WEBVTT

00:00:06.726 --> 00:00:12.814
2000年以降 米国の年間受刑者数は
横ばい傾向を続けていますが

00:00:12.844 --> 00:00:18.349
年間平均収監者数は
毎年著しく増加しています

00:00:18.369 --> 00:00:20.009
これはどうしてでしょうか？

00:00:20.009 --> 00:00:22.109
その答えは保釈制度にあります

00:00:22.109 --> 00:00:25.489
制度が意図した仕組みが
機能していないからです

NOTE Paragraph

00:00:25.489 --> 00:00:30.289
「保釈」とは 公判を待つ被疑者の
暫定的な釈放を意味しますが

00:00:30.289 --> 00:00:33.149
その条件が被疑者が法廷へ出頭し
容疑と向き合うことです

00:00:33.149 --> 00:00:36.529
世界中の国では
様々な条件の保釈を適用しますが

00:00:36.529 --> 00:00:38.909
中には保釈という措置は
使わない国もあります

00:00:38.909 --> 00:00:44.290
米国の保釈制度は
主に現金保釈により成り立っています

00:00:44.290 --> 00:00:46.880
この制度は次のような仕組みです

NOTE Paragraph

00:00:46.880 --> 00:00:48.880
罪に問われた人に対し

00:00:48.880 --> 00:00:51.820
裁判官は妥当と思われる保釈金を設定します

00:00:51.820 --> 00:00:55.340
被疑者は保釈金を納めることにより

00:00:55.340 --> 00:00:58.430
判決が下るまで
刑務所から釈放されます

00:00:58.430 --> 00:01:01.840
訴訟が終結すると 
有罪無罪に関わらず

00:01:01.840 --> 00:01:06.360
被疑者が無欠席で出廷していれば
保釈金は返金されます

00:01:06.360 --> 00:01:09.310
この制度の根拠にあるのが

00:01:09.310 --> 00:01:13.320
米国司法制度の推定無罪の原則です

00:01:13.320 --> 00:01:16.200
罪に問われた如何なる人も

00:01:16.200 --> 00:01:19.310
有罪判決確定まで
収監されるべきではないというものです

NOTE Paragraph

00:01:19.310 --> 00:01:22.000
ところが現行の米国の保釈制度では

00:01:22.000 --> 00:01:24.500
推定無罪の原則が守られていません

00:01:24.500 --> 00:01:30.093
それどころか 被疑者の人権を侵害し
特に多大な被害が及ぶのは

00:01:30.093 --> 00:01:33.643
低所得層と有色人種の人々が住む地域社会です

NOTE Paragraph

00:01:33.643 --> 00:01:36.943
その主な原因は保釈金の負担です

00:01:36.943 --> 00:01:39.703
現金保釈が従来の役割を果たすには

00:01:39.703 --> 00:01:42.873
被疑者に支払いが可能な
額でなくてはなりません

00:01:42.873 --> 00:01:47.458
有罪の可能性を示唆した額の
保釈金のはずではありませんでした

00:01:47.458 --> 00:01:51.068
保釈金設定の時点では
裁判所は検証をまだしていません

00:01:51.068 --> 00:01:56.244
例えば罪が非常に重い等の
特別な事情がある場合に限り

00:01:56.244 --> 00:02:01.135
裁判官が保釈請求を拒否し
被疑者を公判前に拘置することもできます

00:02:01.135 --> 00:02:05.005
裁判官がこの権限を行使するのは
例外であるべきとされ

00:02:05.005 --> 00:02:08.295
頻繁に行われると
調査の対象になる可能性もあります

00:02:08.295 --> 00:02:12.295
そのため 公判前の釈放を阻止する
２つ目の方法として

00:02:12.295 --> 00:02:15.695
負担しきれない高額な保釈金を
設定するようになりました

00:02:15.695 --> 00:02:19.510
この場合には
裁判官の個人的な裁量や偏見が

00:02:19.510 --> 00:02:22.110
誰をこの方法で拘束するかの選択に
大きく左右しました

00:02:22.110 --> 00:02:27.633
年々上昇する保釈金額と共に
支払いができない被疑者の数が増大しました

00:02:27.633 --> 00:02:29.862
その結果さらに多くが
刑務所に留まりました

NOTE Paragraph

00:02:29.862 --> 00:02:32.553
19世紀後半には この状況が背景となり

00:02:32.553 --> 00:02:36.870
保釈保証業が出現しました

00:02:36.870 --> 00:02:42.965
被疑者の保釈金を立て替えて
高額な手数料を請求する業者です

NOTE Paragraph

00:02:42.965 --> 00:02:46.965
現在の平均保釈金は１万ドルです

00:02:46.965 --> 00:02:51.094
それはアメリカ国民の半数近く

00:02:51.094 --> 00:02:55.148
そして被疑者の10人中９人にとって
きわめて高額といえる金額です

00:02:55.148 --> 00:02:57.458
支払いができない被疑者は

00:02:57.458 --> 00:03:00.570
保釈保証業者へ
ローンを申し込むことができますが

00:03:00.570 --> 00:03:04.570
誰の保釈金を立て替えるかは
業者が独断で決めることができます

00:03:04.570 --> 00:03:08.107
業者は返金できそうだと思える
被疑者を選び

00:03:08.107 --> 00:03:11.671
年間約20億ドルの利益を得ています

NOTE Paragraph

00:03:11.671 --> 00:03:14.131
事実 過去20年において

00:03:14.131 --> 00:03:19.560
公判前の拘置が
米国の収監者増加の主な要因です

00:03:19.589 --> 00:03:23.147
毎年 何十万という数の人が
保釈金が払えないか あるいは

00:03:23.147 --> 00:03:27.718
保釈金ローンの確保に困り
訴訟の終結まで刑務所に留まります

00:03:27.718 --> 00:03:32.496
この不公正の影響は
アフリカ系とラテン系の米国人に偏っていて

00:03:32.496 --> 00:03:35.246
裁判官は往々にして

00:03:35.246 --> 00:03:38.614
同等の罪に問われた白人よりも
高額な保釈金を設定します

NOTE Paragraph

00:03:38.754 --> 00:03:43.374
負担しきれない保釈金は
無実の被疑者さえ無理な状況に追い込みます

00:03:43.374 --> 00:03:46.974
犯していない罪を認めてしまう人もいます

00:03:46.974 --> 00:03:51.636
軽犯罪の場合には
検察側が被疑者に提示することもあるのが

00:03:51.636 --> 00:03:55.205
罪を認める答弁を司法取引として

00:03:55.205 --> 00:03:58.025
すでに終えた留置期間を
減刑要素に充てる条件です

00:03:58.025 --> 00:04:04.254
多くの場合 留置期間と刑期は同じで
すぐに釈放が許されます

00:04:04.311 --> 00:04:06.822
しかし犯罪歴は残ります

00:04:06.822 --> 00:04:08.807
その一方で 無実を主張し続けると

00:04:08.807 --> 00:04:12.983
公判を待ちながら
無期限に収監されることもあります

00:04:12.983 --> 00:04:16.323
だからと言って無罪判決の保証はありません

NOTE Paragraph

00:04:16.323 --> 00:04:19.343
そもそも 保釈金制度の必要性は
ないかもしれません

00:04:19.343 --> 00:04:23.886
ワシントンDCは1990年代に
現金保釈をおおまか廃止しました

00:04:23.886 --> 00:04:30.203
2017年には 被疑者の94％を
保釈金なしで釈放しましたが

00:04:30.233 --> 00:04:34.733
その88％の人たちが 
全ての出廷義務を果たしています

00:04:34.733 --> 00:04:37.623
非営利団体
「The Bail Project （保釈プロジェクト）」は

00:04:37.623 --> 00:04:42.333
毎年 何千人もの低所得者に
無償で保釈金を援助することにより

00:04:42.333 --> 00:04:46.795
保釈制度が意図とした
返金にかられた目的を無くします

00:04:46.795 --> 00:04:48.155
その結果は？

00:04:48.155 --> 00:04:53.105
被疑者は返金に関係なく
公判の90%に出廷し

00:04:53.105 --> 00:04:55.719
出廷日を逃した場合でも
その理由は主に

00:04:55.719 --> 00:05:01.454
育児や仕事
急病などの事情によるものです

00:05:01.454 --> 00:05:05.592
ある調査結果によると
被疑者の公判前の拘置は

00:05:05.592 --> 00:05:08.732
多くの場合保釈金が払えないのが
主な理由ですが

00:05:08.732 --> 00:05:13.862
その結果として再逮捕や再犯の
可能性が高まると立証されています

NOTE Paragraph

00:05:13.862 --> 00:05:17.178
公判前の収監は 被疑者だけでなく
地域社会全般に被害を与え

00:05:17.178 --> 00:05:21.778
その被害を家族の人たちは
何世代にも渡り負い続けます

00:05:21.778 --> 00:05:25.860
収監された被疑者は生計手段や家や

00:05:25.860 --> 00:05:28.340
生活に必要な様々なサービスを
失うこともあります

00:05:28.340 --> 00:05:31.650
その全てを罪の確定前に失うこともあるのです

00:05:31.650 --> 00:05:34.070
さらに この制度はかなりコストがかかります

00:05:34.070 --> 00:05:38.762
米国の納税者は 毎年140億ドル近くを

00:05:38.762 --> 00:05:42.762
司法上では無罪とされる人たちの
収監に支払っています

00:05:42.762 --> 00:05:46.242
この現状は人種や富に関係なく

00:05:46.242 --> 00:05:48.932
法律に基づく公平な裁判の権利に反しています

NOTE Paragraph

00:05:48.932 --> 00:05:53.702
現金保釈をとりまく問題は
多くの社会問題—

00:05:53.702 --> 00:05:58.352
例えば 構造的な人種差別や
過剰な留置制度への依存の表れです

00:05:58.352 --> 00:06:01.362
The Bail Project のような
改革を推進する団体が

00:06:01.362 --> 00:06:05.592
現金保釈制度のジレンマに陥る
人々の助けに当面は務めながら

00:06:05.592 --> 00:06:10.288
今よりも公平で人道的な公判前制度の確立を
将来に向けてめざしています