1 00:00:00,946 --> 00:00:03,340 人の脳の何がそんなに 特別なのでしょうか? 2 00:00:03,340 --> 00:00:05,552 私たちは動物を研究しますが 3 00:00:05,552 --> 00:00:07,673 その逆はありません 何故でしょうか? 4 00:00:07,673 --> 00:00:09,471 人の脳にはあり 5 00:00:09,471 --> 00:00:11,204 動物の脳にないものは 何でしょう? 6 00:00:11,204 --> 00:00:14,052 10年前こういうことに 興味を持ったとき 7 00:00:14,052 --> 00:00:16,994 科学者は どの脳も 同じ物から できていると思っていました 8 00:00:16,994 --> 00:00:18,723 その根拠となる証拠は 殆どなかったのですが 9 00:00:18,723 --> 00:00:20,910 科学者が思っていたことは 全てのほ乳類の脳は 10 00:00:20,910 --> 00:00:22,635 人も含め — 11 00:00:22,635 --> 00:00:23,935 同じ様に出来ていて — 12 00:00:23,935 --> 00:00:25,437 そのニューロン数は 13 00:00:25,437 --> 00:00:27,668 脳のサイズに 釣り合っているということでした 14 00:00:27,668 --> 00:00:29,744 どういうことかと言うと 例えば同じサイズの 15 00:00:29,744 --> 00:00:33,292 こちらのような400グラムの 2つの脳があるとすれば 16 00:00:33,292 --> 00:00:35,844 その2つのニューロン数は 同じ位だろうということです 17 00:00:35,844 --> 00:00:37,640 ニューロンが 情報処理機能を担っているなら 18 00:00:37,640 --> 00:00:40,543 ニューロンが 情報処理機能を担っているなら 19 00:00:40,543 --> 00:00:42,135 この2つの脳の持ち主は 20 00:00:42,135 --> 00:00:44,864 似たような認知能力が ありそうなものですが 21 00:00:44,864 --> 00:00:47,213 1つはチンパンジーで 22 00:00:47,213 --> 00:00:49,850 もう1つは牛です 23 00:00:49,850 --> 00:00:52,212 牛は本当に豊かな 精神生活があり — 24 00:00:52,212 --> 00:00:54,465 頭が良いのかもしれません 25 00:00:54,465 --> 00:00:58,268 私たちに分らないように してるだけかもしれません 26 00:00:58,268 --> 00:00:59,713 でも私たちは食べますよね 27 00:00:59,713 --> 00:01:01,412 殆どの人は 28 00:01:01,412 --> 00:01:03,413 チンパンジーは牛よりもっと 29 00:01:03,413 --> 00:01:06,469 複雑で精巧で柔軟な行動が 出来ることには同意すると思います 30 00:01:06,469 --> 00:01:08,401 これこそが 最初の矛盾で 31 00:01:08,401 --> 00:01:10,434 “ 脳は全て同じ様に出来ている ”という 論理は正しくない ということです 32 00:01:10,434 --> 00:01:12,105 “ 脳は全て同じ様に出来ている ”という 論理は正しくない ということです 33 00:01:12,105 --> 00:01:13,451 しかし続けましょう 34 00:01:13,451 --> 00:01:15,229 もし脳が同じ様に出来ていて 35 00:01:15,229 --> 00:01:18,141 いろいろなサイズの脳を持つ動物を 比べてみるとします 36 00:01:18,141 --> 00:01:20,323 大きい脳は小さい脳よりもっと — 37 00:01:20,323 --> 00:01:22,646 ニューロンの数が多い筈で — 38 00:01:22,646 --> 00:01:25,668 脳が大きければ それだけ 認知能力があるということになります 39 00:01:25,668 --> 00:01:27,804 だとすると一番大きな脳は 40 00:01:27,804 --> 00:01:30,093 最も認知能力があるべきです 41 00:01:30,093 --> 00:01:31,674 でも 悪いニュースがあります 42 00:01:31,674 --> 00:01:34,431 人の脳は一番大きくはないのです 43 00:01:34,431 --> 00:01:35,986 全く不思議に思えます 44 00:01:35,986 --> 00:01:38,721 私たちの脳は 1.2から1.5キロの重さですが 45 00:01:38,721 --> 00:01:42,038 象の脳は4キロから5キロまであり 46 00:01:42,038 --> 00:01:44,623 クジラは9キロにもなります 47 00:01:44,623 --> 00:01:49,361 これが科学者が私たちの脳は “特別”だということにしていた理由です 48 00:01:49,361 --> 00:01:51,518 これが科学者が私たちの脳は “特別”だということにしていた理由です 49 00:01:51,518 --> 00:01:54,380 私たちの認知能力を説明する為です 50 00:01:54,380 --> 00:01:57,326 本当に特別に違いありません 51 00:01:57,326 --> 00:01:59,303 そのルールに 当てはまらないのですから 52 00:01:59,303 --> 00:02:02,529 彼らの方が大きいかもしれませんが 私たちの方がいいのです 53 00:02:02,529 --> 00:02:04,404 という事は 優れた脳は 54 00:02:04,404 --> 00:02:06,515 体の大きさの割に大きく 55 00:02:06,515 --> 00:02:09,213 その大脳皮質はずっと大きく 56 00:02:09,213 --> 00:02:10,752 その大脳皮質はずっと大きく 57 00:02:10,752 --> 00:02:12,404 その余分の皮質で 58 00:02:12,404 --> 00:02:15,364 体を動かすだけでなく もっと 面白いことができているようです 59 00:02:15,364 --> 00:02:17,043 というのは脳のサイズは普通 — 60 00:02:17,043 --> 00:02:19,376 体のサイズによるのですが 61 00:02:19,376 --> 00:02:21,693 私たちの脳が体のサイズからして 62 00:02:21,693 --> 00:02:23,780 大きすぎると言われる主な理由は 63 00:02:23,780 --> 00:02:25,552 人間を類人猿と 比較しているからです 64 00:02:25,552 --> 00:02:27,238 人間を類人猿と 比較しているからです 65 00:02:27,238 --> 00:02:29,832 ゴリラは人の 2倍から3倍のサイズなので 66 00:02:29,832 --> 00:02:32,253 その脳は人のより 大きいはずですが 67 00:02:32,253 --> 00:02:34,198 その反対なのです 68 00:02:34,198 --> 00:02:37,133 人の脳はゴリラのそれの 3倍の大きさです 69 00:02:37,133 --> 00:02:39,253 また特別なのは人の脳が 使うエネルギー量です 70 00:02:39,253 --> 00:02:41,500 また特別なのは人の脳が 使うエネルギー量です 71 00:02:41,500 --> 00:02:44,249 人の脳の重さは体重の 2%しかないのですが 72 00:02:44,249 --> 00:02:47,692 人が1日に要するエネルギーの 25%を消費します 73 00:02:47,692 --> 00:02:50,155 人が1日に要するエネルギーの 25%を消費します 74 00:02:50,155 --> 00:02:53,508 それは2千カロリーの内の 5百カロリーです 75 00:02:53,508 --> 00:02:55,913 ただ脳を働かせるだけで それほど使います 76 00:02:55,913 --> 00:02:58,841 人の脳は体の割には大きく 77 00:02:58,841 --> 00:03:00,867 エネルギーは驚く程消費する 78 00:03:00,867 --> 00:03:02,325 それで特別だ… 79 00:03:02,325 --> 00:03:04,896 とここで私は 気になり始めたのです 80 00:03:04,896 --> 00:03:06,567 生物学では生物一般に適用出来る ルールを探し出します 81 00:03:06,567 --> 00:03:09,413 生物学では生物一般に適用出来る ルールを探し出します 82 00:03:09,413 --> 00:03:11,263 ではどうして進化のルールが 83 00:03:11,263 --> 00:03:14,905 人間にだけ あてはまらないのでしょうか? 84 00:03:14,905 --> 00:03:17,102 全ての脳は同じ様に出来ているという 大前提に問題があり 85 00:03:17,102 --> 00:03:18,973 全ての脳は同じ様に出来ているという 大前提に問題があり 86 00:03:18,973 --> 00:03:20,572 脳が同じサイズでもニューロンの数は 実際は違っているかもしれません 87 00:03:20,572 --> 00:03:23,163 脳が同じサイズでもニューロンの数は 実際は違っているかもしれません 88 00:03:23,163 --> 00:03:24,770 大きい脳は必ずしも — 89 00:03:24,770 --> 00:03:26,610 ニューロンが多いという 訳でもないかもしれません 90 00:03:26,610 --> 00:03:28,831 ニューロンが多いという 訳でもないかもしれません 91 00:03:28,831 --> 00:03:31,840 人の脳はそのサイズに関わらず 実際は最もニューロン数が多く 92 00:03:31,840 --> 00:03:34,413 人の脳はそのサイズに関わらず 実際は最もニューロン数が多く 93 00:03:34,413 --> 00:03:36,507 特に大脳皮質では そうなのかもしれません 94 00:03:36,507 --> 00:03:38,059 私にとってこれは 95 00:03:38,059 --> 00:03:39,788 興味深い大切な疑問となりました 96 00:03:39,788 --> 00:03:42,188 人の脳のニューロン数は? 97 00:03:42,188 --> 00:03:44,710 それは他の動物と比べると? 98 00:03:44,710 --> 00:03:47,133 人の脳は1千億のニューロンがあると 聞かれたことがあるでしょう 99 00:03:47,133 --> 00:03:49,244 人の脳は1千億のニューロンがあると 聞かれたことがあるでしょう 100 00:03:49,244 --> 00:03:51,330 それで10年前同僚に この数字が — 101 00:03:51,330 --> 00:03:53,169 何処から来たのか 尋ねてみましたが 102 00:03:53,169 --> 00:03:54,627 誰も知りませんでした 103 00:03:54,627 --> 00:03:56,080 書物をあさり その数字の出典を探しましたが 104 00:03:56,080 --> 00:03:58,138 書物をあさり その数字の出典を探しましたが 105 00:03:58,138 --> 00:03:59,921 見つかりませんでした 106 00:03:59,921 --> 00:04:02,660 実際に人の脳のニューロン数を 数えた人は誰もいなかった様です 107 00:04:02,660 --> 00:04:04,194 実際に人の脳のニューロン数を 数えた人は誰もいなかった様です 108 00:04:04,194 --> 00:04:06,693 なにも人の脳だけに 限ったことではないのですが 109 00:04:06,693 --> 00:04:10,228 それで脳の細胞を 数える方法を考え出しました 110 00:04:10,228 --> 00:04:12,336 簡単にいうと脳を溶かして 111 00:04:12,336 --> 00:04:15,581 スープ状にするのです 112 00:04:15,581 --> 00:04:17,618 この様になります 113 00:04:17,618 --> 00:04:20,745 脳または脳の一部をとり 114 00:04:20,745 --> 00:04:22,489 それを界面活性剤と混ぜて 115 00:04:22,489 --> 00:04:23,998 細胞膜組織を壊します 116 00:04:23,998 --> 00:04:26,434 細胞核はそのままです 117 00:04:26,434 --> 00:04:29,574 それで遊離核の懸濁液が出来ます 118 00:04:29,574 --> 00:04:31,355 こんな感じで 119 00:04:31,355 --> 00:04:32,628 澄んだスープの様です 120 00:04:32,628 --> 00:04:34,519 これは ネズミ1匹の脳の 細胞核が 入っています 121 00:04:34,519 --> 00:04:36,573 これは ネズミ1匹の脳の 細胞核が 入っています 122 00:04:36,573 --> 00:04:39,603 スープが素晴らしいのは それはスープだからです 123 00:04:39,603 --> 00:04:42,501 掻き混ぜて細胞核を 124 00:04:42,501 --> 00:04:44,472 溶液内に均一に分散します 125 00:04:44,472 --> 00:04:46,453 その均一溶液のサンプルを 126 00:04:46,453 --> 00:04:50,536 4,5滴取り顕微鏡で見て 127 00:04:50,536 --> 00:04:53,072 細胞核を数えれば 128 00:04:53,072 --> 00:04:54,751 それで脳の細胞数がわかります 129 00:04:54,751 --> 00:04:56,376 単純で簡単です 130 00:04:56,376 --> 00:04:57,810 時間もかかりません 131 00:04:57,810 --> 00:04:59,807 この方法でニューロンを数えた生物は 132 00:04:59,807 --> 00:05:02,118 数十種類になります 133 00:05:02,118 --> 00:05:03,807 分ったことは 134 00:05:03,807 --> 00:05:06,389 脳は全部同じ様には 出来ていないということです 135 00:05:06,389 --> 00:05:08,576 齧歯類と霊長類を見て下さい 136 00:05:08,576 --> 00:05:10,860 大型齧歯類の場合 ニューロン自体の平均径が大きくなり 137 00:05:10,860 --> 00:05:12,546 大型齧歯類の場合 ニューロン自体の平均径が大きくなり 138 00:05:12,546 --> 00:05:15,145 脳が急に膨らみ 139 00:05:15,145 --> 00:05:18,310 ニューロンの数が増える以前に 脳は格段に大きくなりますが 140 00:05:18,310 --> 00:05:20,013 霊長類は平均的なニューロン自体は 大きくならずその数が増えるのです 141 00:05:20,013 --> 00:05:22,472 霊長類は平均的なニューロン自体は 大きくならずその数が増えるのです 142 00:05:22,472 --> 00:05:23,997 これはニューロンを増やすには 効率的な方法です 143 00:05:23,997 --> 00:05:25,650 これはニューロンを増やすには 効率的な方法です 144 00:05:25,650 --> 00:05:27,414 つまり霊長類の脳は 145 00:05:27,414 --> 00:05:30,581 同じサイズの齧歯類の脳より ニューロンが多いのです 146 00:05:30,581 --> 00:05:32,064 それで脳が大きければ大きい程 147 00:05:32,064 --> 00:05:34,278 それだけその差は広がるでしょう 148 00:05:34,278 --> 00:05:36,381 では私たちの脳はどうでしょう 149 00:05:36,381 --> 00:05:38,065 人の脳には平均して860億の ニューロンがあると突き止めました 150 00:05:38,065 --> 00:05:39,850 人の脳には平均して860億の ニューロンがあると突き止めました 151 00:05:39,850 --> 00:05:42,849 その中の160億は 大脳皮質にあります 152 00:05:42,849 --> 00:05:44,930 大脳皮質が 153 00:05:44,930 --> 00:05:48,024 論理・抽象的な推論能力や知覚 といった機能の中枢で 154 00:05:48,024 --> 00:05:51,161 論理・抽象的な推論能力や知覚 といった機能の中枢で 155 00:05:51,161 --> 00:05:54,145 160億という数はどんな大脳皮質も 持ち合わせていないことを考えると 156 00:05:54,145 --> 00:05:56,766 160億という数はどんな大脳皮質も 持ち合わせていないことを考えると 157 00:05:56,766 --> 00:05:58,484 これで私たちの驚くべき認知能力の 説明が簡単に出来ると思います 158 00:05:58,484 --> 00:06:01,626 これで私たちの驚くべき認知能力の 説明が簡単に出来ると思います 159 00:06:01,626 --> 00:06:04,847 脳の全ニューロン程の 重要性があると言って良い程です 160 00:06:04,847 --> 00:06:06,376 脳のサイズとニューロン数との 161 00:06:06,376 --> 00:06:08,728 関係が数学的に説明出来るので 162 00:06:08,728 --> 00:06:10,355 人脳が齧歯類のような脳だったなら 163 00:06:10,355 --> 00:06:12,573 どんなものだろうか それも計算出来るでしょう 164 00:06:12,573 --> 00:06:15,247 どんなものだろうか それも計算出来るでしょう 165 00:06:15,247 --> 00:06:18,821 齧歯類が860億数の ニューロンを持ったとしたなら 166 00:06:18,821 --> 00:06:21,942 その脳は 36キロにもなります 167 00:06:21,942 --> 00:06:23,575 それはあり得ません 168 00:06:23,575 --> 00:06:25,481 その重さで脳自体が 169 00:06:25,481 --> 00:06:26,665 潰れてしまいますし 170 00:06:26,665 --> 00:06:28,252 そんな脳に見合う身体は 171 00:06:28,252 --> 00:06:32,023 89トンになってしまします 172 00:06:32,023 --> 00:06:34,157 これでは人間だと いえそうもありません 173 00:06:34,157 --> 00:06:36,710 ここから導き出される重要な結論は 174 00:06:36,710 --> 00:06:39,357 私たちは齧歯類ではなく 175 00:06:39,357 --> 00:06:42,625 人の脳は齧歯類の脳を大きくしたもの ではないということです 176 00:06:42,625 --> 00:06:45,253 ネズミと比べると 私たちは特別に見えますが 177 00:06:45,253 --> 00:06:47,473 ネズミと比べるのがいけないのです 178 00:06:47,473 --> 00:06:49,562 人とネズミの違いは明らかですから 179 00:06:49,562 --> 00:06:50,952 私たちは霊長類です 180 00:06:50,952 --> 00:06:53,726 比較は他の霊長類とするべきです 181 00:06:53,726 --> 00:06:54,953 そこでその計算をすると 182 00:06:54,953 --> 00:06:57,739 860億数のニューロンを持つ 一般的霊長類は 183 00:06:57,739 --> 00:06:59,669 860億数のニューロンを持つ 一般的霊長類は 184 00:06:59,669 --> 00:07:02,672 約1.2キロの脳を 持つことになるでしょう 185 00:07:02,672 --> 00:07:04,561 66キロ位の体には それで丁度という感じですね 186 00:07:04,561 --> 00:07:06,533 66キロ位の体には それで丁度という感じですね 187 00:07:06,533 --> 00:07:09,178 私の体に丁度合います 188 00:07:09,178 --> 00:07:11,798 あまり驚くことではないのですが 189 00:07:11,798 --> 00:07:14,767 それでもとても重要な結論です 190 00:07:14,767 --> 00:07:16,108 私は霊長類です 191 00:07:16,108 --> 00:07:18,806 あなた方もそうで 192 00:07:18,806 --> 00:07:20,706 ダーウィンもそうです 193 00:07:20,706 --> 00:07:23,646 ダーウィンがこれを本当に 理解してくれると思っています 194 00:07:23,646 --> 00:07:25,613 彼の脳も私たちのと同様 195 00:07:25,613 --> 00:07:29,124 他の霊長類に そっくりに出来ています 196 00:07:29,124 --> 00:07:31,426 人の脳は確かに驚嘆すべきものですが 197 00:07:31,426 --> 00:07:34,207 ニューロン数に関しては 特別でもないのです 198 00:07:34,207 --> 00:07:36,062 人の脳は大きな霊長類の脳 というだけ— 199 00:07:36,062 --> 00:07:39,106 この考えはとても謙虚で 冷静だと思います 200 00:07:39,106 --> 00:07:42,169 これは自然界に於ける 人間の立場を思い出させます 201 00:07:42,169 --> 00:07:44,813 では何故私たちの脳はそんなに エネルギーを使うのでしょうか 202 00:07:44,813 --> 00:07:46,260 どれくらいのエネルギーを 203 00:07:46,260 --> 00:07:47,763 人や他の動物の脳が 204 00:07:47,763 --> 00:07:49,170 使うかは分っています 205 00:07:49,170 --> 00:07:50,822 既に それぞれの脳にある 206 00:07:50,822 --> 00:07:53,164 ニューロン数が分っていますから 計算が出来ます 207 00:07:53,164 --> 00:07:55,030 その結果 人と他の動物達の脳も 208 00:07:55,030 --> 00:07:57,853 エネルギー消費量は同じくらいで 209 00:07:57,853 --> 00:08:01,274 ニューロン10億に対して 一日平均6カロリー要します 210 00:08:01,274 --> 00:08:03,413 脳が使用する総エネルギーは 211 00:08:03,413 --> 00:08:05,447 ニューロン数の シンプルな一次関数です 212 00:08:05,447 --> 00:08:07,156 ニューロン数の シンプルな一次関数です 213 00:08:07,156 --> 00:08:09,339 人の脳のエネルギー消費は 214 00:08:09,339 --> 00:08:13,180 予想通りというわけです 215 00:08:13,180 --> 00:08:15,271 それで人の脳が これ程 — 216 00:08:15,271 --> 00:08:16,943 エネルギーを費やしているのは — 217 00:08:16,943 --> 00:08:18,926 ニューロンが膨大にあるから というだけで 218 00:08:18,926 --> 00:08:20,411 人は霊長類で — 219 00:08:20,411 --> 00:08:22,910 他の動物より体のサイズの割には ニューロンが多いため — 220 00:08:22,910 --> 00:08:24,432 他の動物より体のサイズの割には ニューロンが多いため — 221 00:08:24,432 --> 00:08:27,972 エネルギー使用量は比較的多いのです 222 00:08:27,972 --> 00:08:30,973 でも それは霊長類だからであって 特別だからではないのです 223 00:08:30,973 --> 00:08:32,163 では最後の質問として 224 00:08:32,163 --> 00:08:35,278 どうやって こんな膨大な数の ニューロンを手に入れたのでしょう 225 00:08:35,278 --> 00:08:37,178 特に類人猿が 226 00:08:37,178 --> 00:08:38,733 人より大きいなら 227 00:08:38,733 --> 00:08:42,498 なぜ彼らの脳の方が大きく ニューロンがもっと多くはないのでしょうか 228 00:08:42,498 --> 00:08:44,588 脳が多くのニューロンを維持するのは 大変なことに気付いた時 229 00:08:44,588 --> 00:08:46,921 脳が多くのニューロンを維持するのは 大変なことに気付いた時 230 00:08:46,921 --> 00:08:48,924 単純な理由があるかもしれないと分ったのです 231 00:08:48,924 --> 00:08:50,607 他の霊長類には大きな体と 232 00:08:50,607 --> 00:08:53,557 多数のニューロンの両方を 維持して行くエネルギーがないのです 233 00:08:53,557 --> 00:08:54,986 それで計算しました 234 00:08:54,986 --> 00:08:56,586 まず計算したのは1日の 235 00:08:56,586 --> 00:08:58,527 生の物を食しての 霊長類のエネルギー摂取量です 236 00:08:58,527 --> 00:08:59,877 生の物を食しての 霊長類のエネルギー摂取量です 237 00:08:59,877 --> 00:09:01,914 その一方 あるサイズの体の 238 00:09:01,914 --> 00:09:03,678 消費エネルギー量と 239 00:09:03,678 --> 00:09:07,065 ある数のニューロンの脳の 消費エネルギー量を計算して 240 00:09:07,065 --> 00:09:08,554 体がどれくらいの大きさで 241 00:09:08,554 --> 00:09:10,965 ニューロンがどれくらいなら 動物が維持できるのか 242 00:09:10,965 --> 00:09:12,235 その組み合わせを探しました 243 00:09:12,235 --> 00:09:14,783 その動物が1日に食する時間が 決まっているとしてです 244 00:09:14,783 --> 00:09:16,599 分ったことは 245 00:09:16,599 --> 00:09:18,311 ニューロンは熱量を よく消費するので 246 00:09:18,311 --> 00:09:21,681 体のサイズとニューロンの数の間には トレードオフがあるのです 247 00:09:21,681 --> 00:09:24,632 1日に8時間食べる動物は 248 00:09:24,632 --> 00:09:27,656 最大で530億ニューロンを 維持出来ますが 249 00:09:27,656 --> 00:09:29,383 その体は大きくても せいぜい25キロです 250 00:09:29,383 --> 00:09:31,337 その体は大きくても せいぜい25キロです 251 00:09:31,337 --> 00:09:33,038 それ以上の体重では 252 00:09:33,038 --> 00:09:34,807 ニューロンを犠牲に しなくてはなりません 253 00:09:34,807 --> 00:09:37,460 つまり大きな体か ニューロン数が 大きいかの どちらかということです 254 00:09:37,460 --> 00:09:38,955 つまり大きな体か ニューロン数が 大きいかの どちらかということです 255 00:09:38,955 --> 00:09:40,320 類人猿の様に食べていたら 256 00:09:40,320 --> 00:09:42,556 脳も体も大きいということは あり得ません 257 00:09:42,556 --> 00:09:44,520 この代謝限界を克服する一つの方法は 258 00:09:44,520 --> 00:09:47,921 1日に食事に費やす時間を 増やすことですが 259 00:09:47,921 --> 00:09:49,284 それは危険です 260 00:09:49,284 --> 00:09:52,003 限界を通り超え 絶対むりです 261 00:09:52,003 --> 00:09:53,540 例えばゴリラとオランウータンが 262 00:09:53,540 --> 00:09:55,463 約3百億数のニューロンを持とうと思ったら 263 00:09:55,463 --> 00:09:58,429 それには1日8時間半も 食べなくてはなりません 264 00:09:58,429 --> 00:10:01,545 食べることだけしか 出来ないという感じですね 265 00:10:01,545 --> 00:10:03,336 1日9時間が 266 00:10:03,336 --> 00:10:06,607 霊長類には限界でしょうね 267 00:10:06,607 --> 00:10:08,398 では私たちは? 268 00:10:08,398 --> 00:10:09,998 860億のニューロンを持ち — 269 00:10:09,998 --> 00:10:13,033 60から70キロの体重なら — 270 00:10:13,033 --> 00:10:16,594 1日に9時間以上 毎日 食べなければなりません 271 00:10:16,594 --> 00:10:20,169 1日に9時間以上 毎日 食べなければなりません 272 00:10:20,169 --> 00:10:22,208 これは ちょっとあり得ませんね 273 00:10:22,208 --> 00:10:24,042 類人猿みたいに食べていたら 274 00:10:24,042 --> 00:10:26,295 私たちはここまで 進化してなかったでしょう 275 00:10:26,295 --> 00:10:28,422 では どうやって ここまで来たのでしょう 276 00:10:28,422 --> 00:10:31,157 もし私たちの脳が 計算通りのエネルギーが必要で — 277 00:10:31,157 --> 00:10:32,880 眠る以外の全ての時間を 278 00:10:32,880 --> 00:10:36,554 食事にあてられないとしたら 279 00:10:36,554 --> 00:10:38,465 それに代わることは 280 00:10:38,465 --> 00:10:40,423 もっとエネルギーを 281 00:10:40,423 --> 00:10:42,376 同じ食物から得なくてはなりません 282 00:10:42,376 --> 00:10:46,176 驚くことに私たちの祖先が 283 00:10:46,176 --> 00:10:49,213 考え出したことが 丁度それなのです 284 00:10:49,213 --> 00:10:51,052 それは150万年前のことです 285 00:10:51,052 --> 00:10:53,834 料理をするということ考え出し — 286 00:10:53,834 --> 00:10:55,804 料理に火を使い — 287 00:10:55,804 --> 00:10:59,604 食べ物自体を消化し易くしたのです 288 00:10:59,604 --> 00:11:02,210 料理された食べ物は柔らかく 噛み易く 289 00:11:02,210 --> 00:11:04,773 口の中で完全にぐちゃぐちゃになり 290 00:11:04,773 --> 00:11:06,925 完全に消化され易く — 291 00:11:06,925 --> 00:11:08,361 体に吸収され易くなります 292 00:11:08,361 --> 00:11:12,016 なので短時間でより多くの エネルギーになり易いのです 293 00:11:12,016 --> 00:11:14,505 だから料理することのお陰で私たちは 294 00:11:14,505 --> 00:11:16,567 ニューロンを使い もっと面白いことをする時間ができ 295 00:11:16,567 --> 00:11:18,047 ニューロンを使い もっと面白いことをする時間ができ 296 00:11:18,047 --> 00:11:19,952 食べることや 食糧を探すことばかり考え — 297 00:11:19,952 --> 00:11:21,656 一日中食べてばかりいなくてもいいのです 298 00:11:21,656 --> 00:11:22,881 一日中食べてばかりいなくてもいいのです 299 00:11:22,881 --> 00:11:25,380 それで 料理をすることにより — 300 00:11:25,380 --> 00:11:27,733 かつて 二ューロンが多い大きな脳は 維持が大変で不利なものでしたが 301 00:11:27,733 --> 00:11:30,766 かつて 二ューロンが多い大きな脳は 維持が大変で不利なものでしたが 302 00:11:30,766 --> 00:11:32,802 今や 脳は私たちの主要財産となりました 303 00:11:32,802 --> 00:11:36,053 多くのニューロンを維持する エネルギーと時間を確保でき 304 00:11:36,056 --> 00:11:38,559 ニューロンで面白いことが 出来るようになったからです 305 00:11:38,559 --> 00:11:40,533 これで進化において人の脳がどうして 306 00:11:40,533 --> 00:11:43,773 こんなに速く大きくなったかが 説明できると思います 307 00:11:43,773 --> 00:11:47,670 それでも霊長類の脳ではありますが 308 00:11:47,670 --> 00:11:50,444 料理をすることにより こんな大きな脳が維持可能になり 309 00:11:50,444 --> 00:11:53,357 生の食生活から始まり 文化 — 310 00:11:53,357 --> 00:11:55,963 農業 文明 スーパー 311 00:11:55,963 --> 00:11:57,588 電気 冷蔵庫 と— 312 00:11:57,588 --> 00:11:59,195 1日に必要な総エネルギーを 313 00:11:59,195 --> 00:12:01,237 私たちに一度に — 314 00:12:01,237 --> 00:12:04,019 好みのファーストフード店で — 315 00:12:04,019 --> 00:12:06,973 全て 確保可能に させてくれる様になったのです 316 00:12:06,973 --> 00:12:09,410 それで解決策であったことが 317 00:12:09,410 --> 00:12:11,109 問題となり 318 00:12:11,109 --> 00:12:16,626 皮肉なことですが私たちは生鮮食品に その解決法を探しているのです 319 00:12:16,626 --> 00:12:19,182 人間でいることの利点は? 320 00:12:19,182 --> 00:12:20,685 私たちにはあり— 321 00:12:20,685 --> 00:12:23,220 他の動物にないことはなんでしょう? 322 00:12:23,220 --> 00:12:25,568 私の答えは 人の脳では 最も多くのニューロンが 323 00:12:25,568 --> 00:12:27,040 大脳皮質にあるということです 324 00:12:27,040 --> 00:12:28,884 それが人の優れた 認知能力の理由だと思います 325 00:12:28,884 --> 00:12:30,897 それが人の優れた 認知能力の理由だと思います 326 00:12:30,897 --> 00:12:34,124 他の動物はせず 人だけがすることはなんでしょう? 327 00:12:34,124 --> 00:12:36,093 それによって 人の脳がこれほど大きくなり 328 00:12:36,093 --> 00:12:39,176 大脳皮質が他にない程のニューロンを 持つことになったのだと思います 329 00:12:39,176 --> 00:12:41,398 大脳皮質が他にない程のニューロンを 持つことになったのだと思います 330 00:12:41,398 --> 00:12:43,613 それは料理です 331 00:12:43,613 --> 00:12:47,179 他の動物は料理をしません 人間だけです 332 00:12:47,179 --> 00:12:50,049 そのお陰で今の私たちがあるのだと思います 333 00:12:50,049 --> 00:12:52,509 人の脳の研究をして 私の食に対する考えも変わりました 334 00:12:52,509 --> 00:12:54,154 自分の台所を見ると 335 00:12:54,154 --> 00:12:55,624 頭を下げて 336 00:12:55,624 --> 00:12:57,329 私たちを人にしてくれた料理を 考えついた先祖に感謝します 337 00:12:57,329 --> 00:12:59,229 私たちを人にしてくれた料理を 考えついた先祖に感謝します 338 00:12:59,229 --> 00:13:01,361 どうもありがとうございました 339 00:13:01,361 --> 00:13:07,714 (拍手)