1 00:00:19,386 --> 00:00:20,920 映画「インターステラー」では 2 00:00:20,920 --> 00:00:23,601 超大質量ブラックホールの姿を 間近に見ることができました 3 00:00:24,331 --> 00:00:26,574 明るいガスを背景として 4 00:00:26,578 --> 00:00:28,780 ブラックホールの巨大な重力によって 5 00:00:28,780 --> 00:00:29,945 光がリング状に曲げられています 6 00:00:30,069 --> 00:00:31,892 しかし これは実際の写真ではなく 7 00:00:31,892 --> 00:00:34,018 コンピュータグラフィックによるもので 8 00:00:34,022 --> 00:00:37,722 ブラックホールの姿についての イラストレーターによる想像図です 9 00:00:38,351 --> 00:00:39,517 100年前に 10 00:00:39,541 --> 00:00:42,682 アインシュタインが 一般相対性理論を発表しました 11 00:00:43,166 --> 00:00:44,299 それ以来 12 00:00:44,299 --> 00:00:47,196 科学者は この理論を裏付ける 様々な証拠を発見しています 13 00:00:47,196 --> 00:00:50,284 しかし この理論で予言された ブラックホールは 14 00:00:50,284 --> 00:00:52,498 まだ 直接は観測されていません 15 00:00:52,498 --> 00:00:55,808 ブラックホールの姿についてのアイデアは いくつかあるのですが 16 00:00:55,808 --> 00:00:58,450 まだ 実際の写真は 1枚も撮られていません 17 00:00:58,450 --> 00:01:01,350 しかし まもなく可能になるとすれば 皆さんは驚かれるでしょう 18 00:01:01,350 --> 00:01:05,120 この数年の間に ブラックホールを撮影した 初めての写真を見ることになるでしょう 19 00:01:05,532 --> 00:01:09,004 最初の1枚の撮影は 世界中の科学者からなるチームと 20 00:01:09,004 --> 00:01:10,555 地球サイズの望遠鏡と 21 00:01:10,555 --> 00:01:13,627 1枚の写真に構成する アルゴリズムによるものです 22 00:01:14,161 --> 00:01:17,489 今日 皆さんにブラックホールの写真を 実際にお見せできませんが 23 00:01:17,513 --> 00:01:20,424 その最初の1枚を撮るための舞台裏を 24 00:01:20,448 --> 00:01:22,341 ちらりとお見せします 25 00:01:23,400 --> 00:01:25,158 私は ケイティ・バウマンと申します 26 00:01:25,158 --> 00:01:27,388 MITの大学院生で 27 00:01:27,388 --> 00:01:30,055 コンピュータサイエンス研究室で 28 00:01:30,079 --> 00:01:32,777 コンピュータに写真やビデオを認識させる 研究をしています 29 00:01:33,411 --> 00:01:35,217 私が天文学者ではないのに 30 00:01:35,217 --> 00:01:37,272 この刺激的なプロジェクトに 31 00:01:37,296 --> 00:01:40,199 どのように貢献してきたかをお見せします 32 00:01:41,633 --> 00:01:45,088 今夜 都会の明かりから逃れて郊外へ行けば 33 00:01:45,088 --> 00:01:47,478 天の川銀河系の素晴らしい姿を 目にすることができるでしょう 34 00:01:47,478 --> 00:01:49,131 天の川銀河系の素晴らしい姿を 目にすることができるでしょう 35 00:01:49,655 --> 00:01:51,831 何百万もの星を通り抜けて 36 00:01:51,831 --> 00:01:55,620 2万6千光年先にある渦巻き銀河の中心を 拡大して見られれば 37 00:01:55,620 --> 00:01:58,435 最後には 中心にある星の集団に たどり着くことでしょう 38 00:01:58,435 --> 00:02:02,435 天文学者たちが 宇宙空間の塵に隠れて 見えにくいこれらの星を 39 00:02:02,435 --> 00:02:05,956 赤外線望遠鏡で観測し始めてから 16年以上経ちます 40 00:02:05,956 --> 00:02:09,259 しかし 一番見たいものを見てはいません 41 00:02:10,199 --> 00:02:13,200 銀河系の中心の星は 見えない物体の周りを 周回するように見えます 42 00:02:15,559 --> 00:02:17,882 この星々の軌道を追跡した結果 43 00:02:17,906 --> 00:02:19,084 天文学者は 44 00:02:19,084 --> 00:02:22,199 この運動を引き起こすような サイズと質量の天体は 45 00:02:22,223 --> 00:02:24,345 超大質量ブラックホールだけと結論づけました 46 00:02:24,369 --> 00:02:28,547 それは 密度がとても高いため 近づいたものを全て― 47 00:02:28,571 --> 00:02:30,065 光さえも 飲み込みます 48 00:02:30,089 --> 00:02:33,150 もっと拡大して見たらどうなるでしょう? 49 00:02:33,174 --> 00:02:37,197 定義からして見えるはずのない物を 見ることはできるでしょうか? 50 00:02:39,129 --> 00:02:42,753 電波望遠鏡で観測すれば 51 00:02:42,777 --> 00:02:44,383 ブラックホールの周囲の高温プラズマが 52 00:02:44,383 --> 00:02:46,858 重力で曲がることによってできる 53 00:02:46,858 --> 00:02:48,297 光のリングを観測できるはずです 54 00:02:48,651 --> 00:02:49,555 つまり 55 00:02:49,555 --> 00:02:52,600 ブラックホールは この明るい物質を背景に影を作り 56 00:02:52,600 --> 00:02:54,362 球状の暗闇を作りだすのです 57 00:02:55,446 --> 00:02:58,179 この明るい輪は ブラックホールの 事象の地平面と呼ばれ 58 00:02:58,179 --> 00:03:00,933 ここから先は あまりに重力が強いので 59 00:03:00,933 --> 00:03:02,719 光でさえ逃れられなくなります 60 00:03:04,123 --> 00:03:07,586 アインシュタインの方程式で この輪の大きさと形が予測されます 61 00:03:07,586 --> 00:03:10,458 ですから その写真を撮ることは とてもかっこいいだけではなく 62 00:03:10,458 --> 00:03:13,310 アインシュタインの方程式が ブラックホール周辺の 63 00:03:13,310 --> 00:03:15,736 極限状態でも成り立つかを 確認するのに役立ちます 64 00:03:16,150 --> 00:03:19,038 しかし このブラックホールは 私たちの地球からとても遠いので 65 00:03:19,062 --> 00:03:22,160 この輪は信じられないほど 小さくしか見えません 66 00:03:22,184 --> 00:03:25,774 月の表面にある1個のオレンジを 観測するのと同じ位に小さいのです 67 00:03:26,328 --> 00:03:29,152 ですから この輪の写真を撮るのは とてつもなく難しいのです 68 00:03:30,215 --> 00:03:31,517 どうしてでしょうか? 69 00:03:32,082 --> 00:03:35,270 その答えは 一つの単純な方程式によって示されます 70 00:03:35,294 --> 00:03:37,710 回折という現象のために 71 00:03:37,734 --> 00:03:39,073 私たちが観測できる対象のサイズには 根本的に限界があります 72 00:03:39,073 --> 00:03:41,783 私たちが観測できる対象のサイズには 根本的に限界があります 73 00:03:42,359 --> 00:03:46,031 その方程式によれば 小さいものを見ようとすればするほど 74 00:03:46,055 --> 00:03:48,642 望遠鏡を大きくしなければならないのです 75 00:03:48,666 --> 00:03:51,735 しかし 地球上の最大の光学望遠鏡でさえ 76 00:03:51,759 --> 00:03:54,178 月の表面の写真を撮るのに 77 00:03:54,202 --> 00:03:56,400 必要な解像度に近づくことさえできません 78 00:03:56,424 --> 00:04:00,051 これは現時点での最高の解像度で撮影された 79 00:04:00,051 --> 00:04:01,342 地球から見た月の写真です 80 00:04:01,396 --> 00:04:04,043 この写真は約1万3千画素ですが 81 00:04:04,067 --> 00:04:08,117 1画素に 150万個以上のオレンジが 収まってしまいます 82 00:04:08,966 --> 00:04:10,752 月面にある1個のオレンジを 83 00:04:10,752 --> 00:04:13,250 さらに あのブラックホールを観測するには 84 00:04:13,250 --> 00:04:15,329 どんな大きさの望遠鏡が必要なのでしょうか? 85 00:04:15,329 --> 00:04:17,853 まじめに計算してみると 86 00:04:17,853 --> 00:04:20,157 地球と同じ大きさの望遠鏡が必要であることが 87 00:04:20,157 --> 00:04:21,384 簡単に分かります 88 00:04:21,384 --> 00:04:22,612 (笑) 89 00:04:22,612 --> 00:04:24,635 もし地球サイズの望遠鏡を建設できれば 90 00:04:24,635 --> 00:04:27,564 ブラックホールの事象の地平面を示す 91 00:04:27,564 --> 00:04:29,401 特別な光の輪を見分け始められるのです 92 00:04:30,131 --> 00:04:33,293 この写真は コンピュータグラフィックほど 93 00:04:33,293 --> 00:04:34,903 詳細ではありませんが 94 00:04:34,903 --> 00:04:37,536 これによって 初めて ブラックホールの周辺の状況を 95 00:04:37,536 --> 00:04:39,793 確実に 一目見ることができます 96 00:04:40,807 --> 00:04:42,420 しかし ご想像の通り 97 00:04:42,444 --> 00:04:46,068 地球と同じ大きさの一枚の反射鏡で 望遠鏡を造ることは不可能です 98 00:04:46,068 --> 00:04:47,970 でもミック・ジャガーも歌っているように 99 00:04:47,970 --> 00:04:49,999 「欲しいものがいつも手に入るわけではない 100 00:04:49,999 --> 00:04:51,999 でも 何度もトライすれば 必要なものは手にいれられるだろう」 101 00:04:51,999 --> 00:04:53,244 でも 何度もトライすれば 必要なものは手にいれられるだろう」 102 00:04:53,268 --> 00:04:55,732 そして 世界中の望遠鏡を繋ごうという 103 00:04:55,756 --> 00:04:59,294 「事象の地平面望遠鏡」という 国際プロジェクトでは 104 00:04:59,318 --> 00:05:02,427 地球サイズの望遠鏡を コンピュータの力で実現し 105 00:05:02,451 --> 00:05:03,988 ブラックホールの事象の地平面を 106 00:05:04,012 --> 00:05:06,211 捉えられる解像度に達しようとしています 107 00:05:06,535 --> 00:05:09,000 2017年には この望遠鏡ネットワークを使って 108 00:05:09,000 --> 00:05:11,511 最初のブラックホール写真の撮影を 計画しています 109 00:05:13,945 --> 00:05:17,067 この計画では 世界規模で繋いだ望遠鏡を連動させます 110 00:05:17,067 --> 00:05:19,553 原子時計による精密なタイミングで同期させ 111 00:05:19,553 --> 00:05:22,700 各々の観測点では 研究者のチームが 112 00:05:22,724 --> 00:05:25,030 光を全部捉えて 数千兆バイトのデータを収集します 113 00:05:25,030 --> 00:05:30,727 それから このデータは ここマサチューセッツの天文台で処理されます 114 00:05:32,000 --> 00:05:33,979 仕組みをもう少し説明します 115 00:05:33,979 --> 00:05:37,416 私たちの銀河系の中心にある ブラックホールを観測したいなら 116 00:05:37,416 --> 00:05:39,999 有り得ないほど大きい地球サイズの 望遠鏡が必要ですよね 117 00:05:39,999 --> 00:05:43,114 でも一旦 地球サイズの望遠鏡が 118 00:05:43,138 --> 00:05:44,440 造れるとしましょう 119 00:05:44,834 --> 00:05:46,923 地球を巨大な回転するミラーボールだと 120 00:05:46,923 --> 00:05:48,460 考えてみましょう 121 00:05:49,154 --> 00:05:51,228 各々の鏡が光を集め 122 00:05:51,228 --> 00:05:53,399 1つにまとめられて1枚の写真となります 123 00:05:53,399 --> 00:05:56,000 ここで ほとんどの鏡は無くして 124 00:05:56,000 --> 00:05:57,686 ほんの少しだけ残しましょう 125 00:05:58,500 --> 00:06:01,011 まだ これらの情報を まとめることはできますが 126 00:06:01,011 --> 00:06:02,974 今回は 多くの穴があります 127 00:06:03,528 --> 00:06:07,041 この残った鏡が 望遠鏡のある観測点を示しています 128 00:06:07,915 --> 00:06:11,588 1枚の写真にするには 信じられないほど 少ない観測データです 129 00:06:11,588 --> 00:06:15,360 望遠鏡が設置されている数少ない場所でしか 光を集めることはできませんが 130 00:06:15,360 --> 00:06:18,977 地球が自転するので 別の観測データを得られます 131 00:06:18,977 --> 00:06:23,200 つまり ミラーボールが回転すると 鏡は場所を変えるので 132 00:06:23,200 --> 00:06:25,323 像の別の部分を観測することができます 133 00:06:26,253 --> 00:06:30,015 開発中の画像処理アルゴリズムによって ミラーボールの欠けている部分を埋めて 134 00:06:30,015 --> 00:06:32,792 そこに隠されているブラックホールの 像を再現します 135 00:06:33,192 --> 00:06:35,602 もし 地表の全面に望遠鏡を設置できたとして 136 00:06:35,602 --> 00:06:37,557 つまり ミラーボールが完璧ならば 137 00:06:37,557 --> 00:06:38,999 この作業は難しくはありません 138 00:06:39,315 --> 00:06:42,521 しかし 手に入れられるのは わずかな観測データだけなので 139 00:06:42,521 --> 00:06:45,249 望遠鏡によるわずかな観測データと 完全に一致する 140 00:06:45,249 --> 00:06:47,837 像は無限に存在します 141 00:06:48,751 --> 00:06:51,617 しかし 全ての画像が同等ではありません 142 00:06:52,209 --> 00:06:56,311 私たちがブラックホールだと考える姿に 他のものよりも近い画像があります 143 00:06:56,311 --> 00:06:59,787 最初のブラックホールの写真を撮るために 私が担当をしているのは 144 00:06:59,787 --> 00:07:02,999 望遠鏡の観測データに合致する 最も合理的な画像を見つけるための 145 00:07:02,999 --> 00:07:04,733 アルゴリズムを開発することです 146 00:07:05,987 --> 00:07:10,173 似顔絵捜査官がわずかな特徴の情報から 147 00:07:10,173 --> 00:07:13,401 顔の構造についての知識を用いて 1枚の絵を描きあげるのと同じように 148 00:07:13,401 --> 00:07:17,130 私が開発中の画像処理アルゴリズムを使って 限られた観測データを 149 00:07:17,130 --> 00:07:20,962 宇宙にある天体としてふさわしい 1枚の絵にまとめます 150 00:07:22,176 --> 00:07:25,671 このアルゴリズムを使うと このまばらでノイズだらけのデータを 151 00:07:25,671 --> 00:07:27,435 写真へとまとめあげられるのです 152 00:07:27,435 --> 00:07:30,708 では 天の川銀河系の中心にある ブラックホールに 153 00:07:30,708 --> 00:07:34,265 望遠鏡を向けたとする シミュレーションのデータを使った 154 00:07:34,265 --> 00:07:36,760 再構成の例をお見せします 155 00:07:37,074 --> 00:07:41,483 これはシミュレーションに過ぎませんが このように再構成できることで 156 00:07:41,483 --> 00:07:44,790 まもなく 初のブラックホールの 写真を確実に撮影し 157 00:07:44,790 --> 00:07:47,385 その輪の大きさを決められるという 希望を持てます 158 00:07:50,178 --> 00:07:53,131 このアルゴリズムの詳細を全て お話ししたいのはやまやまなのですが 159 00:07:53,131 --> 00:07:55,420 皆さんには幸いなことに 十分な時間がありませんが 160 00:07:55,519 --> 00:07:57,600 宇宙の見え方を決定する方法や 161 00:07:57,624 --> 00:07:59,910 アルゴリズムを再構成や結果の確認に 使う方法を ざっと紹介します 162 00:07:59,910 --> 00:08:03,740 アルゴリズムを再構成や結果の確認に 使う方法を ざっと紹介します 163 00:08:05,180 --> 00:08:07,676 さて 望遠鏡の観測データに 完全に合う画像は 164 00:08:07,700 --> 00:08:10,065 無限にあり得るので 何らかの方法で 165 00:08:10,089 --> 00:08:12,324 その中から選び出さなくてはなりません 166 00:08:12,400 --> 00:08:14,610 ブラックホールの像に近い 度合いに応じて 167 00:08:14,620 --> 00:08:17,454 これらの画像をランク付けして 168 00:08:17,478 --> 00:08:19,960 最も適切な1枚を選びだします 169 00:08:19,984 --> 00:08:22,378 もう少し分かりやすくして 170 00:08:22,402 --> 00:08:24,380 フェイスブックに 171 00:08:24,404 --> 00:08:26,987 ある写真が ありそうかどうかを 決めるモデルを考えましょう 172 00:08:27,441 --> 00:08:29,312 このモデルを使った場合 173 00:08:29,336 --> 00:08:32,227 左のノイズだらけの写真が投稿された 可能性はほとんどなく 174 00:08:32,227 --> 00:08:35,040 右の自撮り写真が投稿された可能性が かなり高いという 175 00:08:35,040 --> 00:08:36,188 結果を期待します 176 00:08:36,188 --> 00:08:38,091 真ん中の写真はぼやけていて 177 00:08:38,091 --> 00:08:40,564 フェイスブック上に 左のノイズの写真よりは 178 00:08:40,564 --> 00:08:41,748 見られそうですが 179 00:08:41,748 --> 00:08:44,568 自撮り写真と比べると可能性は低そうです 180 00:08:45,600 --> 00:08:47,896 ブラックホールの写真となると これは難問です 181 00:08:47,896 --> 00:08:51,528 なぜなら私たちは ブラックホールを見たことがないからです 182 00:08:52,012 --> 00:08:54,137 この場合 ブラックホールの 像らしいのはどれで 183 00:08:54,137 --> 00:08:56,725 その構造として仮定すべきなのは どれでしょうか? 184 00:08:57,789 --> 00:09:00,551 「インターステラー」のブラックホールの イメージのような 185 00:09:00,551 --> 00:09:02,389 シミュレーションは使えるでしょう 186 00:09:02,389 --> 00:09:05,937 しかし そうすると重大な問題が起きます 187 00:09:07,100 --> 00:09:10,300 もし アインシュタインの理論が 成立しなかったらどうなるのでしょうか? 188 00:09:10,835 --> 00:09:13,980 私たちは 今起こっていることの 正確な写真を再構成したいのです 189 00:09:14,300 --> 00:09:17,765 もし 私たちのアルゴリズムに アインシュタインの理論を反映させすぎれば 190 00:09:17,765 --> 00:09:20,314 予想した通りのものを 見ることになってしまいます 191 00:09:20,314 --> 00:09:22,904 つまり 銀河の中心には 大きな象がいるという可能性を 192 00:09:22,904 --> 00:09:25,481 残しておきたいのです 193 00:09:25,481 --> 00:09:26,761 (笑) 194 00:09:27,262 --> 00:09:30,459 異なるタイプの画像は 全く別個の特徴を持ちます 195 00:09:30,889 --> 00:09:33,747 ブラックホールのシミュレーションの画像と 196 00:09:33,747 --> 00:09:36,217 地球上で日常的に撮る写真の 違いは明らかです 197 00:09:36,817 --> 00:09:39,865 そこで 特定のタイプの特徴を 強調しすぎていない画像はどのようなものか 198 00:09:39,865 --> 00:09:43,004 アルゴリズムに教えてやらなければなりません 199 00:09:43,755 --> 00:09:45,648 その方法の1つは 200 00:09:45,672 --> 00:09:48,308 各種ある中から ある画像タイプの特徴を強調して用い 201 00:09:48,308 --> 00:09:52,408 それが再構成に どのように反映されるかを調べる方法です 202 00:09:54,542 --> 00:09:57,837 もし それぞれの画像タイプ全てから 同じような画像が得られれば 203 00:09:57,837 --> 00:09:59,900 出来上がった画像が 私たちが設定した仮定から 204 00:09:59,900 --> 00:10:03,735 大きな影響を受けていないだろうという 確信を強める方向です 205 00:10:04,100 --> 00:10:07,069 このことは 世界のあちこちから集められた 3人の似顔絵描きに 206 00:10:07,069 --> 00:10:09,639 同じ情報を提供するのに少し似ています 207 00:10:09,639 --> 00:10:12,823 もし 3人ともが 非常に似た顔を描けば 208 00:10:12,823 --> 00:10:14,870 出来上がった絵が 209 00:10:14,870 --> 00:10:17,999 各々の文化の影響を受けていないという 確信を強める方向です 210 00:10:19,380 --> 00:10:22,939 色々な画像タイプが持つ特徴を 反映させるには 211 00:10:22,939 --> 00:10:25,600 既にある画像の部分を使う方法があります 212 00:10:26,224 --> 00:10:28,478 画像を大量に集めて 213 00:10:28,478 --> 00:10:30,676 小さな画像のかけらに分解します 214 00:10:31,030 --> 00:10:34,995 そうすると 一つ一つの画像のかけらを パズルのピースのように使えます 215 00:10:35,459 --> 00:10:39,751 そのよくあるパズルピースを使って 望遠鏡の観測データに合致する画像を 216 00:10:39,751 --> 00:10:41,783 まとめあげます 217 00:10:46,400 --> 00:10:49,923 異なるタイプの画像からは 違った特徴のピースセットが得られます 218 00:10:50,977 --> 00:10:54,123 同じ観測データに基づいて 異なるピースセットを使い 219 00:10:54,123 --> 00:10:57,717 画像を再構成すると どのようになるのでしょうか? 220 00:10:58,201 --> 00:11:01,961 ブラックホールのシミュレーションから 取ったピースを使いましょう 221 00:11:03,761 --> 00:11:05,556 まあ 妥当ですね 222 00:11:05,556 --> 00:11:08,054 これは私たちが思うブラックホールの姿と 似ています 223 00:11:08,054 --> 00:11:09,467 でも こうなったのは 224 00:11:09,491 --> 00:11:12,609 ブラックホールのシミュレーションの ピースを使ったからでしょうか? 225 00:11:12,609 --> 00:11:14,589 では 別のセットを使いましょう 226 00:11:14,593 --> 00:11:17,092 今度は ブラックホールではない 天体からのものです 227 00:11:18,274 --> 00:11:20,100 いいですね よく似ています 228 00:11:20,224 --> 00:11:22,504 最後に 自分のカメラで撮影したような 229 00:11:22,504 --> 00:11:25,100 日常の写真から作った パズルピースではどうでしょう? 230 00:11:26,672 --> 00:11:28,391 やりました 同じ写真が出来ました 231 00:11:28,391 --> 00:11:32,021 異なるパズルピースのセット全てから 同じ画像が出来上がれば 232 00:11:32,021 --> 00:11:34,300 最後に得られた画像が 私たちが設定をした仮定から 233 00:11:34,300 --> 00:11:36,237 大きな影響を受けていないと 234 00:11:36,261 --> 00:11:38,602 確信を持てるようになり始めます 235 00:11:40,046 --> 00:11:43,213 もう1つの方法は ある1つのパズルピースのセットー 236 00:11:43,213 --> 00:11:45,856 例えば日常の写真から得られたセットを使って 237 00:11:45,856 --> 00:11:48,850 色々な種類の画像を再構成する方法です 238 00:11:49,270 --> 00:11:50,731 シミュレーションでは 239 00:11:50,755 --> 00:11:54,244 ブラックホールが それ以外の天体と 似ているという仮定だけではなく 240 00:11:54,244 --> 00:11:57,999 同様に象のような日常の写真と似た形が 銀河系の中心にあることも仮定します 241 00:11:58,427 --> 00:12:01,309 図の下にある アルゴリズムを使ってできた画像が 242 00:12:01,309 --> 00:12:03,219 図の上の本当の写真とよく似ていれば 243 00:12:03,219 --> 00:12:06,419 このアルゴリズムの確信を強める方向です 244 00:12:06,959 --> 00:12:08,820 皆さんにお伝えしておきたいことは 245 00:12:08,820 --> 00:12:10,928 この全ての画像には 246 00:12:10,928 --> 00:12:13,638 皆さんがご自分のカメラで撮った 247 00:12:13,638 --> 00:12:15,603 日常の写真からのピースが使われたことです 248 00:12:16,367 --> 00:12:19,477 私たちが見たこともない ブラックホールの写真は 249 00:12:19,477 --> 00:12:24,331 いつも見ているような写真を まとめあげれば 最終的にできるでしょう 250 00:12:24,533 --> 00:12:27,328 このような画像処理の考え方によって 251 00:12:27,352 --> 00:12:29,755 ブラックホールの最初の写真を撮り 252 00:12:29,755 --> 00:12:32,266 さらには 科学者たちが常に根拠としている 253 00:12:32,266 --> 00:12:34,887 有名な理論を裏付けることができるでしょう 254 00:12:35,731 --> 00:12:38,469 もちろん このような画像処理のアイデアは 255 00:12:38,469 --> 00:12:41,599 光栄なことに私が一緒に働ける 素晴らしい研究者のチームなしには 256 00:12:41,599 --> 00:12:43,196 不可能でした 257 00:12:43,830 --> 00:12:45,083 素晴らしいことに 258 00:12:45,107 --> 00:12:48,162 私はこの仕事を始めた時には 天文学の素養がありませんでしたが 259 00:12:48,162 --> 00:12:50,685 この他に類をみない共同研究を通じて 260 00:12:50,685 --> 00:12:53,204 最初のブラックホールの画像に 至ることができるかもしれません 261 00:12:54,078 --> 00:12:56,920 この「事象の地平面望遠鏡」のような 大規模な共同研究は 262 00:12:56,920 --> 00:13:00,054 様々な人が学際的な専門知識を持ち寄ることで 263 00:13:00,054 --> 00:13:01,758 成功へと繋がります 264 00:13:02,182 --> 00:13:03,682 私たちのチームは 天文学者と 265 00:13:03,682 --> 00:13:05,828 物理学者 数学者と技術者のるつぼです 266 00:13:05,828 --> 00:13:07,756 かつては不可能と考えられていたことが 267 00:13:07,756 --> 00:13:09,809 もうすぐ可能になります 268 00:13:10,213 --> 00:13:12,773 皆さんにも 外に出て 科学の限界を広げるのを 269 00:13:12,773 --> 00:13:14,709 手伝っていただきたいのです 270 00:13:14,863 --> 00:13:18,388 たとえそれがブラックホールのように 初めは不可思議に見えても 271 00:13:18,858 --> 00:13:19,999 ありがとうございました 272 00:13:19,999 --> 00:13:25,629 (拍手)