1
00:00:32,270 --> 00:00:40,330
相互扶助はアナキストの実践の背景にある道標であり、
またアナキストの社会組織をより広く理解するための根本的な骨組でもある。

2
00:00:40,840 --> 00:00:43,224
実際のところ、それは何なのか？

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00:00:43,560 --> 00:00:52,620
簡単に言うと、相互扶助とは：二人以上の人が協力して問題を解決し、
みんなに関わる共通の利益に資するということだ。

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00:00:52,620 --> 00:00:56,570
つまり、共通善のための協力。

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00:00:56,570 --> 00:01:02,650
こう考えれば、相互扶助は真新しいアイデアでもないし、
アナキスト独特のものでもないことが分かる。

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00:01:02,650 --> 00:01:12,077
事実、人間社会のはじまりからして、相互扶助は生存の問題として実践されてきたし、
今日に至るまで動植物の世界に数えきれないぐらい例を見ることができる。

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00:01:13,007 --> 00:01:21,900
アナキストと相互扶助の関係を詳しく知るには、時代を100年以上さかのぼって、
あの有名なクロポトキンの著作を知る必要がある。

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00:01:21,900 --> 00:01:29,850
歴史上もっとも豊かな髭を蓄えた人物の一人であり、
非常に優秀な動物学者・環境生物学者だ。

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00:01:31,450 --> 00:01:39,210
クロポトキンの時代には進化生物学の分野の中心には社会進化論が陣取っていて、

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00:01:39,970 --> 00:01:45,500
人間社会にもダーウィンのあの「適者生存の法則」を無慈悲に当てはめた。

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00:01:45,500 --> 00:01:49,073
社会進化論者は、いま存在する社会的な階層

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00:01:49,073 --> 00:01:56,840
どうしの自然選択あるいは生存競争であり、
したがって人類の進化にとって重要で不可欠な要素だと結論した。

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00:01:57,780 --> 00:02:03,250
当然、この考えは特に金持ちで政治的立場の強い白人男性に人気があった。

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00:02:03,250 --> 00:02:08,090
社会における彼らの特権的な立場について 科学っぽく正当化できるし、

15
00:02:08,090 --> 00:02:15,300
しかも欧州がアジア・アフリカ・アメリカ大陸を植民地支配す
ることも理屈付けしてくれるからだ。

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00:02:16,761 --> 00:02:23,812
クロポトキンはこの因習的な学問に挑戦した。
1902年に「相互扶助論」と題した本を発表し、

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00:02:23,812 --> 00:02:28,890
進化には盲目的な個々の競争以上の仕組みがあることを証明したのだ。

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00:02:31,110 --> 00:02:39,130
他の種と協力し合い互いの利益のために共生的な関係を結ぶ種の方が、

19
00:02:39,130 --> 00:02:45,550
より環境に適応し、そうでない種よりも競争力が高いのだ。

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00:02:45,550 --> 00:02:47,600
現代の都市社会では、

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00:02:47,600 --> 00:02:56,174
人は誰しも自分の家と、銀行口座、スマホ、フェイスブックページを持つ、
独立して一人でも食っていける個人だと思い込まされている。

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00:02:56,174 --> 00:02:59,600
しかし、独立した人間という考えは、私たちをバラバラにし、

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00:02:59,600 --> 00:03:08,480
目先の満足しか気にしない操りやすい消費者として人々を飼いならすために、
企業と国家が広めた神話である。

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00:03:08,480 --> 00:03:11,970
真実はこうだ：人間は驚くほど互いに依存している。

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00:03:11,970 --> 00:03:15,216
事実、人類が種として成功した鍵はここにある。

26
00:03:15,720 --> 00:03:20,070
自分が食べている食べ物や今着ている服がどこから来たのか考えたことがある？

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00:03:20,070 --> 00:03:23,952
あなたの家や車をつくるための原料や労働はどこから来たのだろう？

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00:03:23,952 --> 00:03:29,909
もし文明の安楽なしに自力で生きていくことになったら、
ほとんどの人は一週間も生き延びられないだろう。

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00:03:29,909 --> 00:03:34,389
もちろん毎日消費する無数の商品のひとかけらを作ることもできない。

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00:03:34,389 --> 00:03:40,690
ファラオがピラミッドを作らせた古代エジプトから、
今日の拡大し続ける生産・供給の連鎖に至るまで、

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00:03:40,690 --> 00:03:44,979
支配階級の主要な機能はいつも人間の活動を動員することであった。

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00:03:44,979 --> 00:03:48,369
そして、それはいつでも力づくだった。

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00:03:48,369 --> 00:03:52,590
資本主義のもとでは、この活動は直接的な暴力か、

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00:03:52,590 --> 00:03:58,319
あるいは富と財産の私的所有を基盤とするシステムによって作り
出された飢餓への恐れを私たちに内面化させることを通して組織される。

35
00:03:58,319 --> 00:04:03,359
資本主義は人々に素晴らしいことをさせることもあるが、
そこに何か利益が作り出される限りにおいてである。

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00:04:03,359 --> 00:04:09,711
利潤という原動力がはたらかない重要な課題は多くある。

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00:04:09,711 --> 00:04:15,910
例えば世界的な貧困や予防できる病気を根絶したり、
海洋から有害なプラスチックを取り除くといったことだ。

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00:04:15,910 --> 00:04:22,040
これらの記念碑的な課題の遂行のためには、
私たちを他者と結びつける態度と私たちを支える世界を変える必要がある。

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00:04:22,040 --> 00:04:26,496
資本主義から相互扶助へ…

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00:04:26,496 --> 00:04:36,959
アナキストの相互扶助の理想は様々な場面に見出せる。例えばオープンソース・ソフトの開発者や、
NSAによる監視を妨害する暗号化を開発するプログラマーたち。

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00:04:36,959 --> 00:04:40,650
近所の人同士が集まって作った地域のデイケアグループ。

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00:04:40,650 --> 00:04:49,180
ハリケーン・カトリーナなどの大災害で行政機関がないときに、
まったくの見ず知らずの人々がお互いを助けるために駆け寄ってきた人々。

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00:04:49,180 --> 00:04:57,270
爆撃された廃墟から子供たちを助け出すために命を投げ出す、
アレッポの白いヘルメットたちの勇気

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00:04:57,270 --> 00:05:07,370
想像してみよう。限られた資源をめぐる絶え間ない競争に 基づかない世界を。

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00:05:07,370 --> 00:05:11,562
それが、アナキストが作り出そうとしている未来だ。