1 00:00:06,687 --> 00:00:11,758 古都京都にて 敬虔な神道学者は 質素な生活を送っていましたが 2 00:00:11,758 --> 00:00:15,717 祈りの最中 街の喧騒に しばしば気をとられていました 3 00:00:15,717 --> 00:00:19,197 彼は隣人たちに 自分の魂を 穢(けが)されていると感じ 4 00:00:19,197 --> 00:00:23,057 自らの身を清めるため 祓(はらえ)を行うことにしました 5 00:00:23,057 --> 00:00:27,447 身と心を清める儀式のことです 6 00:00:27,447 --> 00:00:31,937 彼は崇敬される日枝神社に 参詣することにしました 7 00:00:31,937 --> 00:00:35,436 その旅は 丸一日かかる きつい登りが続きました 8 00:00:35,436 --> 00:00:39,056 しかし 彼は旅によってもたらされる 孤独に喜びを感じ 9 00:00:39,056 --> 00:00:43,369 帰宅時に感じた心の平安は 深遠なものでした 10 00:00:43,369 --> 00:00:48,065 その学者は できるだけ長く この明晰さを保つため 11 00:00:48,065 --> 00:00:53,052 この参詣を あと99回 行うことを誓いました 12 00:00:53,052 --> 00:00:58,512 道を独りで歩み 心の安定を追求しながら雑念を振り払い 13 00:00:58,512 --> 00:01:01,162 決して迷うことは ありませんでした 14 00:01:01,162 --> 00:01:05,772 その男は自分の誓いを守り 参詣が数日どころか数週間に及んでも 15 00:01:05,772 --> 00:01:09,272 激しい雨の中や 灼熱の太陽のもとを歩きました 16 00:01:09,272 --> 00:01:13,904 時が経つにつれ 彼が一意専心する中で 現世とともに存在する― 17 00:01:13,904 --> 00:01:17,104 目に見えない神の世界を 感じるようになりました 18 00:01:17,104 --> 00:01:21,458 彼は神の気配を感じるようになりました 足元の岩々や 19 00:01:21,458 --> 00:01:26,517 彼を冷やす風や野原で草を食む動物たち すべてに精気が宿りました 20 00:01:26,517 --> 00:01:30,657 それでも彼は神とも人とも 誰とも話しませんでした 21 00:01:30,657 --> 00:01:35,077 彼は道を踏み外して 穢れてしまった者たちとは 22 00:01:35,077 --> 00:01:37,877 関わるまいと決意していました 23 00:01:37,877 --> 00:01:42,435 穢れゆえに忌み嫌われるのは 病人や死者だけでなく 24 00:01:42,435 --> 00:01:47,205 土地を汚した者や 凶悪犯罪を犯した者も同様でした 25 00:01:47,205 --> 00:01:51,028 精神を清めんとする この学者に 降りかかる あらゆる脅威の中で 26 00:01:51,028 --> 00:01:54,408 穢れは圧倒的でした 27 00:01:54,408 --> 00:01:57,598 80回目のお参りをした後 28 00:01:57,598 --> 00:02:00,418 彼は再び家路につきました 29 00:02:00,418 --> 00:02:06,228 しかし暗くなるにつれ 彼は夜風の中に嗚咽を聞きました 30 00:02:06,228 --> 00:02:09,916 学者は うめき声を無視し 突き進もうとしましたが 31 00:02:09,916 --> 00:02:13,676 その絶望的な叫び声に 圧倒されてしまいました 32 00:02:13,676 --> 00:02:19,215 顔をしかめながら 彼は道を外れ 声が聞こえる方をたどることにしました 33 00:02:19,215 --> 00:02:24,885 彼がやがて窮屈な小屋に着くと 外には女がくずおれていました 34 00:02:24,885 --> 00:02:29,315 憐れみを抱いた学者は その女性に 彼女の悲しみを教えてくれと懇願しました 35 00:02:29,315 --> 00:02:32,535 彼女は母親が亡くなったばかり にもかかわらず 36 00:02:32,535 --> 00:02:35,685 埋葬の手伝いをしてくれる人が いないと言いました 37 00:02:35,685 --> 00:02:38,995 そう聞いて 彼の心は沈みました 38 00:02:38,995 --> 00:02:41,745 遺体に触れれば 彼の魂が穢れてしまい 39 00:02:41,745 --> 00:02:46,411 生命力は奪われ 神に見捨てられてしまうでしょう 40 00:02:46,411 --> 00:02:50,885 しかし 彼女の嘆きに耳を傾けるうちに 女性への同情心があふれてきました 41 00:02:50,885 --> 00:02:58,097 そして 母親が霊界へ無事に行けるよう 彼らは老婆を埋葬しました 42 00:02:58,975 --> 00:03:04,077 埋葬は終えたものの 死の禁忌が学者に重くのしかかりました 43 00:03:04,077 --> 00:03:06,237 彼の最も重要なルールを無視し 44 00:03:06,237 --> 00:03:11,364 神聖な旅路を堕落させてしまうなんて なんと愚かなことをしたのでしょう 45 00:03:11,364 --> 00:03:13,724 一晩苦しんだ後 46 00:03:13,724 --> 00:03:18,644 彼は身を清めるために 神社に戻ることを決意しました 47 00:03:18,644 --> 00:03:23,279 驚いたことに いつもは静かな社が 人でいっぱいになっていました 48 00:03:23,279 --> 00:03:28,712 神と直に言葉を交わす祈祷師の周りに 人が集まっていたのです 49 00:03:28,712 --> 00:03:35,127 男は身を隠し 穢れた魂を 誰にも悟られぬよう近寄りませんでした 50 00:03:35,127 --> 00:03:39,675 しかし 祈祷師は別の方法で見透して 彼に群衆の前に出るよう言いました 51 00:03:39,675 --> 00:03:44,145 見捨てられる覚悟で 学者は聖なる女性に近づきました 52 00:03:44,145 --> 00:03:47,105 しかし 祈祷師はただ微笑みました 53 00:03:47,105 --> 00:03:49,971 彼女は彼の不純な手を取り 54 00:03:49,971 --> 00:03:53,641 彼にしか聞こえない 祝福の言葉をささやき 55 00:03:53,641 --> 00:03:55,981 彼の優しさに感謝しました 56 00:03:55,981 --> 00:04:00,895 その瞬間 学者は 大いなる神聖な真義を見いだしました 57 00:04:00,895 --> 00:04:06,966 汚染と堕落は 全く別物だということです 58 00:04:06,966 --> 00:04:11,019 洞察に満たされた学者は 再び自らの旅路に身を投じました 59 00:04:11,019 --> 00:04:14,349 しかし 今回は出会った人たちを 助けるために足を止めました 60 00:04:14,349 --> 00:04:18,229 彼は行く先々で霊界の美しさが 見えるようになっていきました 61 00:04:18,229 --> 00:04:21,369 以前は敬遠していた街でもです 62 00:04:21,369 --> 00:04:23,927 他の人たちは 彼が穢れの危険を 冒していると警告しましたが 63 00:04:23,927 --> 00:04:26,747 病人や恵まれない人たちと 自由に接する理由を 64 00:04:26,747 --> 00:04:28,787 彼は決して語りませんでした 65 00:04:28,787 --> 00:04:33,064 人々が祓を真に理解するには 66 00:04:33,064 --> 00:04:35,749 自ら旅をするしかないと 彼は知っていたのでした