1 00:00:06,742 --> 00:00:12,052 現在 何十万もの人々が 臓器移植を待っています 2 00:00:12,052 --> 00:00:16,399 腎臓や心臓 肝臓など 重要な臓器を移植することで 3 00:00:16,399 --> 00:00:18,449 彼らの命を救える可能性があるのです 4 00:00:18,449 --> 00:00:19,609 しかし残念ながら 5 00:00:19,609 --> 00:00:24,619 移植を望む人々の需要に対し ドナーによる臓器は 全く足りていません 6 00:00:24,619 --> 00:00:26,583 ドナーを待たずとも 7 00:00:26,583 --> 00:00:31,123 カスタマイズした臓器を 新たに作れるとしたらどうでしょうか 8 00:00:31,123 --> 00:00:33,783 この考えを背景に生まれたのが バイオプリンティングです 9 00:00:33,783 --> 00:00:38,063 現在 再生医療の一分野として 開発が進んでいます 10 00:00:38,063 --> 00:00:41,273 複雑な臓器を作れるようになるには まだ時間がかかりますが 11 00:00:41,273 --> 00:00:44,563 栄養素と老廃物の交換を行う 12 00:00:44,563 --> 00:00:47,503 血管や管状器官などの より単純な組織は 13 00:00:47,503 --> 00:00:49,683 既に作ることができます 14 00:00:49,683 --> 00:00:53,743 バイオプリンティングの技術は 3Dプリントの応用で 15 00:00:53,743 --> 00:00:57,479 材料を一層ずつ積層していくことで 16 00:00:57,479 --> 00:01:01,989 3次元の物を作製しています 17 00:01:01,991 --> 00:01:05,191 臓器を作製する 3Dプリンターでは 18 00:01:05,191 --> 00:01:09,751 金属やプラスチック セラミックスではなく 19 00:01:09,751 --> 00:01:13,622 生細胞を含んだ印刷可能な材料である バイオインクを用います 20 00:01:13,622 --> 00:01:18,892 多くのバイオインクは 水を多く含む分子 ハイドロゲルが大部分を占め 21 00:01:18,892 --> 00:01:21,839 数百万の生細胞や 22 00:01:21,839 --> 00:01:26,679 細胞が相互作用し育つのを促進する 様々な化学物質と混ざり合っています 23 00:01:26,679 --> 00:01:29,846 バイオインクには 単細胞を含有しているものや 24 00:01:29,846 --> 00:01:35,366 より複雑な構造を作るため 異なる種類の細胞を含むものがあります 25 00:01:35,366 --> 00:01:37,740 半月板を印刷するとしましょう 26 00:01:37,740 --> 00:01:39,910 半月板は膝の軟骨組織の一部分で 27 00:01:39,910 --> 00:01:44,040 すねの骨と大たい骨が 互いに擦れ合うのを防いでいます 28 00:01:44,040 --> 00:01:46,820 半月板は軟骨細胞と呼ばれる 細胞でできており 29 00:01:46,820 --> 00:01:50,520 バイオインクには 健康な軟骨細胞が必要です 30 00:01:50,520 --> 00:01:55,320 こうした細胞はドナーから提供を受け 研究室で細胞株が複製される場合と 31 00:01:55,320 --> 00:01:58,339 拒絶反応が起きにくい 個別の軟骨組織を作るため 32 00:01:58,339 --> 00:02:03,489 患者自身の組織を採取する場合があります 33 00:02:03,489 --> 00:02:05,416 印刷技術は複数あり 34 00:02:05,416 --> 00:02:09,476 中でも人気が高いのは 材料押出法のバイオプリンティングです 35 00:02:09,476 --> 00:02:13,096 プリンターのチャンバーを バイオインクで満たし 36 00:02:13,096 --> 00:02:17,426 プリントヘッドに取り付けられた 丸型ノズルを通しインクを押し出す方法です 37 00:02:17,426 --> 00:02:23,526 ノズルは たいてい直径400ミクロン以下で 38 00:02:23,526 --> 00:02:26,123 インクは そのノズルを通り 39 00:02:26,123 --> 00:02:29,173 指の爪ほどの厚さで 切れ目のない 糸状のフィラメントとして射出されます 40 00:02:29,173 --> 00:02:33,433 フィラメントを より合わせたストランドは 電子化された画像やデータに基づき 41 00:02:33,433 --> 00:02:36,853 平面上もしくは液体中に積層されていきます 42 00:02:36,853 --> 00:02:40,743 液体は所定の位置で 構造が安定するのを助けます 43 00:02:40,743 --> 00:02:45,133 このようにして薄いストランドが 1度に1枚 印刷され 44 00:02:45,133 --> 00:02:47,843 半月板は 30分ほどで あっという間に作り出されるのです 45 00:02:47,843 --> 00:02:51,533 バイオインクには 印刷後すぐに硬くなるものもありますが 46 00:02:51,533 --> 00:02:53,283 構造を安定させるためにUVライトや 47 00:02:53,283 --> 00:02:57,592 化学的もしくは物理的な 追加工程が必要なものもあります 48 00:02:57,592 --> 00:02:59,972 印刷工程が成功すると 49 00:02:59,972 --> 00:03:01,762 人工組織内の細胞は 50 00:03:01,762 --> 00:03:05,502 本物の組織内の細胞と 同じように働き始めます 51 00:03:05,502 --> 00:03:09,702 お互いに信号を送り 栄養素を交換 増殖するのです 52 00:03:09,702 --> 00:03:13,912 半月板のような比較的簡単な構造体を 印刷する技術は既に完成しています 53 00:03:13,912 --> 00:03:17,561 更にバイオプリンティングで作製した 膀胱(ぼうこう)の移植にも成功 54 00:03:17,561 --> 00:03:23,091 ラットを使った実験では印刷した組織による 顔面神経の再生も促進させました 55 00:03:23,091 --> 00:03:26,942 研究者らはこれまでに肺組織や皮膚 軟骨 56 00:03:26,942 --> 00:03:33,672 機能の一部を担う縮小版の 腎臓や肝臓 心臓を作製しています 57 00:03:33,672 --> 00:03:37,024 しかし主要な臓器の 複雑な生化学的環境を再現するには 58 00:03:37,024 --> 00:03:39,954 高い壁が立ちはだかっています 59 00:03:39,954 --> 00:03:42,984 材料押出法のバイオプリンティングでは 60 00:03:42,984 --> 00:03:47,754 ノズルが小さすぎる あるいは印刷の圧力が高すぎると 61 00:03:47,754 --> 00:03:50,893 インク内の細胞を かなりの割合で 破壊してしまう可能性があるのです 62 00:03:50,893 --> 00:03:52,863 最も難しい挑戦の1つは 63 00:03:52,863 --> 00:03:58,703 どのようにして実物大の臓器で 全ての細胞に酸素と栄養素を供給するかです 64 00:03:58,703 --> 00:04:01,390 そのため現在 再現に成功している構造体は 65 00:04:01,390 --> 00:04:04,420 平ら もしくは内部が 空洞状のものに とどまっており 66 00:04:04,420 --> 00:04:06,920 現在 研究者らは 印刷して作製した組織に 67 00:04:06,920 --> 00:04:11,320 血管を組み込む方法を開発しようと 奮闘しているのです 68 00:04:11,320 --> 00:04:13,778 バイオプリンティングは 非常に多くの可能性を秘めています 69 00:04:13,778 --> 00:04:16,178 命を救うことはもちろん 70 00:04:16,178 --> 00:04:19,208 そもそも臓器がどう機能しているか 理解を深める機会にもなるでしょう 71 00:04:19,208 --> 00:04:23,358 バイオプリンティング技術により 可能になることは計り知れず 72 00:04:23,358 --> 00:04:27,258 電子部品を埋め込んだ組織の印刷も できるかもしれません 73 00:04:27,258 --> 00:04:31,558 いつか 現在の人間の能力を超える臓器や 74 00:04:31,558 --> 00:04:35,925 燃えない皮膚などを 享受する日が来るのでしょうか 75 00:04:35,925 --> 00:04:42,242 臓器を印刷し移植することで 人間の寿命はどのくらい延びるでしょうか 76 00:04:42,242 --> 00:04:44,754 そして 一体誰が そして何が 77 00:04:44,754 --> 00:04:49,054 このような技術をもたらし 素晴らしい成果が得られるのでしょうか