WEBVTT 00:00:09.800 --> 00:00:11.419 おはようございます 00:00:11.440 --> 00:00:15.450 この場に戻って来られたのを 大変喜んでおります 00:00:15.450 --> 00:00:18.990 以前この場に立ったのは 20年くらい前になりますが 00:00:18.990 --> 00:00:19.910 TED 4 KOBEでした 00:00:19.920 --> 00:00:21.970 神戸にいたという方 いらっしゃいますか? 00:00:21.970 --> 00:00:23.900 沢山いますね 素晴らしい 00:00:24.010 --> 00:00:26.940 ここは アイデアを分かち合って いろいろ学ぶだけでなく 00:00:26.940 --> 00:00:29.330 人と人を結び合わせる 素晴らしい場です 00:00:29.330 --> 00:00:33.120 あの 1993年のイベントで 私は ニコラス・ネグロポンテに出会いました 00:00:33.120 --> 00:00:34.800 「ニコちゃん大王」と 私は呼んでいますが 00:00:34.800 --> 00:00:38.640 翌年アトランタで ヘッドハントされ 00:00:38.640 --> 00:00:40.610 MITに行くことに なったんです 00:00:42.030 --> 00:00:46.280 今日は3.11について 振り返りたいと思います 00:00:46.280 --> 00:00:50.010 近藤さんがソーシャル メディアの観点から 00:00:50.010 --> 00:00:52.170 素晴らしい話を してくださいました 00:00:52.230 --> 00:00:54.780 私もいろいろ考えました いったい何が起きたのか? 00:00:54.780 --> 00:00:56.150 何を学べるか? 00:00:56.190 --> 00:00:59.030 次の世代に 何を伝えられるか? 00:00:59.200 --> 00:01:03.050 3月11日 14時46分 00:01:03.050 --> 00:01:05.310 一連の地震が起き 00:01:05.310 --> 00:01:07.600 引き続いて津波があり 00:01:07.600 --> 00:01:11.030 その結果 原発事故が発生したのは 皆さんご存知の通りです 00:01:11.240 --> 00:01:14.940 この危機にどう対応するか というのは重要な問いです 00:01:14.940 --> 00:01:19.040 皆さんも目にされた通り 新たなハッシュタグがたくさん飛び交い 00:01:19.040 --> 00:01:20.740 多くの人が 善意を示し 00:01:20.740 --> 00:01:23.540 助け合いました 00:01:23.540 --> 00:01:27.410 でもタイムラインは あまりに速く流れ 00:01:27.410 --> 00:01:29.650 誰も追いつけないほどです 00:01:29.780 --> 00:01:33.150 この膨大な情報を どう管理したらよいのか? 00:01:33.150 --> 00:01:35.110 情報をどう整理したらよいのか? 00:01:35.110 --> 00:01:37.140 どうすればエントロピーを減らし— 00:01:37.140 --> 00:01:40.646 利用できるようにできるのか? 情報技術の観点で とても難しい問題です 00:01:40.646 --> 00:01:46.200 つまり 人と人を繋ぎ 大切な人の行方のような 00:01:46.200 --> 00:01:48.260 人の情報を繋ぎ合わせる ということです 00:01:48.260 --> 00:01:49.890 「水の配給があるらしいけど 00:01:49.890 --> 00:01:50.900 どこでもらえるんだろう? 00:01:50.920 --> 00:01:52.887 どこへ行けばいいんだろう?」 00:01:52.887 --> 00:01:54.570 「薬が必要だ 00:01:54.570 --> 00:01:55.910 誰がここまで 00:01:55.910 --> 00:01:56.970 届けてくれるだろう?」 00:01:56.970 --> 00:01:59.490 「トラックならあるけど ガソリンがない」 00:01:59.490 --> 00:02:01.890 「ガソリンならあるけど 通行証がない」 00:02:01.890 --> 00:02:04.130 「どの道が通れるのか分からない」 00:02:04.130 --> 00:02:07.520 こういったすべての情報を 繋ぎ合わせる必要があります 00:02:07.520 --> 00:02:13.426 人と情報と資源を結び付けるのは 難しい課題です 00:02:13.440 --> 00:02:15.910 クライシス・マッピングを 取り上げたいと思います 00:02:15.910 --> 00:02:17.300 地図は重要です 00:02:17.300 --> 00:02:19.060 情報を場所に 結び付けられたなら 00:02:19.060 --> 00:02:23.480 様々な情報を地理情報システムに 取り込むことができ 00:02:23.480 --> 00:02:26.530 エントロピーが 劇的に下がります 00:02:26.780 --> 00:02:31.700 クライシス・マッピング クラウドソーシング さらに広く集合知は 00:02:31.700 --> 00:02:37.490 私の尊敬するダグラス・エンゲルバートが はるか以前に構想していたビジョンです 00:02:37.490 --> 00:02:40.350 いくつか例を お見せしましょう 00:02:40.350 --> 00:02:42.020 良い報せは私が ここにいることですが 00:02:42.020 --> 00:02:43.550 悪い報せは 持ち時間が 10分しかないことです 00:02:43.550 --> 00:02:49.090 Ushahidiは クライシス・マッピングのための オープンソースプログラムで 00:02:49.140 --> 00:02:52.920 その有用性は スマトラの津波や 00:02:52.920 --> 00:02:54.560 ハイチ地震の時に 示されています 00:02:54.560 --> 00:02:57.190 みんな協力して 熱心に作業し 00:02:57.190 --> 00:03:00.210 翌日には あらゆる震災情報が 00:03:00.210 --> 00:03:02.980 Ushahidiという 1つのインフラ上に 00:03:02.980 --> 00:03:07.320 自動的に あるいは手動で 集積され始めました 00:03:07.320 --> 00:03:09.320 これは素晴らしい 成果でした 00:03:09.320 --> 00:03:11.320 スピードが鍵です 00:03:11.510 --> 00:03:13.980 Googleも素晴らしい 仕事をしました 00:03:13.980 --> 00:03:16.320 Googleには危機対応のための チームがあります 00:03:16.320 --> 00:03:19.360 私にとって最も心に残ったのは 00:03:19.360 --> 00:03:23.690 大切な人の情報を 求める人々の姿です 00:03:23.690 --> 00:03:27.220 でもインターネットや 電話はダウンしています 00:03:27.220 --> 00:03:31.720 だから最後には みんな手書きの名簿を使って 00:03:31.720 --> 00:03:35.610 行方不明者や 避難所に 退避した人の情報を集めました 00:03:35.690 --> 00:03:38.340 でもその情報を共有する 手段がありませんでした 00:03:38.340 --> 00:03:43.750 大切な人や 家族を見つけるために 避難所をひとつひとつ当たる必要がありました 00:03:43.750 --> 00:03:49.130 そこでGoogleが あまり被害のなかった地域の人たちに 00:03:49.130 --> 00:03:50.720 携帯電話を持って 00:03:50.720 --> 00:03:54.490 避難所に行くよう 声をかけたのです 00:03:54.490 --> 00:03:58.940 そして写真を撮って Picasaにアップロードし 00:03:59.230 --> 00:04:01.230 それからクラウドソーシングです 00:04:01.330 --> 00:04:03.760 みんなテレビを 見るのをやめて 00:04:03.760 --> 00:04:07.080 時間と知的余剰を 提供してほしい 00:04:07.080 --> 00:04:12.430 日本語が読めるなら 文字起こしを手伝ってください 00:04:12.430 --> 00:04:14.430 テキストにするんです 00:04:14.430 --> 00:04:17.269 EUCでも EBCDICでも Shift-JISでも 00:04:17.269 --> 00:04:20.320 コンピュータで検索できる ものなら何でもいい 00:04:20.320 --> 00:04:24.430 そしてすべての情報が Person Finderへと集められました 00:04:24.430 --> 00:04:28.450 この情報の流れは 沢山の人の協力の結果というのが 00:04:28.450 --> 00:04:30.299 肝心なところです 00:04:30.299 --> 00:04:31.600 そして放射能 00:04:31.600 --> 00:04:34.470 今や 多くの人が ガイガーカウンターを持っていて 00:04:34.470 --> 00:04:37.310 放射能の計測をし その情報を アップロードして共有しています 00:04:37.310 --> 00:04:40.110 これは福島県の データです 00:04:40.110 --> 00:04:46.220 Pachubeは センサーデータのための 素晴らしいオープンソース・プラットフォームですが 00:04:46.220 --> 00:04:47.840 ガイガーカウンターのデータを 00:04:47.840 --> 00:04:53.450 集約するために使われたのは 初めてではないかと思います 00:04:53.450 --> 00:04:58.600 福島県の原発周辺は 真っ赤なのが分かると思います 00:04:58.600 --> 00:05:00.510 東京は大丈夫です 00:05:00.510 --> 00:05:02.720 でも多くの人は この違いを見ていません 00:05:02.720 --> 00:05:06.560 風や水がどう影響するのか 知りません 00:05:06.560 --> 00:05:08.160 だからみんなパニックを 起こし 00:05:08.160 --> 00:05:10.380 日本から避難せよとの 勧告が出され 00:05:10.380 --> 00:05:12.020 沢山の人が 出て行ってしまいました 00:05:12.020 --> 00:05:15.890 科学的な情報や クラウドソーシングや 共有は とても大事なんです 00:05:15.890 --> 00:05:20.030 これはGoogle Earthを使って 3Dで視覚化したものです 00:05:20.030 --> 00:05:23.840 地図のようなインフラは重要です クラウドソーシングし 00:05:23.840 --> 00:05:28.010 結び付け 情報を管理可能にする というのもそう 00:05:28.010 --> 00:05:30.690 人と 情報と 資源を 結び付けるということです 00:05:30.690 --> 00:05:32.570 学べる教訓が たくさんあります 00:05:32.570 --> 00:05:34.600 これは ほんの一部に すぎません 00:05:34.600 --> 00:05:36.630 この3ヶ月で すごく 多くのことを学び 00:05:36.630 --> 00:05:38.630 Evernoteに大量の データを集めました 00:05:38.630 --> 00:05:40.750 Evernoteを使ってらっしゃる方? 素晴らしい 00:05:40.750 --> 00:05:43.750 でも私はEvernoteに頼まなきゃいけません 「1GB使い切っちゃった 00:05:43.750 --> 00:05:46.525 容量増やしてよ 大事なことなんだから」 00:05:46.530 --> 00:05:49.130 学ぶチャンスを 逃さないことです 00:05:49.130 --> 00:05:51.450 後でゆっくり 消化すればいいんですから 00:05:51.450 --> 00:05:57.000 大事なのは ラディカル・オープンネスで 言うところのオープンさです 00:05:57.000 --> 00:05:59.200 オープンさを失って 00:05:59.200 --> 00:06:02.310 サプライチェーンの自社部分を 企業秘密にしてしまったらどうなるか? 00:06:02.310 --> 00:06:04.530 サプライチェーンの危機です 00:06:04.530 --> 00:06:08.850 みんなが秘密にしていたら 何もかも止まってしまいます 00:06:08.850 --> 00:06:14.060 オープンにしなければ 再構築も修復も 00:06:14.060 --> 00:06:17.500 新しい種類のグローバル・ サプライチェーンも不可能です 00:06:17.500 --> 00:06:18.690 クラウドソーシングすること 00:06:18.690 --> 00:06:21.880 人間こそ最も 強力な存在です 00:06:22.060 --> 00:06:25.490 機械で読み取れる 必要はありません 00:06:25.490 --> 00:06:27.390 人間に読めればいいんです 00:06:27.390 --> 00:06:28.500 写真は素晴らしいです 00:06:28.500 --> 00:06:29.630 写真共有は素晴らしいです 00:06:29.630 --> 00:06:32.560 でもそれを機械のために 翻訳してやる必要があります 00:06:32.560 --> 00:06:34.350 機械で検索できるように 00:06:34.350 --> 00:06:37.460 クラウドソーシング マッシュアップ キュレーションはとても重要です 00:06:37.460 --> 00:06:40.160 多くのボランティアが 情報を結び付け始めましたが 00:06:40.160 --> 00:06:42.630 それを まとめ上げる 必要があります 00:06:42.630 --> 00:06:45.340 そしてきれいに レイアウトすること 00:06:45.340 --> 00:06:49.462 iPadでFlipboardを使っている方 どれくらいいますか? 00:06:49.490 --> 00:06:51.190 では 私の言う意味が わかりますね 00:06:51.190 --> 00:06:55.440 様々な情報源があるので その情報を消化できるよう 00:06:55.440 --> 00:06:58.990 一貫したインターフェースを 与える必要があります 00:06:58.990 --> 00:07:00.990 それにフィルタリングと 優先度付けも 00:07:00.990 --> 00:07:02.790 キュレーションが鍵です 00:07:02.790 --> 00:07:06.070 それから需要供給のマーケット 00:07:06.070 --> 00:07:08.340 誰かが薬の必要を 訴える 00:07:08.340 --> 00:07:11.366 誰かがトラックを提供できると言う ある人はガソリンを 00:07:11.370 --> 00:07:14.390 そういった人々を 結び合わせるのは重要です 00:07:14.390 --> 00:07:20.380 Amazonは「ほしい物リスト」を使って その人たちを助けました 00:07:20.380 --> 00:07:21.980 彼らにはインフラがあります 00:07:21.980 --> 00:07:25.610 しかしまた 我々のような ボランティアも必要です 00:07:25.610 --> 00:07:30.820 Twitterを使って 助けの手を伸べる人が たくさん現れました 00:07:30.820 --> 00:07:36.240 ですから復興に向けた 希望の光が 確かにあります 00:07:36.510 --> 00:07:42.020 ガー・レイノルズの「竹に学ぶ」で 出てきたキーワードは「弾力」です 00:07:42.020 --> 00:07:47.220 次の危機に対して 世界を いかに弾力的に出来るでしょう? 00:07:47.220 --> 00:07:48.450 危機に終わりはありません 00:07:48.450 --> 00:07:49.530 次々やってきます 00:07:49.530 --> 00:07:53.830 エネルギー問題 金融危機 自然災害 環境問題 00:07:53.830 --> 00:07:59.260 世界を楽しくハッピーで 豊かにするのは結構なことですが 00:07:59.260 --> 00:08:02.480 世界をしなやかで強くし 次の危機に対して 00:08:02.480 --> 00:08:08.850 いかに素早く回復できるようにするか というのは重要な目標だと思います 00:08:08.850 --> 00:08:13.680 その意味で 人 情報 資源の鎖を繋ぐ重要性は とても大きいのです 00:08:13.680 --> 00:08:14.590 それはいいとして 00:08:14.590 --> 00:08:16.461 時間がもうありません 大変だ! 00:08:16.461 --> 00:08:18.010 (笑) 00:08:18.010 --> 00:08:21.590 私の好きな詩人に 宮沢賢治がいます 00:08:21.590 --> 00:08:24.480 彼の出身地は 東北の岩手県で 00:08:24.480 --> 00:08:27.560 私が夜行列車で よく旅した場所です 00:08:27.560 --> 00:08:31.270 そして賢治の詩を よく読みました 00:08:31.410 --> 00:08:37.140 私はTwitterでいろんな人をフォローしていますが 亡くなった詩人のボットが特に好きです 00:08:37.140 --> 00:08:43.409 そのツイートはすごく凝縮されていて とても刺激的です たとえば賢治の— 00:08:43.409 --> 00:08:45.100 「あめゆじゆ とてちて けんじや」とか 00:08:45.100 --> 00:08:47.360 「ありがたう わたくしの けなげな いもうとよ」とか 00:08:47.360 --> 00:08:49.640 1つひとつの言葉が心を打ち 考えさせられます 00:08:49.640 --> 00:08:51.080 なぜ私は このメッセージを 00:08:51.080 --> 00:08:53.310 受け取ったのか? 意味があるはずだ 00:08:53.310 --> 00:08:55.380 ここに偶然というのはありません 00:08:55.380 --> 00:08:57.380 すべてに意味と 必然性があります 00:08:57.380 --> 00:08:58.770 だから その意味を 解読しなければ— 00:08:58.770 --> 00:09:00.770 これはクリエイティビティの 良い訓練になります 00:09:00.770 --> 00:09:06.610 問題は それがすべて きれいな12ポイントの フォントで書かれていることです 00:09:06.610 --> 00:09:11.990 でも私が花巻の宮沢賢治記念館で見た 本当の詩は 驚くべきものです 00:09:11.990 --> 00:09:14.090 肉筆原稿です 00:09:14.090 --> 00:09:19.600 彼の肉体 精神 葛藤の跡が すべて残されています 00:09:19.600 --> 00:09:21.640 書いては直し 消しては書き加えています 00:09:21.640 --> 00:09:24.060 黄ばんだ紙と インクのしみ 00:09:24.060 --> 00:09:29.440 彼は愛する妹とし子を 失った哀しみを 00:09:29.450 --> 00:09:33.260 本当に表わせる言葉を 見つけられませんでした 00:09:33.310 --> 00:09:37.830 でも彼はそこから 個人的な悲嘆を越えた 00:09:37.830 --> 00:09:39.840 宗教的なレベルに 到達するのです 00:09:39.840 --> 00:09:40.690 驚くばかりです 00:09:40.690 --> 00:09:45.100 そのプロセスを目にできたのは 私にとって この上ない喜びでした 00:09:45.100 --> 00:09:47.100 でもそれを見る前は 00:09:47.100 --> 00:09:50.120 きれいに印刷された本でしか 知りませんでした 00:09:50.120 --> 00:09:52.980 本やフォントは 素晴らしいです 00:09:53.000 --> 00:09:55.516 大量生産や 標準化や インターネットのためには 00:09:55.550 --> 00:09:59.280 でもそこで失われている ものもあります 00:09:59.570 --> 00:10:03.380 身体の痕跡 精神の葛藤の跡です 00:10:03.380 --> 00:10:05.800 それは時に 芸術にとって とても大切なものです 00:10:05.800 --> 00:10:08.950 だから芸術家には 立ち上がって 文句を言って欲しいのです 00:10:08.950 --> 00:10:11.670 どうして この重要なものを 取ってしまうのか? 00:10:11.670 --> 00:10:14.380 どうしてきれいな完成品しか 出さないのか? 00:10:14.380 --> 00:10:17.770 私のような消費者もまた 立ち上がるべきでしょう 00:10:17.770 --> 00:10:23.470 このような痕跡が 想像力を刺激し そうして芸術は完成するのです 00:10:23.470 --> 00:10:25.960 想像力によって 芸術を補うのです 00:10:25.960 --> 00:10:32.220 だからこそ俳句や短歌は 完璧なHDTVなんかより ずっと強力なんです 00:10:32.220 --> 00:10:33.490 それが私の言いたいことです 00:10:33.490 --> 00:10:38.730 これは私が最愛の女性のために 作ったものです 00:10:38.730 --> 00:10:40.132 母です 00:10:41.060 --> 00:10:44.950 (クラシック音楽) 00:10:53.160 --> 00:10:56.170 これは「ミュージックボトル」という名前です 00:10:56.170 --> 00:10:59.030 単純なビンの蓋の開け閉めの アフォーダンスが 00:10:59.030 --> 00:11:02.550 いかにデジタルの世界へと 拡張されているか見てください 00:11:02.550 --> 00:11:06.210 これにはスピーチであれ詩であれ 思い付くものを何でも入れられます 00:11:06.657 --> 00:11:07.860 ここでは素敵な音楽です 00:11:07.860 --> 00:11:11.750 そして東洋ガラスの工房が 完璧なガラスの器を作ってくれました 00:11:11.750 --> 00:11:13.930 でも この美は 1つ限りのものです 00:11:13.930 --> 00:11:16.000 落としたら割れてしまいます 00:11:16.000 --> 00:11:18.033 リスタートできません 00:11:18.060 --> 00:11:19.240 ゲームではないのです 00:11:19.240 --> 00:11:23.560 これは美的で感情的な喜びを 与えてくれます 00:11:23.590 --> 00:11:25.170 とても大切なものです 00:11:25.170 --> 00:11:29.050 でもこれを作ったのは 音楽のためではありません 00:11:29.280 --> 00:11:30.960 母のためでした 00:11:30.960 --> 00:11:38.910 これを 故郷の札幌の天気を教えてくれるものにして 母にプレゼントしたいと夢見ていました 00:11:40.170 --> 00:11:44.070 母が朝 目を覚まし ビンの蓋を開けて— 00:11:45.920 --> 00:11:47.960 (鳥のさえずり) 今日はお天気ねと 00:11:47.960 --> 00:11:52.620 母はお醤油の瓶の蓋を開けては 私と妹のために 何千回となく食事を作ってくれました 00:11:52.620 --> 00:11:55.930 お醤油のビンの蓋を開けると 香りがします 00:11:55.930 --> 00:11:58.350 それが母の理解するもの 美しいアートです 00:11:58.350 --> 00:12:03.250 どうしてお年寄りに携帯電話や コンピュータの使い方や 00:12:03.250 --> 00:12:07.730 Emacsのエスケープシーケンスみたいな 馬鹿げた人工言語を覚えさせようとするのか? 00:12:07.730 --> 00:12:09.010 そんなの 母には 関わりのない話です 00:12:09.010 --> 00:12:11.080 母はコンピュータも 携帯電話も使いません 00:12:11.130 --> 00:12:14.400 でも母には美しい世界があって 私と妹の面倒を見てくれました 00:12:14.400 --> 00:12:17.650 その母も1998年に 亡くなりました 00:12:17.650 --> 00:12:21.270 私はとても多くのことを 母から学びました 00:12:21.370 --> 00:12:23.440 未来は大切です 00:12:23.440 --> 00:12:25.940 皆さんとご一緒できて 幸いでしたが 00:12:25.940 --> 00:12:28.940 2050年には 私はどこか 別なところにいます 00:12:28.940 --> 00:12:31.290 学生はマイナス軸じゃないか と言ってますが— 00:12:31.290 --> 00:12:36.720 でも素晴らしい報せは 2100年には 今いる誰も生きていないということです 00:12:36.720 --> 00:12:38.940 (笑いと拍手) 00:12:38.940 --> 00:12:41.720 それでも未来は 続いていきます 00:12:41.720 --> 00:12:43.080 未来は立ち止まりません 00:12:43.080 --> 00:12:46.560 次の四半期とか 引退とか 死という話ではありません 00:12:46.560 --> 00:12:49.210 でも2200年の人々に対して 00:12:49.210 --> 00:12:51.710 クリエーターや ビジョナリーたる皆さんは 00:12:51.710 --> 00:12:54.360 何によって記憶されたいと 思いますか? 00:12:54.360 --> 00:12:55.850 名前ではなく アイデアです 00:12:55.850 --> 00:12:58.020 何をその人達に 残そうと思いますか? 00:12:58.020 --> 00:13:00.510 これは私がいつも 自分自身や 00:13:00.510 --> 00:13:02.730 学生や同僚に 問い続けていることです 00:13:02.730 --> 00:13:03.650 死を忘れないこと 00:13:03.650 --> 00:13:05.070 光の後には 00:13:05.070 --> 00:13:07.630 永遠の未来が 私たちを待っています 00:13:07.630 --> 00:13:08.650 どうもありがとうございました 00:13:08.650 --> 00:13:11.246 (拍手)