[Script Info] Title: [Events] Format: Layer, Start, End, Style, Name, MarginL, MarginR, MarginV, Effect, Text Dialogue: 0,0:00:07.79,0:00:11.60,Default,,0000,0000,0000,,アルベール・カミュは\N暴力の中で育ちました Dialogue: 0,0:00:11.60,0:00:13.35,Default,,0000,0000,0000,,生まれ故郷のアルジェリアは Dialogue: 0,0:00:13.35,0:00:18.87,Default,,0000,0000,0000,,フランスからの入植者との間で起きた紛争で\N混乱に陥っていました Dialogue: 0,0:00:18.87,0:00:21.33,Default,,0000,0000,0000,,カミュは 第1次世界大戦で 父親を亡くし Dialogue: 0,0:00:21.33,0:00:24.37,Default,,0000,0000,0000,,第2次世界大戦時は\N兵士として不適任と判断されました Dialogue: 0,0:00:24.37,0:00:28.53,Default,,0000,0000,0000,,フランスで結核を患いながら\Nレジスタンス ジャーナリストとしてー Dialogue: 0,0:00:28.53,0:00:32.91,Default,,0000,0000,0000,,戦争の惨状を目にし\N人生への失望感を 増幅させていきました Dialogue: 0,0:00:32.91,0:00:38.77,Default,,0000,0000,0000,,終わりのない流血の惨事と苦しみの意味を\N見出すことができなかったのです Dialogue: 0,0:00:38.77,0:00:40.06,Default,,0000,0000,0000,,カミュは自問しました Dialogue: 0,0:00:40.06,0:00:46.79,Default,,0000,0000,0000,,もし この世界が 無意味 なら\N人生には価値があるのだろうか? Dialogue: 0,0:00:46.79,0:00:48.95,Default,,0000,0000,0000,,カミュの同世代の人々も Dialogue: 0,0:00:48.95,0:00:55.86,Default,,0000,0000,0000,,当時の新しい哲学「実存主義」のもとに\N似たような疑問を抱いていました Dialogue: 0,0:00:55.86,0:00:59.58,Default,,0000,0000,0000,,実存主義者たちは\N人は白紙の状態で生まれ Dialogue: 0,0:00:59.58,0:01:04.46,Default,,0000,0000,0000,,混乱の中にも 人生を意味を見出す\N責任を担って生きると考えました Dialogue: 0,0:01:04.46,0:01:07.52,Default,,0000,0000,0000,,しかし カミュは この学派の思想を\N受け入れませんでした Dialogue: 0,0:01:07.52,0:01:11.11,Default,,0000,0000,0000,,カミュは 全ての人間は\N共通の目的へと向かって Dialogue: 0,0:01:11.11,0:01:14.14,Default,,0000,0000,0000,,互いを結びつける本質を\N持っていると考えました Dialogue: 0,0:01:14.14,0:01:21.32,Default,,0000,0000,0000,,その目標の1つが専横的に残酷な世界を尻目に\N生きる意味を見つけ出すことだ と Dialogue: 0,0:01:21.32,0:01:27.17,Default,,0000,0000,0000,,カミュは 生きる意味の探求 と\N世界の無言の冷淡さを Dialogue: 0,0:01:27.17,0:01:31.21,Default,,0000,0000,0000,,2つの合わないパズルのピースに例え Dialogue: 0,0:01:31.21,0:01:37.07,Default,,0000,0000,0000,,これを合わせようとするのは 根本的に\N不条理(ばかげたこと)だと考えました Dialogue: 0,0:01:37.07,0:01:42.09,Default,,0000,0000,0000,,この葛藤のような思想は\Nカミュの「不条理の哲学」の中心となり Dialogue: 0,0:01:42.09,0:01:46.23,Default,,0000,0000,0000,,人生とは本来 無意味であると説きました Dialogue: 0,0:01:46.23,0:01:49.05,Default,,0000,0000,0000,,無意味な人生をどう生きるかを\N探求することは Dialogue: 0,0:01:49.05,0:01:52.69,Default,,0000,0000,0000,,カミュの初期作品を支える\N誘導的な問いかけとなり Dialogue: 0,0:01:52.69,0:01:56.70,Default,,0000,0000,0000,,カミュはそれを\N「不条理の系列」と呼びました Dialogue: 0,0:01:56.70,0:02:00.52,Default,,0000,0000,0000,,初めて出版されたカミュの小説\N『The Star of This Cycle』 には Dialogue: 0,0:02:00.52,0:02:03.58,Default,,0000,0000,0000,,どちらかというと この疑問に対する\N虚しい答えが綴られています Dialogue: 0,0:02:03.58,0:02:06.55,Default,,0000,0000,0000,,『異邦人』の主人公ムルソーは Dialogue: 0,0:02:06.55,0:02:12.35,Default,,0000,0000,0000,,感情が分離した\N何事にも意味を見出せない若い男です Dialogue: 0,0:02:12.35,0:02:15.61,Default,,0000,0000,0000,,母親の葬式において 涙も見せず Dialogue: 0,0:02:15.61,0:02:21.66,Default,,0000,0000,0000,,女性を辱めるという知人の計画を手助けし\Nさらには残虐な犯罪さえ犯しますが Dialogue: 0,0:02:21.66,0:02:25.00,Default,,0000,0000,0000,,ムルソーは良心の呵責に\N苛まれることはありません Dialogue: 0,0:02:25.00,0:02:31.30,Default,,0000,0000,0000,,この男にとって 世界は無意味で\N道徳判断力がないのです Dialogue: 0,0:02:31.30,0:02:37.47,Default,,0000,0000,0000,,ムルソーの行動は\N秩序ある社会を敵に回し Dialogue: 0,0:02:37.47,0:02:43.28,Default,,0000,0000,0000,,疎外感はゆっくり増幅し\N衝撃的なクライマックスを迎えます Dialogue: 0,0:02:43.28,0:02:49.11,Default,,0000,0000,0000,,人を拒絶するような作品の主人公とは異なり\Nカミュ自身は誠実な哲学で高名です Dialogue: 0,0:02:49.11,0:02:52.01,Default,,0000,0000,0000,,『異邦人』で名声を得て以来 Dialogue: 0,0:02:52.01,0:02:58.24,Default,,0000,0000,0000,,カミュは 不条理の中に\N人生の価値を探る作品を作り続けました Dialogue: 0,0:02:58.24,0:03:02.79,Default,,0000,0000,0000,,その作品の多くが\N同じ哲学的問いかけに 辿り着くのです Dialogue: 0,0:03:02.79,0:03:05.22,Default,,0000,0000,0000,,もし 本当に人生が無意味なら Dialogue: 0,0:03:05.22,0:03:09.76,Default,,0000,0000,0000,,自殺は 無意味な人生に対して\N唯一 理にかなう行いなのか? Dialogue: 0,0:03:09.76,0:03:13.44,Default,,0000,0000,0000,,カミュの答えは 完全なる「いいえ」でした Dialogue: 0,0:03:13.44,0:03:17.53,Default,,0000,0000,0000,,理にかなわぬこの世界を\N説明する良い言葉はないとしても Dialogue: 0,0:03:17.53,0:03:19.79,Default,,0000,0000,0000,,とにかく 生きること を選択することで Dialogue: 0,0:03:19.79,0:03:23.57,Default,,0000,0000,0000,,最もよく 人間の本当の自由が\N表現されると結論づけました Dialogue: 0,0:03:23.57,0:03:27.39,Default,,0000,0000,0000,,カミュは これを\N彼の有名な短編作品で表現しました Dialogue: 0,0:03:27.39,0:03:30.07,Default,,0000,0000,0000,,ギリシャ神話 シーシュポスのお話です Dialogue: 0,0:03:30.07,0:03:33.27,Default,,0000,0000,0000,,シーシュポスは 神々を欺いた罪として Dialogue: 0,0:03:33.27,0:03:38.05,Default,,0000,0000,0000,,大岩を山頂まで \N永遠に押上げる罰を課された王です Dialogue: 0,0:03:38.05,0:03:42.83,Default,,0000,0000,0000,,このむごい罰は\N桁外れに無意味ですが Dialogue: 0,0:03:42.83,0:03:47.48,Default,,0000,0000,0000,,カミュは こう説きました\N人間はみな 同じ状況に生きー Dialogue: 0,0:03:47.48,0:03:50.93,Default,,0000,0000,0000,,人生の無意味さを\N受け入れる時に はじめて Dialogue: 0,0:03:50.93,0:03:55.13,Default,,0000,0000,0000,,自信をもって不条理に\N立ち向かうことができるのだと Dialogue: 0,0:03:55.13,0:04:00.58,Default,,0000,0000,0000,,シーシュポスが 罰を自ら繰り返す姿について\Nカミュはまさにこう説明しています Dialogue: 0,0:04:00.58,0:04:03.86,Default,,0000,0000,0000,,「人は シーシュポスは喜んでやっている\Nと思うに違いない」 Dialogue: 0,0:04:03.86,0:04:07.86,Default,,0000,0000,0000,,同時代の人々は この無意味さの解釈を\N十分には受け入れませんでした Dialogue: 0,0:04:07.86,0:04:12.88,Default,,0000,0000,0000,,実存主義者は 人間から力や目標を\N奪っていると彼らが信じていた ― Dialogue: 0,0:04:12.88,0:04:17.04,Default,,0000,0000,0000,,社会の仕組みを覆そうとする暴力革命を\N支持していました Dialogue: 0,0:04:17.04,0:04:21.83,Default,,0000,0000,0000,,カミュは 2つ目となる「反抗の系列」 で\Nこれに応えました Dialogue: 0,0:04:21.83,0:04:24.26,Default,,0000,0000,0000,,『反抗的人間』において Dialogue: 0,0:04:24.26,0:04:28.36,Default,,0000,0000,0000,,「反抗」とは 破壊的というより むしろ\N創造的行動である と論じました Dialogue: 0,0:04:28.36,0:04:31.29,Default,,0000,0000,0000,,権力の力関係を覆すことは Dialogue: 0,0:04:31.29,0:04:35.39,Default,,0000,0000,0000,,終わらない暴力のサイクルを\N生み出すだけだと考えたのです Dialogue: 0,0:04:35.39,0:04:38.67,Default,,0000,0000,0000,,それよりも\N不必要な争いを避ける方法として Dialogue: 0,0:04:38.67,0:04:43.88,Default,,0000,0000,0000,,万人が共有する人間性への理解を\N確立することが大切だと考えました Dialogue: 0,0:04:43.88,0:04:47.99,Default,,0000,0000,0000,,皮肉にも この 平和的解決案がー Dialogue: 0,0:04:47.99,0:04:52.62,Default,,0000,0000,0000,,作家仲間や哲学者たちと\N対立する引き金となりました Dialogue: 0,0:04:52.62,0:04:54.22,Default,,0000,0000,0000,,そんな対立を気にもせず Dialogue: 0,0:04:54.22,0:04:58.99,Default,,0000,0000,0000,,なおも カミュは \N最も長く 最も私的な小説に取りかかりました Dialogue: 0,0:04:58.99,0:05:03.80,Default,,0000,0000,0000,,カミュの自伝作品である\N『最初の人間』です Dialogue: 0,0:05:03.80,0:05:08.16,Default,,0000,0000,0000,,この小説は 希望に満ちた新しい方向性をもつ\N最初の作品となるはずでした Dialogue: 0,0:05:08.16,0:05:10.27,Default,,0000,0000,0000,,「愛の系列」 です Dialogue: 0,0:05:10.27,0:05:12.83,Default,,0000,0000,0000,,しかし 1960年 カミュは Dialogue: 0,0:05:12.83,0:05:19.21,Default,,0000,0000,0000,,無意味さや不条理としか言いようのないような\N車の事故で 突然この世を去りました Dialogue: 0,0:05:19.21,0:05:22.05,Default,,0000,0000,0000,,ゆえに「愛の系列」の作品を\N目にすることはできませんが Dialogue: 0,0:05:22.05,0:05:27.80,Default,,0000,0000,0000,,反抗と不条理の系列に関する作品は\N現代の読者の心に響き続けています Dialogue: 0,0:05:27.80,0:05:29.95,Default,,0000,0000,0000,,カミュの不条理という概念は Dialogue: 0,0:05:29.95,0:05:36.88,Default,,0000,0000,0000,,世界文学 20世紀哲学 そして\N大衆文化として溶け込みました Dialogue: 0,0:05:37.28,0:05:42.64,Default,,0000,0000,0000,,こんにちも カミュは 不確さの折々に\N信頼のおける道案内役となっています Dialogue: 0,0:05:42.64,0:05:46.82,Default,,0000,0000,0000,,カミュの思想は無意味な世界に Dialogue: 0,0:05:46.82,0:05:50.89,Default,,0000,0000,0000,,挫折ではなく ひらめきを\N吹き込んでくれるのです