16:44.000 共通の経済活動を利用すればどうでしょう? 0:16:45.000,0:16:47.000 最後になりますが 0:16:47.000,0:16:50.000 この35年間 0:16:50.000,0:16:52.000 地球上の 最も危険で 0:16:52.000,0:16:54.000 最も困難で 最も扱いにくい紛争に 0:16:54.000,0:16:56.000 携わってきましたが 0:16:56.000,0:16:59.000 状況を変えられないと感じる紛争は 0:16:59.000,0:17:02.000 一つもありませんでした 0:17:02.000,0:17:04.000 もちろん容易ではありませんが 0:17:04.000,0:17:06.000 可能です 0:17:06.000,0:17:08.000 南アフリカでも できました 0:17:08.000,0:17:10.000 北アイルランドでも できました 0:17:10.000,0:17:12.000 どこでもできると思います 0:17:12.000,0:17:14.000 まさに私たち次第です 0:17:14.000,0:17:17.000 第3の立場をとる私たち次第です 0:17:17.000,0:17:19.000 第3の立場をとるという考えを 0:17:19.000,0:17:21.000 お勧めしたいのです 0:17:21.000,0:17:23.000 とても小さな一歩だとしてもです 0:17:23.000,0:17:25.000 まもなく休憩時間に入ります 0:17:25.000,0:17:27.000 誰かの所に行ってください 0:17:27.000,0:17:30.000 文化の違う人 国が違う人 0:17:30.000,0:17:32.000 民族が違う人 何か違いがある人を 0:17:32.000,0:17:35.000 会話に誘って 話を聞いてください 0:17:35.000,0:17:37.000 それこそ第3の立場が果たす役割です 0:17:37.000,0:17:39.000 アブラハムの足跡を歩くということです 0:17:39.000,0:17:41.000 TEDトークの後は 0:17:41.000,0:17:43.000 TEDウォークしませんか? 0:17:43.000,0:17:45.000 それでは最後に 0:17:45.000,0:17:47.000 三つお話しします 0:17:47.000,0:17:50.000 まず 平和の秘策は 0:17:50.000,0:17:53.000 第3の立場だということです 0:17:53.000,0:17:55.000 第3の立場とは私たちのことです 0:17:55.000,0:17:57.000 私たち一人一人が 0:17:57.000,0:17:59.000 一歩を踏み出せば 0:17:59.000,0:18:02.000 この世界を 平和へと 0:18:02.000,0:18:05.000 一歩近づけることができるのです 0:18:05.000,0:18:07.000 アフリカに こんなことわざがあります 0:18:07.000,0:18:09.000 「クモの巣が一体となれば 0:18:09.000,0:18:12.000 ライオンさえも止められる」 0:18:12.000,0:18:14.000 第3の立場にある -- 0:18:14.000,0:18:16.000 平和というクモの巣を一体化できれば 0:18:16.000,0:18:19.000 戦争というライオンさえも止められるのです 0:18:19.000,0:18:21.000 ありがとうございました 0:18:21.000,0:18:23.000 (拍手)