WEBVTT 00:00:00.952 --> 00:00:03.476 まずは実験から始めましょう 00:00:04.857 --> 00:00:08.307 雨の日の映像を3つお見せします 00:00:08.935 --> 00:00:12.819 そのうち1つの映像の 音声を替えてあります 00:00:12.843 --> 00:00:15.217 雨の音の代わりに 00:00:15.241 --> 00:00:18.309 ベーコンを焼く音を 付け加えています 00:00:19.137 --> 00:00:23.109 ベーコンの音がするのは どの映像か 考えてみてください NOTE Paragraph 00:00:23.695 --> 00:00:25.607 (雨音) NOTE Paragraph 00:00:27.394 --> 00:00:29.300 (雨音) NOTE Paragraph 00:00:31.627 --> 00:00:33.532 (雨音) NOTE Paragraph 00:00:40.611 --> 00:00:41.893 いいですね 00:00:43.064 --> 00:00:45.638 実は 私は嘘を言いました 00:00:45.662 --> 00:00:46.932 全部ベーコンの音なんです NOTE Paragraph 00:00:46.956 --> 00:00:48.531 (ベーコンが焼ける音) NOTE Paragraph 00:00:52.276 --> 00:00:54.303 (拍手) NOTE Paragraph 00:00:57.216 --> 00:01:00.489 私の目的は 何も皆さんが 雨の情景を見るたびに 00:01:00.513 --> 00:01:02.162 お腹をすかせることではなく 00:01:02.186 --> 00:01:08.106 私たちの脳が嘘を受け入れるように 条件づけられていると示すことです 00:01:08.696 --> 00:01:10.794 私たちは正確性を 求めてはいないのです NOTE Paragraph 00:01:11.754 --> 00:01:14.539 そこで 嘘について 00:01:14.563 --> 00:01:17.926 私の好きな作家の言葉を 引用したいと思います 00:01:17.950 --> 00:01:24.899 『嘘の衰退』でオスカー・ワイルドは こう述べています 00:01:24.923 --> 00:01:30.532 「劣悪な芸術は自然を模倣して 写実的たらんとすることに由来し 00:01:31.096 --> 00:01:36.340 素晴らしい芸術は 嘘とごまかしに由来しており 00:01:37.030 --> 00:01:40.063 美しい非現実のものについて 語るのだ」と 00:01:40.087 --> 00:01:44.001 ですから 皆さんが 映画を観ている時に 00:01:44.890 --> 00:01:46.402 映画の中で 電話が鳴っても 00:01:46.426 --> 00:01:48.428 それは実際に 鳴っているのではありません 00:01:48.942 --> 00:01:53.196 撮影後の編集作業において スタジオで追加された音です 00:01:53.220 --> 00:01:56.074 耳にする音は全て偽物なのです 00:01:56.098 --> 00:01:57.908 会話以外の音は全て― 00:01:57.932 --> 00:01:59.086 偽物です 00:01:59.110 --> 00:02:02.770 映画の中で 鳥が羽ばたく音がしたら― NOTE Paragraph 00:02:02.794 --> 00:02:04.815 (鳥が羽ばたく) NOTE Paragraph 00:02:06.141 --> 00:02:08.404 それは鳥を録音したもの ではありません 00:02:08.428 --> 00:02:13.422 シーツやゴム手袋を はためかせる方が 00:02:13.446 --> 00:02:14.998 ずっとリアルな音になります NOTE Paragraph 00:02:15.022 --> 00:02:17.374 (はためく音) NOTE Paragraph 00:02:18.849 --> 00:02:21.792 間近でタバコが燃える音は― NOTE Paragraph 00:02:21.816 --> 00:02:23.813 (タバコが燃える音) NOTE Paragraph 00:02:25.351 --> 00:02:28.102 実は より本物らしい音がするのは 00:02:28.126 --> 00:02:30.971 サランラップを丸めた玉が 00:02:30.995 --> 00:02:32.213 ほどける音なのです NOTE Paragraph 00:02:32.237 --> 00:02:35.380 (サランラップの玉がほどける音) NOTE Paragraph 00:02:35.869 --> 00:02:37.272 パンチはどうでしょう? NOTE Paragraph 00:02:37.296 --> 00:02:38.818 (パンチの音) NOTE Paragraph 00:02:38.842 --> 00:02:40.774 おっと もう一度 聞いてみましょう NOTE Paragraph 00:02:40.798 --> 00:02:41.997 (パンチの音) NOTE Paragraph 00:02:42.535 --> 00:02:46.271 この音はたいてい 野菜にナイフを突き立てて表現します 00:02:46.295 --> 00:02:47.717 キャベツであることが多いです NOTE Paragraph 00:02:48.661 --> 00:02:50.113 (キャベツをナイフで突き刺す音) NOTE Paragraph 00:02:50.788 --> 00:02:53.752 次の音は 骨が折れる音です NOTE Paragraph 00:02:53.776 --> 00:02:56.001 (骨が折れる音) NOTE Paragraph 00:02:56.670 --> 00:02:59.004 さて 実際に誰かが 怪我をするわけではなく 00:02:59.028 --> 00:03:00.428 これは実は― 00:03:01.163 --> 00:03:04.418 セロリか冷凍したレタスを 折る音なのです NOTE Paragraph 00:03:04.442 --> 00:03:06.483 (冷凍レタスかセロリを折る音) [ブルックリンではケールを使用する] NOTE Paragraph 00:03:06.947 --> 00:03:08.179 (笑) NOTE Paragraph 00:03:09.253 --> 00:03:13.968 とはいえ ぴったりの音を 生み出すのは 00:03:13.992 --> 00:03:15.899 スーパーの野菜売り場に行くほど 00:03:15.923 --> 00:03:18.619 常に簡単なわけではありません 00:03:18.643 --> 00:03:21.018 もっと複雑であることが ほとんどです 00:03:21.042 --> 00:03:24.065 ここで 音響効果の作り方を 00:03:24.089 --> 00:03:26.413 逆行分析してみましょう NOTE Paragraph 00:03:26.437 --> 00:03:29.786 私のお気に入りの話のひとつは フランク・セラフィーニのものです 00:03:29.810 --> 00:03:31.661 彼は音響ライブラリーの貢献者で 00:03:31.685 --> 00:03:35.247 『トロン』や『スタートレック』などの 音響デザインを手がけています 00:03:36.291 --> 00:03:41.549 彼はアカデミー音響編集賞を受賞した 『レッド・オクトーバーを追え!』の 00:03:41.573 --> 00:03:43.504 パラマウント社のチームにいました 00:03:43.528 --> 00:03:46.918 冷戦を描いた この90年代の古典的映画で 00:03:46.942 --> 00:03:51.727 潜水艦のプロペラの音を作るよう チームは求められました 00:03:51.751 --> 00:03:53.096 そこで直面した問題は 00:03:53.120 --> 00:03:56.640 ウェスト・ハリウッドでは 潜水艦が見つからないことでした 00:03:56.664 --> 00:04:00.322 そこで 彼らが講じた策は こうでした 00:04:00.346 --> 00:04:03.701 友人宅のプールに行って 00:04:03.725 --> 00:04:08.260 フランクがプールに 思い切り飛び込んだのです 00:04:09.069 --> 00:04:11.265 彼らは水中マイクと 00:04:11.289 --> 00:04:14.065 オーバーヘッドマイクを プールの外に設置しました 00:04:14.089 --> 00:04:17.342 水中マイクには こんな音が聞こえていました NOTE Paragraph 00:04:17.366 --> 00:04:18.901 (水中に飛び込む音) NOTE Paragraph 00:04:19.608 --> 00:04:21.114 オーバーヘッドの音も足すと 00:04:21.138 --> 00:04:23.091 こんな風に聞こえます NOTE Paragraph 00:04:23.115 --> 00:04:25.490 (水しぶきの音) NOTE Paragraph 00:04:25.514 --> 00:04:29.961 彼らはこの音のピッチを 1オクターブ下げ 00:04:29.985 --> 00:04:32.461 スロー再生のような状態にしました NOTE Paragraph 00:04:32.850 --> 00:04:35.266 (1オクターブ低い 水しぶきの音) 00:04:35.929 --> 00:04:38.697 それから高周波の音を消去しました NOTE Paragraph 00:04:38.721 --> 00:04:40.996 (水しぶきの音) 00:04:41.020 --> 00:04:43.076 そして もう1オクターブ 下げました NOTE Paragraph 00:04:44.314 --> 00:04:46.602 (さらに低い 水しぶきの音) 00:04:46.626 --> 00:04:49.132 それから オーバーヘッドマイクの 水しぶきも 00:04:49.156 --> 00:04:51.440 少し付け加えました NOTE Paragraph 00:04:51.464 --> 00:04:54.629 (水しぶきの音) 00:04:54.653 --> 00:04:57.191 この音をループ再生して 繰り返すことによって 00:04:57.215 --> 00:04:58.405 こんな音ができました NOTE Paragraph 00:04:58.429 --> 00:05:01.270 (プロペラの回転音) NOTE Paragraph 00:05:04.463 --> 00:05:10.991 つまり 創造性と技術が合わさって この錯覚が生み出されたのです 00:05:11.015 --> 00:05:14.186 まるで潜水艦の中に いるかのように感じられますね NOTE Paragraph 00:05:14.868 --> 00:05:18.229 しかし 音響効果を作って 00:05:18.253 --> 00:05:20.647 映像に合わせてみると 00:05:20.671 --> 00:05:24.722 その音に物語の中で 生きてほしいと考えるようになります 00:05:25.397 --> 00:05:29.431 良い方法のひとつは 残響を加えることです 00:05:29.997 --> 00:05:32.612 これがお話ししたい 音響ツールのひとつ目です 00:05:33.198 --> 00:05:38.320 残響音とは 元の音が止んだ後も 00:05:38.344 --> 00:05:40.275 音が持続することです 00:05:40.299 --> 00:05:42.867 ですから いわば 00:05:42.891 --> 00:05:45.927 音が様々な物質に跳ね返ったもの― 00:05:45.951 --> 00:05:48.838 つまり音を取り巻く物や 壁からの反射です NOTE Paragraph 00:05:48.862 --> 00:05:51.074 銃声を例に取ってみましょう 00:05:51.098 --> 00:05:54.100 銃声の音源は 2分の1秒もありません NOTE Paragraph 00:05:56.138 --> 00:05:57.288 (銃声) 00:05:57.747 --> 00:05:59.436 残響を加えることで 00:05:59.460 --> 00:06:02.677 まるで浴室で録音されたかのような 音にすることができます NOTE Paragraph 00:06:03.470 --> 00:06:05.033 (浴室に響く銃声) 00:06:05.057 --> 00:06:08.562 またはチャペルや教会で 録音されたかのようにもできます NOTE Paragraph 00:06:08.887 --> 00:06:10.440 (教会に響く銃声) NOTE Paragraph 00:06:11.043 --> 00:06:13.047 渓谷のようにもできます NOTE Paragraph 00:06:14.199 --> 00:06:15.960 (渓谷に響く銃声) NOTE Paragraph 00:06:15.984 --> 00:06:18.637 ですから 残響によって この音を聞く者と 00:06:18.661 --> 00:06:23.591 元の音源との間の空間について 多くのことがわかります 00:06:23.615 --> 00:06:25.724 音が味のようなものだとすれば 00:06:25.748 --> 00:06:29.932 残響は その音の においのようなものです NOTE Paragraph 00:06:30.309 --> 00:06:32.467 残響にはもっと多くのことができます 00:06:32.491 --> 00:06:36.401 画面で行われている動きよりも 残響がずっと少ない音を 00:06:36.425 --> 00:06:38.508 耳にすると 00:06:38.532 --> 00:06:41.552 すぐさま 私たちは こう思います 00:06:41.576 --> 00:06:44.219 この音は解説者によるもの― 00:06:44.243 --> 00:06:49.034 つまり 画面上の動きに参加していない 客観的な語り手の音なのだと 00:06:50.471 --> 00:06:54.662 また 映画における ごく親密な瞬間というのは 00:06:54.686 --> 00:06:56.633 残響なしで提示されることが多いです 00:06:56.657 --> 00:07:00.627 なぜなら 耳元で話されると そのように聞こえるからです NOTE Paragraph 00:07:01.024 --> 00:07:02.985 それとは全く反対に 00:07:03.009 --> 00:07:05.505 声にたくさん残響をかけると 00:07:05.529 --> 00:07:08.906 フラッシュバックを 耳にしているように聞こえたり 00:07:09.637 --> 00:07:12.946 登場人物の頭の中に いるように聞こえたり 00:07:13.946 --> 00:07:16.422 神の声を聞いているように 思えたりします 00:07:16.446 --> 00:07:18.708 映画でもっと効果を発するのは 00:07:18.732 --> 00:07:20.219 モーガン・フリーマンですね NOTE Paragraph 00:07:20.243 --> 00:07:21.527 (笑) NOTE Paragraph 00:07:21.551 --> 00:07:22.718 ですから― NOTE Paragraph 00:07:22.742 --> 00:07:24.972 (拍手) NOTE Paragraph 00:07:25.502 --> 00:07:29.373 では 音響デザイナーが用いる 他のツールや手法には 00:07:29.397 --> 00:07:31.257 どんなものがあるでしょうか? 00:07:32.186 --> 00:07:34.489 非常に重要なものがこちらです 00:07:39.901 --> 00:07:41.198 そう 無音状態です 00:07:41.807 --> 00:07:45.411 ほんの少しの静寂でも 注意を引くことができます 00:07:45.881 --> 00:07:48.321 そして 西洋では 00:07:48.345 --> 00:07:50.468 私たちは会話の中の沈黙に あまり慣れていません 00:07:50.492 --> 00:07:53.521 ぎこちないとか 失礼だと思われているからです 00:07:54.537 --> 00:07:58.110 ですから 会話に先立って 沈黙が流れると 00:07:59.021 --> 00:08:01.081 かなりの緊張感が生まれます 00:08:01.105 --> 00:08:04.810 しかし ハリウッドの超大作映画で 00:08:04.834 --> 00:08:09.178 爆発や銃が多く登場するものを 思い浮かべてみて下さい 00:08:10.389 --> 00:08:13.984 大音量も しばらくすると 大きいと感じられなくなります 00:08:14.008 --> 00:08:15.952 ですから 陰陽さながら 00:08:15.976 --> 00:08:19.113 静寂には大音量が 大音量には静寂があってこそ 00:08:19.137 --> 00:08:21.535 それぞれに効果を持つようになります NOTE Paragraph 00:08:22.350 --> 00:08:23.727 でも 静寂とは何でしょうか? 00:08:23.751 --> 00:08:26.689 これは映画でどのように 用いられるかによって違います 00:08:27.416 --> 00:08:30.595 静寂によって 登場人物の 頭の中にいると感じたり 00:08:30.619 --> 00:08:32.237 考える時間を与えられたりします 00:08:32.261 --> 00:08:35.314 私たちが静寂と 結びつけるものには― 00:08:36.654 --> 00:08:37.972 熟考 00:08:38.558 --> 00:08:39.815 瞑想 00:08:41.185 --> 00:08:42.752 沈思黙考などがあります 00:08:44.569 --> 00:08:47.671 しかし 1つの意味を持つのではなく 00:08:47.695 --> 00:08:49.865 静寂は 観る者がそれぞれに 00:08:49.889 --> 00:08:54.414 自分なりの考えを投影できる 真っ白なキャンバスになります NOTE Paragraph 00:08:54.962 --> 00:08:58.638 ただ はっきりさせておきたいのは 無音状態などないということです 00:08:59.192 --> 00:09:03.637 TEDトーク史上 最も仰々しい発言のように聞こえますね 00:09:04.835 --> 00:09:10.140 たとえ残響も外部からの音も 一切ない部屋に 00:09:10.164 --> 00:09:12.229 足を踏み入れるとしても 00:09:12.253 --> 00:09:15.370 自分の血液が押し出される 心臓の音が聞こえるはずです 00:09:16.004 --> 00:09:20.321 そして映画館では 伝統的に 無音状態などありませんでした 00:09:20.345 --> 00:09:22.265 映写機の音がするためです 00:09:22.716 --> 00:09:25.163 現在のドルビーの 音響システムの時代でも 00:09:26.034 --> 00:09:29.315 良く耳を澄ませば 全くの無音などないことがわかります 00:09:30.485 --> 00:09:32.710 常に何かしら音はしています NOTE Paragraph 00:09:32.734 --> 00:09:35.661 無音状態など存在しない とわかったところで 00:09:35.685 --> 00:09:39.256 映画監督や音響デザイナーは 何を使っているのでしょう? 00:09:39.280 --> 00:09:43.776 類似したものとして 環境音がよく使われます 00:09:44.307 --> 00:09:48.176 環境音というのは それぞれの場所に見られる― 00:09:48.200 --> 00:09:51.248 独特の周辺音のことです 00:09:51.272 --> 00:09:53.121 それぞれの場所に独特の音があり 00:09:53.145 --> 00:09:55.121 それぞれの部屋にも 独特の音があります 00:09:55.145 --> 00:09:56.718 これはルームトーンと呼ばれます 00:09:56.742 --> 00:09:59.165 これはモロッコの市場の録音です NOTE Paragraph 00:09:59.189 --> 00:10:02.129 (声や音楽) NOTE Paragraph 00:10:05.470 --> 00:10:08.238 これはニューヨークの タイムズスクエアの録音です NOTE Paragraph 00:10:08.843 --> 00:10:13.366 (交通音やクラクション、声など) NOTE Paragraph 00:10:15.449 --> 00:10:19.071 ルームトーンは 部屋の中の 雑音の合わさったものです 00:10:19.095 --> 00:10:21.484 換気扇、空調、冷蔵庫などです 00:10:21.508 --> 00:10:24.419 これはブルックリンにある 私のアパートの録音です NOTE Paragraph 00:10:24.443 --> 00:10:29.321 (換気扇、ボイラー、冷蔵庫 外の通りの音が聞こえる) NOTE Paragraph 00:10:35.422 --> 00:10:39.726 環境音は非常に 原始的な作用をします 00:10:40.718 --> 00:10:43.572 私たちの脳の 潜在意識に語りかけるのです 00:10:44.538 --> 00:10:50.387 ですから 窓の外で鳥がさえずると 平常時であることが示されます 00:10:50.937 --> 00:10:53.728 これはおそらく 私たち人間が 00:10:53.752 --> 00:10:57.889 何百万年もの間 この音を 毎朝耳にしてきたからでしょう NOTE Paragraph 00:10:58.360 --> 00:11:02.303 (鳥のさえずり) 00:11:05.839 --> 00:11:09.480 それに対して 工業的な音が 私たちの生活に入ってきたのは 00:11:09.504 --> 00:11:10.995 より最近のことです 00:11:11.969 --> 00:11:14.027 個人的にはとても好きなのですが― 00:11:14.051 --> 00:11:16.464 というのも 私の憧れである デヴィッド・リンチや 00:11:16.488 --> 00:11:18.423 その音響デザイナーの アラン・スプレットが使っているので― 00:11:18.447 --> 00:11:21.009 工業音は否定的な意味合いを 持つことが多いです NOTE Paragraph 00:11:21.033 --> 00:11:23.787 (機械音) NOTE Paragraph 00:11:28.092 --> 00:11:32.948 音響効果は私たちの 感情の記憶に訴えかけます 00:11:34.869 --> 00:11:37.226 時には 大きな意味を 持っているために 00:11:37.250 --> 00:11:39.824 映画の登場人物になることさえあります 00:11:40.569 --> 00:11:45.174 雷の音は 神の介入や 神の怒りを意味するかもしれません NOTE Paragraph 00:11:46.373 --> 00:11:49.338 (雷鳴) NOTE Paragraph 00:11:51.957 --> 00:11:55.932 教会の鐘は過ぎゆく時間や 00:11:55.956 --> 00:11:57.861 限りある命を思わせます NOTE Paragraph 00:11:59.827 --> 00:12:03.341 (教会の鐘が鳴る音) NOTE Paragraph 00:12:07.773 --> 00:12:12.263 ガラスが割れる音は 恋愛関係や友人関係の終わりを 00:12:12.287 --> 00:12:13.515 告げることができます NOTE Paragraph 00:12:14.390 --> 00:12:16.191 (ガラスが割れる音) NOTE Paragraph 00:12:16.788 --> 00:12:20.341 科学者によると 不協和音は― 00:12:20.365 --> 00:12:25.136 例えば 吹奏楽の楽器が 大音量で奏でる音などは― 00:12:26.438 --> 00:12:30.882 自然界で動物が 雄叫びを上げる様子を思わせるため 00:12:30.906 --> 00:12:34.033 焦りや恐れを感じさせるといいます NOTE Paragraph 00:12:34.506 --> 00:12:37.437 (吹奏楽器の音) NOTE Paragraph 00:12:40.714 --> 00:12:43.886 ここまで画面上での音について 話してきました 00:12:44.298 --> 00:12:48.931 しかし 音源が 目に見えないこともあります 00:12:48.955 --> 00:12:51.479 これは画面外の音 つまり 00:12:51.503 --> 00:12:52.951 「アクースマティック」と呼ばれます 00:12:53.641 --> 00:12:55.275 アクースマティックの音は― 00:12:55.887 --> 00:13:00.920 ところで「アクースマティック」という語は 古代ギリシャのピタゴラスに由来します 00:13:00.944 --> 00:13:04.535 ピタゴラスは長い間 ベールやカーテンに隠れて 00:13:04.559 --> 00:13:07.749 自らの姿を弟子にも見せず 教えを垂れたためです 00:13:07.773 --> 00:13:10.561 私が思うに この数学者でもある哲学者は 00:13:11.727 --> 00:13:12.878 そうすることによって 00:13:13.584 --> 00:13:17.621 生徒たちが声や言葉や 00:13:17.645 --> 00:13:19.609 その意味に より集中でき 00:13:19.633 --> 00:13:22.803 話しているピタゴラスの見た目に 惑わされないと考えたようです 00:13:22.827 --> 00:13:25.526 ですから オズの魔法使いや 00:13:25.550 --> 00:13:30.364 『1984』のビッグ・ブラザーのように 00:13:30.388 --> 00:13:33.654 声をその音源から切り離すと― 00:13:33.678 --> 00:13:35.569 つまり原因と結果を切り離すと 00:13:36.379 --> 00:13:40.174 遍在または全てを一望しているような 感覚が生まれて 00:13:40.198 --> 00:13:42.278 権威を感じさせます NOTE Paragraph 00:13:43.156 --> 00:13:46.217 アクースマティックの音には 力強い伝統があります 00:13:47.129 --> 00:13:53.739 ローマやヴェニスの修道院の 尼僧は天井に程近い 00:13:53.763 --> 00:13:57.622 回廊の部屋で 賛美歌を歌ったと言います 00:13:57.646 --> 00:14:01.586 天高く舞う天使の歌声を聞いているという 錯覚を感じさせるためです 00:14:02.390 --> 00:14:06.080 リヒャルト・ワーグナーは 舞台と観客の間に設けられた― 00:14:06.104 --> 00:14:09.940 オーケストラピットに オーケストラを隠したことで有名です 00:14:09.964 --> 00:14:15.007 私の憧れのエイフェックス・ツインは クラブの暗い一角で演奏しました NOTE Paragraph 00:14:15.420 --> 00:14:20.163 偉大な彼らが知っていたのは 音源を見えなくすることで 00:14:20.187 --> 00:14:21.850 神秘的な趣を出せるということです 00:14:21.874 --> 00:14:23.943 この手法は映画でも 繰り返し用いられ 00:14:23.967 --> 00:14:27.047 ヒッチコックやリドリー・スコットの 『エイリアン』などがあります 00:14:27.071 --> 00:14:29.463 その源がわからない音を耳にすると 00:14:29.487 --> 00:14:32.712 何らかの緊張感が生まれるのです 00:14:34.530 --> 00:14:40.144 また それによって映画監督の 視覚的制約が最小限にとどめられ 00:14:40.168 --> 00:14:43.858 撮影時になかったものも 表すことができます 00:14:43.882 --> 00:14:45.967 説明だけでは分かりにくい かもしれませんので 00:14:45.991 --> 00:14:48.397 ちょっとビデオを お見せしたいと思います NOTE Paragraph 00:14:49.289 --> 00:14:51.816 (おもちゃが鳴る音) NOTE Paragraph 00:14:52.383 --> 00:14:55.034 (タイプライターの音) NOTE Paragraph 00:14:55.761 --> 00:14:58.267 (ドラムの音) NOTE Paragraph 00:14:59.164 --> 00:15:01.485 (卓球の音) NOTE Paragraph 00:15:02.484 --> 00:15:05.444 (ナイフを研ぐ音) NOTE Paragraph 00:15:05.786 --> 00:15:08.832 (レコードのスクラッチ音) NOTE Paragraph 00:15:09.405 --> 00:15:10.591 (のこぎりの音) NOTE Paragraph 00:15:10.615 --> 00:15:12.072 (女性の叫び声) NOTE Paragraph 00:15:12.663 --> 00:15:16.458 これらのツールで お見せしようとしているのは 00:15:17.930 --> 00:15:20.119 音響は言語であるということです 00:15:20.516 --> 00:15:23.658 違う場所にいるように錯覚させたり 00:15:24.571 --> 00:15:26.087 雰囲気を変えたり 00:15:26.579 --> 00:15:28.000 ペースを設定したり 00:15:29.482 --> 00:15:32.936 笑わせたり 怖がらせたりできます NOTE Paragraph 00:15:34.698 --> 00:15:38.048 個人的には 私が この言語が好きになったのは 00:15:38.072 --> 00:15:39.389 数年前のことで 00:15:39.413 --> 00:15:44.020 これを何とか 仕事にすることができました 00:15:45.274 --> 00:15:48.500 私が思うに 音響ライブラリーの仕事で 00:15:48.524 --> 00:15:54.320 私たちはこの音響という言語の 語彙を増やそうとしているのです 00:15:55.797 --> 00:15:59.279 そうすることで 私たちは適切なツールを 00:15:59.303 --> 00:16:00.943 音響デザイナーや 00:16:00.967 --> 00:16:02.315 映画制作者や 00:16:02.339 --> 00:16:04.174 ゲームやアプリのデザイナーに提供し 00:16:04.748 --> 00:16:07.883 彼らがより上手く物語を伝えたり 00:16:08.382 --> 00:16:11.114 もっと美しい嘘をつけるように 手助けしているのです NOTE Paragraph 00:16:11.138 --> 00:16:12.425 聞いてくださって ありがとうございました NOTE Paragraph 00:16:12.449 --> 00:16:15.968 (拍手)