WEBVTT 00:00:19.326 --> 00:00:26.326 今年 国際学生科学フェアで 賞を取りました 00:00:26.349 --> 00:00:29.135 それ以来 多くの人がこう聞くんです 00:00:29.135 --> 00:00:32.082 「まだ15才なのに 一体どうやってすい臓がんの 00:00:32.082 --> 00:00:34.444 新しい検出方法を考え出したの?」 00:00:34.444 --> 00:00:35.377 僕の答え? 00:00:35.377 --> 00:00:39.804 「1年半のすっごい努力と 気の遠くなるような数の失敗」 00:00:39.804 --> 00:00:43.142 ひどく落ち込む状況でした 00:00:43.372 --> 00:00:46.149 僕は つい最近 すい臓、卵巣 肺のがんを検出できる 00:00:46.149 --> 00:00:49.629 斬新な試験紙を開発しました 00:00:49.629 --> 00:00:53.700 この試験紙の何が良いかっていうと 現在の検査の方法に比べて 00:00:53.700 --> 00:00:58.128 168倍早く 26,000分の1以下の費用で 00:00:58.128 --> 00:01:00.343 400倍の感度があります 00:01:00.343 --> 00:01:06.248 最高なのは 費用はたったの3セント 時間もたったの5分です 00:01:06.248 --> 00:01:09.399 この話は ネット上のすい臓がんの統計を 00:01:09.399 --> 00:01:12.209 調べたことから 全てが始まりました 00:01:12.209 --> 00:01:13.092 皆さん 00:01:13.092 --> 00:01:16.085 「15才の子供がどうして すい臓がんに興味を持ったのか 00:01:16.085 --> 00:01:18.536 ゲームじゃなくて?」 と思うかもしれません 00:01:18.536 --> 00:01:20.838 実は すい臓がんに 興味を持つようになったのは 00:01:20.838 --> 00:01:25.018 家族で親しくしてた 叔父さんのような人が この疾患で亡くなったからです 00:01:25.018 --> 00:01:29.044 インターネットで見つけたことに ギョッしました 00:01:29.044 --> 00:01:33.728 分かったのはすい臓がんの85%が 手遅れな段階で診断されて 00:01:33.728 --> 00:01:37.365 患者はたった2%以下の生存率 しかないというのです 00:01:37.365 --> 00:01:41.194 平均余命はおよそ3か月です 00:01:41.194 --> 00:01:46.520 2%が生き残るということを この統計が示しています 00:01:46.520 --> 00:01:49.632 なぜ すい臓がんを見つけるのが こんなにヘタなのか疑問でした 00:01:49.632 --> 00:01:51.381 人類ほど進歩した 私たちの世界なら 00:01:51.381 --> 00:01:54.856 とっくの昔にすい臓がんを検出 できるようになっているんじゃないのか 00:01:54.856 --> 00:01:59.028 分かったのはいわゆる「現代医学」は 60年前の技術ということでした 00:01:59.028 --> 00:02:00.960 うちの父さんよりも年上です 00:02:00.960 --> 00:02:04.034 (笑) 00:02:04.034 --> 00:02:07.095 その上 検査はなはだしく不正確で 00:02:07.095 --> 00:02:10.585 すい臓がんの30%以上を 見落としてしまいます 00:02:10.585 --> 00:02:12.506 加えて 高価です 00:02:12.506 --> 00:02:16.314 判定毎に800ドルかかって 保険の適用もありません 00:02:16.314 --> 00:02:19.220 低所得層の患者には 使いたくても使えません 00:02:19.220 --> 00:02:21.410 しかも 検査の指示は めったに出ません 00:02:21.410 --> 00:02:25.079 というのもすい臓がんは いわゆる無症候性の疾患だからです 00:02:25.079 --> 00:02:26.705 独特の症状が現れません 00:02:26.705 --> 00:02:29.956 通常の症状は本当に一般的な 腹部痛などの症状です 00:02:29.956 --> 00:02:32.107 全く腹部痛が起こらない人なんて いませんよね? 00:02:32.107 --> 00:02:35.694 (笑) 00:02:35.694 --> 00:02:37.943 そして始めたのは 00:02:37.943 --> 00:02:42.194 こんな粗末な検査じゃなく もっといい方法があるはずと思って 00:02:42.194 --> 00:02:44.813 僕は科学的な基準を 決め始めました 00:02:44.813 --> 00:02:46.537 「僕なら どんな方法で見つけるか」 00:02:46.537 --> 00:02:48.265 15才として出来る方法ですよ 00:02:48.265 --> 00:02:52.730 センサーが満たすべきと考えた基準は 00:02:52.730 --> 00:02:57.184 安く 速く 簡単で 高感度 低侵襲で 判定度の高いものってことでした 00:02:57.184 --> 00:02:58.810 さらに調べていったら 00:02:58.810 --> 00:03:03.394 なぜすい臓がんが検出されずに これまで来たのかが明確に分かり始めました 00:03:03.394 --> 00:03:06.244 分かったのは すい臓がんを検出しようとするときには 00:03:06.244 --> 00:03:09.615 血流中のがんバイオマーカーである 微細なタンパク質を探します 00:03:09.616 --> 00:03:12.841 単純明快に聞こえますが 実はまったく逆です 00:03:12.841 --> 00:03:15.969 問題は 皆さんの血には 既に豊富にタンパク質があることです 00:03:15.969 --> 00:03:18.331 そんな成分の血が 体中には大量にあるので 00:03:18.331 --> 00:03:22.034 その血中から 微量のタンパク質が 微量に増えているのを探すなんて 00:03:22.034 --> 00:03:24.154 ほとんど不可能です 00:03:24.154 --> 00:03:26.192 分かったのは 00:03:26.192 --> 00:03:29.309 これは 干し草の山から 針を探すのが― 00:03:29.309 --> 00:03:35.728 簡単に思えるような そっくりな針の山の中から特別な針を探すような難しさです 00:03:35.728 --> 00:03:40.039 次に 僕はネットで 調べ始めました 00:03:40.039 --> 00:03:43.102 15才の子供には 他の情報源がなかったから 00:03:43.102 --> 00:03:44.781 (笑) 00:03:44.781 --> 00:03:49.117 なんとタンパク質が8,000種以上 登録されているデータベースから始めました 00:03:49.117 --> 00:03:50.700 ぐんぐん一気に 調べ始めました 00:03:50.700 --> 00:03:53.992 運良く 4,000種を確認したところで 遂に掘り当てました 00:03:54.003 --> 00:03:55.612 このタンパク質を見つけました 00:03:55.612 --> 00:03:58.366 もう 狂ってしまう 寸前のところでした 00:03:58.366 --> 00:04:02.181 僕が見つけたのは メソテリンと呼ばれるものでした 00:04:02.181 --> 00:04:05.105 メソテリンは すい臓 卵巣 肺のがんでなければ 00:04:05.105 --> 00:04:07.992 目立たない ごく普通に 体内にあるタンパク質です 00:04:07.992 --> 00:04:11.787 がんになっている場合 大幅に増加して発現します 00:04:11.787 --> 00:04:16.699 このタンパク質が重要な鍵となっているのは 疾患のごく初期に見つかるからです 00:04:16.699 --> 00:04:19.149 生存率がほぼ100%の時期に 見つけられるのです 00:04:19.149 --> 00:04:23.833 このタンパク質を検出できるようになれば がんを怖がる必要もなくなるでしょう 00:04:23.833 --> 00:04:25.919 次に 僕は 実際にタンパク質を 00:04:25.919 --> 00:04:28.825 検出する方法に 集中し始めました 00:04:28.825 --> 00:04:30.714 解決案は予期しない所でやってきます 00:04:30.714 --> 00:04:32.109 問題の解明に大きく近づいたのは 00:04:32.109 --> 00:04:35.458 高校の生物の授業中! (笑) 00:04:35.458 --> 00:04:37.748 イノベーションなんて抑制されている 00:04:37.748 --> 00:04:38.899 ひどい所です! 00:04:38.899 --> 00:04:42.145 (笑) 00:04:42.145 --> 00:04:46.825 (拍手) 00:04:46.825 --> 00:04:51.133 この記事を こっそり持ち込んでました 00:04:51.133 --> 00:04:53.774 実にすっごくかっこいい― 00:04:53.774 --> 00:04:58.222 カーボンナノチューブの記事です 上着の中に隠して 記事を机の下で読んでいました 00:04:58.222 --> 00:05:01.217 「カーボンナノチューブって一体何?」 と思っているでしょうか 00:05:01.217 --> 00:05:04.072 基本的には炭素で出来た 長くて細い管です 00:05:04.072 --> 00:05:07.375 人の髪の直径の150分の1の太さで 原子1個分の厚さです 00:05:07.375 --> 00:05:08.728 極めて小さいものですが 00:05:08.728 --> 00:05:10.780 非常に素晴らしい 特性があります 00:05:10.780 --> 00:05:13.665 材料科学のスーパーヒーロー みたいなものです 00:05:13.665 --> 00:05:17.385 丁度 僕がこれについて もっと知ろうと 記事に書かれていた― 00:05:17.385 --> 00:05:20.172 驚異的な特性について 読んでいたとき 00:05:20.172 --> 00:05:22.840 授業では抗体というものについて 勉強していました 00:05:22.840 --> 00:05:25.650 抗体は超かっこいい 有機体の分子です 00:05:25.650 --> 00:05:29.247 どの抗体も 結合するタンパク質は ひとつしかありません 00:05:29.247 --> 00:05:31.100 ほんとうに特別です 00:05:31.100 --> 00:05:34.123 まるで 鍵と錠前のような分子です そして考えていたんです 00:05:34.123 --> 00:05:37.781 どうすれば カーボンナノチューブの驚異的な特性と 00:05:37.781 --> 00:05:41.353 抗体が特定のタンパク質に反応する性質を 結び付けられるだろうか? 00:05:41.353 --> 00:05:43.814 ―このがんのマーカーのメンテリンに― 00:05:43.814 --> 00:05:44.681 そして ひらめいた 00:05:44.681 --> 00:05:47.168 こうすればいいって この抗体 00:05:47.168 --> 00:05:49.819 抗体をカーボンナノチューブの 網構造に入れて 00:05:49.819 --> 00:05:54.547 特定のタンパク質バイオマーカーだけに 反応するような状態にする 00:05:54.557 --> 00:05:58.102 さらには 存在するタンパク質の量に応じて 00:05:58.102 --> 00:06:01.653 電気的な属性が変化するようにして 十分に変化させれば 00:06:01.664 --> 00:06:05.572 ホーム・デポで買ってきた 僕の50ドルのテスターでも測れる 00:06:05.572 --> 00:06:07.813 そしてそんな時に 起こったのは 00:06:07.828 --> 00:06:10.881 生物の先生に見つかります 彼女はまるで鷹のようです 00:06:10.881 --> 00:06:12.807 先生は顔を真っ赤にして 突進してくる 00:06:12.807 --> 00:06:15.029 先生は「ちょっと なにしているの」と言い 00:06:15.029 --> 00:06:16.741 記事を手から取り上げて 00:06:16.741 --> 00:06:20.746 授業の後 最後には 記事を返してと何度もお願いするしかなくなりました 00:06:20.746 --> 00:06:22.193 結果的に先生が 従ってくれました 00:06:22.193 --> 00:06:25.124 その経験で大切だったのは 記事が戻ったことだけでした 00:06:25.124 --> 00:06:31.428 (笑) 00:06:31.428 --> 00:06:36.046 それから 僕はこのいけそうな考えを より洗練し始めました 00:06:36.046 --> 00:06:38.832 次に 研究作業が できる研究室が必要になります 00:06:38.832 --> 00:06:42.385 台所のカウンターの上じゃ がん研究はできないから 00:06:42.385 --> 00:06:43.841 (笑) 00:06:43.841 --> 00:06:46.627 どうやったかというと 僕は考えを書き上げて 00:06:46.640 --> 00:06:50.214 材料一覧 研究手順 予算 研究予定表 を作成しました 00:06:50.214 --> 00:06:52.448 ジョンス・ホプキンス大学と 00:06:52.448 --> 00:06:56.203 国立衛生研究所の 200人の教授にメールしました 00:06:56.203 --> 00:06:59.919 基本的に すい臓がんの関係者 その全員にです 00:06:59.919 --> 00:07:04.577 期待したのは 了解のメールが 送られてくるのをくつろぎながら待っていれば 00:07:04.577 --> 00:07:06.555 研究室を使わせてくれるだろうと 思ってました 00:07:06.555 --> 00:07:07.532 (笑) 00:07:07.532 --> 00:07:09.064 でも 現実は甘くなかった 00:07:09.064 --> 00:07:14.375 200件の内 199件が却下で 1件が不確実―場合によっては―という返事でした 00:07:14.375 --> 00:07:16.311 まぁちょっと落ち込む状態でした 00:07:16.311 --> 00:07:19.806 そして この不確実の 教授を追い続けました 00:07:19.806 --> 00:07:22.430 ついに3ヵ月後 教授と会う約束をとりつけました 00:07:22.430 --> 00:07:26.765 そこまでに読んだ500以上の 学術論文の知識とともに挑みました 00:07:26.765 --> 00:07:28.971 そして起こったのは 面接を続けるなかで 00:07:28.971 --> 00:07:31.859 教授は次々と専門家を呼んで 本当に次々と次々と 00:07:31.860 --> 00:07:37.274 次々と僕に質問を投げかけて 解決法に穴を開けようとします 00:07:37.274 --> 00:07:41.974 でも 実はこんなことへも準備できてました というのも却下メールにこんな1通があって 00:07:41.974 --> 00:07:46.045 その却下メールをくれた教授が 体系的に研究手順の全てを1つずつ確認して 00:07:46.047 --> 00:07:50.418 全てが間違っているって じわじわと ボロボロに してくれていたからです 00:07:50.418 --> 00:07:53.214 だから準備済みで 参考書があったんです 00:07:53.214 --> 00:07:55.280 (笑) 00:07:55.280 --> 00:08:00.075 そして ついに 必要としていた 研究場所を手に入れました 00:08:00.075 --> 00:08:02.518 そして 7ヵ月間にもわたる 旅が始まりました 00:08:02.518 --> 00:08:04.646 一旦始めたら 「まぁ 一気に作業を進めて 00:08:04.646 --> 00:08:07.531 3ヵ月で終わらせるか」 と期待していました 00:08:07.531 --> 00:08:09.860 実際には 7ヵ月かかってしまいました 00:08:09.860 --> 00:08:12.443 始めるとすぐに おびただしい数の間違いが出てきたからです 00:08:12.463 --> 00:08:17.162 最初に思っていたほど研究手順が 完璧ではないことが分かってきました 00:08:17.162 --> 00:08:20.322 このことから学んだ 価値があった教訓の一つは 00:08:20.322 --> 00:08:23.519 論文に書いてあるほど 単純なことなんて無いことです 00:08:23.519 --> 00:08:27.136 それから 研究手順に見つかった穴を 00:08:27.136 --> 00:08:30.857 慎重に1つずつ 埋めていきました 00:08:30.857 --> 00:08:33.083 埋める間に 培養組織を遠心機で壊して 00:08:33.083 --> 00:08:36.698 分子を壊して タンパク質を壊して カーボンナノチューブも壊しちゃって 00:08:36.698 --> 00:08:38.953 あるものはなんでも 壊した感じでした 00:08:38.953 --> 00:08:42.597 それでも最終的には 小さな試験紙ができました 00:08:42.597 --> 00:08:44.889 すい臓 卵巣 肺のがんを 検査することができて 00:08:44.889 --> 00:08:47.980 100%正確です 00:08:47.980 --> 00:08:50.687 この研究で 僕は本当に大切なことを1つ知りました 00:08:50.687 --> 00:08:53.870 インターネットを使えば なんでも可能ということです 00:08:53.870 --> 00:08:55.372 理論を人に伝え 共有してもよくて 00:08:55.372 --> 00:08:57.668 価値あるアイデアと 評価されるのに 00:08:57.668 --> 00:09:00.309 複数の学位を持った 教授である必要はないんです 00:09:00.309 --> 00:09:02.744 インターネットでは アイデアだけが重視されます 00:09:02.744 --> 00:09:05.714 僕にとって 勇敢で 『Being Fearless (訳:恐れずに)』とは 00:09:05.714 --> 00:09:09.276 これまでと違う インターネットの使い方をしようということです 00:09:09.276 --> 00:09:12.889 ふざけた顔の写真は 別に見せてもらわなくてもいいんです 00:09:12.889 --> 00:09:20.363 (笑) (拍手) 00:09:20.363 --> 00:09:24.643 そうではなく インターネットで何をするかによって 世界を変えていけるかもしれないんです 00:09:24.643 --> 00:09:30.110 僕は全ての調査をGoogleとウィキペディアでできましたし あと15才の子供です 00:09:30.110 --> 00:09:31.503 皆さんなら何ができるか 想像してください 00:09:31.503 --> 00:09:32.501 ありがとうございます 00:09:32.501 --> 00:10:00.277 (拍手) (喝采)