1 00:00:06,965 --> 00:00:08,957 アンメイおばさんの家で 2 00:00:08,855 --> 00:00:10,781 気が進まないながらジンメイは 3 00:00:10,781 --> 00:00:13,052 麻雀卓の東の席に着く 4 00:00:13,052 --> 00:00:15,517 北、南、西の席には 5 00:00:15,517 --> 00:00:19,053 ジョイ・ラック・クラブの長年のメンツである おばさんたちが着いている 6 00:00:19,053 --> 00:00:22,857 この移民の家族の毎週の集まりでは 噂話をし 7 00:00:22,857 --> 00:00:26,947 ワンタンや甘い焼豚を食べ 麻雀をする 8 00:00:26,947 --> 00:00:32,538 このクラブを始めたジンメイの母親 スーユアンが最近亡くなった 9 00:00:32,538 --> 00:00:35,970 ジンメイは母の代わりを務めるのを 最初は難しく感じるが 10 00:00:35,970 --> 00:00:40,566 母の人生に隠された秘密を おばさんたちから聞いて 11 00:00:40,566 --> 00:00:45,502 ジンメイは母についても自分についても まだ知らないことがあるのに気付く ― 12 00:00:45,502 --> 00:00:49,950 エイミ・タンの1989年の出世作 『ジョイ・ラック・クラブ』で 13 00:00:49,950 --> 00:00:52,141 この麻雀卓を囲む集まりは 14 00:00:52,141 --> 00:00:56,241 一連の絡み合った小品群の 出発点になります 15 00:00:56,241 --> 00:01:00,804 本の構成自体が この中国生まれのゲームを模していて 16 00:01:00,804 --> 00:01:04,949 麻雀が少なくとも4局からなる 4場で戦われるように 17 00:01:04,949 --> 00:01:08,708 この本は4つの章からなる 4部で構成されています 18 00:01:08,708 --> 00:01:12,169 中国とサンフランシスコを 交互に舞台とする それぞれの章では 19 00:01:12,169 --> 00:01:16,272 ジョイ・ラック・クラブの4人の女性 あるいはアメリカ生まれのその娘たちの中の 20 00:01:16,272 --> 00:01:18,315 誰かの物語が語られます 21 00:01:18,315 --> 00:01:19,834 それらの話は読者を 22 00:01:19,834 --> 00:01:22,176 中国の戦地や 田舎の村へと 23 00:01:22,176 --> 00:01:26,309 現代の結婚や 食卓を囲む緊張した集まりへと連れていきます 24 00:01:26,309 --> 00:01:29,061 物語がテーマとするのは 生存と喪失 25 00:01:29,061 --> 00:01:33,617 愛とその欠如 夢と満たされない現実です 26 00:01:33,617 --> 00:01:35,428 1つの物語では リンおばさんが 27 00:01:35,428 --> 00:01:38,631 許嫁の男の冷たい家族から 逃亡を企て 28 00:01:38,631 --> 00:01:41,558 アメリカにたどり着きます 29 00:01:41,558 --> 00:01:46,067 別の物語では シュー家の ビーチでのアメリカ的な一日が暗転し 30 00:01:46,067 --> 00:01:49,998 ローズが母親から課せられた責任を 負いきれず起きた悲劇に 31 00:01:49,998 --> 00:01:54,214 家族は長く苦しめられる ことになります 32 00:01:54,214 --> 00:01:57,406 これらの物語は 移民の家族で特に起こりがちな 33 00:01:57,406 --> 00:02:01,023 世代や文化の違いによる 分断を描き出しています 34 00:02:01,023 --> 00:02:04,878 中国で大変な思いをしてきた 母親たちは 35 00:02:04,878 --> 00:02:08,102 子供たちにアメリカで もっと恵まれた機会を与えようと 36 00:02:08,102 --> 00:02:09,861 倦むことなく働きます 37 00:02:09,861 --> 00:02:11,136 しかし娘たちは 38 00:02:11,136 --> 00:02:15,225 親の満たされぬ願いや 高い期待を 重荷に感じます 39 00:02:15,225 --> 00:02:19,973 ジンメイは母親の友人たちと麻雀をしながら そのプレッシャーを感じ悩みます 40 00:02:19,973 --> 00:02:23,220 「おばさんたちは私の中に 自分の娘を見ている 41 00:02:23,220 --> 00:02:28,643 自分たちがアメリカに持ってきた 真実や希望に無知で無頓着だと」 42 00:02:28,643 --> 00:02:30,606 母親たちは繰り返し娘たちに 43 00:02:30,606 --> 00:02:33,576 歴史や受け継いでいるものを 思い起こさせようとします 44 00:02:33,576 --> 00:02:36,259 一方で娘たちは 母親が自分に持つイメージと 45 00:02:36,259 --> 00:02:39,174 本当の自分を折り合わせるのに 苦労しています 46 00:02:39,174 --> 00:02:42,343 ある物語は「娘は私のことを 知っているのかしら?」と問い 47 00:02:42,343 --> 00:02:46,269 別の物語は「母さんはどうして 分からないんだろう?」と返します 48 00:02:46,269 --> 00:02:48,821 そういう問いを通して 語られているのは 49 00:02:48,821 --> 00:02:51,932 多くの移民を苦しめている 不安であり 50 00:02:51,932 --> 00:02:57,408 祖国から疎外され 移民先からも切り離されている感覚です 51 00:02:57,408 --> 00:03:00,731 しかし4人の母親と その娘たちの物語を 編み合わせることで示されるのは 52 00:03:00,731 --> 00:03:05,228 娘たちが 母たちの伝えた価値を通して 53 00:03:05,228 --> 00:03:09,404 現在の問題に取り組む力を 得ているということです 54 00:03:09,404 --> 00:03:11,600 『ジョイ・ラック・クラブ』が出版されたとき 55 00:03:11,600 --> 00:03:13,758 著者は大きな成功を 期待してはいませんでしたが 56 00:03:13,758 --> 00:03:16,596 その予想に反して この本は批評家から高く評価され 57 00:03:16,596 --> 00:03:18,601 商業的にも成功を収めました 58 00:03:18,601 --> 00:03:22,190 本書の登場人物たちは今もなお 世界中の読者の心を掴み続けています 59 00:03:22,190 --> 00:03:26,344 中国系アメリカ人や移民の経験を 物語る語り口だけでなく 60 00:03:26,344 --> 00:03:29,026 そこに見出される 深い真実によって― 61 00:03:29,026 --> 00:03:33,074 それは愛する者によって見てもらえ 理解してもらえることの必要性です