WEBVTT 00:00:05.769 --> 00:00:08.690 私がジャーナリストとしての 目的を追求する中で 00:00:08.714 --> 00:00:12.134 ドリー・パートンのおかげで 見つけられたことをお話しします NOTE Paragraph 00:00:13.038 --> 00:00:15.649 私は約20年間 最初はラジオで 次にポッドキャストで 00:00:15.673 --> 00:00:17.594 オーディオストーリーを 語ってきました 00:00:17.981 --> 00:00:21.195 2002年 私が『Radiolab』という ラジオ番組を始めた時 00:00:21.883 --> 00:00:24.620 典型的な番組進行はこうでした 00:00:24.645 --> 00:00:26.178 ゲストをお呼びします NOTE Paragraph 00:00:26.203 --> 00:00:28.797 (音声)(スティーブン・ストロガッツ) 自然の中で 00:00:28.821 --> 00:00:31.465 我を忘れるような 心をつかんで離さない光景です 00:00:31.489 --> 00:00:34.384 ここで思い出してほしいのですが 物音ひとつしないんです NOTE Paragraph 00:00:34.409 --> 00:00:37.068 (ジャド・アブムラド)数学者の スティーブのような人が 00:00:37.092 --> 00:00:38.504 詳しく説明してくれます NOTE Paragraph 00:00:38.528 --> 00:00:40.126 (スティーブン) 想像してください 00:00:40.126 --> 00:00:42.424 タイの奥地の密林に土手があります 00:00:42.438 --> 00:00:44.861 あなたはカヌーに乗り 滑るように川を下っています 00:00:45.535 --> 00:00:46.956 すべてが静まり返り 00:00:46.980 --> 00:00:50.273 時折 極彩色の熱帯の鳥か何かの 鳴き声がします NOTE Paragraph 00:00:50.297 --> 00:00:52.962 (ジャド)スティーブと 想像上のカヌーに乗っていると 00:00:52.996 --> 00:00:56.177 周囲には 至るところに 無数の蛍が飛んでいます 00:00:56.201 --> 00:01:00.296 蛍の光がチラチラしていて 00:01:00.606 --> 00:01:03.566 夜空に星が 瞬いているような印象を与えます 00:01:03.590 --> 00:01:05.091 こんなのを期待しますよね 00:01:05.487 --> 00:01:08.178 でも スティーブに言わせると この場所に限っては 00:01:08.202 --> 00:01:10.884 なぜだか 科学者では説明しきれない ことがあるというのです NOTE Paragraph 00:01:10.908 --> 00:01:12.058 (スティーブ)ウップ 00:01:12.996 --> 00:01:14.177 ウップ 00:01:14.924 --> 00:01:15.951 ウップ 00:01:15.975 --> 00:01:19.073 無数の光が一斉に点いたり 消えたりします NOTE Paragraph 00:01:19.097 --> 00:01:26.097 (音楽と電子音) NOTE Paragraph 00:01:26.327 --> 00:01:27.763 (ジャド)このタイミングで 00:01:27.787 --> 00:01:30.438 私は通常 先程のように 綺麗な音楽を流すのですが 00:01:30.462 --> 00:01:32.298 リスナーは温かい気持ちになります 00:01:32.298 --> 00:01:34.816 私たちが科学を通じて理解し 00:01:34.840 --> 00:01:36.760 頭と胸に何となく残っている感情が 00:01:36.784 --> 00:01:38.237 体中を駆け巡ります 00:01:38.261 --> 00:01:39.879 それが 驚嘆です NOTE Paragraph 00:01:39.903 --> 00:01:43.143 2002~2010年まで 私は何百回も このような話を配信しました 00:01:44.693 --> 00:01:48.138 科学の話、神経科学の話 難解な話といった 00:01:48.162 --> 00:01:50.860 常に驚嘆の念を もたらしてくれる話です 00:01:51.780 --> 00:01:54.219 私は驚嘆の瞬間に 人々をいざなうことが 00:01:54.236 --> 00:01:55.957 自分の仕事だと 考えるようになりました 00:01:56.269 --> 00:01:57.753 驚嘆の声はこんな感じです NOTE Paragraph 00:01:57.777 --> 00:02:01.585 (様々な声)「はぁ!」「わぉ!」 「わぉ!」 00:02:02.094 --> 00:02:03.259 「素晴らしい」 00:02:03.283 --> 00:02:05.316 「わあ!」「わぉ!」 NOTE Paragraph 00:02:05.340 --> 00:02:08.371 (ジャド)でも 私はこのような話に やや飽きてきました 00:02:08.720 --> 00:02:10.673 繰り返しがそうさせたのもあります 00:02:10.697 --> 00:02:13.387 パソコンの前に座り ニューロンの音を作った日のことを 00:02:13.411 --> 00:02:14.807 私は覚えています NOTE Paragraph 00:02:14.831 --> 00:02:15.982 (パチパチする音) NOTE Paragraph 00:02:16.006 --> 00:02:19.325 ホワイトノイズを使って 編集すれば いとも簡単に音が作れます 00:02:19.349 --> 00:02:23.214 こんな風に思っていました 「この音をもう25回も作った」と 00:02:23.238 --> 00:02:25.252 でも それだけではないのです 00:02:25.276 --> 00:02:27.443 このような話が よくたどる道がありました 00:02:27.467 --> 00:02:29.764 科学が作った真実の道をたどると 00:02:29.773 --> 00:02:31.133 驚嘆に行き着くのです NOTE Paragraph 00:02:31.157 --> 00:02:33.185 私は科学好きなので 誤解しないでください 00:02:33.209 --> 00:02:35.332 両親は戦火にまみれた祖国から 00:02:35.356 --> 00:02:36.578 アメリカに移住しました 00:02:36.602 --> 00:02:41.427 両親にとって 科学とは何ものにも代え難い アイデンティティのようなものであり 00:02:41.451 --> 00:02:43.518 私もそれを受け継ぎました 00:02:44.268 --> 00:02:46.737 でも 科学が驚嘆へ変わる シンプルな動きに 00:02:46.761 --> 00:02:48.047 何というんでしょうか 00:02:48.071 --> 00:02:49.908 違和感を感じるようになりました 00:02:49.933 --> 00:02:52.051 「それしか語る道はないのか?」と NOTE Paragraph 00:02:52.945 --> 00:02:54.599 2012年頃 00:02:54.823 --> 00:02:59.076 私は「何か違う」と思う 様々な話に出くわしました 00:02:59.466 --> 00:03:04.673 特に ラオスの山中で 自分や村人に対して 00:03:04.697 --> 00:03:07.325 化学兵器が使用されたと語る男性に 取材した話は 00:03:07.349 --> 00:03:08.587 後味の悪いものでした 00:03:08.611 --> 00:03:10.547 欧米の科学者が現地へ行って 00:03:10.571 --> 00:03:13.140 化学兵器を測定しましたが 検出されませんでした 00:03:13.164 --> 00:03:14.791 この件で 男性を取材しました 00:03:14.815 --> 00:03:16.449 「科学者の間違いだ」と言うので 00:03:16.473 --> 00:03:17.878 「検査した」と反論すると 00:03:17.902 --> 00:03:20.362 「関係ない 実際にあったんだ」と言いました 00:03:20.386 --> 00:03:22.537 押し問答の末 00:03:22.561 --> 00:03:24.449 手短に言うと 00:03:24.473 --> 00:03:26.259 最後には泣かれてしまいました 00:03:26.981 --> 00:03:28.131 私は― 00:03:28.751 --> 00:03:29.901 最悪の気分でした 00:03:31.036 --> 00:03:34.249 苦しんでいる人に 科学的真実を突き付けても 00:03:35.045 --> 00:03:36.997 何の癒しにもなりませんでした 00:03:37.021 --> 00:03:41.589 真実を探すのに 科学に頼りすぎたのかもしれません 00:03:41.918 --> 00:03:43.776 その時 強く感じたのです 00:03:43.800 --> 00:03:45.499 たくさんの真実があるのに 00:03:45.533 --> 00:03:47.838 そのうち1つしか 見ていないことを 00:03:47.862 --> 00:03:50.053 「この点を改善せねば」と 思いました NOTE Paragraph 00:03:50.077 --> 00:03:52.078 そして 次の8年間 00:03:52.092 --> 00:03:55.230 私は相反する真実の話を することに決めました 00:03:55.254 --> 00:03:57.464 合意の政治についての配信では 00:03:57.478 --> 00:04:00.299 生存者と加害者の見解を聞くと 00:04:00.323 --> 00:04:01.530 意見がぶつかりました 00:04:01.554 --> 00:04:02.807 人種の話で取り上げたのは 00:04:02.807 --> 00:04:04.893 組織的に黒人が 陪審から外されているが 00:04:04.893 --> 00:04:07.185 その再発を防ぐべく 制定された法律は 00:04:07.185 --> 00:04:09.049 事態を悪化させただけだったことです 00:04:09.049 --> 00:04:12.093 テロ対策の話や グアンタナモの抑留者の話は 00:04:12.117 --> 00:04:13.593 論争の的となり 00:04:13.607 --> 00:04:16.118 つじつま合わせに みんな四苦八苦するのみです 00:04:16.122 --> 00:04:19.169 この四苦八苦することが ポイントなのです 00:04:20.031 --> 00:04:22.427 「それが私の仕事なのかも」と 思いはじめました 00:04:22.451 --> 00:04:24.583 四苦八苦する瞬間に いざなうことです 00:04:25.015 --> 00:04:26.483 こういう声が聞こえてきます NOTE Paragraph 00:04:26.507 --> 00:04:28.594 (様々な声)「でも 私の意見は― なんか―」 NOTE Paragraph 00:04:28.618 --> 00:04:29.919 「あー 私は」(ため息) NOTE Paragraph 00:04:29.943 --> 00:04:31.935 「だから そのー」 NOTE Paragraph 00:04:31.959 --> 00:04:33.379 「つまり 私は―」 NOTE Paragraph 00:04:33.403 --> 00:04:37.546 「あのー あー」(ため息) NOTE Paragraph 00:04:37.570 --> 00:04:40.355 (ジャド)ため息の声 00:04:40.379 --> 00:04:43.119 私は 配信するすべての話で その声を聞きたかったのです 00:04:43.143 --> 00:04:46.176 今この瞬間の声のようなもの なのですから 00:04:46.200 --> 00:04:50.566 単に収集するべき一連の事実だけが 真実ではない― 00:04:50.590 --> 00:04:51.751 そんな世界にいます 00:04:51.775 --> 00:04:52.942 真実とは過程であり 00:04:52.966 --> 00:04:55.312 名詞から動詞に変化しています 00:04:55.336 --> 00:04:57.419 でも 話の結末をどうするのか? 00:04:57.443 --> 00:05:01.300 例えば 起こったことを ありのままに語り 00:05:01.324 --> 00:05:03.507 2つの争点に沿って 展開して 00:05:03.531 --> 00:05:06.229 終わりに近づくと あたかも― 00:05:06.253 --> 00:05:07.404 いや そうだな 00:05:07.428 --> 00:05:08.721 どう締めくくれば? 00:05:08.745 --> 00:05:09.896 ああ 00:05:09.920 --> 00:05:11.951 あなたなら どういう結末にしますか? 00:05:11.975 --> 00:05:15.277 ハッピーエンドだと 現実味がありません 00:05:15.301 --> 00:05:16.451 そうは言っても 00:05:16.475 --> 00:05:18.864 聞き手をその場に 置き去りにしたままでは 00:05:18.888 --> 00:05:20.729 「これを聞いて何になった?」 となります 00:05:20.753 --> 00:05:23.309 別の手立てがあるはずと 思えました 00:05:23.333 --> 00:05:25.943 困難を乗り越える方法が あるはずです NOTE Paragraph 00:05:25.967 --> 00:05:29.772 そして ここで ドリーの話になるんです 00:05:30.254 --> 00:05:32.777 南部では 聖ドリーと好んで呼ばれます 00:05:32.801 --> 00:05:36.445 去年 ぼんやりとした啓示を受け 『ドリー・パートンのアメリカ』という 00:05:36.469 --> 00:05:39.631 全9回のシリーズを作ったことを お話しします 00:05:39.655 --> 00:05:41.336 私には少し新しい試みでしたが 00:05:41.360 --> 00:05:44.539 ドリーが どういう 結末にすればいいのか 00:05:44.563 --> 00:05:46.316 教えてくれると直感していました NOTE Paragraph 00:05:46.340 --> 00:05:48.094 その理由はこうです 00:05:48.118 --> 00:05:49.396 ドリーのコンサートでは 00:05:49.420 --> 00:05:52.118 トラッカーキャップを被った男性が 女装の男性の隣に立ち 00:05:52.142 --> 00:05:54.031 民主党支持者が 共和党支持者の隣に立ち 00:05:54.055 --> 00:05:55.206 女性どうし手をつなぎ 00:05:55.230 --> 00:05:57.483 いろんなタイプの人々が 一緒に集まっています 00:05:57.507 --> 00:06:00.372 互いに毛嫌いしあっているはずと 思われている人々が 00:06:00.396 --> 00:06:02.126 そこで一緒に歌っています 00:06:02.150 --> 00:06:05.570 ともかく ドリーはアメリカに この類まれな場所を作り上げ 00:06:05.594 --> 00:06:07.983 私は その秘訣を 知りたかったのです NOTE Paragraph 00:06:08.007 --> 00:06:12.705 私は 12回にわたるドリーへの取材で 北米・南米の両大陸に行きました 00:06:12.729 --> 00:06:14.500 ドリーは毎回こんな風に応じました NOTE Paragraph 00:06:14.524 --> 00:06:16.864 (音声)(ドリー・パートン) なんでも聞いて 00:06:16.888 --> 00:06:19.087 私が言いたいことを お話しするわ NOTE Paragraph 00:06:19.111 --> 00:06:20.119 (笑) NOTE Paragraph 00:06:20.143 --> 00:06:22.800 (ジャド)ドリーには紛れもなく 計り知れない力があります 00:06:22.824 --> 00:06:25.102 でも 問題にぶち当たりました 00:06:25.126 --> 00:06:29.617 ひょんな事から このシリーズを 作ることを選びましたが 00:06:29.641 --> 00:06:32.054 これについては 心の葛藤があったのです 00:06:32.078 --> 00:06:34.014 ドリーは南部のことを 多く歌っています 00:06:34.038 --> 00:06:35.673 ドリーのディスコグラフィには 00:06:35.697 --> 00:06:37.967 テネシーに関する歌が たくさんあります NOTE Paragraph 00:06:37.991 --> 00:06:40.879 (音楽)(ドリー)(様々な曲を歌う) テネシー テネシー 00:06:40.903 --> 00:06:42.547 テネシーが恋しくなる 00:06:43.150 --> 00:06:47.617 テネシーへの郷愁を誘う ブルースが頭の中を駆け巡る 00:06:48.682 --> 00:06:49.796 テネシー NOTE Paragraph 00:06:49.820 --> 00:06:52.678 (ジャド)「テネシーの山にある家」 「テネシーの山の思い出」 00:06:52.682 --> 00:06:54.419 さて 私はテネシーで育ちましたが 00:06:54.443 --> 00:06:56.459 この地には何ら 望郷の念を抱いていません 00:06:56.483 --> 00:06:59.478 私はガリガリに痩せこけた アラブ人の子どもで 00:06:59.502 --> 00:07:02.784 自爆テロを生み出した国から やって来ました 00:07:02.808 --> 00:07:05.069 私は 多くの時間を 自室で過ごしました 00:07:05.093 --> 00:07:06.689 ナッシュビルを去る日が来た時は 00:07:06.713 --> 00:07:08.848 ただ旅立ちました NOTE Paragraph 00:07:08.872 --> 00:07:10.324 ドリーウッドで覚えているのは 00:07:10.348 --> 00:07:14.149 テネシーの山にあるドリーの生家の レプリカの前に立ったときのことです 00:07:14.173 --> 00:07:15.912 周りの人は泣いていました 00:07:15.936 --> 00:07:18.309 これは セットなのに 00:07:18.705 --> 00:07:19.872 なぜ泣いているんだろう? 00:07:19.896 --> 00:07:22.185 自分の南部との関わり合いからは 00:07:22.209 --> 00:07:24.759 なぜ そこまで感情的になのか 分かりませんでした 00:07:25.356 --> 00:07:27.991 私は正直なところ パニック発作を起こしかけていました 00:07:28.015 --> 00:07:30.154 「私はこのプロジェクトに 適任でないのでは?」と NOTE Paragraph 00:07:31.491 --> 00:07:32.641 でも その時 00:07:33.297 --> 00:07:34.447 運命のいたずらで 00:07:34.471 --> 00:07:36.301 ブライアン・シーバーに会いました 00:07:36.325 --> 00:07:38.562 彼はドリーの甥でボディーガードです 00:07:38.586 --> 00:07:41.959 思い付きで ブライアンはプロデューサーの シマ・オリエと私を乗せて 00:07:41.983 --> 00:07:43.261 ドリーウッドを出ました 00:07:43.285 --> 00:07:45.269 車で 山の裏側にまわり 00:07:45.293 --> 00:07:46.697 20分かけて山道を走って 00:07:46.721 --> 00:07:48.150 狭くて舗装されてない道を下り 00:07:48.174 --> 00:07:51.366 『ゲーム・オブ・スローンズ』に 出てきそうな巨大な木の門をくぐり 00:07:51.390 --> 00:07:54.921 実際の生家に行きました 00:07:57.048 --> 00:07:58.397 本物です 00:07:58.421 --> 00:07:59.575 まさにヴァルハラ宮殿 00:07:59.599 --> 00:08:01.176 テネシーの山にある本物の生家です NOTE Paragraph 00:08:01.200 --> 00:08:03.356 このパートはワーグナーの曲で お送りします 00:08:03.380 --> 00:08:05.007 知っておいてほしいのですが 00:08:05.031 --> 00:08:06.197 テネシーの伝承では 00:08:06.221 --> 00:08:09.007 テネシーの山にあるこの家は 聖地のような存在だからです NOTE Paragraph 00:08:09.031 --> 00:08:11.785 そんなわけで 私はそこに ピジョン川のほとりの草の上に 00:08:11.809 --> 00:08:13.650 立っていたのを覚えています 00:08:13.674 --> 00:08:16.044 蝶が空中を弧を描いて 飛びまわっていました 00:08:16.068 --> 00:08:18.334 私にとっての驚嘆の瞬間が訪れました 00:08:19.012 --> 00:08:21.758 テネシーの山にあるドリーの生家は 00:08:21.782 --> 00:08:25.545 まるでレバノンの山にある 私の父の家のようです NOTE Paragraph 00:08:26.023 --> 00:08:29.705 ドリーの家は 捨て去りし父の実家のようでした 00:08:30.276 --> 00:08:33.415 このような些細な気持ちが積み重なり これまでなかったような 00:08:33.429 --> 00:08:34.857 父との会話のきっかけができ 00:08:34.881 --> 00:08:36.991 話してくれたのは 父が祖国を離れるときの苦悩や 00:08:37.015 --> 00:08:39.058 ドリーの曲から どんな風にそれを感じるかです 00:08:39.082 --> 00:08:42.900 そして 私がドリーと話したところ そこで彼女は自分の作品を 00:08:42.924 --> 00:08:44.186 移民の音楽と表現しました 00:08:44.210 --> 00:08:46.098 あの往年の名曲である 00:08:46.121 --> 00:08:49.617 「My Tennessee Mountain Home」でさえも 耳を澄ませれば― NOTE Paragraph 00:08:49.745 --> 00:08:55.497 「ある夏の午後 ポーチの椅子に腰かけ 00:08:56.570 --> 00:09:03.888 椅子を傾け 後脚だけで 壁に寄りかかっている」 NOTE Paragraph 00:09:05.356 --> 00:09:09.737 過ぎ去りし瞬間を 捉えようとしています 00:09:09.761 --> 00:09:12.507 でも 生き生きと 言葉で表現できるなら 00:09:12.531 --> 00:09:16.150 樹脂のようなもので固めて その場にとどめておける 00:09:16.174 --> 00:09:18.374 過去と現在の間に 捕えておけるかもしれません 00:09:19.039 --> 00:09:21.239 それが 移民の体験です NOTE Paragraph 00:09:21.801 --> 00:09:24.952 その単純な考えが 沢山の会話に結びつきました 00:09:24.976 --> 00:09:28.928 私は カントリーミュージック全般を 音楽学者と話すようになりました 00:09:28.952 --> 00:09:33.322 このジャンルは私の出身国など 無関係と常々思っていましたが 00:09:33.344 --> 00:09:38.285 実のところ 中東より直接伝来した 楽器と音楽スタイルから成るものです 00:09:38.309 --> 00:09:42.086 実際 現在のレバノンから 東テネシーの山間部を 00:09:42.110 --> 00:09:44.534 直接つなぐ交易路がありました NOTE Paragraph 00:09:45.007 --> 00:09:48.816 正直に言うと そこに立って ドリーの家を眺めると 00:09:48.840 --> 00:09:51.967 初めて 私は自分が テネシー人だと感じました 00:09:52.957 --> 00:09:54.524 それは 紛れもない真実です NOTE Paragraph 00:09:54.802 --> 00:09:56.489 これは一度だけではなく 00:09:56.513 --> 00:09:57.877 何度も何度も感じたことです 00:09:57.901 --> 00:10:01.830 ドリーは 私が作った 単純な世界の分類を 00:10:01.854 --> 00:10:03.380 強制的に超えさせました 00:10:03.404 --> 00:10:06.225 ドリーと7年間ユニットを組んだ ポーター・ワゴナーについて 00:10:06.249 --> 00:10:07.427 話したことを覚えています 00:10:07.451 --> 00:10:11.658 1967年 カントリーミュージック界の レジェンドであるポーターのバンドに 00:10:11.682 --> 00:10:14.119 無名だったドリーが バックアップシンガーとして入り 00:10:14.143 --> 00:10:16.602 すぐさま ドリーは頭角を現します 00:10:16.626 --> 00:10:17.785 ポーターは嫉妬し 00:10:17.809 --> 00:10:20.602 ドリーが脱退しようとすると 3百万ドルの賠償を求めて 00:10:20.626 --> 00:10:21.840 訴訟を起こしました 00:10:21.864 --> 00:10:24.785 ここでポーター・ワゴナーの人物像を 00:10:24.809 --> 00:10:28.070 ドリーにしがみつこうとした 古風で家父長主義的な嫌な奴だと 00:10:28.094 --> 00:10:29.406 考えるのは簡単です 00:10:29.430 --> 00:10:31.464 でも 私がこれをドリーに言うたびに 00:10:31.488 --> 00:10:32.645 にべもなく一蹴されました NOTE Paragraph 00:10:32.669 --> 00:10:35.495 (音声)この男ですが ビデオで確認できますね 00:10:35.519 --> 00:10:37.383 あなたの肩を抱いて 00:10:37.407 --> 00:10:41.343 権力に物を言わせる様子が 見てとれます NOTE Paragraph 00:10:41.367 --> 00:10:43.904 (ドリー)そんな単純なものではないの 00:10:43.928 --> 00:10:45.689 ちょっと考えてみて 00:10:45.713 --> 00:10:47.721 彼の番組は長いこと続いていて 00:10:47.745 --> 00:10:50.451 人気番組だったから 私など必要なかった 00:10:50.475 --> 00:10:54.009 私の実力に期待もしていなかった 00:10:54.348 --> 00:10:57.312 私が実力のある芸能人だということも 知らなかったし 00:10:57.336 --> 00:11:00.586 私がどれだけ夢を持っていたか 知りもしないの NOTE Paragraph 00:11:00.610 --> 00:11:02.285 (ジャド)ドリーは何度も言いました 00:11:02.309 --> 00:11:05.332 「私のことを話すときに あなたのバカげた主観はいらない 00:11:05.356 --> 00:11:06.856 事実はそうじゃないから 00:11:06.880 --> 00:11:09.824 確かに権力はあったけれど それがすべてではなかった 00:11:09.848 --> 00:11:11.582 一言では言い表せっこない」 NOTE Paragraph 00:11:13.501 --> 00:11:15.017 では ズームアウトしましょう 00:11:15.041 --> 00:11:16.318 私はどう判断したか? 00:11:16.342 --> 00:11:20.533 ここに 前進するための 手がかりがありました 00:11:20.557 --> 00:11:22.263 ジャーナリストとして 00:11:22.287 --> 00:11:23.888 相違点に執着するのは 大好きですが 00:11:23.912 --> 00:11:26.348 この複雑な世界では 00:11:26.372 --> 00:11:29.213 相違点をつなぐ架け橋となる 必要性が増しています 00:11:29.237 --> 00:11:30.770 あなたなら どうしますか? NOTE Paragraph 00:11:31.261 --> 00:11:34.070 今となっては 私にとっては答えは簡単です 00:11:34.094 --> 00:11:36.443 相違点について質問し 00:11:36.467 --> 00:11:38.991 できるだけ長く 相違点について考えるのです 00:11:39.015 --> 00:11:42.189 例えば テネシーの山で起こったように 00:11:42.213 --> 00:11:43.414 何かが起こり 00:11:43.438 --> 00:11:45.272 自ずと明らかになるまでです 00:11:45.800 --> 00:11:47.705 話の結末は 相違点ではなく 00:11:47.729 --> 00:11:49.544 新たな事実で終わる必要があります NOTE Paragraph 00:11:50.277 --> 00:11:52.999 そして その山に行った帰りに 00:11:53.023 --> 00:11:56.435 このアイデアの名前の由来になった本を 友人がくれました 00:11:56.856 --> 00:11:59.450 心理療法で この考えは 「第3のもの」と呼ばれ 00:11:59.474 --> 00:12:01.064 基本的に こういうことを言います 00:12:01.406 --> 00:12:04.667 通常は 私たちは自分たちを 自立した個人として考えます 00:12:04.691 --> 00:12:07.356 私があなたに影響を与え あなたが私に影響を与えます 00:12:07.380 --> 00:12:10.197 この理論によると 2人の人間が協力して 00:12:10.221 --> 00:12:12.769 認知の相互行為において 00:12:12.793 --> 00:12:15.427 お互いを理解することに専心すると 00:12:15.451 --> 00:12:17.539 意外と何か新しいものを 作り出せるのです 00:12:17.563 --> 00:12:20.229 2人の関係が新しい存在になります 00:12:21.006 --> 00:12:25.095 ドリーのコンサートを文化的な 第3の場所として考えてください 00:12:25.119 --> 00:12:27.435 ドリーが観客の違う部分を どう見るのか 00:12:27.459 --> 00:12:29.039 観客からどう見られるのか 00:12:29.063 --> 00:12:31.927 それらが その空間の 精神的な構造を作ります NOTE Paragraph 00:12:33.293 --> 00:12:35.626 今は それが私の使命だと思います 00:12:36.237 --> 00:12:37.816 ジャーナリストとして 00:12:37.840 --> 00:12:39.729 語り手として 00:12:39.753 --> 00:12:41.681 一人のアメリカ人として 00:12:41.705 --> 00:12:45.094 持ちこたえようと 奮闘している国に暮らす者として 00:12:45.118 --> 00:12:48.311 私が伝える話では第3のものを 見いださねばならないと思います 00:12:49.001 --> 00:12:52.342 私たちが違った感じ方をする物事が 00:12:52.366 --> 00:12:54.764 何か新しいものに変化する場を 見いだすのです NOTE Paragraph 00:12:55.792 --> 00:12:56.942 ありがとうございました