WEBVTT 00:00:05.553 --> 00:00:09.318 これは『リーマン・トリロジー』という 演劇作品のシーンです 00:00:09.342 --> 00:00:14.384 西洋資本主義の起源をなぞるこの作品は 00:00:14.408 --> 00:00:15.827 3時間にわたって 00:00:15.851 --> 00:00:18.306 3人の役者とピアノで演じられます 00:00:19.356 --> 00:00:23.185 私の役割は舞台美術を通じて 00:00:23.209 --> 00:00:26.723 この作品の視覚言語を 生み出すことでした 00:00:27.699 --> 00:00:30.983 この劇では大西洋の横断 00:00:31.007 --> 00:00:32.860 アラバマの綿花畑 00:00:32.884 --> 00:00:35.034 ニューヨークの摩天楼が描かれ 00:00:35.058 --> 00:00:39.732 そのすべてを この回転を続ける 直方体の中に切り取りました 00:00:41.339 --> 00:00:45.335 何世紀にもわたる 動く大河ドラマとも言えるでしょう 00:00:45.715 --> 00:00:48.318 いわば3人の役者が奏でる― 00:00:48.342 --> 00:00:50.151 楽器のようなものです 00:00:51.159 --> 00:00:54.368 役者たちがリーマン兄弟の 00:00:54.392 --> 00:00:56.956 人生を歩み 表現するうちに 00:00:56.980 --> 00:00:59.465 観客の私たちは 00:00:59.489 --> 00:01:03.432 今なお私たちが捕らわれている― 00:01:03.456 --> 00:01:07.666 世界規模の複雑な金融システムの 根幹にある素朴で人間的な起源に 00:01:07.690 --> 00:01:09.809 触れ始めるのです NOTE Paragraph 00:01:11.462 --> 00:01:15.015 私自身 若い頃には いくつか楽器を演奏したものです 00:01:15.650 --> 00:01:17.348 お気に入りはヴァイオリンでした 00:01:19.227 --> 00:01:21.290 体と楽器をエネルギーが貫きます 00:01:22.044 --> 00:01:25.882 ヴァイオリンという 有機的な彫刻を胸元に携えて 00:01:25.906 --> 00:01:29.880 全身のエネルギーを 小さな木製の楽器に流し込むと 00:01:29.880 --> 00:01:33.479 それが音楽に変換されて 耳に届きます 00:01:34.088 --> 00:01:37.070 ヴァイオリンが特に 上手かったわけではありませんが 00:01:37.094 --> 00:01:42.278 私はヘイスティングス・ ユース・オーケストラの 00:01:42.302 --> 00:01:45.014 第2ヴァイオリンの後ろのほうで 00:01:45.038 --> 00:01:46.467 音を鳴らしていました 00:01:47.163 --> 00:01:49.872 皆で弾いているときに 00:01:49.896 --> 00:01:54.162 響き合う音は驚くべきものでした 00:01:54.186 --> 00:01:56.283 ひとりで奏でられるどんな音と比べても 00:01:56.307 --> 00:01:58.830 はるかに美しく力強いものだったからです NOTE Paragraph 00:01:59.836 --> 00:02:04.331 今 大規模なパフォーマンス作品を 生み出す中で 00:02:04.355 --> 00:02:06.313 常に複数のチームと仕事をします 00:02:06.313 --> 00:02:09.739 少なくとも交響楽団ほどの 規模のチームです 00:02:09.763 --> 00:02:12.244 生み出しているものが 00:02:12.268 --> 00:02:15.375 リヒャルト・ワーグナーの オペラのための 00:02:15.405 --> 00:02:18.859 巨大なチェスの駒の形をした 回転するタイムトンネルであろうと 00:02:18.883 --> 00:02:22.729 カニエ・ウェストのための サメの水槽や山であろうと 00:02:22.753 --> 00:02:28.508 常に できる限り明瞭な造形を目指し 00:02:28.532 --> 00:02:32.520 観客へのメッセージを伝える できる限り詩的な手段を目指すのです NOTE Paragraph 00:02:32.871 --> 00:02:34.744 「詩的」というのは 00:02:35.426 --> 00:02:38.775 非常に凝縮された言語 という意味です 00:02:38.799 --> 00:02:40.196 歌詞のように 00:02:41.204 --> 00:02:44.584 解き明かされ 広がりを生む 詩的なパズルのことです 00:02:45.015 --> 00:02:49.672 ビヨンセのツアー「フォーメーション」の デザインを準備している時には 00:02:49.696 --> 00:02:52.069 すべての歌詞に目を通し 00:02:52.093 --> 00:02:55.958 ビヨンセ自身が書いた この詩に行き当たりました 00:02:57.191 --> 00:03:01.963 「4歳か5歳で悪い夢を恐れていたときに テレビで伝道師を見た 00:03:01.987 --> 00:03:06.456 祈りの言葉を伝えるから テレビに手をかざせと言う 00:03:06.480 --> 00:03:11.654 その時 生まれて初めて 祈りを知った 身体を流れる電流なのだ」 NOTE Paragraph 00:03:11.678 --> 00:03:16.123 幼いビヨンセに 祈りを届けたテレビは 00:03:16.147 --> 00:03:19.343 回転する巨岩のような造形となり 00:03:19.367 --> 00:03:22.670 ビヨンセの姿をスタジアムの後方にまで 送り届けました NOTE Paragraph 00:03:24.003 --> 00:03:27.312 スタジアムは 巨大な集会のようなものです 00:03:28.795 --> 00:03:31.821 10万人もの人々が その一時だけ集まって 00:03:31.845 --> 00:03:35.198 一語一句逃さず 共に歌うのです 00:03:35.222 --> 00:03:37.449 でも それと同時に彼らは 00:03:37.449 --> 00:03:42.210 パフォーマーと一対一の触れ合いを 求めて集まっています 00:03:42.863 --> 00:03:44.350 このショーを企画する際には 00:03:44.350 --> 00:03:47.838 私たちはとても大規模に 触れ合いを提供する必要があります NOTE Paragraph 00:03:48.705 --> 00:03:50.607 始まりは たいていスケッチです 00:03:50.631 --> 00:03:55.417 私が描いていたのは 高さ18メートルの回転する― 00:03:55.441 --> 00:03:58.004 ビヨンセの高画質な肖像でした 00:03:59.055 --> 00:04:01.435 それから 紙を半分に裂きました 00:04:01.459 --> 00:04:03.278 顔面を2つに割ることで 00:04:03.302 --> 00:04:06.828 その内側にある人間性に 触れようとしました 00:04:07.741 --> 00:04:11.455 スケッチを描くのも重要ですが もちろん そのスケッチを元に 00:04:11.479 --> 00:04:15.332 ツアーと一緒に輸送できるような 6階建てに相当する回転物体を製作するには 00:04:15.356 --> 00:04:19.254 数人の優秀なエンジニアが3か月間 寝る間も惜しんで働く必要がありました 00:04:19.278 --> 00:04:22.890 そうして とうとうマイアミで 00:04:22.914 --> 00:04:25.217 ツアーが開幕したのは 2016年4月 NOTE Paragraph 00:04:25.541 --> 00:04:28.522 (ライブ映像) NOTE Paragraph 00:04:31.379 --> 00:04:33.974 (ビヨンセ『フォーメーション』) NOTE Paragraph 00:04:38.387 --> 00:04:41.767 パパラッチ 生意気な私を 捕まえてごらんなさい NOTE Paragraph 00:04:42.244 --> 00:04:45.525 ジバンシィのドレスを着ると 私は怖いものなし NOTE Paragraph 00:04:46.072 --> 00:04:49.620 独占欲が強い私は 彼のネックレスをつける NOTE Paragraph 00:04:49.930 --> 00:04:51.818 パパはアラバマ NOTE Paragraph 00:04:51.842 --> 00:04:53.787 ママはルイジアナ出身 NOTE Paragraph 00:04:53.811 --> 00:04:55.962 黒人とクレオールを混ぜたら NOTE Paragraph 00:04:55.986 --> 00:04:57.692 テキサス娘の私が生まれた NOTE Paragraph 00:05:00.422 --> 00:05:01.946 私は自分の作品を― NOTE Paragraph 00:05:01.970 --> 00:05:02.971 (歓声と拍手) NOTE Paragraph 00:05:02.995 --> 00:05:04.145 ありがとうございます NOTE Paragraph 00:05:04.169 --> 00:05:05.837 (歓声と拍手) NOTE Paragraph 00:05:05.861 --> 00:05:08.836 私は自分の作品を 「舞台のための立体芸術」と呼びますが 00:05:09.836 --> 00:05:14.028 もちろん実際に 彫り出されていくのは観客の経験です 00:05:14.052 --> 00:05:16.329 演出家やデザイナーは 00:05:16.353 --> 00:05:17.805 観客が私たちと過ごす― 00:05:17.829 --> 00:05:20.472 一分一秒に 責任を持たねばなりません 00:05:21.045 --> 00:05:23.263 いわば パイロットのように 00:05:23.287 --> 00:05:27.548 何万人もの乗客を乗せて 飛行経路を辿ります NOTE Paragraph 00:05:28.413 --> 00:05:32.010 カナダのアーティスト The Weekndの場合は 00:05:32.034 --> 00:05:34.692 この「飛行経路」を文字通り解釈して 00:05:34.716 --> 00:05:39.086 紙飛行機で表現しました 00:05:39.110 --> 00:05:41.662 観客の頭上を飛ぶ紙飛行機は 00:05:41.686 --> 00:05:43.802 途中で分解し 変形して 00:05:43.831 --> 00:05:46.013 ばらばらになった紙飛行機の破片が 00:05:46.103 --> 00:05:49.480 ショーの最後に 再び組み立てられるのです 00:05:49.504 --> 00:05:51.305 あらゆる飛行と同じく 00:05:52.256 --> 00:05:55.472 最も繊細な部分は 最初の離陸です 00:05:55.496 --> 00:05:57.363 ポップ・コンサートの デザインで 00:05:57.387 --> 00:06:00.375 最良の素材となるもの― 00:06:00.399 --> 00:06:04.947 それはトラックやスタッフを使って 運搬する必要のないものです 00:06:04.971 --> 00:06:06.461 お金もかかりません 00:06:06.485 --> 00:06:11.914 でも ショーが始まる前のアリーナを 空気の隅々まで残らず満たすもの 00:06:11.938 --> 00:06:14.461 観客の期待感です 00:06:15.786 --> 00:06:18.894 誰もがそこにたどり着くまでの 物語を携えています 00:06:18.918 --> 00:06:20.316 どれほど遠くから来たか 00:06:20.340 --> 00:06:22.743 チケットを買うために どれだけ働いたか 00:06:22.767 --> 00:06:26.248 アリーナの外で ひと晩を過ごす人さえいます 00:06:26.272 --> 00:06:30.974 私たちの最初の課題は 観客の期待感に応えること 00:06:30.998 --> 00:06:34.450 パフォーマーを 初めて目にする瞬間の演出です NOTE Paragraph 00:06:36.404 --> 00:06:38.341 男性アーティストは 00:06:39.032 --> 00:06:43.540 喜んでもらえるのは 音楽を比喩で表現すること― 00:06:43.564 --> 00:06:45.484 宇宙船だったり 山脈だったり 00:06:46.917 --> 00:06:51.806 女性アーティストには 仮面や立体的な肖像を多用します 00:06:51.830 --> 00:06:54.330 女性アーティストのファンたちは 00:06:54.354 --> 00:06:55.917 顔を見たがるからです NOTE Paragraph 00:06:57.746 --> 00:07:02.748 アデルの5年ぶりのコンサートに やって来た観客が目にしたのはこれです 00:07:02.772 --> 00:07:05.755 眠っているアデルの目元です 00:07:06.964 --> 00:07:08.764 よく耳を澄ませば 00:07:08.788 --> 00:07:12.819 目覚めの時を待つ彼女の寝息が アリーナ中に響き渡るのが 00:07:12.843 --> 00:07:14.888 聞こえたはずです 00:07:14.912 --> 00:07:16.482 ライブはこんな風に始まります NOTE Paragraph 00:07:16.775 --> 00:07:19.521 (ライブ映像) NOTE Paragraph 00:07:22.315 --> 00:07:23.316 (音楽) NOTE Paragraph 00:07:23.340 --> 00:07:24.617 ハロー NOTE Paragraph 00:07:24.641 --> 00:07:27.516 (歓声と拍手) NOTE Paragraph 00:07:36.062 --> 00:07:38.766 U2のコンサートでは 00:07:38.790 --> 00:07:43.995 30年にわたる政治や詩や音楽の経歴を マップとして描き観客を誘いました 00:07:44.949 --> 00:07:48.533 バンドやクリエイティブ・チームと 何か月も準備にあたる中で 00:07:48.557 --> 00:07:50.414 このスケッチが 何度も現れました 00:07:50.438 --> 00:07:52.916 長く延びる線と道です 00:07:54.483 --> 00:07:57.294 バンドの過去と現在を結ぶ道であり 00:07:57.318 --> 00:08:01.276 活動家やアーティストとして 彼らが体験した綱渡りを表すものです 00:08:01.300 --> 00:08:02.966 映像の中を歩む姿を示すことで 00:08:02.990 --> 00:08:07.081 バンド自身が彼らの歌詞の 主人公となることができたのです NOTE Paragraph 00:08:07.105 --> 00:08:10.455 (音楽:U2『約束の地』) NOTE Paragraph 00:08:10.479 --> 00:08:12.621 (ボノ)僕は逃げたい NOTE Paragraph 00:08:14.041 --> 00:08:16.788 僕は隠れたい NOTE Paragraph 00:08:17.820 --> 00:08:21.677 僕を閉じ込めるような NOTE Paragraph 00:08:21.701 --> 00:08:24.732 壁を打ち破りたい NOTE Paragraph 00:08:26.593 --> 00:08:29.452 ショーの最後は フライトの終わりに似ています 00:08:29.476 --> 00:08:30.934 目的地への到着です 00:08:30.958 --> 00:08:35.172 ステージから観客へと エネルギーを送り出します NOTE Paragraph 00:08:35.978 --> 00:08:38.321 イギリスのバンド Take That のコンサートでは 00:08:38.345 --> 00:08:42.837 ショーの最後に 高さ24メートルの機械仕掛けの人物を 00:08:42.861 --> 00:08:45.063 観客席の中央に登場させました NOTE Paragraph 00:08:45.087 --> 00:08:49.462 (ライブ映像) NOTE Paragraph 00:08:53.546 --> 00:08:56.829 音楽を何かの機構で表現しようとすると よくあることですが 00:08:56.853 --> 00:09:00.133 これも当初は技術的に まったく無理だと思われました 00:09:01.039 --> 00:09:04.428 最初に依頼した3人の エンジニアに断られ 00:09:04.452 --> 00:09:06.841 最終的にこれを実現した方法は 00:09:06.865 --> 00:09:10.530 ツアーの最初から最後まで 制御機構は分解せずに 00:09:10.554 --> 00:09:12.221 丸ごと運ぶというものでした 00:09:12.245 --> 00:09:15.123 平床型のトラックに 折りたたんで乗せることで 00:09:15.147 --> 00:09:17.298 分解せずにツアーの移動をするのです 00:09:17.322 --> 00:09:20.894 もちろん これはつまり 頭部の大きさは 00:09:20.918 --> 00:09:22.894 ツアーの経路に含まれる高速道路に 00:09:22.918 --> 00:09:27.711 掛かっている橋の桁下高さの 最低値に合わせて決めたわけです 00:09:27.735 --> 00:09:30.181 そして 調べてみると 00:09:30.205 --> 00:09:33.894 くぐらざるを得ない 嫌になるくらい低い道路橋が 00:09:33.918 --> 00:09:35.455 ハンブルク郊外に見つかりました NOTE Paragraph 00:09:35.479 --> 00:09:38.808 (笑) NOTE Paragraph 00:09:38.832 --> 00:09:44.799 (音楽) NOTE Paragraph 00:09:44.823 --> 00:09:49.831 これまでに取り組んだ中で 技術的に非常に複雑なもうひとつの作品は 00:09:49.855 --> 00:09:51.532 オペラ『カルメン』です 00:09:51.556 --> 00:09:53.894 オーストリアの ブレゲンツ音楽祭でした 00:09:55.258 --> 00:09:59.728 カルメンの両手が ボーデン湖から出現し 00:09:59.752 --> 00:10:01.845 空中に投げ出したトランプの札が 00:10:01.869 --> 00:10:04.616 空と湖の間に 浮かんでいる様を表現しました 00:10:04.640 --> 00:10:08.790 でもこの一瞬の身振りを捉えた ひねられた手首の形は 00:10:08.814 --> 00:10:11.576 2シーズンにわたる オーストリアの冬に耐えられる 00:10:11.600 --> 00:10:13.845 十分な強度のある構造とする必要がありました 00:10:15.123 --> 00:10:18.074 ですから 写真では見えない部分に 00:10:18.098 --> 00:10:20.075 多くの労力が注がれています 00:10:20.099 --> 00:10:24.067 背面には基礎や構造体や支柱が たくさんあります 00:10:24.091 --> 00:10:27.336 私のウェブサイトに載っていない 写真をお見せしましょう 00:10:28.075 --> 00:10:30.181 セットの背面部です 00:10:30.205 --> 00:10:33.670 多くの労力を注いでも 観客に見せるようには作られていません 00:10:34.270 --> 00:10:35.924 多くの労力を注いでも 観客に見せるようには作られていません NOTE Paragraph 00:10:40.185 --> 00:10:42.797 実はこれはジレンマなのです 00:10:43.962 --> 00:10:46.332 舞台美術をデザインする者が 直面するジレンマです 00:10:46.356 --> 00:10:51.232 私が生みだすものの多くは 本物ではなく 00:10:51.256 --> 00:10:52.557 演出なのです 00:10:54.073 --> 00:10:58.978 それでもアーティストは皆 何らかの真実を伝えようと作品を作るものです 00:11:00.033 --> 00:11:03.088 私たちは常に自問しています 00:11:03.112 --> 00:11:06.073 「本物ではないものを使って 真実を伝えられるだろうか」 00:11:08.264 --> 00:11:11.692 自分が携わったショーを 観に行くと 00:11:11.716 --> 00:11:15.144 私だけがステージを見ていない ということがよくあります 00:11:16.404 --> 00:11:21.679 私が見ているのはステージ同様に 惹きつけられるもの― 00:11:21.703 --> 00:11:22.864 観客です NOTE Paragraph 00:11:22.888 --> 00:11:24.863 (歓声) NOTE Paragraph 00:11:24.887 --> 00:11:26.784 こんなものが他に どこで見られるでしょう? NOTE Paragraph 00:11:26.808 --> 00:11:27.809 (歓声) NOTE Paragraph 00:11:27.833 --> 00:11:31.459 これほど多くの人々が つながり 集中して 00:11:31.483 --> 00:11:34.808 妨げられることなく 一体となっているのを? 00:11:36.573 --> 00:11:39.335 最近 これに想を得た作品を 作り始めました 00:11:40.478 --> 00:11:43.057 観客が声を共にする様です NOTE Paragraph 00:11:44.535 --> 00:11:47.740 『Poem Portraits(詩の肖像)』は 共作の詩です 00:11:48.669 --> 00:11:51.027 ロンドンのサーペンタイン・ ギャラリーで始まり 00:11:51.051 --> 00:11:56.956 人々は共作の詩のために 単語を1つ提供することができます 00:11:56.980 --> 00:12:00.322 スタジアムの後方へと届けられる― 00:12:00.346 --> 00:12:02.718 1人の巨大なLEDの肖像の代わりに 00:12:02.742 --> 00:12:05.036 観客一人一人が 00:12:05.060 --> 00:12:07.305 自分のポートレートを 持ち帰ることができます 00:12:07.329 --> 00:12:09.791 そしてそのポートレートは 00:12:09.815 --> 00:12:12.608 自分が詩のために提供した言葉によって 編まれているのです 00:12:12.632 --> 00:12:16.592 観客は常に進化を続ける作品の 一端を持ち帰れるのです 00:12:17.833 --> 00:12:21.251 来年には共作の詩は 建築物になる予定です NOTE Paragraph 00:12:23.640 --> 00:12:28.846 これは2020年万博での イギリスのパビリオンのデザインです 00:12:30.569 --> 00:12:31.719 イギリスで... 00:12:33.089 --> 00:12:36.085 これまでの人生でこれほどに 分断を感じたことはありません 00:12:37.160 --> 00:12:41.209 相違する意見でこれほどに 騒がしかったことはありません 00:12:41.233 --> 00:12:44.296 人々の声が結びつき まとまる場の 必要性がこれほどに 00:12:44.320 --> 00:12:46.356 感じられたことはありません 00:12:46.380 --> 00:12:50.239 私の望みは この木の造形作品が 00:12:50.263 --> 00:12:53.169 かつて弾いていた木製の楽器 ヴァイオリンのように 00:12:53.193 --> 00:13:00.423 人々が遊び心を持って 一方の端で言葉を入力し 00:13:00.447 --> 00:13:02.743 もう一方の端から出てきたときには その言葉が 00:13:02.767 --> 00:13:07.066 共作の詩 ひとつの声になっているのを 目にする場になってほしいのです NOTE Paragraph 00:13:08.796 --> 00:13:15.904 (音楽) NOTE Paragraph 00:13:22.149 --> 00:13:25.911 これは機械学習を使った 簡単な試みです 00:13:26.769 --> 00:13:32.107 共作の詩を生み出すアルゴリズムは かなりシンプルなものです 00:13:32.131 --> 00:13:33.838 予測変換のようなもので 00:13:33.862 --> 00:13:39.692 違いは19世紀の詩人が書いた 何千万もの言葉を学習していることです 00:13:39.716 --> 00:13:41.920 ですから 過去と現在 00:13:41.920 --> 00:13:46.525 そして有機的知性と無機的知性の 融合だと言えるでしょう NOTE Paragraph 00:13:47.547 --> 00:13:50.761 スティーブン・ホーキングの言葉に 想を得ました 00:13:50.785 --> 00:13:54.396 晩年 彼はシンプルな問いを 立てました 00:13:54.420 --> 00:14:00.719 我々人類がいつの日か 進んだ知的生命体や 00:14:00.743 --> 00:14:03.191 進んだ文明に遭遇したら 00:14:03.215 --> 00:14:04.745 どうやって語りかけるのだろう? 00:14:05.808 --> 00:14:09.499 惑星として我々が語る 集合的言語は何だろうか? NOTE Paragraph 00:14:11.941 --> 00:14:15.639 光という言語は あらゆる観客に届きます 00:14:16.474 --> 00:14:19.157 皆 心を動かされますが 手に取ることはできません 00:14:20.514 --> 00:14:26.077 劇場では どの作品も暗転― 光のない状態から始まります 00:14:26.101 --> 00:14:29.644 夜通し 照明を調整し プログラムしては 00:14:30.812 --> 00:14:33.724 光を形作り 切り出す 新しい方法を探ります NOTE Paragraph 00:14:35.074 --> 00:14:39.445 (音楽) NOTE Paragraph 00:14:39.469 --> 00:14:44.024 これは私たちの仕事を 描いたポートレートです 00:14:45.494 --> 00:14:49.575 光を形作り再構成する 新しい方法を常に探り 00:14:49.599 --> 00:14:53.821 口に出す必要のなくなった事柄を 言い表す言葉を常に探します 00:14:56.637 --> 00:15:00.408 お伝えしておきたいのは これも 00:15:01.218 --> 00:15:03.747 今日お見せしたものもすべて 00:15:03.771 --> 00:15:06.075 物理的には存在しないということです NOTE Paragraph 00:15:06.099 --> 00:15:08.931 (音楽) NOTE Paragraph 00:15:08.955 --> 00:15:11.521 実際に この25年間に 私が作ってきたほとんどのものは 00:15:11.545 --> 00:15:13.262 もう存在しません 00:15:13.286 --> 00:15:17.838 でも 私たちの作品は かつて観客として 00:15:17.862 --> 00:15:21.061 そこに確かに存在した人々の 記憶の中に シナプス結合の内に 00:15:21.085 --> 00:15:22.505 留まり続けます NOTE Paragraph 00:15:25.462 --> 00:15:30.208 いつか読んだことがあります そらんじて覚えている詩だけは 00:15:31.231 --> 00:15:33.398 ずっとその人と共にあり 00:15:33.422 --> 00:15:35.530 失うことができないものだと 00:15:35.554 --> 00:15:39.686 たとえ家が焼けて 持ち物を全て失ったとしても 00:15:39.710 --> 00:15:44.700 ずっと昔に覚えた詩の言葉で 締めくくりたいと思います NOTE Paragraph 00:15:47.123 --> 00:15:50.004 イギリスの小説家 E・M・フォースターが 00:15:50.028 --> 00:15:51.890 1910年に書き残した言葉です 00:15:52.142 --> 00:15:55.014 私の愛する欧州は NOTE Paragraph 00:15:56.349 --> 00:15:58.219 その数年後に内側から崩壊し始めます NOTE Paragraph 00:16:00.041 --> 00:16:02.882 まとまりを呼びかける 彼の声は今でも 00:16:02.906 --> 00:16:05.798 私たちが生み出そうとしているものに 通じるところがあります NOTE Paragraph 00:16:06.794 --> 00:16:11.752 「ひたすら繋がるのだ それだけが彼女の教えであった 00:16:11.776 --> 00:16:14.865 散文と情熱が ひたすら繋がれば 00:16:14.889 --> 00:16:17.890 互いに高めあうだろう 00:16:17.914 --> 00:16:22.224 すると人類の愛は いよいよ高めあうのだ 00:16:22.248 --> 00:16:27.237 ひたすら繋がるのだ 断片となることなかれ」 NOTE Paragraph 00:16:29.090 --> 00:16:30.241 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:16:30.265 --> 00:16:35.549 (拍手)