1 00:00:01,080 --> 00:00:03,840 「宇宙 それは究極のフロンティア」 2 00:00:05,880 --> 00:00:09,336 この言葉を初めて耳にしたのは まだ6歳の時のことです 3 00:00:09,360 --> 00:00:11,616 その言葉に心を躍らせて 4 00:00:11,640 --> 00:00:14,016 この不思議な新世界を 探求したいと思いました 5 00:00:14,040 --> 00:00:15,536 新たな生命を探し出し 6 00:00:15,560 --> 00:00:18,760 宇宙から来るものは 全て見たいと思いました 7 00:00:19,840 --> 00:00:23,560 この夢と言葉に導かれ 発見を目指す道のりを歩み 8 00:00:23,560 --> 00:00:25,016 この夢と言葉に導かれ 発見を目指す道のりを歩み 9 00:00:25,040 --> 00:00:27,216 学校、大学で学び 10 00:00:27,240 --> 00:00:30,680 博士号を取得して ついには 天文学者になりました 11 00:00:31,920 --> 00:00:34,936 さて 私は驚くべきことを 2つ学びました 12 00:00:34,960 --> 00:00:36,496 そのうちの1つは 13 00:00:36,520 --> 00:00:38,576 博士課程の時に学んだ すこし残念なことです 14 00:00:38,600 --> 00:00:41,016 それは近い将来に 15 00:00:41,040 --> 00:00:44,200 自分が宇宙船を操縦するなどということは 実現しないということです 16 00:00:45,440 --> 00:00:50,056 しかし同時に 宇宙は奇妙で 素晴らしく しかも 広大であるということも学びました 17 00:00:50,080 --> 00:00:52,880 あまりにも広大なので 宇宙船では探求できないほどです 18 00:00:53,720 --> 00:00:57,080 そこで 望遠鏡を使って天文学を 研究することにしました 19 00:00:57,840 --> 00:01:00,616 ご覧になっているのは 夜空の写真です 20 00:01:00,640 --> 00:01:02,860 世界の至る所で見ることが できるようなものです 21 00:01:03,040 --> 00:01:07,000 ここに映し出されているのは全て 我々が住んでいる銀河系の星です 22 00:01:07,560 --> 00:01:10,256 より暗い部分に目を向けてみると 23 00:01:10,280 --> 00:01:12,816 砂漠といった 真っ暗な場所に行けば 24 00:01:12,840 --> 00:01:15,256 銀河系の中心部を 見ることができるかもしれません 25 00:01:15,280 --> 00:01:18,240 そこには何千億という星が 広がっています 26 00:01:18,840 --> 00:01:20,416 とても美しい画像です 27 00:01:20,440 --> 00:01:21,776 カラフルです 28 00:01:21,800 --> 00:01:25,416 でもやはり ここは宇宙の ほんの片隅に過ぎません 29 00:01:25,440 --> 00:01:28,736 横に広がった不思議な 暗い塵のようなものが見えます 30 00:01:28,760 --> 00:01:30,736 これは局所的に分布する塵で 31 00:01:30,760 --> 00:01:33,416 星が発した光を ぼんやりとさせています 32 00:01:33,440 --> 00:01:35,016 でも我々には 高度な技術があります 33 00:01:35,040 --> 00:01:38,496 裸眼でも この宇宙の片隅を 探索することができますが 34 00:01:38,520 --> 00:01:39,856 もっと良く見ることも可能です 35 00:01:39,880 --> 00:01:43,640 素晴らしい望遠鏡 ハッブル宇宙望遠鏡による観測です 36 00:01:44,000 --> 00:01:46,376 宇宙学者が繋ぎ合わせた画像が これです 37 00:01:46,400 --> 00:01:48,296 「ハッブル・ディープ・フィールド」は 38 00:01:48,320 --> 00:01:52,656 空のほんの僅かな領域を 何百時間もかけて観測したもので 39 00:01:52,680 --> 00:01:55,480 その視野は 腕を伸ばした時の 親指の大きさよりも狭い程度です 40 00:01:55,520 --> 00:01:56,776 この画像には 41 00:01:56,800 --> 00:01:58,456 何千もの銀河が映っていますが 42 00:01:58,480 --> 00:02:01,936 全宇宙には 何千億の銀河があるはずだと 43 00:02:01,960 --> 00:02:03,336 考えられています 44 00:02:03,360 --> 00:02:06,016 中には我が銀河系と似たものも とても異なるものもあります 45 00:02:06,040 --> 00:02:08,696 「良く分かった」とお思いでしょうが 私の探求はまだ続きます 46 00:02:08,720 --> 00:02:11,416 とても高性能な望遠鏡を 使えば簡単にできることで 47 00:02:11,440 --> 00:02:13,240 空を見上げるだけでOKです 48 00:02:13,960 --> 00:02:17,976 でも それだけでは 実は見落として しまうことがあるのです 49 00:02:18,000 --> 00:02:20,736 なぜかというと これまで話してきたことは 50 00:02:20,760 --> 00:02:24,656 人の目で見ることができる 可視光だけを使っており 51 00:02:24,680 --> 00:02:26,096 それはほんの僅かな情報― 52 00:02:26,120 --> 00:02:29,480 宇宙が発している情報の ほんの一断片に過ぎないからです 53 00:02:30,160 --> 00:02:34,896 可視光だけによる観測には 2つの重大な問題があります 54 00:02:34,920 --> 00:02:37,656 異なる種類の光を生じる 55 00:02:37,680 --> 00:02:40,856 別の物理過程を見逃すだけでなく 56 00:02:40,880 --> 00:02:42,296 他にも2つの問題が潜んでいます 57 00:02:42,320 --> 00:02:45,696 1つ目は 先ほど言及した 塵に関するものです 58 00:02:45,720 --> 00:02:48,656 塵は可視光が我々に届くのを 妨げています 59 00:02:48,680 --> 00:02:53,376 ですから遠くの宇宙を探ろうとするほど 届く光は弱くなります 60 00:02:53,400 --> 00:02:54,960 塵が我々に光が届くのを妨げています 61 00:02:55,520 --> 00:02:58,936 しかし 可視光で宇宙の探求を行なう時 実はある奇妙な問題が 62 00:02:58,960 --> 00:03:00,920 付きまとっているのです 63 00:03:01,640 --> 00:03:03,896 少しの間 話を宇宙から外します 64 00:03:03,920 --> 00:03:06,600 交通量の多い街角に 立っているとしましょう 65 00:03:07,080 --> 00:03:08,576 車が通り過ぎます 66 00:03:08,600 --> 00:03:10,000 救急車が近づいてくると 67 00:03:10,840 --> 00:03:12,516 音程の上がったサイレンが聞こえます 68 00:03:12,540 --> 00:03:15,976 (通り過ぎるサイレンの音のまね) 69 00:03:16,010 --> 00:03:20,440 救急車が通り過ぎた時に 音の高さが変わったように聞こえます 70 00:03:20,960 --> 00:03:24,840 救急車の運転手が わざわざ サイレンの音を変えたのではありません 71 00:03:26,040 --> 00:03:28,616 これは音を聞く側がそう感じるのです 72 00:03:28,640 --> 00:03:31,376 救急車が近づくとき 73 00:03:31,400 --> 00:03:32,616 音の波は圧縮され 74 00:03:32,640 --> 00:03:34,576 音程が高くなります 75 00:03:34,600 --> 00:03:37,376 逆に救急車が遠ざかるとき 音の波は伸ばされて 76 00:03:37,400 --> 00:03:39,456 音程は低くなります 77 00:03:39,480 --> 00:03:41,480 同じようなことが 光でも起こります 78 00:03:42,040 --> 00:03:44,416 我々に近づく天体が発する光の波は 79 00:03:44,440 --> 00:03:47,616 圧縮されて より青い色に見えます 80 00:03:47,640 --> 00:03:49,856 天体が遠ざかるときには 81 00:03:49,880 --> 00:03:52,536 光の波の間隔が広がり より赤い色に見えます 82 00:03:52,560 --> 00:03:55,440 これらの効果を 青方偏移、赤方偏移と言います 83 00:03:56,440 --> 00:03:59,376 さて 宇宙は膨張しているので 84 00:03:59,400 --> 00:04:03,576 全ての天体は どの天体からみても遠ざかっており 85 00:04:03,600 --> 00:04:06,280 全てが赤方偏移を受けて見えます 86 00:04:07,040 --> 00:04:10,776 さらにとても不思議なことに 遠くの宇宙を深部を見るほど 87 00:04:10,800 --> 00:04:15,096 つまり遠くの天体を見るほど 天体はより速い速度で遠ざかっており 88 00:04:15,120 --> 00:04:16,839 より赤く見えます 89 00:04:17,560 --> 00:04:20,495 さてハッブル・ディープ・フィールドに 話を戻しますが 90 00:04:20,519 --> 00:04:23,216 ハッブル天体望遠鏡だけを使って 遠い宇宙の観測を 91 00:04:23,240 --> 00:04:24,776 続けていこうとするならば 92 00:04:24,800 --> 00:04:27,496 ある距離に達したところで 93 00:04:27,520 --> 00:04:29,120 全てが赤く見えてしまい 94 00:04:29,920 --> 00:04:31,896 ある問題に直面することになります 95 00:04:31,920 --> 00:04:33,976 とても遠方に達すると ついには 96 00:04:34,000 --> 00:04:36,976 全てが赤外域へと移行し 97 00:04:37,000 --> 00:04:39,000 何も見ることができなくなります 98 00:04:39,680 --> 00:04:41,376 何か手段を講じなければなりません 99 00:04:41,400 --> 00:04:43,216 手段がなければ 私の旅はそこまでです 100 00:04:43,240 --> 00:04:46,136 赤方偏移に邪魔される前に見えている 天体だけではなく 101 00:04:46,160 --> 00:04:49,080 全宇宙を探索したいと私は思いました 102 00:04:50,160 --> 00:04:51,416 そのための技術があります 103 00:04:51,440 --> 00:04:52,816 電波天文学というものです 104 00:04:52,840 --> 00:04:55,176 天文学者はこの技術を 何十年もの間使ってきました 105 00:04:55,200 --> 00:04:56,496 素晴らしい技術です 106 00:04:56,520 --> 00:05:00,006 「The Dish」の愛称で親しまれている パークス電波望遠鏡を紹介します 107 00:05:00,040 --> 00:05:01,916 映画でご覧になった方も いるかもしれません 108 00:05:01,940 --> 00:05:03,416 電波は偉大です 109 00:05:03,440 --> 00:05:05,976 より遠い宇宙を見ることができますし 110 00:05:06,000 --> 00:05:08,696 塵に遮られることもないので 111 00:05:08,720 --> 00:05:10,976 宇宙にあるものを全て見ることができ 112 00:05:11,000 --> 00:05:12,856 しかも 赤方偏移は それほど問題になりません 113 00:05:12,880 --> 00:05:16,080 広い帯域の信号を受信する受信機を 作ることができるからです 114 00:05:16,600 --> 00:05:20,536 ではパークス望遠鏡を銀河系の中心に 向けたら何が見えるのでしょうか? 115 00:05:20,560 --> 00:05:22,520 素晴らしいものが見えるはずですよね? 116 00:05:23,160 --> 00:05:26,056 実際 とても興味深いものが見えます 117 00:05:26,080 --> 00:05:27,736 塵は消え去ります 118 00:05:27,760 --> 00:05:31,200 先ほど言ったように 電波は 塵を通り抜けるので 問題とはなりません 119 00:05:31,840 --> 00:05:33,736 しかし 見え方はとても異なっています 120 00:05:33,760 --> 00:05:37,576 天の川の中心が 燦々と輝いているのが見えます 121 00:05:37,600 --> 00:05:39,280 でも これは星の光ではありません 122 00:05:39,960 --> 00:05:43,096 シンクロトン放射光と 呼ばれるもので 123 00:05:43,120 --> 00:05:47,720 宇宙の磁場に置かれた電子が らせん状に運動することによって発生します 124 00:05:48,280 --> 00:05:51,376 そのため 銀河面は シンクロトン放射光で輝きます 125 00:05:51,400 --> 00:05:54,696 また そこから発する 奇妙な房のようなものや 126 00:05:54,720 --> 00:05:57,216 可視光では目にすることのない 127 00:05:57,240 --> 00:05:59,560 天体も見ることもできます 128 00:06:00,320 --> 00:06:02,656 しかし この画像の解析は とても困難です 129 00:06:02,680 --> 00:06:05,456 なぜなら ご覧のとおり 解像度が非常に低いからです 130 00:06:05,480 --> 00:06:07,656 電波の波長は長いので 131 00:06:07,680 --> 00:06:09,976 分解能が低くなるのです 132 00:06:10,000 --> 00:06:12,056 またこの画像は白黒なので 133 00:06:12,080 --> 00:06:15,840 その色合いは分りません 134 00:06:16,440 --> 00:06:18,016 では 最新情報をお伝えしましょう 135 00:06:18,040 --> 00:06:19,496 我々は このような問題を 136 00:06:19,520 --> 00:06:22,136 乗り越えられる 望遠鏡を建造することができます 137 00:06:22,160 --> 00:06:25,496 お見せしているのは マーチソン電波天文台の写真です 138 00:06:25,520 --> 00:06:28,296 ここは電波望遠鏡を設置するのに 最適の場所です 139 00:06:28,320 --> 00:06:30,616 平坦で乾燥しており 140 00:06:30,640 --> 00:06:33,616 そして 最も大切なことですが 電波が飛び交っていないことです 141 00:06:33,640 --> 00:06:36,736 携帯電話も Wi-Fiも 何もありません 142 00:06:36,760 --> 00:06:39,256 電波という意味で とても静かな場所であり 143 00:06:39,280 --> 00:06:42,000 電波望遠鏡を設置するには 完ぺきな場所です 144 00:06:42,880 --> 00:06:44,836 私がこの数年間 研究で用いてきた望遠鏡は 145 00:06:44,860 --> 00:06:47,696 マーチソン・ワイドフィールド・アレイ (MWA)と言います 146 00:06:47,720 --> 00:06:50,736 その建造の過程を 少しお見せしましょう 147 00:06:50,760 --> 00:06:55,296 これは パース在住の 学部生と修士課程の学生によるチームで 148 00:06:55,320 --> 00:06:57,056 我々は「学生部隊」と呼んでいます 149 00:06:57,080 --> 00:06:59,896 電波望遠鏡を作るために ボランティアで作業しています 150 00:06:59,920 --> 00:07:01,560 履修単位はありません 151 00:07:02,320 --> 00:07:05,216 彼らはダイポールアンテナを 組み立てています 152 00:07:05,240 --> 00:07:10,200 これはFMラジオやテレビのように 低周波の電波だけを受信します 153 00:07:11,000 --> 00:07:14,096 これを砂漠に展開しています 154 00:07:14,120 --> 00:07:16,536 最終的には 西豪州にある砂漠の 155 00:07:16,560 --> 00:07:18,696 10平方キロを覆っています 156 00:07:18,720 --> 00:07:21,696 興味深いことに 動く部品はありません 157 00:07:21,720 --> 00:07:24,376 これらの小さなアンテナを 鳥かごのネットのように 158 00:07:24,400 --> 00:07:25,856 メッシュ状に展開しているだけです 159 00:07:25,880 --> 00:07:27,296 かなり安価に作れます 160 00:07:27,320 --> 00:07:29,296 ケーブルは 161 00:07:29,320 --> 00:07:31,376 アンテナから信号を受け取り 162 00:07:31,400 --> 00:07:33,936 中央処理装置へと送ります 163 00:07:33,960 --> 00:07:35,736 望遠鏡の大きさと言えば 164 00:07:35,760 --> 00:07:38,416 展開している砂漠全体の 大きさに相当し 165 00:07:38,440 --> 00:07:41,240 パークス電波望遠鏡よりも 高い分解能があります 166 00:07:41,880 --> 00:07:45,416 全てのケーブルは 1つの装置に接続され 167 00:07:45,440 --> 00:07:48,976 そこから ここパースにある スーパーコンピュータに信号が送られます 168 00:07:49,000 --> 00:07:50,286 ここで私の出番です 169 00:07:51,320 --> 00:07:52,536 (ため息) 170 00:07:52,560 --> 00:07:53,776 電波のデータです 171 00:07:53,800 --> 00:07:55,616 私は過去5年間 172 00:07:55,640 --> 00:07:58,496 非常に厄介ながらも とても興味深いデータと格闘していました 173 00:07:58,520 --> 00:08:00,496 かつて誰も扱ったことがない類の データでした 174 00:08:00,520 --> 00:08:02,656 データの較正に 長い時間を費やしました 175 00:08:02,680 --> 00:08:06,576 何百万時間という スーパーコンピュータのCPUタイムを消費し 176 00:08:06,600 --> 00:08:08,800 データに含まれる情報を 理解しようとしました 177 00:08:09,360 --> 00:08:11,296 この望遠鏡と 178 00:08:11,320 --> 00:08:12,576 データを用い 179 00:08:12,600 --> 00:08:16,536 南半球の天体全体の観測を 完成させました 180 00:08:16,560 --> 00:08:21,656 「銀河系・系外・全天MWA観測」 181 00:08:21,680 --> 00:08:23,560 私がGLEAMと名付けたものです 182 00:08:24,440 --> 00:08:25,896 私はとても興奮しています 183 00:08:25,920 --> 00:08:29,301 この観測結果はまだ未公開ですが 間もなく公開されます 184 00:08:29,325 --> 00:08:31,256 皆さんは 文字通り― 185 00:08:31,280 --> 00:08:34,080 この南半球の夜空全体を見る 初めての人々になるのです 186 00:08:34,799 --> 00:08:38,120 この観測で得られた画像を ご覧いただくのは喜ばしいことです 187 00:08:38,880 --> 00:08:40,775 マーチソンに行ったと 想像してください 188 00:08:40,799 --> 00:08:42,895 星の下で野宿し 189 00:08:42,919 --> 00:08:44,536 南の方の空を眺めます 190 00:08:44,560 --> 00:08:46,227 天の南極を見ると 191 00:08:46,251 --> 00:08:47,456 銀河が上っていきます 192 00:08:47,480 --> 00:08:50,096 ラジオや光を消していけば 193 00:08:50,120 --> 00:08:52,776 この様な観測ができるのです 194 00:08:52,800 --> 00:08:55,856 銀河面はもはや塵によって 光を失っていません 195 00:08:55,880 --> 00:08:58,296 シンクロトロン放射で輝き 196 00:08:58,320 --> 00:09:00,816 何千という点が夜空に見えます 197 00:09:00,840 --> 00:09:04,136 我が銀河系に最も近い銀河である 大マゼラン雲は 198 00:09:04,160 --> 00:09:07,376 馴染み深い青白い色ではなく オレンジに見えます 199 00:09:07,400 --> 00:09:10,776 他にも多くのものが見えます もっと拡大してみましょう 200 00:09:10,800 --> 00:09:13,216 先にお見せした パークス電波望遠鏡による 201 00:09:13,240 --> 00:09:18,880 低解像度でモノクロの 銀河系中心部分の画像に戻り 202 00:09:18,880 --> 00:09:20,960 徐々にGLEAMの画像へと 移行していきます 203 00:09:22,200 --> 00:09:26,056 その解像度は100倍も向上し 204 00:09:26,080 --> 00:09:28,936 夜空をカラーで見ることができます 205 00:09:28,960 --> 00:09:30,296 自然の色であり 206 00:09:30,320 --> 00:09:33,296 フォルスカラー(合成した色) ではありません 207 00:09:33,320 --> 00:09:35,720 電波の真の色なのです 208 00:09:36,600 --> 00:09:39,416 最も低い周波数を赤で表現し 209 00:09:39,440 --> 00:09:41,056 最も高い周波数を青 210 00:09:41,080 --> 00:09:42,656 中間を緑にしています 211 00:09:42,680 --> 00:09:44,896 これで虹色のように表現できます 212 00:09:44,920 --> 00:09:47,176 単なるフォルスカラーではありません 213 00:09:47,200 --> 00:09:50,136 この画像の色は 宇宙で起きている物理的な過程を 214 00:09:50,160 --> 00:09:51,400 我々に伝えています 215 00:09:51,974 --> 00:09:54,736 例えばこの銀河面に沿って見てみると 216 00:09:54,760 --> 00:09:56,216 シンクロトロン放射で輝いていますが 217 00:09:56,240 --> 00:09:58,616 これは赤っぽいオレンジに見えます 218 00:09:58,640 --> 00:10:01,760 しかし もっと注意深く見ると 小さな青い点が見えます 219 00:10:02,320 --> 00:10:03,896 拡大してみると 220 00:10:03,920 --> 00:10:06,456 この青い点は とても明るい星の周りに輝く 221 00:10:06,480 --> 00:10:08,120 イオン化したプラズマと分かります 222 00:10:08,680 --> 00:10:11,456 ここでは 星が赤い光を遮っているため 223 00:10:11,480 --> 00:10:13,120 青く見えているのです 224 00:10:13,880 --> 00:10:16,816 ここから 我が銀河系における 星が誕生する領域について 225 00:10:16,840 --> 00:10:18,096 知ることができます 226 00:10:18,120 --> 00:10:19,736 こういったものは 直ぐに見つかります 227 00:10:19,760 --> 00:10:22,816 銀河系を観察すれば 色によって そこにあると分かります 228 00:10:22,840 --> 00:10:24,416 小さな石鹸の泡のような 229 00:10:24,440 --> 00:10:27,856 円形の像が 銀河面の周辺に見られます 230 00:10:27,880 --> 00:10:29,880 これは超新星の残骸です 231 00:10:30,600 --> 00:10:32,296 星が爆発を起こすと 232 00:10:32,320 --> 00:10:34,776 その外殻が飛び散り 233 00:10:34,800 --> 00:10:38,096 物質を集めながら 宇宙空間へと広がっていき 234 00:10:38,120 --> 00:10:40,080 小さな殻を形成します 235 00:10:40,800 --> 00:10:44,176 超新星の残骸の行方は 236 00:10:44,200 --> 00:10:46,280 天文学者にとって 長い間 謎となっていました 237 00:10:46,960 --> 00:10:51,296 我々が観測している シンクロトロン放射を生成するには 238 00:10:51,320 --> 00:10:53,976 放出する面に大量の高エネルギー電子が 存在するはずですが 239 00:10:54,000 --> 00:10:56,576 これは超新星の残骸によって 生成されたと考えられます 240 00:10:56,600 --> 00:10:58,376 しかし その量は多くはありません 241 00:10:58,400 --> 00:11:02,296 幸運なことに GLEAMは超新星の残骸を とても精度良く検出できるので 242 00:11:02,320 --> 00:11:04,800 近々 新たな論文が発表できるとの 期待があります 243 00:11:05,800 --> 00:11:07,056 ここまでは結構なことですね 244 00:11:07,080 --> 00:11:09,416 我々は宇宙のほんの一部を 探究したわけですが 245 00:11:09,440 --> 00:11:11,816 私はもっと深い宇宙 遠くまで探求したいと思いました 246 00:11:11,840 --> 00:11:13,920 銀河系の先まで探求したかったのです 247 00:11:14,520 --> 00:11:18,296 運よく 右上にとても興味深い天体が 写っています 248 00:11:18,320 --> 00:11:20,536 これは近くにある電波銀河 249 00:11:20,560 --> 00:11:21,800 ケンタウルス座Aです 250 00:11:22,240 --> 00:11:23,496 拡大してみると 251 00:11:23,520 --> 00:11:26,920 2本の巨大なプリューム(柱状のもの)が 宇宙空間へと突き出ているのが見えます 252 00:11:27,600 --> 00:11:30,496 2つのプリュームの間にある 中心部分に注目すると 253 00:11:30,520 --> 00:11:32,896 私たちの銀河系と似た銀河が見えます 254 00:11:32,920 --> 00:11:35,376 渦巻銀河で 塵吸収帯がある― 255 00:11:35,400 --> 00:11:37,016 普通の銀河です 256 00:11:37,040 --> 00:11:40,656 しかし このジェットは 電波でしか見ることができません 257 00:11:40,680 --> 00:11:43,856 可視光を見ているだけでは 銀河本体の数千倍もの大きさがあるのに 258 00:11:43,880 --> 00:11:46,920 その存在すら知ることがありません 259 00:11:47,480 --> 00:11:50,300 何が起きているのでしょう? ジェットを生成しているものは? 260 00:11:51,160 --> 00:11:54,696 どの銀河にもその中心には 超大質量ブラックホールが 261 00:11:54,720 --> 00:11:56,976 あることが知られています 262 00:11:57,000 --> 00:12:00,416 ブラックホールは見ることができないので そう呼ばれていますが 263 00:12:00,440 --> 00:12:03,456 その周りを飛び交う光が 軌道を変える様子は見ることができます 264 00:12:03,480 --> 00:12:07,776 時に 星やガス雲が その軌道に入り込むと 265 00:12:07,800 --> 00:12:10,536 潮汐力により引き裂かれ 266 00:12:10,560 --> 00:12:13,040 降着円盤というものが形成されます 267 00:12:13,640 --> 00:12:16,856 降着円盤は 強力なX線を発し 268 00:12:16,880 --> 00:12:21,296 強力な磁場が 物質を光速に近い速さで 269 00:12:21,320 --> 00:12:23,040 宇宙空間に解き放ちます 270 00:12:23,520 --> 00:12:26,680 このジェットを 電波では見ることができ 271 00:12:27,240 --> 00:12:29,400 このように 我々の観測にかかります 272 00:12:30,040 --> 00:12:34,056 電波銀河を1つ見ることができました 大変結構なことです 273 00:12:34,080 --> 00:12:36,256 しかし 一番上の部分を見ると 274 00:12:36,280 --> 00:12:38,016 もう1つ電波銀河が見えるでしょう 275 00:12:38,040 --> 00:12:41,280 やや小さめですが 単に遠くにあるためです 276 00:12:41,800 --> 00:12:44,456 電波銀河が2つです 277 00:12:44,480 --> 00:12:46,056 電波銀河が見られるのは 良いことです 278 00:12:46,080 --> 00:12:47,816 では 他の点は何でしょうか? 279 00:12:47,840 --> 00:12:49,400 星でしょうか? 280 00:12:49,880 --> 00:12:51,096 いいえ 違います 281 00:12:51,120 --> 00:12:52,720 どれも 電波銀河なのです 282 00:12:53,320 --> 00:12:56,216 この画像に移っている 全ての点はどれも 283 00:12:56,240 --> 00:12:57,976 数百万光年から数十億光年離れた 284 00:12:58,000 --> 00:13:00,856 遠くにある銀河で 285 00:13:00,880 --> 00:13:03,496 その中心には 超大質量ブラックホールがあり 286 00:13:03,520 --> 00:13:07,096 物質を光速に近い速さで 宇宙空間へと押しやっています 287 00:13:07,120 --> 00:13:08,880 びっくりするようなことです 288 00:13:09,680 --> 00:13:13,416 この観測は 実は今までお見せしたよりも 広い範囲をカバーしています 289 00:13:13,440 --> 00:13:15,976 縮小して 観測範囲全体を見ると 290 00:13:16,000 --> 00:13:20,096 30万もの電波銀河があるのが 分かります 291 00:13:20,120 --> 00:13:23,016 実に雄大な宇宙旅行ですね 292 00:13:23,040 --> 00:13:25,696 最初に発見された 超巨大質量ブラックホールの 293 00:13:25,720 --> 00:13:29,280 背後にあるこれらの銀河全てを 我々が発見したことを 294 00:13:29,960 --> 00:13:32,740 私はとても誇りに思っています この成果は来週 公開されます 295 00:13:33,280 --> 00:13:36,096 でも それだけではありません 296 00:13:36,120 --> 00:13:40,456 私は この観測で 最も遠方にある銀河系を 探索したわけですが 297 00:13:40,480 --> 00:13:43,440 この画像にはさらに別の物も 隠れています 298 00:13:44,320 --> 00:13:47,616 さて 皆さんを宇宙の始まりの時へと いざないましょう 299 00:13:47,640 --> 00:13:51,296 宇宙の誕生であるビッグバンの後 300 00:13:51,320 --> 00:13:55,376 宇宙は水素でいっぱいになりました 301 00:13:55,400 --> 00:13:56,896 中性の水素です 302 00:13:56,920 --> 00:13:59,696 まさに最初の星と銀河が 形成されるようになると 303 00:13:59,720 --> 00:14:01,816 水素はイオン化されました 304 00:14:01,840 --> 00:14:05,280 中性だった宇宙は イオン化されたのです 305 00:14:06,160 --> 00:14:09,336 その名残は我々を取り巻く 電波に残されています 306 00:14:09,360 --> 00:14:11,096 どこにいても 力の作用と同じく 307 00:14:11,120 --> 00:14:12,536 私たちの体を透過していきます 308 00:14:12,560 --> 00:14:16,280 太古の昔の出来事なので 309 00:14:17,000 --> 00:14:18,800 信号は赤方偏移し 310 00:14:19,560 --> 00:14:22,856 今では非常に低い周波数の 信号となっています 311 00:14:22,880 --> 00:14:25,336 我々が観測するのと 同じ周波数領域にありますが 312 00:14:25,360 --> 00:14:26,736 極めて弱い信号です 313 00:14:26,760 --> 00:14:30,640 我々が観測する天体が発する信号の 10億分の1程度です 314 00:14:31,320 --> 00:14:36,216 我々の望遠鏡の感度は この信号を 捉えるのに十分ではないかもしれませんが 315 00:14:36,240 --> 00:14:38,736 新しい電波望遠鏡の登場です 316 00:14:38,760 --> 00:14:40,416 宇宙船には乗れませんが 317 00:14:40,440 --> 00:14:41,696 世界で最大級の電波望遠鏡を 318 00:14:41,720 --> 00:14:44,576 使ってみたいと思います 319 00:14:44,600 --> 00:14:48,216 我々は新しい電波望遠鏡「スクエア・ キロメートル・アレイ」を建造中です 320 00:14:48,240 --> 00:14:50,976 MWAよりも1千倍大型で 321 00:14:51,000 --> 00:14:54,216 感度も1千倍高く 解像度はそれ以上です 322 00:14:54,240 --> 00:14:56,456 何千万もの銀河が見つかるに 違いありません 323 00:14:56,480 --> 00:14:58,816 おそらく その信号の中から 324 00:14:58,840 --> 00:15:03,016 宇宙に初めて誕生した星や銀河を 見ることができるでしょう 325 00:15:03,040 --> 00:15:05,400 宇宙がまさに 時を刻み始めた時のことです 326 00:15:05,920 --> 00:15:07,136 有難うございました 327 00:15:07,160 --> 00:15:09,920 (拍手)