0:00:07.814,0:00:12.887 遠い未来を想像してみてください[br]人類が淡い青い色をした地球を離れ 0:00:12.887,0:00:17.019 何千光年も先にある惑星に都市をつくり 0:00:17.019,0:00:21.516 貿易と輸送の銀河網が整備されています 0:00:21.516,0:00:25.401 そのような文明に飛躍するためには[br]何をしたらよいのでしょう? 0:00:25.406,0:00:28.656 考えることはたくさんあります [br]コミュニケーションをどうとるのでしょうか? 0:00:28.656,0:00:30.996 銀河政府は[br]どんなものになるでしょうか? 0:00:30.996,0:00:33.726 そして その中でも最も重要なものとして 0:00:33.726,0:00:37.616 その文明を動かすのに十分なエネルギーは[br]どこで得るのでしょうか? 0:00:37.616,0:00:43.582 そこでの産業 惑星改革事業 そして[br]宇宙船のためのエネルギー源のことです 0:00:43.582,0:00:47.582 ニコライ・カルダシェフという天文学者が 0:00:47.582,0:00:52.452 文明の進化に伴い増加するエネルギー需要量を[br]測る物差しについて提案しました 0:00:52.452,0:00:56.452 私たちがいる現在のような[br]初期の進化過程において 0:00:56.452,0:01:02.352 化石燃料 太陽光パネル 原子力発電所の様に[br]惑星を拠点とした燃料源は 0:01:02.352,0:01:07.136 おそらく太陽系内の他の惑星で[br]定住するのには十分ですが 0:01:07.136,0:01:09.956 その域を越えるには不十分でしょう 0:01:09.956,0:01:13.165 第3段階かつ最終段階にある文明にとって 0:01:13.165,0:01:18.222 銀河規模の拡張には 太陽が毎秒放出する[br]385ヨタジュール(10の24乗J)の 0:01:18.222,0:01:25.123 約1000億倍の[br]エネルギーが必要になります 0:01:25.993,0:01:28.863 斬新な物理学によって[br]突破口が開かない限り 0:01:28.863,0:01:32.307 需要を満たし得るエネルギー源は[br]1つしかありません 0:01:32.307,0:01:35.447 超大質量ブラックホールです 0:01:35.447,0:01:39.447 ブラックホールをエネルギー源と考えるのは[br]直観と相いれないですが 0:01:39.447,0:01:44.033 降着円盤のおかげで ブラックホールは[br]まさにエネルギー源となるのです 0:01:44.033,0:01:49.905 膠着円盤とは事象の地平面に落下した[br]物質により形成された円形で平らな構造物です 0:01:49.905,0:01:52.985 角運動量が保存されるため 0:01:52.985,0:01:56.985 そこにある粒子はブラックホールに[br]まっすぐ落ちていくわけではありません 0:01:56.985,0:02:00.215 むしろ ゆっくりと渦巻き状に[br]吸いこまれていきます 0:02:00.215,0:02:03.565 ブラックホールの強烈な重力場のため 0:02:03.565,0:02:07.175 これらの粒子は[br]事象の地平線に近づくにつれ 0:02:07.175,0:02:10.005 粒子の位置エネルギーを[br]運動エネルギーへと変えていきます 0:02:10.005,0:02:12.935 粒子の相互作用により [br]この運動エネルギーは 0:02:12.935,0:02:15.455 宇宙空間に放射されます 0:02:15.455,0:02:18.934 この時の 物質からエネルギーへの変換効率は[br]驚くべき値になります 0:02:18.934,0:02:25.963 回転していないブラックホールは6%[br]回転しているものは最大32%にもなります 0:02:25.963,0:02:29.523 これは核分裂を大幅に凌ぎます 0:02:29.523,0:02:32.803 核分裂は 質量から[br]エネルギー取り出す仕組みにおいて 0:02:32.803,0:02:35.533 現在のところ 最も効率的で[br]広く利用されている方法です 0:02:35.533,0:02:42.432 核分裂はウラン原子のわずか0.08%を[br]エネルギーに変えます 0:02:42.432,0:02:46.123 この反応を利用する手掛かりは[br]おそらく ― 0:02:46.123,0:02:52.152 物理学者フリーマン・ダイソンが考案した[br]ダイソン球という構造体にあるでしょう 0:02:52.152,0:02:56.803 1960年代に ダイソンは高度な惑星文明は 0:02:56.803,0:03:01.020 主星の周りに人工的な球体を設計し[br]主星が発する全放射エネルギーを捉え 0:03:01.020,0:03:06.109 エネルギー需要を満たすことが[br]できるだろうと提言しました 0:03:06.109,0:03:09.319 似ているけれど ずっと複雑な設計が 0:03:09.319,0:03:12.799 理論的にはブラックホールに適用できます 0:03:12.799,0:03:17.334 エネルギー生産のために ブラックホールは[br]継続的に物質を吸い込む必要があるので 0:03:17.334,0:03:20.584 球体で完全に覆うのは[br]好ましくないでしょう 0:03:20.584,0:03:23.724 仮にそうしても[br]多くの超大質量ブラックホールの 0:03:23.724,0:03:26.134 両極から発射されるプラズマジェットは 0:03:26.134,0:03:30.134 どんな構造物も吹き飛ばして[br]粉々にしてしまうでしょう 0:03:30.134,0:03:33.784 その代わり ダイソンリングのようなものを[br]設計する方法もあるかもしれません 0:03:33.784,0:03:37.074 それは遠隔操作による[br]巨大な捕集器でできています 0:03:37.074,0:03:40.024 それらはブラックホールを回る[br]周回軌道 ― 0:03:40.024,0:03:44.024 おそらくは 降着円盤のある平面上の[br]ずっと遠い場所に近づくことでしょう 0:03:44.024,0:03:46.714 この装置は発電所に [br]回収したエネルギーを送るために 0:03:46.714,0:03:50.054 鏡のようなパネルを使用したり 0:03:50.054,0:03:52.750 貯蔵用のバッテリーを[br]使用したりできるでしよう 0:03:52.750,0:03:57.704 この捕集器を ブラックホールから[br]ちょうど良い距離に構築する必要があります 0:03:57.704,0:04:00.734 近すぎると放射エネルギーで[br]溶かされてしまいます 0:04:00.734,0:04:05.537 遠すぎると 利用可能なエネルギーの[br]ごく一部しか回収できず 0:04:05.537,0:04:09.187 ブラックホールを周回している恒星の[br]影響を受ける可能性があります 0:04:09.187,0:04:14.071 完全なシステムを構築するためには 0:04:14.071,0:04:17.181 赤鉄鉱のような高反射性物質[br]地球数個分に加え 0:04:17.181,0:04:23.053 一群の建設ロボットを作るために[br]惑星を数個解体する必要があるでしょう 0:04:23.053,0:04:27.243 ダイソンのリングが作られれば [br]技術的な最高傑作となり 0:04:27.243,0:04:32.495 銀河の隅々にまで広がる文明に[br]エネルギーを供給することができます 0:04:32.495,0:04:35.085 すべて荒唐無稽な憶測に[br]思えるかもしれませんが 0:04:35.085,0:04:38.255 今でも 私たちはエネルギー危機にあり 0:04:38.255,0:04:41.795 地球の限られた資源の問題に直面しています 0:04:41.795,0:04:45.795 持続可能なエネルギーの新しい生産方法は 0:04:45.795,0:04:48.825 特に人類の種としての存続や 0:04:48.825,0:04:52.035 技術の進歩に向けての営みにおいて[br]常に必要とされるでしょう 0:04:52.035,0:04:54.855 もしかしたら これらの巨大な天体を[br]征服した文明が 0:04:54.855,0:04:58.055 すでに存在しているのかもしれません 0:04:58.055,0:04:59.935 ブラックホールから届く光が 0:04:59.935,0:05:03.925 周期的に暗くなることを観測することで[br]彼らの存在を見分けられるかもしれません 0:05:03.925,0:05:08.175 ダイソンリングの一部が途中を遮って[br]通過する際に暗くなるからです 0:05:08.175,0:05:13.081 あるいは この超構造体は理論の領域に[br]留まる運命なのかもしれません 0:05:13.081,0:05:17.345 それを知りえるのは 時の経過 そして[br]私たちの科学的な創意工夫だけなのです