1 00:00:00,609 --> 00:00:05,297 私はお月様を見ている お月様は私を見ている 2 00:00:06,296 --> 00:00:11,564 お月様は私の見てない 誰かを見ている 3 00:00:12,708 --> 00:00:18,351 神様はお月様を祝福する 神様は私を祝福する 4 00:00:19,243 --> 00:00:24,655 神様は私の見てない 誰かを祝福する 5 00:00:25,673 --> 00:00:31,331 私が先に 天国に行ったなら 6 00:00:31,987 --> 00:00:37,770 あなたを引っ張り込む 穴をあけるから 7 00:00:38,083 --> 00:00:43,552 星の1つひとつに あなたの名前を書くわ 8 00:00:44,062 --> 00:00:46,704 そしたら世界は 9 00:00:47,356 --> 00:00:50,638 そんなに遠く感じなくなる 10 00:00:51,079 --> 00:00:54,770 宇宙飛行士は 今日は仕事に行かないだろう 11 00:00:55,031 --> 00:00:56,847 病欠すると電話していたから 12 00:00:56,847 --> 00:01:01,919 携帯もパソコンも ポケベルも目覚ましも切って 13 00:01:01,943 --> 00:01:05,092 彼のソファでは 黄色い太った猫が眠っている 14 00:01:05,116 --> 00:01:06,860 雨粒が窓を流れ 15 00:01:06,884 --> 00:01:10,599 キッチンには コーヒーの気配すらしない 16 00:01:10,623 --> 00:01:11,872 みんな取り乱している 17 00:01:11,896 --> 00:01:15,842 15階のエンジニアは 粒子加速器を使うのをやめ 18 00:01:15,866 --> 00:01:17,644 反重力室が漏っている 19 00:01:17,668 --> 00:01:19,548 ゴミを出すことだけが仕事の 20 00:01:19,572 --> 00:01:22,120 そばかす眼鏡の男の子でさえ 不安になって 21 00:01:22,120 --> 00:01:25,029 ゴミ袋を取り落とし バナナの皮と紙コップがこぼれ出たけど 22 00:01:25,029 --> 00:01:26,119 誰も気付かない 23 00:01:26,119 --> 00:01:29,914 これが失われた時間に どう関係するのか 計算し直すのでみんな忙しい 24 00:01:29,914 --> 00:01:31,874 毎秒いくつの銀河が 失われているのか 25 00:01:31,874 --> 00:01:34,124 次のロケットを打ち上げるのに どれだけ時間がかかるのか 26 00:01:34,124 --> 00:01:36,899 どこかで電子が エネルギー雲を飛び出し 27 00:01:36,923 --> 00:01:38,889 ブラックホールが爆発し 28 00:01:38,913 --> 00:01:41,214 お母さんが 晩ご飯のしたくを終え 29 00:01:41,238 --> 00:01:43,299 『ロー&オーダー』の マラソンが始まる 30 00:01:43,323 --> 00:01:45,544 宇宙飛行士は眠っている 31 00:01:45,568 --> 00:01:47,471 切り忘れた腕時計が 32 00:01:47,495 --> 00:01:50,246 鉄の鼓動のように 手首で時を刻んでいる 33 00:01:50,270 --> 00:01:51,845 彼には聞こえていない 34 00:01:51,869 --> 00:01:54,918 珊瑚礁とプランクトンの 夢を見ているのだ 35 00:01:54,942 --> 00:01:58,081 彼の指が枕カバーの マストを見つけ 36 00:01:58,105 --> 00:02:01,173 寝返りを打って 一度に目を開く 37 00:02:01,197 --> 00:02:05,927 スキューバダイバーが 世界で一番素敵な仕事に違いないと思う 38 00:02:05,951 --> 00:02:09,064 滑り込める水が あんなにもあるんだから 39 00:02:11,070 --> 00:02:16,298 (拍手) 40 00:02:16,322 --> 00:02:18,103 どうも 41 00:02:18,127 --> 00:02:22,228 小さい頃 私は1つの人生しか 生きられないということが 42 00:02:22,996 --> 00:02:25,041 理解できませんでした 43 00:02:25,480 --> 00:02:27,024 比喩としてじゃなく 44 00:02:27,024 --> 00:02:30,115 文字通り私は 思っていたんです 45 00:02:30,433 --> 00:02:32,479 為されるべきこと すべてをやり 46 00:02:32,503 --> 00:02:35,099 あるべき存在 すべてになるのだと 47 00:02:35,123 --> 00:02:36,817 ただ時間の問題であって 48 00:02:36,839 --> 00:02:39,923 年齢や性別や 人種や時代さえ 49 00:02:39,947 --> 00:02:42,948 制限にはならないと 思っていたんです 50 00:02:42,948 --> 00:02:48,689 それがどんなものか 実際に経験する ことになるものとばかり思っていました 51 00:02:48,689 --> 00:02:50,327 市民権運動の指導者とか 52 00:02:50,351 --> 00:02:53,985 ダスト・ボウル時代の 農家の10歳の男の子とか 53 00:02:54,009 --> 00:02:57,627 唐の皇帝とか 54 00:02:57,651 --> 00:02:59,606 母から聞いた話だと 55 00:02:59,606 --> 00:03:01,479 将来何になりたいかと 聞かれると 56 00:03:01,479 --> 00:03:05,758 私は「お姫様バレリーナ宇宙飛行士」 と答えていたそうです 57 00:03:05,758 --> 00:03:07,137 母が分かっていなかったのは 58 00:03:07,137 --> 00:03:10,574 私は何か新しい すごい職種を 作り出そうとしていたのではなく 59 00:03:10,574 --> 00:03:14,281 自分がなるであろうと思っていたものを 列挙していたということです 60 00:03:14,281 --> 00:03:17,096 お姫様と バレリーナと 宇宙飛行士です 61 00:03:17,120 --> 00:03:19,859 このリストは たぶん もっと長かったのを 62 00:03:19,883 --> 00:03:21,881 そこで切っていただけです 63 00:03:21,905 --> 00:03:24,771 なれるかどうかに疑問はなく 64 00:03:24,795 --> 00:03:27,295 それがいつかだけが問題だったのです 65 00:03:27,295 --> 00:03:29,659 もしあらゆることを するのであれば 66 00:03:29,659 --> 00:03:31,859 素早く立ち回らなければ ならないはずで 67 00:03:31,859 --> 00:03:34,029 しなければならないことは 山ほどあります 68 00:03:34,029 --> 00:03:36,493 だから私の人生は 常に駆け足でした 69 00:03:36,493 --> 00:03:38,970 いつも遅れはしないかと 怖れていました 70 00:03:38,994 --> 00:03:41,188 ニューヨークに 育った人間には 71 00:03:41,188 --> 00:03:44,704 駆け足なのは ごく普通のことだと思いますが 72 00:03:45,128 --> 00:03:46,918 でも成長するにつれ 73 00:03:46,918 --> 00:03:53,398 ただ1つの人生しか生きられないと 理解するようになりました 74 00:03:53,422 --> 00:03:54,762 私にわかるのは 75 00:03:54,762 --> 00:03:57,743 ニューヨークの10代の女の子が どんなかってことだけで 76 00:03:57,743 --> 00:03:59,918 ニュージーランドの 10代の少年でもなければ 77 00:03:59,942 --> 00:04:02,843 カンザスのミス学園祭でも ありません 78 00:04:02,843 --> 00:04:05,554 私は自分のレンズを通してだけ 見ることができるのです 79 00:04:05,554 --> 00:04:08,296 その時から ストーリーに 惹かれるようになりました 80 00:04:08,320 --> 00:04:11,447 他の人のレンズで 見られるのは 81 00:04:11,471 --> 00:04:15,573 ストーリーを通してだからです それがどんなに短く不完全であったとしても 82 00:04:15,589 --> 00:04:18,701 私は他の人の体験談を聞きたいと 強く思うようになりました 83 00:04:18,725 --> 00:04:22,288 私の生きることのない 人生を うらやましく思い 84 00:04:22,312 --> 00:04:24,003 自分の見逃した すべてについて 85 00:04:24,027 --> 00:04:26,226 聞きたいと思ったのです 86 00:04:26,226 --> 00:04:28,580 そして視点を変えたとき 気が付きました 87 00:04:28,580 --> 00:04:31,273 ニューヨークの10代の 女の子がどんなものか 88 00:04:31,297 --> 00:04:33,981 けっして体験することのない人々 がいるということに 89 00:04:34,005 --> 00:04:35,314 それはつまり 90 00:04:35,314 --> 00:04:38,960 ファーストキスの後 地下鉄に 乗っているのがどんな感じかも 91 00:04:38,960 --> 00:04:42,208 雪になった時 どれほど静かなものかも 知らないということです 92 00:04:42,208 --> 00:04:43,668 教えてあげたい という思いに 93 00:04:43,668 --> 00:04:44,769 取り付かれました 94 00:04:44,769 --> 00:04:50,648 そしてストーリーを語り 共有し 集めることに忙しくしていました 95 00:04:50,648 --> 00:04:53,082 でも詩は急いで できるものではないと 96 00:04:53,082 --> 00:04:57,075 最近になって気が付きました 97 00:04:57,616 --> 00:04:59,974 4月に全米詩月間があって 98 00:04:59,974 --> 00:05:04,146 詩のコミュニティに属す多くの人が その課題に挑戦しました 99 00:05:04,170 --> 00:05:06,554 「30/30チャレンジ」です 100 00:05:06,554 --> 00:05:08,467 どういうものかというと 101 00:05:08,467 --> 00:05:12,404 4月の間中 毎日 新しい詩を書くんです 102 00:05:12,916 --> 00:05:14,972 去年初めて参加して 103 00:05:14,996 --> 00:05:19,346 詩をすごく早く作れることに 興奮しました 104 00:05:19,765 --> 00:05:23,375 でもその月の終わりに 自分の書いた 30篇の詩を振り返った時 105 00:05:23,399 --> 00:05:27,568 それが語ろうとしているのがみんな 同じストーリーだということに気付きました 106 00:05:27,568 --> 00:05:32,115 そのストーリーが語られるのを望む形を 見つけようと 30回やり直していただけです 107 00:05:32,115 --> 00:05:36,236 このことは もっと大きなスケールで 他のストーリーでも同じだと気付きました 108 00:05:36,236 --> 00:05:39,038 何年も語ろうと試み続けてきた ストーリーがあって 109 00:05:39,038 --> 00:05:43,060 何度も何度も書き直しては 絶えず 正しい言葉を見つけようとしているのです 110 00:05:43,084 --> 00:05:46,369 フランスの詩人でエッセイストの ポール・ヴァレリーは 111 00:05:46,393 --> 00:05:50,179 「詩というのは完成することがなく ただ放棄される」と言いました 112 00:05:50,179 --> 00:05:51,469 これは怖く感じます 113 00:05:51,469 --> 00:05:54,732 好きなだけ推敲し書き直し 続けることができ 114 00:05:54,756 --> 00:05:58,209 詩をいつ完成し 歩み去るかを決めるのは 115 00:05:58,233 --> 00:06:00,868 ただ自分にかかっている ということだからです 116 00:06:00,868 --> 00:06:03,905 これは正しい答え 完璧な言葉 適切な形を 117 00:06:03,905 --> 00:06:07,328 見つけようとする 私の偏執的な性質に 真っ向から反することです 118 00:06:07,352 --> 00:06:08,587 私は詩を 119 00:06:08,587 --> 00:06:12,169 自分の人生を舵取りし 導いていく助けとして使っています 120 00:06:12,193 --> 00:06:13,973 でも詩を書き終えるというのは 121 00:06:13,973 --> 00:06:17,857 自分の取り組んでいた問題が 解決したことを意味しません 122 00:06:18,001 --> 00:06:20,539 昔書いた詩に立ち戻るのが 私は好きで 123 00:06:20,539 --> 00:06:23,774 その時自分がどんなだったか はっきり見せてくれます 124 00:06:23,774 --> 00:06:25,611 その時自分が どう切り抜けようとし 125 00:06:25,635 --> 00:06:28,289 どんな言葉を 助けとして選んだのか 126 00:06:28,468 --> 00:06:29,821 私が長年 127 00:06:29,845 --> 00:06:32,694 引きずり続けてきた ストーリーがあります 128 00:06:32,718 --> 00:06:35,352 果たして完璧な形を 見つけられたのか 129 00:06:35,352 --> 00:06:37,512 それともこれは 単なる1つの試みで 130 00:06:37,512 --> 00:06:41,337 もっと良い語り方を求め 書き直すことになるのか分かりません 131 00:06:41,337 --> 00:06:44,177 でも 後で振り返った時に 132 00:06:44,201 --> 00:06:47,274 自分がこの瞬間どこにいて 133 00:06:47,274 --> 00:06:50,423 どう切り抜けようとしていたのか きっと分かるはずです 134 00:06:50,447 --> 00:06:53,874 そう この場所で 皆さんと一緒にです 135 00:06:56,105 --> 00:06:57,255 じゃあ 136 00:06:58,652 --> 00:07:00,152 笑って 137 00:07:05,230 --> 00:07:07,414 いつもこんな風に いくわけじゃなかった 138 00:07:07,754 --> 00:07:10,381 手を汚さなければ いけないときもあった 139 00:07:10,381 --> 00:07:14,280 暗がりの中にいたら たいていは 手探りが前提で 140 00:07:14,346 --> 00:07:17,746 もっとコントラストが もっと彩度が 141 00:07:17,746 --> 00:07:20,099 もっと暗い暗さ もっと明るい明るさが必要なら 142 00:07:20,099 --> 00:07:23,220 長時間現像と言っているけれど それはつまり 143 00:07:23,220 --> 00:07:26,146 長い間 化学薬品を吸い込み 腕まくりするということだ 144 00:07:26,146 --> 00:07:27,802 いつも簡単とは限らない 145 00:07:27,937 --> 00:07:30,707 スチュアートおじいちゃんは 海軍のカメラマンだった 146 00:07:30,731 --> 00:07:33,675 若く 赤ら顔で 腕まくりをして 147 00:07:33,699 --> 00:07:36,327 手の指は太い コインの束のよう 148 00:07:36,351 --> 00:07:39,045 『ポパイ』を 実写版にしたみたいな 149 00:07:39,045 --> 00:07:41,782 しかめたような笑顔と ふさふさの胸毛をして 150 00:07:41,782 --> 00:07:45,017 にやにやしながら 第二次世界大戦に趣味でやってきた 151 00:07:45,041 --> 00:07:47,707 写真について詳しいか 聞かれたとき 152 00:07:47,731 --> 00:07:51,019 嘘をついて ヨーロッパを 地図みたいに読む方法を学んだ 153 00:07:51,043 --> 00:07:54,233 逆さになって 戦闘機の高みから 154 00:07:54,257 --> 00:07:56,758 カメラが音を立て 目をしばたたかせる 155 00:07:56,782 --> 00:07:59,117 闇の中の闇 光の中の光 156 00:07:59,117 --> 00:08:02,327 帰り道を読めるよう 戦争を学んだのだ 157 00:08:02,520 --> 00:08:05,208 他の人たちは戦争が終わると 武器を置いたのに 158 00:08:05,208 --> 00:08:08,315 祖父はレンズとカメラを 持ち帰って 159 00:08:08,315 --> 00:08:11,362 店を開いて家業にした 160 00:08:11,386 --> 00:08:14,806 父はこの 白黒の世界に生まれた 161 00:08:14,830 --> 00:08:18,000 バスケ向けの手で 細かな操作を学んだ 162 00:08:18,024 --> 00:08:20,595 レンズをフレームに フィルムをカメラに 163 00:08:20,619 --> 00:08:22,236 薬品をプラスチック容器に 164 00:08:22,236 --> 00:08:25,394 父のお父さんは 道具は分かっていても アートは分かっていなかった 165 00:08:25,394 --> 00:08:27,381 闇は分かっていても 光は分かっていなかった 166 00:08:27,381 --> 00:08:30,850 父は魔法を学んで 光を追いかけるのに時を費やした 167 00:08:30,874 --> 00:08:32,952 ある時 国を横断して 168 00:08:32,952 --> 00:08:37,297 カメラ片手に 1週間 山火事を追いかけたことがあった 169 00:08:37,929 --> 00:08:39,671 「光を追うんだ」と彼は言った 170 00:08:39,698 --> 00:08:40,874 「光を追うんだ」と 171 00:08:40,898 --> 00:08:44,071 私には 写真からだけ 分かる部分がある 172 00:08:44,095 --> 00:08:46,801 ウースター通りにある 廊下が軋む建物のロフト 173 00:08:46,825 --> 00:08:49,525 4メートルの天井に 白い壁と冷たい床 174 00:08:49,549 --> 00:08:52,598 それが母の家だった 母が母になる前の 175 00:08:52,598 --> 00:08:55,133 妻になる前 母は芸術家だった 176 00:08:55,133 --> 00:08:57,246 家の中で たった 2つの部屋だけが 177 00:08:57,246 --> 00:08:59,547 天井までちゃんと届く壁と 178 00:08:59,571 --> 00:09:01,318 開閉する扉があって 179 00:09:01,318 --> 00:09:03,783 それがお風呂場と暗室だった 180 00:09:03,814 --> 00:09:05,893 暗室は母が自分で作った 181 00:09:05,917 --> 00:09:08,566 特製のステンレスの流しと 182 00:09:08,566 --> 00:09:12,948 大きなクランクで上下する 8x10判の引き伸ばし機 183 00:09:12,972 --> 00:09:14,655 色を調整した照明と 184 00:09:14,679 --> 00:09:16,644 写真を見るための 白いガラス板 185 00:09:16,668 --> 00:09:19,010 壁から出し入れできる 乾燥用の棚 186 00:09:19,034 --> 00:09:21,054 母が自分で据え付けて 187 00:09:21,054 --> 00:09:22,457 自分の居場所にした 188 00:09:22,457 --> 00:09:24,565 バスケ向きの手をした 189 00:09:24,565 --> 00:09:27,305 光の見方を知る男と 恋に落ちて 190 00:09:27,325 --> 00:09:29,458 2人は結婚し 子どもができ 191 00:09:29,482 --> 00:09:31,672 公園の近くの家に越した 192 00:09:31,696 --> 00:09:33,503 でもウースター通りのロフトは 193 00:09:33,503 --> 00:09:36,182 お誕生会や宝探しのために 取って置いた 194 00:09:36,206 --> 00:09:38,434 赤ん坊は グレースケールを変え 195 00:09:38,434 --> 00:09:42,489 両親の写真アルバムを 赤い風船や 黄色いアイシングで充たした 196 00:09:42,489 --> 00:09:44,456 その赤ちゃんは そばかすのない 197 00:09:44,456 --> 00:09:46,758 しかめたような笑顔の 女の子へと成長した 198 00:09:46,758 --> 00:09:51,062 その子は友達の家に暗室がないのを 不思議に思っていた 199 00:09:51,086 --> 00:09:53,028 両親がキスするのを 見たことがなく 200 00:09:53,028 --> 00:09:55,084 両親が手を繋ぐのを 見たことがなかった 201 00:09:55,084 --> 00:09:56,874 ある時 別の赤ちゃんが現れ 202 00:09:56,874 --> 00:10:00,031 その男の子は完璧にまっすぐな髪と 風船ガムのほっぺをしていて 203 00:10:00,031 --> 00:10:01,601 スイートポテトと 名付けられた 204 00:10:01,625 --> 00:10:03,557 笑う時に 大きな声で笑うので 205 00:10:03,581 --> 00:10:05,739 非常階段の ハトを驚かせた 206 00:10:05,763 --> 00:10:08,739 4人はあの公園の近くの 家に暮らしていた 207 00:10:08,763 --> 00:10:11,232 そばかすのない女の子と スイートポテトの男の子 208 00:10:11,232 --> 00:10:13,628 バスケットボールのお父さんと 暗室のお母さんが 209 00:10:13,628 --> 00:10:16,120 ろうそくを灯して お祈りをし 210 00:10:16,144 --> 00:10:18,458 写真の隅が丸まった 211 00:10:18,959 --> 00:10:21,467 ある時 塔が倒れて 212 00:10:21,491 --> 00:10:25,220 公園の近くの家は 灰の下の家になり みんなで逃げ出した 213 00:10:25,244 --> 00:10:28,507 リュックで背負われ 自転車で 暗室へと 214 00:10:28,531 --> 00:10:31,360 でもウースター通りのロフトは 芸術家向けで 215 00:10:31,364 --> 00:10:34,138 お人好しの家族向きではなく 216 00:10:34,162 --> 00:10:37,634 壁は天井に届かず 泣き声を閉じ込められず 217 00:10:37,634 --> 00:10:41,800 バスケ向けの手の男は 武器を置いた 218 00:10:41,824 --> 00:10:45,453 彼はこの戦いを戦うことができず 地図は家を指してはいなかった 219 00:10:45,453 --> 00:10:47,641 彼の手はもはや カメラに合わなくなり 220 00:10:47,665 --> 00:10:49,252 妻の手に合わなくなり 221 00:10:49,276 --> 00:10:51,112 体に合わなくなった 222 00:10:51,199 --> 00:10:53,857 スイートポテトの男の子は 握り拳を口に押し込んで 223 00:10:53,857 --> 00:10:55,660 もう何も言えないようにしたので 224 00:10:55,660 --> 00:10:59,112 そばかすのない女の子は 1人で宝探しに行った 225 00:10:59,497 --> 00:11:02,908 ウースター通りの 廊下が軋む建物の 226 00:11:02,932 --> 00:11:04,760 4メートルの天井の ロフトにある 227 00:11:04,784 --> 00:11:06,752 流しの多すぎる暗室の 228 00:11:06,776 --> 00:11:09,298 色を調整した照明の下で 女の子はメモを見つけた 229 00:11:09,322 --> 00:11:13,803 画鋲で壁に留められた 塔が倒れる以前の 230 00:11:13,803 --> 00:11:16,564 赤ん坊が生まれる以前の 231 00:11:16,588 --> 00:11:22,150 そのメモには 「男は間違いなく 暗室で働く女を愛している」と書かれていた 232 00:11:22,758 --> 00:11:25,940 それは父が再びカメラを 手にとる1年前だった 233 00:11:26,238 --> 00:11:28,776 初めて取った休みに クリスマスの光を追い 234 00:11:28,800 --> 00:11:32,583 ニューヨークのツリーを 点々と繋ぐ小さな光が 235 00:11:32,583 --> 00:11:36,006 闇の中の闇から 彼に瞬いていた 236 00:11:36,030 --> 00:11:39,928 1年後 彼は国を横断し 山火事を追った 237 00:11:39,952 --> 00:11:42,408 1週間に渡り カメラを手にして 238 00:11:42,408 --> 00:11:44,430 火事は西海岸に 被害をもたらし 239 00:11:44,430 --> 00:11:46,594 18輪トラックを 飲み込んだ 240 00:11:46,618 --> 00:11:48,197 国の反対側で 241 00:11:48,221 --> 00:11:51,579 私は教室でノートの隅に 詩を書いていた 242 00:11:51,603 --> 00:11:54,037 私たちは どちらも 捉える術を学んでいたのだ 243 00:11:54,037 --> 00:11:57,146 あるいは私たちは 抱きしめる術を 学んでいたのかもしれない 244 00:11:57,146 --> 00:12:00,479 あるいは私たちは 忘れる術を 学んでいたのかもしれない 245 00:12:01,277 --> 00:12:02,860 (拍手)