WEBVTT 00:00:00.852 --> 00:00:04.025 去年の夏 エリーという女性から 電話がかかってきました 00:00:04.049 --> 00:00:07.289 アメリカ南部の国境で起きている 親子引き離し問題のことを聞き 00:00:07.313 --> 00:00:09.815 自分に何かできないかと 思ったのだそうです 00:00:09.839 --> 00:00:13.788 彼女は私に 自分の祖父と その父の話を教えてくれました 00:00:14.285 --> 00:00:16.373 祖父と兄弟は子供の頃 ポーランドにいたのですが 00:00:16.397 --> 00:00:19.568 息子達の安全を心配した 祖父の父親が 00:00:19.592 --> 00:00:22.726 わずかなお金を持たせて 西に向かうように言ったそうです 00:00:22.750 --> 00:00:25.110 西へ西へと歩いて ヨーロッパを横断しろと— 00:00:25.134 --> 00:00:26.293 そして兄弟は歩きました 00:00:26.317 --> 00:00:28.335 ヨーロッパを横断して最西端まで歩き 00:00:28.359 --> 00:00:31.385 船に乗り アメリカに着きました 00:00:32.159 --> 00:00:36.179 エリーは メキシコから 南へ南へと歩いて来る 00:00:36.203 --> 00:00:38.599 成人前の若者の話を聞いて 00:00:38.623 --> 00:00:43.224 祖父やその兄弟のことを 考えずにはいられなかったそうです 00:00:43.248 --> 00:00:46.936 どちらの話も全く同じだと 彼女は言いました NOTE Paragraph 00:00:47.841 --> 00:00:51.432 この話の兄弟とは「Hassenfeld Brothers (ハッセンフェルド・ブラザース)」— 00:00:51.456 --> 00:00:53.360 「Has (ハズ)」「Bros (ブロス)」— 00:00:54.596 --> 00:00:56.769 現在の玩具メーカー 「Hasbro (ハズブロ)」 00:00:56.793 --> 00:00:59.944 ご存知のように「ミスター・ポテトヘッド」を 世の中に送り出した企業です NOTE Paragraph 00:01:01.254 --> 00:01:04.381 ただ私がこの話をするのは それを伝えたいからではありません 00:01:05.302 --> 00:01:08.562 この話を聞いて 考えさせられたからです 00:01:08.586 --> 00:01:11.803 私が同じ立場だったら それほどの信念と 00:01:11.827 --> 00:01:13.372 勇気を持って— 00:01:13.396 --> 00:01:16.815 私にも成人前の子供が3人いますが 自分の子供達を 00:01:16.839 --> 00:01:18.167 そんな旅に出せるだろうか 00:01:19.169 --> 00:01:22.576 今いるところが安全でないことが 分かっていたとしても 00:01:22.600 --> 00:01:24.686 旅立つ子供達を見送れるだろうか? NOTE Paragraph 00:01:26.995 --> 00:01:31.874 私は数十年前にアメリカ南部国境地帯で 弁護士の仕事を始めました 00:01:31.898 --> 00:01:34.417 中央アメリカから逃れてきた 亡命希望者が相手でした 00:01:34.928 --> 00:01:38.494 そしてこの16年間 HIASという 00:01:38.518 --> 00:01:42.619 世界各国で難民の人権を 守るために戦うユダヤ系の団体で 00:01:42.643 --> 00:01:44.332 弁護士や代理人を務めてきました 00:01:44.919 --> 00:01:48.412 これまで学んできたことを 1つあげると 00:01:49.229 --> 00:01:53.119 私達に安全と力をもたらすと 言われながら 実はそうではないことが 00:01:53.143 --> 00:01:54.348 あるということです 00:01:55.262 --> 00:02:00.201 実際に一部の政策は 意図とは逆の結果を招き 00:02:00.225 --> 00:02:05.328 とてつもなく大きな 無用の苦しみをもたらしています NOTE Paragraph 00:02:06.571 --> 00:02:09.708 では何故 人々は 南部の国境に来るのでしょうか? 00:02:09.732 --> 00:02:13.210 アメリカ南部国境に来る 移民や難民の大半は 00:02:13.234 --> 00:02:17.348 グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルの 3ヶ国から逃れてきます 00:02:17.952 --> 00:02:20.360 この3ヶ国は一貫して 00:02:20.384 --> 00:02:23.695 世界で最も危険な国にあげられます 00:02:23.719 --> 00:02:26.086 これらの国では 安全を確保することや 00:02:26.110 --> 00:02:29.375 ましてや 自分や家族が明るい未来を 描くことなど 到底無理です 00:02:30.180 --> 00:02:33.157 女子や女性に対する暴力行為は 絶えません 00:02:34.021 --> 00:02:37.291 何世代にも渡って人々が 中南米の国々から 00:02:37.315 --> 00:02:38.895 逃れています 00:02:38.919 --> 00:02:41.527 何世代もの間 難民が 国境に来ているのです 00:02:41.551 --> 00:02:46.312 アメリカが深く関わった 1980年代の内戦から 00:02:46.336 --> 00:02:48.568 逃れるためです 00:02:49.227 --> 00:02:50.584 今に始まったことではありません 00:02:51.169 --> 00:02:55.937 新しい傾向は 家族が急増していること 00:02:55.961 --> 00:02:58.755 子供達や家族が 国境の検問所に現れて 00:02:58.779 --> 00:03:01.114 亡命を申請していることです NOTE Paragraph 00:03:02.262 --> 00:03:04.428 この事態は最近ニュースでも 取り上げられていますが 00:03:04.452 --> 00:03:07.770 映像を見る上で いくつか 覚えておいてほしいことがあります 00:03:07.794 --> 00:03:13.888 1つ目は 国境地帯で拘束された人数は 歴史的にみて それほど多い訳ではなく 00:03:13.912 --> 00:03:17.023 実際は自ら検問所に 出頭しているということです 00:03:17.444 --> 00:03:22.315 2つ目は 人々が着のみ着のままで やって来ること 00:03:22.339 --> 00:03:24.681 ゴムサンダルを履いた人もいます 00:03:24.705 --> 00:03:27.651 そして3つ目に アメリカが 世界で最も強大な国だということ 00:03:28.204 --> 00:03:29.808 パニックを起こす時ではありません 00:03:30.601 --> 00:03:33.127 安全な受け入れ国にいて 00:03:33.151 --> 00:03:35.022 法律上の是非を問うのは簡単です 00:03:35.046 --> 00:03:37.345 「それは合法か違法か?」と 00:03:37.734 --> 00:03:40.237 ところが この問題と格闘し 00:03:40.261 --> 00:03:44.076 家族のために決断を 強いられる立場にある人々は 00:03:44.100 --> 00:03:46.664 全く別のことを考えているのです 00:03:46.688 --> 00:03:48.561 娘の安全をどうやって確保するか? 00:03:49.458 --> 00:03:50.900 息子をどうやって守るか? 00:03:52.114 --> 00:03:54.374 もし不変のルールが 知りたいなら こうです 00:03:54.398 --> 00:03:57.411 亡命の申請は完全に合法です 00:03:57.862 --> 00:04:02.749 我が国の法でも 国際法でも 亡命は基本的人権です 00:04:02.773 --> 00:04:03.963 その証拠に— NOTE Paragraph 00:04:03.987 --> 00:04:10.851 (拍手) NOTE Paragraph 00:04:10.875 --> 00:04:14.416 亡命の根拠は 1951年難民条約にあります 00:04:14.440 --> 00:04:17.512 これはホロコーストに対して 世界が出した答えであり 00:04:17.536 --> 00:04:21.346 条約を締結した国々が 危険に侵され 殺害される恐れのある人たちを 00:04:21.370 --> 00:04:23.574 決して送り返さないという 意志の表明です NOTE Paragraph 00:04:24.306 --> 00:04:26.827 難民としてアメリカに入国するには 方法がいくつかあります 00:04:26.851 --> 00:04:29.655 その1つが「米国難民受入事業」 00:04:29.679 --> 00:04:33.809 この事業を通じて政府は 海外にいる難民を割り出し 選定し 00:04:33.833 --> 00:04:35.889 アメリカに迎え入れます 00:04:36.527 --> 00:04:40.169 昨年 アメリカに定住した難民数は 00:04:40.193 --> 00:04:43.874 このプログラムが1980年に 始まって以来 最低になりました 00:04:43.898 --> 00:04:45.856 今年は更にその数は減るでしょう 00:04:46.800 --> 00:04:49.763 世界中で歴史的にみても かつてないほど難民が増え 00:04:49.787 --> 00:04:53.255 第二次世界大戦以降で 最大の規模であるにも関わらずです NOTE Paragraph 00:04:54.020 --> 00:04:57.787 難民がアメリカに入国する 2つ目の方法は 亡命を希望することです 00:04:57.811 --> 00:05:01.096 亡命希望者とは 国境で出頭した際に 00:05:01.120 --> 00:05:04.424 強制送還されると祖国で迫害を受けると 訴える人のことです 00:05:04.448 --> 00:05:07.662 亡命希望者とはただ単に 難民として承認される 00:05:07.686 --> 00:05:11.407 証明する手続きを アメリカ国内でしている人を指すのです 00:05:13.407 --> 00:05:16.843 亡命申請は かつてなく 難しくなっています 00:05:16.867 --> 00:05:19.945 国境にたどり着いた人々に 国境警備隊員は 00:05:19.969 --> 00:05:22.518 アメリカは もう満員だから 申請さえできないと伝えます 00:05:22.542 --> 00:05:24.353 これは先例のない 違法な対応です 00:05:24.828 --> 00:05:27.068 最近導入された新制度— 00:05:27.092 --> 00:05:31.258 「移民保護手続き」と オーウェルを思わせるような名称ですが— 00:05:32.472 --> 00:05:35.128 この制度では難民はメキシコで 待機することが命じられ 00:05:35.152 --> 00:05:38.630 その間アメリカ国内の裁判所で 各々の申請が審査され 決定までには 00:05:38.654 --> 00:05:40.310 何ヶ月も何年もかかることがあります 00:05:40.334 --> 00:05:42.153 その間 待機する難民に安全の保証はなく 00:05:42.177 --> 00:05:44.200 弁護士と話す機会もありません NOTE Paragraph 00:05:45.830 --> 00:05:50.190 我が国 我が政府はすでに 3千人以上の子供を拘束し 00:05:50.214 --> 00:05:52.791 亡命申請を抑止する手段として 00:05:52.815 --> 00:05:54.901 子供達を親の手から引き離しています 00:05:55.723 --> 00:05:57.132 子供の多くは幼児で 00:05:57.913 --> 00:06:00.557 6歳の盲目の女の子までいました 00:06:00.581 --> 00:06:02.062 この状況は今も続いています 00:06:02.812 --> 00:06:06.680 私たちは何十億ドルもつぎ込んで 刑務所と変わらない施設で 00:06:06.704 --> 00:06:08.241 犯罪者でもない人々を拘束しています 00:06:10.799 --> 00:06:16.230 我が国の移民政策の特徴になってしまった 親子の引き離しは 00:06:16.603 --> 00:06:21.661 「丘の上の輝く街」や「希望の光」など 私達が持つ国民性や価値観の理想像とは 00:06:21.685 --> 00:06:25.524 かけ離れています NOTE Paragraph 00:06:26.137 --> 00:06:29.385 移民の流れはこれまでも これからも この国の一部です 00:06:29.899 --> 00:06:33.578 人々が祖国から逃れる原因である 迫害 戦争 暴力— 00:06:33.602 --> 00:06:35.115 気候変動や 00:06:35.139 --> 00:06:39.429 携帯で他の場所の 暮らしが見られる状況から 00:06:39.453 --> 00:06:41.269 生まれる動機は増す一方です 00:06:42.602 --> 00:06:48.279 ただ 私たちの価値観に沿った政策を 可能にする方法も存在しますし 00:06:48.303 --> 00:06:51.218 世界が置かれている現実を考えると その方が道理にかなっています NOTE Paragraph 00:06:51.980 --> 00:06:58.063 まずやるべきことは あまりにも長く この問題の国民的議論の基盤になっている 00:06:58.087 --> 00:07:02.778 毒のある言い方を避けることです NOTE Paragraph 00:07:03.437 --> 00:07:08.551 (拍手) NOTE Paragraph 00:07:10.702 --> 00:07:13.846 私自身は移民でも難民でもありませんが 00:07:13.870 --> 00:07:17.870 自分が非難されているように感じています 祖父母は移民でしたから 00:07:19.211 --> 00:07:23.759 祖父の母に当たるローズは 7年も自分の子供に会わずに 00:07:23.783 --> 00:07:26.245 彼らをポーランドからニューヨークへ 連れて来ようと奔走しました 00:07:26.269 --> 00:07:28.200 ローズは7歳だった 私の祖父を置いて出国し 00:07:28.224 --> 00:07:30.245 14歳まで再会できなかったのです 00:07:30.269 --> 00:07:31.865 母方はというと 00:07:31.889 --> 00:07:35.526 祖母のアリーザは1930年代に ポーランドを後にし 00:07:35.550 --> 00:07:38.423 当時イギリス委任統治領であった パレスチナへ向かい 00:07:38.447 --> 00:07:40.693 家族や友人には 2度と会えませんでした 00:07:41.741 --> 00:07:46.795 世界規模の移民と避難民に対処する グローバルな協力体制があれば 00:07:46.819 --> 00:07:51.304 移住は危機ではなく 当たり前のことになり 00:07:51.328 --> 00:07:52.681 世界が一丸となって 00:07:52.705 --> 00:07:55.253 対応する大きな力になるでしょう 00:07:56.488 --> 00:07:58.893 人道支援も不可欠です 00:07:58.917 --> 00:08:01.918 難民や移民の出身地である 中央アメリカ諸国に投じている 00:08:01.942 --> 00:08:04.371 我が国の援助額は 00:08:04.395 --> 00:08:09.590 取り締まりと拘束のために 支出する額に比べると微々たるものです 00:08:10.756 --> 00:08:14.525 適切に機能する亡命制度は 必ず作れます 00:08:15.460 --> 00:08:18.180 国境の壁の建設費と比べれば ほんのわずかな費用で 00:08:18.204 --> 00:08:19.585 裁判官をもっと増やし 00:08:19.609 --> 00:08:21.839 亡命希望者に弁護士をつけ 00:08:21.863 --> 00:08:24.384 もっと人道的な亡命制度を 実現できるのです NOTE Paragraph 00:08:24.955 --> 00:08:29.621 (拍手) NOTE Paragraph 00:08:33.090 --> 00:08:35.656 そうすれば より多くの難民が 定住できるでしょう 00:08:36.118 --> 00:08:39.291 難民制度の衰退が分かる 例をあげましょう 00:08:39.315 --> 00:08:43.574 3年前 米国は1万5千人の シリア難民を受け入れることで 00:08:43.598 --> 00:08:46.237 地球上で最大規模の 難民危機に対応しました 00:08:46.261 --> 00:08:49.378 その1年後 受け入れた難民は 3千人に減少し 00:08:49.402 --> 00:08:52.837 そして昨年は62人 00:08:54.109 --> 00:08:55.840 たった62人です NOTE Paragraph 00:08:56.819 --> 00:09:00.719 移民を阻止し 難民を 国内に入れないために 00:09:00.743 --> 00:09:02.680 厳しい言動をとる人もいますが 00:09:02.704 --> 00:09:06.085 世論調査によると 米国で難民や移民を支持する動きは 00:09:06.109 --> 00:09:07.352 かつてないほど高まっています 00:09:07.376 --> 00:09:09.317 私が所属するHIASのような団体や 00:09:09.341 --> 00:09:11.849 その他の宗教に基盤をおく 人道支援組織は 00:09:11.873 --> 00:09:14.020 反対すべき法律や 00:09:14.044 --> 00:09:16.614 支持すべき法律 監視の必要な政策がある場合 00:09:16.638 --> 00:09:20.015 皆さんが自分の意思を 表明する手助けをしてくれます 00:09:20.485 --> 00:09:23.183 電話さえあれば 行動を起こせますし 00:09:23.207 --> 00:09:24.955 さらに手助けしたければ それも可能です 00:09:24.979 --> 00:09:28.575 もし皆さんが 子供達が収容されている 00:09:28.599 --> 00:09:31.835 まるで刑務所のような 国境沿いの収容施設を見たら 00:09:31.849 --> 00:09:33.322 きっと考え方が変わるはずです NOTE Paragraph 00:09:35.320 --> 00:09:37.915 エリーと電話で話して すごく嬉しかったのは 00:09:38.792 --> 00:09:42.648 彼女は 自分の祖父の話が 今 起きていることと同じだと 00:09:43.537 --> 00:09:45.676 心の底から理解して 00:09:45.700 --> 00:09:47.766 どうにかしたいと 思ってくれたことです NOTE Paragraph 00:09:48.974 --> 00:09:51.320 私が皆さんに1つだけ 覚えておいてほしいのは 00:09:51.344 --> 00:09:53.746 ミスター・ポテトヘッドの 裏話だけでなく— 00:09:53.770 --> 00:09:57.198 もちろん これはこれで いい話ですが— 00:09:57.222 --> 00:10:01.370 国家は 思いやりと 現実的な対応を通じて 00:10:02.522 --> 00:10:04.839 その力を示すべきだということです 00:10:04.863 --> 00:10:06.770 暴力と恐怖で 力を示すべきではありません NOTE Paragraph 00:10:07.448 --> 00:10:13.441 (拍手) NOTE Paragraph 00:10:17.139 --> 00:10:21.305 ハッセンフェルド兄弟の話だとか 私やあなたの親戚の話と 00:10:21.329 --> 00:10:23.879 同じことが今でも起きています 全く変わっていません 00:10:25.269 --> 00:10:28.546 国家の強さとは 難民に対して 00:10:28.570 --> 00:10:31.767 「出て行け」ではなく 00:10:31.791 --> 00:10:34.608 「もう大丈夫 安心して」と 言う時に表れるものなのです NOTE Paragraph 00:10:35.112 --> 00:10:36.275 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:10:36.299 --> 00:10:39.124 (拍手) NOTE Paragraph 00:10:39.148 --> 00:10:40.354 ありがとう NOTE Paragraph 00:10:40.378 --> 00:10:41.739 (拍手)