WEBVTT 00:00:01.165 --> 00:00:04.613 私はテネシー大学の海洋微生物学者です 00:00:04.613 --> 00:00:07.182 今日はある微生物について話します 00:00:07.182 --> 00:00:10.400 とても不思議で興味深く 00:00:10.400 --> 00:00:14.307 地球上の生命とはどんなものかという これまでの考えを変えるものかもしれません NOTE Paragraph 00:00:14.307 --> 00:00:15.680 質問します 00:00:15.680 --> 00:00:18.747 もし潜水艦で 海底まで行けたら楽しいだろうなと 00:00:18.747 --> 00:00:21.628 思ったことがある人は 手を挙げてください 00:00:22.372 --> 00:00:23.546 そうですよね 00:00:23.546 --> 00:00:25.746 ほとんど全員ですね 海は最高ですから NOTE Paragraph 00:00:25.746 --> 00:00:29.059 では次に 今 手を挙げた人の中で 00:00:29.059 --> 00:00:34.402 海底に行きたい理由は そこに沈む 「ドロ」が素晴らしいからで 00:00:34.402 --> 00:00:37.195 それに少しでも近づきたいから という人は手を挙げてください NOTE Paragraph 00:00:37.219 --> 00:00:38.227 (笑) NOTE Paragraph 00:00:38.251 --> 00:00:39.541 誰もいない 00:00:39.565 --> 00:00:41.390 この部屋で私だけですね NOTE Paragraph 00:00:41.414 --> 00:00:43.400 私はいつもそんなことを考えています 00:00:43.400 --> 00:00:45.689 寝てる間を除いて ずっと 00:00:45.689 --> 00:00:49.439 生命はどれだけ地下深くまで存在するのか 00:00:49.439 --> 00:00:53.276 それをどうやって見つけるかを 研究しています 00:00:53.276 --> 00:00:54.926 地球上の生命には 00:00:54.926 --> 00:00:57.619 まだまだ根本的な疑問があるからです NOTE Paragraph 00:00:57.643 --> 00:01:01.243 1980年代 英国の科学者の ジョン・パークスは 00:01:01.267 --> 00:01:03.171 似たようなことを考えていました 00:01:03.195 --> 00:01:05.792 そして あるクレイジーな考えに至りました 00:01:05.816 --> 00:01:11.204 広大で深く広がる「微生物の生命圏」が 00:01:11.241 --> 00:01:15.735 海底よりさらに数百メートルの「地下」に 広がっているという考えです 00:01:15.759 --> 00:01:16.910 素晴らしいですが 00:01:16.934 --> 00:01:20.076 唯一の問題は 誰も信じなかったということです 00:01:20.100 --> 00:01:22.863 その理由はおそらく 00:01:22.887 --> 00:01:27.067 海底下の堆積層は地球上で もっとも退屈な場所だからでしょう NOTE Paragraph 00:01:27.091 --> 00:01:28.177 (笑) NOTE Paragraph 00:01:28.201 --> 00:01:31.236 光も酸素もなく 00:01:31.260 --> 00:01:32.799 おそらくこれが最悪で 00:01:32.823 --> 00:01:36.998 文字通り何百万年も 食物の供給がないのですからね 00:01:37.022 --> 00:01:38.964 生物学の博士号を持っていなくても 00:01:38.988 --> 00:01:41.623 生物を探しに行くには 適さない場所だとわかりますね NOTE Paragraph 00:01:41.647 --> 00:01:42.654 (笑) NOTE Paragraph 00:01:42.678 --> 00:01:44.525 しかし2002年 00:01:44.525 --> 00:01:48.047 スティーブン・ドントは 周囲の人々を口説いて 00:01:48.047 --> 00:01:51.353 ジョイデス・レゾリューションという 採掘船に乗って 00:01:51.353 --> 00:01:53.237 調査の旅に出ました 00:01:53.237 --> 00:01:56.520 彼はデンマークのB・B・ヨルゲンセンと共に 計画を実行し 00:01:56.520 --> 00:02:01.348 ついに 純粋な海底下の堆積層のサンプルを 手に入れました 00:02:01.348 --> 00:02:04.149 海底表面の微生物の混入のない 純粋なものです 00:02:04.189 --> 00:02:09.446 この船は 海底から さらに 何千メートルも下を採掘でき 00:02:09.451 --> 00:02:13.113 海底の地盤から 一連の長いコアを取り出します 00:02:13.113 --> 00:02:15.024 コアはご覧のように 00:02:15.024 --> 00:02:19.024 私たち科学者チームが運んでいる パイプの中に入っています 00:02:19.024 --> 00:02:21.179 私たちは船上で そのコアを処理して 00:02:21.179 --> 00:02:22.517 研究室に持ち帰り 00:02:22.541 --> 00:02:24.640 さらに詳しい研究をします NOTE Paragraph 00:02:24.664 --> 00:02:26.141 ドントが仲間と共に 00:02:26.165 --> 00:02:29.720 その貴重な海底そのままのサンプルを 00:02:29.744 --> 00:02:31.625 顕微鏡で調べてみると 00:02:31.649 --> 00:02:35.758 このようなものが見えました 00:02:35.782 --> 00:02:38.259 これは正確には 博士課程の J・ボンジョルノが 00:02:38.283 --> 00:02:40.469 別の調査で 採掘したものです 00:02:40.493 --> 00:02:45.614 背景のぼんやりしたものは 深海の泥です 00:02:45.614 --> 00:02:49.601 緑の蛍光色に染まった点々が 00:02:49.625 --> 00:02:52.873 実際の生きた微生物です NOTE Paragraph 00:02:53.173 --> 00:02:56.203 ここからは 微生物の 少々残念な話になります 00:02:56.227 --> 00:02:58.306 顕微鏡で見ると すべて同じに見えるのです 00:02:58.330 --> 00:02:59.937 ざっくり言えばですが 00:02:59.961 --> 00:03:03.553 本当におもしろい生物― たとえば 00:03:03.553 --> 00:03:07.243 ウランで呼吸するものや ロケット燃料を生み出すものが 00:03:07.243 --> 00:03:09.703 手元にいるとしましょう 00:03:09.703 --> 00:03:11.259 それもみんな 泥に混ざった状態で 00:03:11.283 --> 00:03:13.480 顕微鏡で眺めると 00:03:13.480 --> 00:03:15.315 ただの点にしか見えないのです 00:03:15.315 --> 00:03:16.770 本当にがっかりしますよ 00:03:16.770 --> 00:03:19.309 見た目では区別できないので 00:03:19.309 --> 00:03:20.829 指紋で見分けるように DNAで 00:03:20.829 --> 00:03:23.214 種類を識別することにしました NOTE Paragraph 00:03:23.238 --> 00:03:25.524 その方法を説明します 00:03:25.524 --> 00:03:29.050 これは本物のデータではありませんが 00:03:29.120 --> 00:03:34.362 それぞれの生物が互いにまったく 別の種であった場合を 00:03:34.362 --> 00:03:35.722 表したものです 00:03:36.902 --> 00:03:40.234 それぞれの種ごとに DNA配列の要素として 00:03:40.234 --> 00:03:44.926 A G C T が並んでる状態です 00:03:44.926 --> 00:03:46.751 まったくバラバラなので 00:03:46.751 --> 00:03:51.396 それぞれの間に 何の関係もないことを示します 00:03:52.360 --> 00:03:54.409 本物のDNAのデータだと 00:03:54.409 --> 00:03:57.237 共通の遺伝子配列があり こんな感じになります 00:03:57.237 --> 00:03:59.465 完全に近いぐらいに揃っています 00:03:59.465 --> 00:04:02.909 これほどたくさんの縦の列で 00:04:02.933 --> 00:04:06.322 ここはC ここはTと揃うことが 00:04:06.346 --> 00:04:09.131 偶然 起こる可能性は極めて小さいものです 00:04:09.155 --> 00:04:13.068 つまり すべてに同じ祖先がいて 00:04:13.068 --> 00:04:15.989 つながりがあることを示しています NOTE Paragraph 00:04:16.013 --> 00:04:17.861 では何の DNA か見てみましょう 00:04:18.338 --> 00:04:20.942 上の2列は 人間とチンパンジーです 00:04:20.966 --> 00:04:24.561 つながりがあるのはご存知のとおりですね NOTE Paragraph 00:04:24.585 --> 00:04:26.045 (笑) NOTE Paragraph 00:04:26.069 --> 00:04:28.847 しかし 私たちは たとえば マツの木や 00:04:28.847 --> 00:04:31.807 アウトドアで生水をのんだときに 00:04:31.807 --> 00:04:36.449 胃腸炎を引き起こす寄生虫 ジアルディアとも つながりがあるのです 00:04:36.449 --> 00:04:38.394 さらには 大腸菌や 00:04:38.394 --> 00:04:43.144 致命的な日和見菌である C・ディフィシル菌とも 00:04:43.144 --> 00:04:45.204 私たちは仲間なのです 00:04:45.244 --> 00:04:46.138 もちろん 00:04:46.138 --> 00:04:50.561 産業廃棄物を分解する デハロコッコイデスのような良性の細菌とも 00:04:50.561 --> 00:04:51.939 つながっています 00:04:51.956 --> 00:04:54.702 このような DNA 解析をして 00:04:54.702 --> 00:04:57.869 すべての生物の類似性や違いをもとに 00:04:57.893 --> 00:05:01.635 おたがいの関係性がわかるように 00:05:01.635 --> 00:05:03.540 系統樹をつくると このようになります 00:05:03.564 --> 00:05:05.387 一目見て 00:05:05.387 --> 00:05:08.098 人間やジアルディア 00:05:08.098 --> 00:05:10.784 ウサギやマツが 00:05:10.784 --> 00:05:12.988 すべて兄弟のようなものだとわかります 00:05:12.988 --> 00:05:15.918 細菌は遠い親戚ですね 00:05:15.942 --> 00:05:17.015 つまり 00:05:17.015 --> 00:05:20.553 私たち地球上の生物はすべて仲間なのです 00:05:20.553 --> 00:05:21.761 つまり 私は日々 00:05:21.761 --> 00:05:23.992 サルトルの「実存的孤独」に対して 00:05:23.992 --> 00:05:27.535 科学的な反証データを積み重ねています NOTE Paragraph 00:05:27.675 --> 00:05:30.209 私たちが初めて海底下の堆積層から 00:05:30.209 --> 00:05:34.102 DNAサンプルを手にしたときに 知りたかったことは 00:05:34.102 --> 00:05:36.435 それがどこに位置するかでした 00:05:36.435 --> 00:05:37.768 私たちが最初に発見したのは 00:05:37.768 --> 00:05:39.305 エイリアンではないことでした 00:05:39.305 --> 00:05:41.382 そのDNAは 地球上の他の生物と 00:05:41.382 --> 00:05:43.331 同様の配列なのですからね 00:05:43.331 --> 00:05:47.053 ではその微生物群は系統樹の どこにあてはまるのでしょうか 00:05:47.660 --> 00:05:49.311 まず気がつくのは 00:05:49.311 --> 00:05:50.878 たくさん種類がいることです 00:05:50.878 --> 00:05:54.244 厳しい環境で生き延びた 単一の生物種ではなかったのです 00:05:54.244 --> 00:05:55.998 むしろ たくさんと言えるでしょう 00:05:55.998 --> 00:05:58.452 次ですが お気付きでしょうか 00:05:58.452 --> 00:06:02.980 これまで知られている どの生物とも違うということです 00:06:02.980 --> 00:06:05.790 それぞれは互いに違う種の生物で 00:06:05.790 --> 00:06:08.364 これまでに知られているどの種とも違い 00:06:08.364 --> 00:06:10.843 その隔たりは たとえばヒトとマツの違いほどです 00:06:10.843 --> 00:06:13.909 ジョン・パークスは正しかったのです 00:06:14.313 --> 00:06:17.631 彼と私たちは 80年代以前は誰も知らなかった 00:06:17.631 --> 00:06:21.415 まったく新しく多様性に富む 00:06:21.415 --> 00:06:25.139 微生物の生態系を発見したのです 00:06:25.402 --> 00:06:26.938 そして これからが本番です 00:06:26.938 --> 00:06:31.987 次にやることは 培養皿で これらの未知の種を培養して 00:06:31.987 --> 00:06:36.050 微生物学的にしかるべき実験に 進むわけです 00:06:36.198 --> 00:06:39.681 しかし どう頑張ってもそれらは繁殖しません 00:06:39.681 --> 00:06:43.713 15年を経て何度も採掘航海を行った 今に至っても 00:06:43.713 --> 00:06:47.631 いまだかつて この海底下の微生物の培養に 00:06:47.631 --> 00:06:50.961 成功した人はいないのです 00:06:50.961 --> 00:06:52.731 試行が足りないのではありません 00:06:52.731 --> 00:06:55.217 残念に思えますが 00:06:55.287 --> 00:07:00.428 これ自体 未知の何かを意味するので ワクワクすることだと思っています 00:07:00.496 --> 00:07:04.504 たとえば同僚たちと こんな良いアイデアを思いつきました 00:07:04.504 --> 00:07:07.649 レシピ本を読むように遺伝子を読んで 00:07:07.649 --> 00:07:13.207 それらに必要な栄養を特定して 与えれば 繁殖するはずです 00:07:13.207 --> 00:07:15.950 しかし遺伝子から導き出された餌は 00:07:15.950 --> 00:07:18.661 すでに 私たちが与えた餌そのものだったので 00:07:18.661 --> 00:07:20.524 これは完全に失敗でした 00:07:20.524 --> 00:07:25.535 培養皿の上で必要なものは 与えられていない 何か別のものなのです 00:07:26.365 --> 00:07:30.949 その後 世界中からさまざまなデータを集め 00:07:30.949 --> 00:07:36.812 USC の研究者である ダグ・ラロウと ヤン・アメンドは 00:07:36.812 --> 00:07:39.489 ある量を推定することができました 00:07:39.489 --> 00:07:42.400 微生物の細胞1つが 1日に必要とするエネルギーは 00:07:42.400 --> 00:07:45.232 たったの1ゼプトワットだということです 00:07:45.232 --> 00:07:46.980 スマホを出して調べる前に言うと 00:07:46.980 --> 00:07:50.750 ゼプトというのは 10のマイナス21乗です 00:07:50.750 --> 00:07:52.426 人間には 1日に100ワットのエネルギーが必要です 00:07:52.426 --> 00:07:55.114 人間には 1日に100ワットのエネルギーが必要です 00:07:55.174 --> 00:07:57.245 100ワットというのは 00:07:57.245 --> 00:07:58.587 パイナップルを 00:07:58.587 --> 00:08:01.537 腰くらいの高さから地面に 881,632回 落とすことに相当します 00:08:01.537 --> 00:08:05.137 腰くらいの高さから地面に 881,632回 落とすことに相当します 00:08:05.137 --> 00:08:07.309 それをタービンにつないで 00:08:07.309 --> 00:08:10.548 取り出せるエネルギーが 人間の1日の消費カロリーです 00:08:11.399 --> 00:08:13.974 この表現で ゼプトワットを表しましょう 00:08:13.974 --> 00:08:18.142 一粒の塩があるとします 00:08:18.142 --> 00:08:23.438 そして その1000分の1くらいの とても小さな粒を 00:08:23.438 --> 00:08:25.168 想像してみてください 00:08:25.168 --> 00:08:28.058 それを 1ナノメートル落とします 00:08:28.058 --> 00:08:32.547 1ナノメートルは 目に見える光の波長の100分の1です 00:08:32.547 --> 00:08:35.010 それを1日1回です 00:08:35.010 --> 00:08:38.682 それだけで この微生物たちは 生きていけるのです 00:08:38.682 --> 00:08:41.479 生命を維持するのに必要なエネルギーとして 00:08:41.479 --> 00:08:44.339 想定されていたよりも ずっと小さなエネルギーです 00:08:44.339 --> 00:08:47.389 しかしどういうわけか 驚くべきことに 見事に 00:08:47.389 --> 00:08:49.135 それで十分なのです 00:08:49.713 --> 00:08:53.234 もし地中の微生物にとっての エネルギーのレベルが 00:08:53.234 --> 00:08:54.574 想定外のものであれば 00:08:54.662 --> 00:08:56.944 「時間」のレベルも 00:08:56.944 --> 00:08:58.680 想定外になるはずです 00:08:58.680 --> 00:09:02.185 わずかなエネルギー勾配で生きる生物に 00:09:02.185 --> 00:09:04.101 急速な成長は 無理でしょう 00:09:04.101 --> 00:09:06.537 もしそれらが人間の喉に寄生しようとしても 00:09:06.537 --> 00:09:08.045 細胞分裂さえできず 00:09:08.045 --> 00:09:11.815 急速に増殖するレンサ球菌によって 滅ぼされてしまうでしょう 00:09:11.815 --> 00:09:15.114 したがって人間の喉には そういう微生物がいないということです 00:09:15.748 --> 00:09:19.854 おそらく海底下が退屈な場所であることは 00:09:19.854 --> 00:09:22.557 微生物にとっては 強みであるでしょう 00:09:22.557 --> 00:09:24.629 嵐に流されることはないし 00:09:24.629 --> 00:09:26.969 海藻に栄養を奪われることもない 00:09:27.251 --> 00:09:31.114 そこにいるだけで いいのですから 00:09:31.114 --> 00:09:34.928 おそらく培養皿の上に なかったものは 00:09:34.928 --> 00:09:36.830 栄養分ではなく 00:09:36.830 --> 00:09:38.331 物質でさえないかもしれません 00:09:38.331 --> 00:09:41.463 本当に必要なのは 00:09:41.918 --> 00:09:43.893 「時間」なのかもしれません 00:09:44.277 --> 00:09:47.836 でも 時間を与えることは不可能でしょうね 00:09:47.859 --> 00:09:51.160 もし 培養皿を学生らに引き継いで 00:09:51.160 --> 00:09:53.601 彼らがまた 次の世代に引き継いでいったとしても 00:09:53.601 --> 00:09:56.204 何千年もかけなければなりません 00:09:56.204 --> 00:09:58.708 海底下の環境を正確に再現し 00:09:58.708 --> 00:10:03.395 不純物の繁殖を防ぐ必要があり 実施は不可能です 00:10:03.581 --> 00:10:06.754 でも ある意味 私たちは 培養に成功していたのかもしれません 00:10:06.947 --> 00:10:09.396 食料を与えられて こう言ったのかもしれません 00:10:09.396 --> 00:10:12.772 「ありがとう 急いで新しい細胞を作るよ 00:10:12.772 --> 00:10:14.294 100年後に」 00:10:14.294 --> 00:10:15.528 (笑) 00:10:15.919 --> 00:10:17.401 では逆に 00:10:17.401 --> 00:10:21.165 なぜその他の生物は「速い」のでしょうか? 00:10:21.165 --> 00:10:23.338 なぜ細胞は1日で死に 00:10:23.338 --> 00:10:25.808 人間は100年しか生きられないのでしょうか 00:10:25.808 --> 00:10:27.907 宇宙の時間を考えると 00:10:27.907 --> 00:10:31.191 不自然なくらい短いと思いませんか? 00:10:31.191 --> 00:10:34.038 でもこれは不自然ではないのです 00:10:34.038 --> 00:10:37.125 この寿命はあるものによって決まるのです 00:10:37.125 --> 00:10:39.264 それは太陽です 00:10:39.981 --> 00:10:43.788 ひとたび 生命が 光合成で 太陽エネルギーを利用し始めると 00:10:43.788 --> 00:10:46.889 生命はすべて 昼と夜のサイクルに 合わせたものとなります 00:10:46.889 --> 00:10:48.681 こうして太陽が 00:10:48.681 --> 00:10:50.811 急ぐ理由とエネルギー源を 00:10:50.811 --> 00:10:51.875 生命に与えました 00:10:51.875 --> 00:10:55.081 地球上の生物を 循環器系として見れば 00:10:55.081 --> 00:10:57.358 太陽は心臓にあたります 00:10:57.358 --> 00:10:59.574 でも海底下は違います 00:10:59.574 --> 00:11:02.144 完全に太陽からは 切り離された循環器系です 00:11:02.144 --> 00:11:07.637 非常にゆっくりした 地質学のリズムによって動いているのです 00:11:08.051 --> 00:11:14.201 現時点では理論上 細胞に寿命はありません 00:11:14.843 --> 00:11:18.261 ほんの少しでもエネルギー勾配があれば 00:11:18.261 --> 00:11:20.469 理論上1つの細胞は 00:11:20.469 --> 00:11:23.245 10万年以上 生きることができます 00:11:23.245 --> 00:11:26.239 何年もかけて 壊れた部品を 交換していけばよいのですから 00:11:26.239 --> 00:11:30.301 そういう生き方をする微生物に 培養皿で繁殖しろと望むのは 00:11:30.511 --> 00:11:35.590 忙しい太陽のリズムにあわせて 生きろということです 00:11:35.590 --> 00:11:38.655 もっと他にしたいことが あるかもしれないのに 00:11:38.655 --> 00:11:39.545 (笑) 00:11:39.545 --> 00:11:43.608 もしそのライフサイクルを 解明できたらと想像してみてください 00:11:43.930 --> 00:11:47.345 もしその過程に 生物医学や産業的に応用できる 00:11:47.345 --> 00:11:51.798 きわめて持続性のある化合物が含まれていたら 00:11:52.069 --> 00:11:55.361 もしそのきわめて遅い成長のメカニズムを 00:11:55.361 --> 00:11:57.382 解明できたら 00:11:57.781 --> 00:12:01.699 それを がん細胞の増殖を遅らせるのに 使えるかもしれません 00:12:02.044 --> 00:12:03.270 わかりませんけどね 00:12:03.270 --> 00:12:06.192 正直 すべて憶測ですが 00:12:06.287 --> 00:12:08.728 ひとつ確実なのは 00:12:08.728 --> 00:12:10.875 世界中の海底の下には 00:12:10.875 --> 00:12:13.739 100の10億倍の10億倍の10億倍個もの 00:12:13.739 --> 00:12:17.409 微生物の細胞が生息しているということです 00:12:17.409 --> 00:12:19.116 その総量を重さで測れば 00:12:19.116 --> 00:12:21.978 地球上の人類の重さの200倍になります 00:12:22.162 --> 00:12:25.680 そしてこれらの微生物が扱う 時間とエネルギーは 00:12:25.680 --> 00:12:28.164 根本的に 私たちとは違うのです 00:12:28.325 --> 00:12:30.381 微生物にとっての1日は 00:12:30.381 --> 00:12:33.075 私たちにとっての1000年かもしれません 00:12:33.202 --> 00:12:35.312 太陽は関係ありません 00:12:35.312 --> 00:12:37.147 成長を急ぐこともありません 00:12:37.167 --> 00:12:40.222 私の培養皿なんて 気にもしてないでしょう 00:12:40.222 --> 00:12:41.140 (笑) 00:12:41.140 --> 00:12:45.484 でも 研究の手法を創造的に探し続けることで 00:12:45.484 --> 00:12:48.422 いつか生命の謎を 00:12:48.482 --> 00:12:49.822 すべての生命の謎を 00:12:49.822 --> 00:12:52.084 解明できるかもしれません 00:12:52.084 --> 00:12:54.249 ありがとうございました 00:12:54.249 --> 00:12:55.105 (拍手)