歩きやすい都市について お話ししたいと思います 歩きやすい都市とは何でしょうか? より分かりやすく定義すると 自動車が必要不可欠というより 選択肢の1つであるような 都市のことです そこで 歩きやすい都市の 必要性について説明し その実現方法について お話ししたいと思います 最近お話ししているのはほとんどが その必要性についてですが 皆さんは もうご存知のことでしょうし ちょうど1か月前に行ったトークを TED.comでご覧になれますから 今日はその実現方法について お話しします この事を考え続けて 歩きやすさについての 一般論を思いつきました 口幅ったい言い方ですし 少々もったいぶった感じですが 私が長い間温めてきて 理解したことを紹介したいと思います アメリカの都市は― 典型的な都市ということですが ワシントンD.C.でもなく ニューヨークでも サンフランシスコでもありません グランドラピッズやセダーラピッズや メンフィスといった都市です この典型的なアメリカの都市では ほとんどの人が車を持ち 常に車に乗っていたい と思うものです ですから そこで歩いてもらうには 歩くことが運転と同じくらい 魅力的だと思ってもらう 必要があります これはどういうことでしょう? 4点セットを同時に 提供する必要があるということです 歩く理由 安全・安心感があること 快適に歩けること 楽しいことです この4つが同時に必要です これが本日のトークの柱です それぞれ お話ししていきますね 私はメンターたちから 歩く理由を学びました アンドレス・デュアニーと エリザベス・プラター・ザイバーグで ニューアーバニズム運動の創始者です 本日の内容の半分は この2人から学んだことです これは都市計画の話 職業としてのシティプランナーの 成立についてです 19世紀の人々はおぞましい工場から 排出される真っ黒なすすに 悩まされていました そこで プランナーは住居と工場を 引き離せばいいと考え するとほどなく人々の寿命が 劇的に向上しました それ以来プランナーは この体験を再現しようとしてきたと言っても 過言ではないでしょう 私たちがユークリッド・ゾーニングと 呼んでいるものが始まり 土地を単一目的の 広大な敷地に分断していきました 私が都市計画を行うため 現地に到着すると 土地がこういったデザインに なっていることが多いのですが こうした計画では 間違いなく 歩きやすい都市にはならないでしょう 何も近くにないからです その代わりに― ご存知の 最も歩きやすい都市 マンハッタンです 先ほどの地図はロスコーの絵のようですが こちらは点描画家の スーラの絵のようです それぞれの手法で街が作られていますね このマンハッタンの地図も 少し紛らわしいですね 赤色が一面に塗られていますから これはニューアーバニストの壮大な物語― コミュニティを構築するため 歴史を通じて世界中で 何千回も試されてきた方法は 2通りだという話です そのひとつがこんな伝統的な界隈です これは マサチューセッツ州 ニューベリーポートの界隈です コンパクトで多様性に満ちていて 住居や職場、店舗や 娯楽施設、学校は 徒歩圏内にあり 歩きやすいように街が設計されています 細い通りがいくつもあって どれも歩きやすい道です この対照例として挙げるのは 第二次世界大戦後に起こった 郊外地域の スプロール化(無秩序な拡大)です どう見てもコンパクトではなく 多様性に欠け 歩きづらい つながっている通りが少なく つながった通りは渋滞し 子どもを歩かせられるような 道ではありません 航空写真家のアレックス・マクリーンが 本日お見せする 美しい航空写真を数多く 提供してくれました スプロール化した都市の パーツを見てみるのは面白いですよ 見分けるのは非常に簡単です 住むだけのための場所 働くためだけの場所 買い物のためだけの場所 巨大な公共施設 学校はどんどん大きくなり ますますお互いから 離れていくようになります 駐車場と学校の建物の 大きさの比率を見ると 徒歩で登校できない ということは一目瞭然です 歩いて登校している子など いないでしょう 上級生が下級生を 自動車に乗せ登校するので それが交通事故の統計に表れます そして巨大化した公共施設 運動場などですが フォートローダーデール地区の ウェスティンには サッカー場が8面、野球場が8面 テニスコートが20面もありますが そこへ続く道路に注目してください 子どもを自転車で 行かせたりしますか? 車で送迎する サッカーマムが必要なわけです 私が子供の頃はサッカー場と野球場と テニスコートが1面ずつだけでしたが 私は歩いていくことができました 近所にあったからです つい忘れがちなスプロールの最終段階は 何もかもお互いから離してしまって それらを自動車道路だけでつなげると このような風景に なってしまうということです ここでいちばん言いたいことは 歩きやすい都市にしたければ スプロールモデルは使えないことです 都市モデルには 骨格が必要です これがその通りに設計した結果です このとおりです これがアメリカ人の多くが 望むものなのです しかしアメリカンドリームには 2つの面があります もし これを夢見て 自動車優先の風景を作り上げると その夢は馬鹿げた極端な風景を 生み出すことが多いのです こういう場所に行ってみると [この信号は青になりません] (笑) 画像の加工はしていませんよ ウォルター・クラシュが このスライドを撮りました これは パナマシティにある 実在する場所です スムーズな運転は難しく 歩くのもなかなか厄介です こんなところではね 次は疫学研究でよく目にするスライドですが (笑) 私たちの社会では スポーツジムまで車で行き 入り口にはエスカレーター 何かが間違っています でも 改善策は分かっています 対照的なモデルが2つあります 30年ぐらい ニューアーバニズムの教科書的なものだった このスライドをお見せします スプロールと伝統的な界隈は 色分けされた 同じ建物要素を含んでいることがわかります その違いは大きさと お互いの距離 分散の仕方であり 袋小路よりも 道路のネットワークが多いか 通りが密集しているかの違いです あるダウンタウンの地域を もっと歩きやすい地域へと 改善することを考えるとき アメリカの都市や 町や村の 大部分のダウンタウンにあてはまりますが 用途のバランスを適正にしましょうという 話を始めます 欠けたり不足しているのものは 何でしょうか? アメリカ人の大部分が住んでいる 典型的な都市部では 不足しているのは住宅であり 職と住のバランスが偏っています 住居を取り戻してやると 他の建物も戻ってきますので まず住居の配置ありきなのです そしてもちろん 最終的には 学校が戻ってきます それは人が引っ越してくると 若者が成長して子供を持つようになり 競争が起きて 学校がよくなっていきます そしてその他の部分について 都市部の便利さ 公共交通機関です なくても完璧に歩きやすい地域の整備は できますが 都市を完璧に歩きやすくするためには 交通機関が必要です 歩行者として町全体にアクセスできないと 自動車に乗ることになり そして 自動車が増えると 都市はそのニーズに応じて 再び形を変え 道路が広くなり 駐車場が広がり もはや歩きやすい都市ではなくなります 交通機関は不可欠です どんな交通機関を使うにしても 最初と最後は徒歩です ですから駅の周囲を 歩きやすくする必要があります 次のカテゴリーは一番大切で 安全に歩けることです これが歩きやすさには不可欠ですが それだけでは十分ではありません 歩きやすい都市をつくる 多くの要素があります まずは1ブロックの大きさです こちらはオレゴン州ポートランドで 1ブロックが60メートルで 歩きやすいことで有名です こちらはソルトレークシティです 1ブロックが200メートルあって 歩きにくいことで知られています 比べてみると まるで別の惑星のようですが どちらも人類が作った場所です ブロックが60メートルの都市ならば 2車線あるいは 2車線から4車線の都市になります ブロックが200メートルの都市は 6車線でこれは問題です 交通事故の統計によると ブロックサイズが倍になると カリフォルニアの 24都市での研究ですが― ブロックサイズが倍になると 一般道における死亡事故が 約4倍になります では 何車線がいいのでしょうか? ここからは講演のたびに お話しすることなんですが 「需要が誘発されること」について 考えてもらうことにしています 「誘発需要」現象は幹線道路にも 一般道にも当てはまります 誘発された需要から分かるのは 予期される交通渋滞に対応するために 道路を広げたり 渋滞のために迂回するといった ことを予測する 混雑に対応するシステム自体が 需要を刺激しており 道路が拡大されるようになり それにつれてまた新たに迂回が起こります 人々は更に職場から遠ざかり 通勤時間帯を変えたりして これらの車道が 瞬く間に渋滞するようになり 再び道路を広げれば また満杯になります これが渋滞した システムから学んだことです 自動車を優先した都市作りは不可能です ニューズウィーク誌からです 深遠な記事などみかけない雑誌ですが 「こんにちエンジニアは 新たな道路の建設で 交通渋滞が悪化すると認めている」 これを読んで私は 「このエンジニアに会いたい」と思いました ただのエンジニアではないなと思ったのです 私が実際知っている 素晴らしい技術者は例外で 都市計画でお目にかかる ごく一般的なエンジニアは 「交通渋滞するから 車線を増やそう」 と考えるものです 車線を増やすと渋滞するようになり 「ほら 車線が必要だったでしょ」と 言うようなね これは幹線道路や一般道 どちらの渋滞にもあてはまります 私が仕事をしている アメリカの都市については不思議なことに 典型的な都市の多くには 現在直面している渋滞に比べて 広すぎるような道路が多くあります オクラホマシティの例ですが 市長があわてて連絡をして来ました 「プリベンション」誌で 歩行者にとって最悪な町だと こき下ろされたからです そんなはずはありませんが 市長としては 何とかしなければなりません まず歩きやすさを調査しました 通行する自動車の数を数えて 分かったことは 3千、4千、7千台 だったのですが 2車線の場合は 1日1万台が通行できるはずで この数字を見ると どれも1万台未満ですね 新たなダウンタウン計画の一環として 4車線から6車線幅で 設計された道路でしたが 車線数とそれを必要とする 自動車の数との間に 根本的なずれがあったのです こうして ダウンタウンの 全ての道路の再設計を任されました 縁石に至るまで全てを任されて 50ブロックについて設計しました 現在 再建設中です こんな典型的な無駄に広い道路は 幅を狭めるように 現在工事中です プロジェクトは半分完了しました 典型的なこんな道路が— 適切な車線幅がわかり 自転車レーンが作れるようになります 路上の駐車スペースを2倍にしました 今まではなかった自転車ネットワークを 追加しました でも 誰もがオクラホマシティのように お金持ちではありません ここは資源ビジネスが好調ですからね 多くの都市は セダーラピッズのように 4車線を基本にして 半分は一方通行です ちょっと見にくいですが 私たちがやっていること 今進めていることは 現在施工中なのですが 4車線が基本で 半分は一方通行というシステムを 2車線が基本で 対面通行のシステムに変えることで 路上の駐車スペースを70%増やしました 店舗は喜ぶでしょうし 安全な歩道も守れます 駐車場があることで歩道が安全になり しっかりとした 自転車ネットワークも加えました では車線の幅はどうでしょうか? これは非常に重要です 規格は幅広くなり続け アンドレス・デュアニー いわく アメリカ郊外の典型的な道路では 地平線が見えるのだそうです (笑) この分譲地は 1960年代のワシントン郊外です 通りの幅をよく見てみてください これは 1980年代の分譲地です 1960年代、1980年代で 規格がこんなに変わっているのです これは私の古馴染みの サウスビーチですが 排水の補修工事を行う際に 道路を拡大し歩道を 半分にしてしまいました 基準規格が広がったからです でも広い道では誰もが急ぎます 誰もがそれを知っています エンジニアが否定しても 市民は知っていますから ミシガン州バーミンガムでは 細い道を勝ち取ろうとしています 歩きやすさで有名な オレゴン州ポートランドは 「スキニーストリート」プログラムを 住宅地で立ち上げました 細い道の方が 安全だとわかっています 開発業者のビンス・グラハムは サウスカロライナで手掛けている l'Onプロジェクトで 素晴らしい7メートル幅の 道路を公開しています 対面通行の非常に細い道です 彼はこの教えを 引き合いに出すのです 「広き道は滅びにつながり 狭き道は命につながる」 [マタイ伝7章13節] (笑) (拍手) これはサウスカロライナでうまくいっています さて 自転車ですが 自転車とサイクリングは アメリカの都市のごく一部で 革命を起こしつつあります 「それを作れば彼らは来る」わけです プランナーとしては言いにくいのですが サイクリスト人口は 自転車用インフラの関数です ポートランドで設計事務所をしている 友人トム・ブレナンに ポートランドの自転車通勤の写真を 依頼したら これを送ってくれました 「自転車通勤の日なの?」と聞くと 「いつもの様子だ」と言っていました ポートランドと同様に自転車の インフラに費用を費やすとどうなるか ニューヨーク市は レーンを明るい緑色に塗装して サイクリストの数を 数倍にしました カリフォルニア州ロングビーチのような 自動車都市ですら インフラ整備により サイクリストの数が増加しています そしてもちろん ワシントンDCの15番街はご存知でしょう シカゴ市長のラーム・エマニュエルによる 新しい自転車レーンですが 緩衝レーンや平行駐車された車が 縁石沿いに並び 駐車された車と縁石の間を走る サイクリスト達が新たに誕生しました パサデナのように全てのレーンで 自転車走行が許されていたら それは自転車道として機能しません これがパサデナで出会った 唯一のサイクリストでした (笑) 私が述べた平行駐車は 縁石と歩行者を 自動車から守るための 不可欠な鉄の壁になります これはフォートローダーデールの 道路を車から撮影したものです こちら側は駐車できますが 反対側は駐車禁止です 駐車場側のハッピーアワーです これは反対側のサッドアワーですね この並木があることで 自動車が速度を落とします 並木道ではゆっくり走行しますから もちろん 急に減速させることもあります 細部についてですが― 縁石の隅切り半径は 30センチでしょうか 1.2メートルでしょうか? この縁石をどこまで切るかで 自動車の速度に影響します 横断に必要な時間も決まります これは最高です 客観的なジャーナリズムの例 「シティセンターの入口は 歩行者に向いていないと言われる」 風景のあらゆる線が 曲線的で 空気力学的で 流線型に設計されている時 そこは自動車のための空間だ というようなものです いかなる特徴的なディテールも 自動車の妨げになり 受け入れられません ご覧ください この通りですが 百年に一度の嵐も またたく間に排水可能もしれませんが 気の毒なこの女性は この縁石を毎日登らなくてはなりません また 快適な歩行には どんな生き物も見晴らしだけでなく 隠れ場所も必要だということです 襲ってくる捕食者を見つけると同時に 守られていると感じることも大切です それで私たちは 角のある場所に引き寄せられます 角が無い場所には人は集まりません では高さと幅の適切な割合は 何でしょうか? 1対1?3対1でしょうか? 1対6を超えてしまうと 落ち着かなくなります 囲まれている安心感がありません ザルツブルグにあるこの 6対1比なら快適でしょう その真逆はヒューストンです ここでは駐車場になっている場所が 主要な問題なのです このような「歯抜け」状態や 駐車場になっている空き地の問題同様に 時代遅れの土地計画規制のせいで 角がなくなると 界隈から「鼻」である三角地が 失われてしまうこともあります これはうちの界隈にあったものです これは建築禁止の地区規制です ワシントンDCは新たな地域地区計画のもとに この様な地区をこのように変えています 多様なバリエーションが必要でした 三角形の家を建てるのは楽しく 一度建ててみると おおむね好評でした これで失われた「鼻」が得られたわけです そして最後に歩くことの楽しさについて これは人間性の現れですね 私たちは社会的な霊長類ですから 私たちにとって 他人ほど興味深いものはありません 人の姿が恋しいものです 完璧な1対1の割合だといいですね これは歩きやすい都市とされる グランドラピッズです でも 最高級のホテルをつなぐ この通りは誰も歩いていませんね 左手には立体駐車場があり 右手には会議施設があり 明らかに立体駐車場を鑑賞する為に 設計されていて 人を惹きつけてはいないようです サウスカロライナ州チャールストンの ジョー・ライリー市長は第10期で 8メートルの建物があれば 80メートルの駐車場を こうやって隠せることを示しました このチア・ペット・ガレージは サウスビーチにあります 生きている建物です このプロジェクトで締めくくりたいと思います メレカ・アーキテクツによるもので オハイオ州コロンバスにあります 向かって左側に会議場があり 大勢の歩行者がいます 右側はショートノース地区で 多彩な文化がある地区 おいしいレストランや良い店があるのに 苦戦していました 上手くいかない理由は この橋のせいでした 会議場からこの地域に渡ってくる人が いなかったのです 幹線道路を再建したときに橋を 24メートル追加― 失礼 幹線道路の上に橋を再建したのです 市は190万ドルをかけて 開発業者に場所を提供し 開発業者がこれを建築して ショートノースが生き返りました そして都市計画の雑誌ではなく誰もが 新聞ですら これは橋のお陰だと言っています 以上が歩きやすさの一般論です ご自分の町を考えてみてください そしてどうやって適用していくか この4つの要素が同時に必要ですよ 要素の大半が揃っている場所を見つけて 可能な修復を加えて 必要な改善を施してください ご清聴いただき そして お越しいただき ありがとうございました (拍手)