WEBVTT

00:00:00.733 --> 00:00:06.665
ちょうど ここから1.6キロ程離れた
エディンバラのオールドタウンに

00:00:06.689 --> 00:00:08.647
「パンミュアハウス」があります

00:00:09.775 --> 00:00:11.270
パンミュアハウスには

00:00:11.294 --> 00:00:17.281
世界的に有名な
スコットランド人経済学者

00:00:17.340 --> 00:00:18.929
アダム・スミスが住んでいました

00:00:19.761 --> 00:00:25.169
『国富論』は彼の重要な著書であり

00:00:25.193 --> 00:00:29.016
多くの事を扱っていますが
そのなかでスミスはこう論じました

00:00:29.040 --> 00:00:32.017
国家の富を図る指標は

00:00:32.041 --> 00:00:36.459
金銀などの蓄えだけではない

00:00:36.483 --> 00:00:42.236
国家の生産と交易の総計が指標となる

00:00:42.260 --> 00:00:48.529
これは今ではGDP（国内総生産）として
知られる概念を

00:00:48.553 --> 00:00:52.363
最も早期に述べた一例でしょう

NOTE Paragraph

00:00:53.176 --> 00:00:56.278
それから時は流れ

00:00:56.302 --> 00:01:01.715
その生産額と交易の指標
つまりGDPは

00:01:01.739 --> 00:01:04.680
これまでになく重要さを増して行き―

00:01:04.704 --> 00:01:05.985
ついには―

00:01:06.009 --> 00:01:09.946
アダム・スミスは
意図していなかったと思いますが

00:01:09.970 --> 00:01:15.165
往々にしてこれが
国家の総合的な成功を測る

00:01:15.189 --> 00:01:17.644
最も重要な指標だと
考えられるまでになりました

00:01:18.242 --> 00:01:23.686
今日 私が主張したいのは 
いま それが変わるべき時だということです

NOTE Paragraph

00:01:24.853 --> 00:01:29.830
国家として繁栄の尺度を何にするかは
重要な選択です

00:01:29.854 --> 00:01:34.345
実に重要なことです
なぜならそれは 政治の焦点を動かし

00:01:34.369 --> 00:01:38.371
公共活動の原動力となるからです

00:01:38.395 --> 00:01:40.473
しかしその文脈を背景にすると

00:01:40.497 --> 00:01:47.013
国家繁栄の尺度としてのGDPの限界は

00:01:47.037 --> 00:01:50.276
明らか過ぎると考えます

00:01:50.300 --> 00:01:55.487
GDPは労働による総生産を測りますが

00:01:55.511 --> 00:01:58.937
それぞれの労働の性質については
何ら言及していません

00:01:58.961 --> 00:02:03.393
一体その労働は価値あるものなのか
やり甲斐のあるものなのか

00:02:03.417 --> 00:02:09.956
例えばGDPは 違法薬物の消費についての
数値は含みますが

00:02:09.980 --> 00:02:12.592
無償の介護についての数値は
含みません

00:02:13.708 --> 00:02:18.398
GDPは経済を活性化する
短期的な経済活動に価値を認めます

00:02:18.422 --> 00:02:25.067
たとえそれが長期的には
私たちの惑星の持続維持性に

00:02:25.091 --> 00:02:29.852
計り知れない損失を与えるとしてもです

NOTE Paragraph

00:02:30.533 --> 00:02:34.225
過去十年間を振り返ると

00:02:34.249 --> 00:02:37.657
政治的 経済的激動が続き

00:02:37.681 --> 00:02:40.684
人々の格差は拡大しました

00:02:40.708 --> 00:02:46.060
この先には
危機的な気候変動や

00:02:46.084 --> 00:02:48.350
自動化の拡大

00:02:48.374 --> 00:02:51.663
人口高齢化という課題があります

00:02:51.687 --> 00:02:57.149
そして 国家として 
そして社会としての繁栄を

00:02:57.363 --> 00:03:03.346
広い定義で捉えるべきという主張が

00:03:03.370 --> 00:03:06.682
ますます説得力を持っていると
考えています

NOTE Paragraph

00:03:07.253 --> 00:03:10.079
そのために 2018年 スコットランドは

00:03:10.103 --> 00:03:14.984
率先して呼びかけを行い
新たなネットワークである

00:03:15.008 --> 00:03:20.912
「ウェルビーイング経済府」と
呼ばれるグループを設立しました

00:03:20.936 --> 00:03:26.620
創設に参加したのは
スコットランド、アイスランド

00:03:26.644 --> 00:03:29.063
そしてニュージーランドでした


00:03:29.133 --> 00:03:33.415
この３か国が SIN（＝罪）と呼ばれる
理由はお判りでしょうが

00:03:33.439 --> 00:03:37.407
もちろん私たちの目的は公益なのに

00:03:38.445 --> 00:03:41.773
このグループの目的は

00:03:41.797 --> 00:03:44.496
GDPという狭い指標への執着に
異議を呈することです

00:03:44.520 --> 00:03:48.250
経済成長はもちろん必要です

00:03:48.274 --> 00:03:50.171
重要ですとも

00:03:50.195 --> 00:03:53.916
でもそれ以外にも
重要なことがあるということなのです

00:03:53.940 --> 00:04:00.199
GDPの成長は いかなるコストを払っても
目指す目標としてはふさわしくありません

00:04:00.903 --> 00:04:03.633
このグループでは こう主張します

00:04:03.657 --> 00:04:08.308
経済政策の目標 目的は

00:04:08.332 --> 00:04:11.441
全体でのウェルビーイング（幸福度）で
あるべきである

00:04:11.465 --> 00:04:15.353
それは国民の幸せや健康であり

00:04:15.377 --> 00:04:18.743
国民の富だけを指しません

NOTE Paragraph

00:04:18.767 --> 00:04:22.350
この考え方の政策への影響については
後ほど述べて行きますが

00:04:22.374 --> 00:04:25.295
特に私たちが生きる現在の社会では

00:04:25.319 --> 00:04:27.501
これはより深く響きます

00:04:27.525 --> 00:04:30.065
ウェルビーイングに重きを置くとき

00:04:30.089 --> 00:04:32.924
深い洞察や根本的な問いを刺激する

00:04:32.948 --> 00:04:36.909
対話が私たちの間に生まれます

00:04:36.933 --> 00:04:40.197
私たちの生活に本当に重要なのは何だろう？

00:04:40.935 --> 00:04:45.317
私たちは自分のコミュニティで
どんな価値を大切にするだろう？

00:04:45.341 --> 00:04:49.086
私たちが本当に願っているのは

00:04:49.110 --> 00:04:51.496
どんな国やどんな社会だろう？

00:04:51.885 --> 00:04:55.195
このような疑問の答えを探すために

00:04:55.219 --> 00:04:57.285
参加しながら考えるよう
人々に働きかけると

00:04:57.309 --> 00:05:01.202
とても多くの先進国が
世界中で同じように直面している

00:05:01.226 --> 00:05:06.622
政治に対する疎外感や不満について

00:05:06.646 --> 00:05:11.590
きっと改善策が見つかるはずです

NOTE Paragraph

00:05:12.360 --> 00:05:16.162
政策的には
2007年にスコットランドで

00:05:16.186 --> 00:05:20.063
「国家業績評価フレームワーク」と呼ぶ


00:05:20.087 --> 00:05:23.945
自己評価のための様々な指標を
発表したのが旅の出発点でした

00:05:23.969 --> 00:05:28.278
それらは収入格差や

00:05:28.302 --> 00:05:30.144
子供の幸福度

00:05:30.168 --> 00:05:33.906
緑地や住まいへのアクセスなど
多岐に渡る指標です

00:05:33.930 --> 00:05:37.841
そうしたものはどれも
GDP統計には反映されていませんが

00:05:37.865 --> 00:05:44.063
全てが健全で幸せな社会の基盤です

NOTE Paragraph

00:05:44.087 --> 00:05:49.721
（拍手）

NOTE Paragraph

00:05:49.745 --> 00:05:53.316
そしてこの より広範なアプローチが
私たちの経済戦略の要であり

00:05:53.340 --> 00:05:57.199
そこで私たちは
経済的競争力と同等の重きを置いて

00:05:57.223 --> 00:06:00.471
不平等の是正にも取り組んでいます

00:06:00.495 --> 00:06:02.385
そして政策目標に掲げた
適正な労働条件

00:06:02.409 --> 00:06:05.234
つまり充実した仕事と
十分な報酬の実現を推進します

00:06:05.258 --> 00:06:09.401
そして「公正な移行コミッション」を
設立したのは

00:06:09.425 --> 00:06:13.403
炭素ゼロ経済実現への
道のりを先導するためです

00:06:13.427 --> 00:06:16.792
過去の経済革新の歴史から学んだように

00:06:16.816 --> 00:06:20.553
注意深くないと
勝ち組より負け組が増えてしまいます

00:06:20.577 --> 00:06:24.545
気候変動や自動化という課題に
直面する私たちは

00:06:24.569 --> 00:06:27.926
二度と同じ間違いを犯してはいけません

NOTE Paragraph

00:06:28.608 --> 00:06:31.689
ここスコットランドで
私たちが行う仕事は重要なものですが

00:06:31.713 --> 00:06:34.931
他国から学ぶべきことは豊富にあります

00:06:34.955 --> 00:06:38.154
先程触れた
ウェルビーイングのネットワークに

00:06:38.178 --> 00:06:40.815
パートナーとして加盟しているのは

00:06:40.839 --> 00:06:42.697
アイスランドとニュージーランドですが

00:06:42.721 --> 00:06:46.904
ちなみに ３つの国全て
リーダーは女性です

00:06:46.928 --> 00:06:50.698
それが重要かどうかの
判断は皆さんにお任せしますが―

NOTE Paragraph

00:06:50.722 --> 00:06:57.722
（拍手）

NOTE Paragraph

00:07:02.001 --> 00:07:03.930
両国とも 目覚ましい活躍をしています

00:07:03.954 --> 00:07:08.781
2019年にニュージーランドは
メンタルヘルスを中核に据えた

00:07:08.805 --> 00:07:11.407
初の「ウェルビーイング予算」を
発表しました

00:07:11.431 --> 00:07:16.684
アイスランドは同一賃金や児童福祉
父親の権利などで牽引しています

00:07:16.708 --> 00:07:20.169
豊かな経済の実現を語るとき

00:07:20.193 --> 00:07:23.018
すぐにはこのような政策に
目が向きませんが

00:07:23.042 --> 00:07:27.620
こうした政策は
健全な経済と幸せな社会の

00:07:27.644 --> 00:07:29.676
基礎となるものです

NOTE Paragraph

00:07:30.176 --> 00:07:35.113
話をアダム・スミスの
『国富論』から始めましたが

00:07:35.137 --> 00:07:40.332
アダム・スミスがその前に書いた
『道徳感情論』も

00:07:40.356 --> 00:07:42.910
同じく重要だと私は考えています

00:07:42.934 --> 00:07:47.418
あらゆる政府の価値は

00:07:47.487 --> 00:07:49.345
国民の幸福の実現度によって

00:07:49.369 --> 00:07:52.098
測るべきだと彼は述べています

00:07:52.830 --> 00:07:56.497
これはウェルビーイングを推進する

00:07:56.521 --> 00:08:02.379
あらゆる国家集団にとって
良き基本的原則だと思います

00:08:02.403 --> 00:08:04.991
誰にも全ての答えはありません

00:08:05.015 --> 00:08:08.692
アダム・スミスの生まれた
スコットランドも同じです

00:08:08.716 --> 00:08:13.448
しかし ますます分断と不平等

00:08:13.472 --> 00:08:16.036
そして無関心と疎外感が増す
こんにち私たちの住む世界で

00:08:16.060 --> 00:08:20.004
これらの問いを考え 答えを探し出し

00:08:20.004 --> 00:08:23.711
単に経済的な繁栄だけでなく

00:08:23.711 --> 00:08:27.792
ウェルビーイングをビジョンの
中心に据えた社会を推進することが

00:08:27.792 --> 00:08:31.663
以前にも増して重要です

NOTE Paragraph

00:08:32.347 --> 00:08:37.864
（拍手）

NOTE Paragraph

00:08:37.888 --> 00:08:43.333
皆さんは いま 
この美しい陽の注ぐ首都にいますが―

NOTE Paragraph

00:08:43.357 --> 00:08:45.103
（笑）

NOTE Paragraph

00:08:45.127 --> 00:08:50.453
この首都を擁する国は かつて 
世界を啓蒙主義で牽引し

00:08:50.477 --> 00:08:53.509
産業化時代へと導きました

00:08:53.533 --> 00:08:56.358
そして今では低炭素の時代へと

00:08:56.382 --> 00:08:58.636
世界を率いて行こうとしています

00:08:58.660 --> 00:09:04.070
私の願い そして決心は
スコットランドが これに加えて

00:09:04.094 --> 00:09:09.091
世界の国々や政府の優先事項を
変えていくことを支援し

00:09:09.115 --> 00:09:13.600
ウェルビーイングがあらゆる活動の
中心に据えられるように働きかけることです

00:09:13.624 --> 00:09:17.506
それが 今の世代に果たすべき責任だと
考えます

00:09:17.530 --> 00:09:21.340
それが 次世代と
それ以降の世代に対して

00:09:21.364 --> 00:09:23.578
果たすべき責任だと信じています

00:09:23.602 --> 00:09:27.467
もしそれが
この啓蒙主義発祥の国から始まれば

00:09:27.491 --> 00:09:31.785
より良く 健全で 公正で

00:09:31.809 --> 00:09:34.240
幸せな社会を ここわが祖国に
築けるでしょう

00:09:34.264 --> 00:09:36.294
そうすれば私たちスコットランドも

00:09:36.318 --> 00:09:40.532
より平等で幸福な世界を作るための
役割を果たして行くことができます

NOTE Paragraph

00:09:40.556 --> 00:09:41.945
どうもありがとうございました

NOTE Paragraph

00:09:41.969 --> 00:09:45.731
（拍手）