WEBVTT 00:00:01.953 --> 00:00:06.359 今まで訪れた中で 最も驚嘆した場所が ホンジュラスのモスキティア熱帯雨林です 00:00:07.292 --> 00:00:09.864 考古学の現地調査は 世界中で行ってきたので 00:00:09.864 --> 00:00:12.951 ジャングルの踏査が どんな感じか 分かっていたつもりでした 00:00:12.975 --> 00:00:14.416 でも 私が間違っていました 00:00:14.861 --> 00:00:17.053 これほど間違えたのは 正直 生まれて初めてです NOTE Paragraph 00:00:17.635 --> 00:00:19.386 (笑) NOTE Paragraph 00:00:20.172 --> 00:00:22.335 まず 寒さに震え上がりました 00:00:22.359 --> 00:00:25.668 気温は32度でしたが 湿気で全身ずぶ濡れです 00:00:25.692 --> 00:00:30.235 しかも木々の樹冠が厚すぎて 光が地面に全く届きません 00:00:30.259 --> 00:00:32.010 乾くということがないのです 00:00:32.034 --> 00:00:35.488 すぐに もっと衣類を持ってくれば 良かったと思いました 00:00:36.507 --> 00:00:41.039 その最初の夜 何者かがハンモックの下で しきりに動き回るのを感じました 00:00:41.063 --> 00:00:45.579 未知の生物たちが 薄いナイロン地の裏側を こすったり つついたりするのです 00:00:46.141 --> 00:00:49.185 しかも騒がしいので ほとんど眠れませんでした 00:00:49.209 --> 00:00:51.444 ジャングルはとてつもなく騒々しいところです 00:00:51.468 --> 00:00:54.242 まるで賑やかな町の中心にいるようです NOTE Paragraph 00:00:55.035 --> 00:00:56.277 夜が更けるにつれ 00:00:56.301 --> 00:00:59.781 眠れないことに 苛立ちがつのってきました 00:00:59.805 --> 00:01:01.666 明日も 丸一日あるのにと 00:01:02.467 --> 00:01:04.614 夜明けにやっと起きて見ると 00:01:04.638 --> 00:01:07.287 気配の主の痕跡が 生々しく残されていました 00:01:07.772 --> 00:01:09.817 動物の足跡やひづめの跡や ヘビの通った線が 00:01:09.841 --> 00:01:12.823 辺り一面に あったのです 00:01:13.308 --> 00:01:15.577 さらにショッキングだったのは 00:01:15.601 --> 00:01:17.863 その動物たちが 白昼も姿を現わして 00:01:17.887 --> 00:01:20.189 我々を全く恐れないことでした 00:01:20.688 --> 00:01:23.300 人間と接した経験がないので 00:01:23.324 --> 00:01:25.503 恐れる理由もないのでした NOTE Paragraph 00:01:26.757 --> 00:01:30.880 この地にやって来た目的の 未調査の都市へと歩くうちに 00:01:30.904 --> 00:01:34.318 ここが 自分が来た中で唯一 00:01:34.342 --> 00:01:36.815 一片のプラスチックも見えない 場所だと気付きました 00:01:37.467 --> 00:01:39.331 それほどの奥地でした 00:01:40.371 --> 00:01:42.204 皆さん きっと驚かれたでしょう 00:01:42.228 --> 00:01:47.059 そんな人跡未踏の地が 地球上にまだあったなんてと 00:01:47.083 --> 00:01:48.329 でも これは事実なのです 00:01:48.892 --> 00:01:53.130 人が何世紀も足を踏み入れていないか 誰も一度も来たこともないような場所が 00:01:53.154 --> 00:01:54.615 まだ何百か所もあるのです NOTE Paragraph 00:01:56.892 --> 00:02:00.070 考古学者になるには 素晴らしい時代です 00:02:00.094 --> 00:02:02.809 この地球を理解するための ツールやテクノロジーが 00:02:02.833 --> 00:02:05.740 かつてなく 充実しているからです 00:02:06.355 --> 00:02:08.263 しかし 時間はあまり残っていません 00:02:08.867 --> 00:02:14.753 今ある生態系や文化遺産は 気候変動によって危機にさらされています 00:02:15.500 --> 00:02:17.810 私の仕事には20年前なら感じなかった 00:02:17.834 --> 00:02:20.037 切迫感があります 00:02:20.647 --> 00:02:23.875 どうすれば 手遅れになる前に 全て記録に留めておけるのか? NOTE Paragraph 00:02:25.462 --> 00:02:27.610 私が学んだ考古学の手法は 00:02:27.634 --> 00:02:30.940 1950年代から使われている 伝統的なものです 00:02:31.650 --> 00:02:34.709 全てが変わったのは 2009年7月 00:02:34.733 --> 00:02:36.744 メキシコのミチョアカンでのことでした 00:02:36.768 --> 00:02:39.104 私は古代プレペチャ帝国を 調査していました 00:02:39.128 --> 00:02:42.229 知名度は低いものの アステカと同時代の 00:02:42.253 --> 00:02:43.519 重要な帝国です 00:02:43.924 --> 00:02:48.222 その2週間前 私のチームが 未知の集落があると報告していたので 00:02:48.246 --> 00:02:54.172 我々は 建物の遺構の地図を 手作業でこつこつ作っていました 00:02:54.196 --> 00:02:55.666 建物は何百もありました NOTE Paragraph 00:02:56.450 --> 00:03:00.179 考古学の基本手順は 集落の外縁を見つけ出すことです 00:03:00.203 --> 00:03:02.074 それによって大枠が掴めるので 00:03:02.098 --> 00:03:05.216 大学院生たちに促されて 私がやることになりました 00:03:06.044 --> 00:03:10.116 そこで 私はエナジー・バー数本と 水とトランシーバーを掴み 00:03:10.116 --> 00:03:12.176 一人で歩いて出発しました 00:03:12.200 --> 00:03:15.732 「外縁」など数分で見つかると 高をくくってね 00:03:16.151 --> 00:03:17.905 数分が経ち 00:03:17.929 --> 00:03:19.503 1時間が経って 00:03:19.527 --> 00:03:22.005 ようやく荒れ果てた溶岩流の 反対端に到達しました 00:03:22.483 --> 00:03:26.571 おっと 古代の建物の遺構は その間ずっとありました 00:03:27.139 --> 00:03:28.812 これは都市なのか? 00:03:28.836 --> 00:03:29.789 ああ 畜生 NOTE Paragraph 00:03:29.823 --> 00:03:30.535 (笑) NOTE Paragraph 00:03:30.555 --> 00:03:32.174 これは都市だ NOTE Paragraph 00:03:33.605 --> 00:03:36.735 小さな集落に思えた この場所が 00:03:36.759 --> 00:03:39.815 実は 古代の大都市だったのです 00:03:39.839 --> 00:03:42.648 大きさは26平方キロメートル 00:03:42.672 --> 00:03:46.917 そこに 現在のマンハッタンに 匹敵する数の 建物の遺構があります 00:03:46.941 --> 00:03:49.801 これほど大きな古代集落だと 00:03:49.825 --> 00:03:52.997 全ての調査に数十年は掛かるはずです 00:03:53.021 --> 00:03:55.055 つまり 自分のキャリアの残り全部です 00:03:55.985 --> 00:04:01.329 自分のキャリアの残り全部を こんなところで費やしたくない ― NOTE Paragraph 00:04:01.353 --> 00:04:02.964 (笑) NOTE Paragraph 00:04:02.988 --> 00:04:05.470 汗まみれで くたくたになりながら 00:04:05.494 --> 00:04:08.481 ストレスを溜め込んだ 院生たちを なだめつつ ― NOTE Paragraph 00:04:08.505 --> 00:04:09.894 (笑) NOTE Paragraph 00:04:09.918 --> 00:04:12.733 余った ピーナツバタージャム・サンドを 00:04:12.757 --> 00:04:14.136 野犬に 投げ与えつつ 00:04:14.160 --> 00:04:16.008 ところでこれ 意味がないんです 00:04:16.032 --> 00:04:19.235 メキシコの犬って実は ピーナツバターが嫌いなんです NOTE Paragraph 00:04:19.259 --> 00:04:20.910 (笑) NOTE Paragraph 00:04:22.430 --> 00:04:25.486 考えただけで 退屈で涙が出そうでした NOTE Paragraph 00:04:26.065 --> 00:04:27.724 そこでコロラドに戻り 00:04:27.748 --> 00:04:30.328 同僚の研究室に 首を突っ込みました 00:04:30.352 --> 00:04:33.494 「なあ もっとマシな手があるはずだろ」 00:04:34.122 --> 00:04:37.059 すると彼はこう尋ねました 「LiDAR(ライダー)という 00:04:37.083 --> 00:04:38.537 新技術を知ってるか」 00:04:38.561 --> 00:04:39.926 調べてみると 00:04:39.950 --> 00:04:43.293 それはレーザーパルスの高密度グリッドを 00:04:43.317 --> 00:04:46.122 飛行機から地表に向かって 照射する測距技術でした 00:04:46.146 --> 00:04:49.090 これにより地表面と 地上の全ての構造物の 00:04:49.114 --> 00:04:51.238 高解像度スキャンが行えます 00:04:51.712 --> 00:04:53.214 得られるものは画像ではなく 00:04:53.238 --> 00:04:56.662 高密度な 3D の点群です 00:04:57.236 --> 00:04:59.541 そのスキャンを行うお金は十分あったので 00:04:59.565 --> 00:05:01.327 早速やってみました 00:05:01.351 --> 00:05:02.888 その会社はメキシコへ行き 00:05:02.912 --> 00:05:04.217 LiDARを飛ばし 00:05:04.241 --> 00:05:05.886 データを返送してきました NOTE Paragraph 00:05:06.554 --> 00:05:10.733 それから数か月かけて 私は デジタル森林伐採を学びました 00:05:10.757 --> 00:05:14.426 木や藪などの植生を取り除いて 00:05:14.450 --> 00:05:17.557 その下にある古代遺跡の姿を 明らかにするのです NOTE Paragraph 00:05:18.338 --> 00:05:20.787 初めてデータを可視化したときには 00:05:20.811 --> 00:05:22.087 泣いてしまいました 00:05:23.010 --> 00:05:25.175 それを聞いて皆さん さぞ驚かれたでしょうね 00:05:25.199 --> 00:05:27.131 私 とても男らしく見えますから NOTE Paragraph 00:05:27.155 --> 00:05:28.993 (笑) NOTE Paragraph 00:05:30.126 --> 00:05:32.316 たった45分飛んだだけで 00:05:32.340 --> 00:05:35.134 LiDARが収集したデータの量は 00:05:35.158 --> 00:05:38.083 手作業では何十年も掛かったはずの 量と同じでした 00:05:38.107 --> 00:05:39.637 全ての家の遺構 00:05:39.661 --> 00:05:42.274 建物 道路 ピラミッド 00:05:42.298 --> 00:05:44.330 信じがたいほどのディテール 00:05:44.354 --> 00:05:47.600 それらが何千もの人々の生活を 描き出しています 00:05:47.624 --> 00:05:50.809 そこで生きて 愛して そして亡くなった人々の生活を 00:05:51.390 --> 00:05:54.565 しかも そのデータの質ときたら 00:05:54.589 --> 00:05:57.640 伝統的な考古学調査のものとは 比べ物にもなりませんでした 00:05:58.442 --> 00:06:00.398 遥かに 素晴らしかったのです 00:06:01.181 --> 00:06:05.446 この技術は考古学という分野そのものの 00:06:05.470 --> 00:06:07.099 将来を変えると思いました 00:06:07.123 --> 00:06:08.424 その予想は当たりました NOTE Paragraph 00:06:10.376 --> 00:06:13.432 我々の研究が とある映画制作グループの 目に留まりました 00:06:13.456 --> 00:06:16.361 彼らはホンジュラスの 失われた伝説の都市を探していました 00:06:16.965 --> 00:06:18.352 その探求には失敗しましたが 00:06:18.376 --> 00:06:21.959 代わりに未知の文化が 00:06:21.983 --> 00:06:26.331 今も 手付かずの熱帯雨林に 埋もれていることを 00:06:26.355 --> 00:06:27.900 LiDARを使って記録しました 00:06:28.789 --> 00:06:30.643 私もデータ解釈への協力を引き受け 00:06:30.667 --> 00:06:34.582 その結果 モスキティアのジャングルに 足を踏み入れることになりました 00:06:34.606 --> 00:06:37.886 プラスチックが一切なく 好奇心旺盛な動物が沢山いる場所です NOTE Paragraph 00:06:39.085 --> 00:06:42.150 我々の目標はその古代遺跡が 00:06:42.174 --> 00:06:44.113 LiDARが識別したとおりの形で 00:06:44.137 --> 00:06:45.904 地上にあるか検証することでしたが 00:06:45.928 --> 00:06:47.134 確かにありました 00:06:48.871 --> 00:06:53.563 11か月後 私は考古学の精鋭チームと 現地に戻りました 00:06:53.587 --> 00:06:56.425 スポンサーはナショナル ジオグラフィック協会と 00:06:56.449 --> 00:06:57.932 ホンジュラス政府です 00:06:58.332 --> 00:07:01.639 我々は1か月で 400以上の遺物を発掘しました 00:07:01.663 --> 00:07:04.679 遺物にちなんで その遺跡は今 「ジャガーの街」と呼ばれています NOTE Paragraph 00:07:05.678 --> 00:07:10.843 我々はこの遺跡を現状のまま保全する 道義的・倫理的な責任を感じました 00:07:10.867 --> 00:07:13.088 しかし 現地入りしてほどなく 00:07:13.112 --> 00:07:15.037 変化が否応なく訪れました 00:07:15.431 --> 00:07:19.841 我々が最初に来たときヘリコプターで 着陸した 細い砂利道は消え失せていました 00:07:20.507 --> 00:07:23.273 薮は払われ 木々は伐採されて 00:07:23.297 --> 00:07:27.083 数機のヘリコプターが同時に着陸できる 大きな発着場が出来ていました 00:07:27.654 --> 00:07:28.818 植生がなくなったため 00:07:28.842 --> 00:07:31.164 たった一回の雨季で 00:07:31.188 --> 00:07:34.553 我々がLiDARスキャンで見た 古代の用水路は 00:07:34.577 --> 00:07:36.273 損傷したり破壊されてしまいました 00:07:36.942 --> 00:07:40.721 また 私がエデンと呼んだ場所にも ほどなく大きな空き地と 00:07:40.745 --> 00:07:42.096 中央キャンプと 00:07:42.120 --> 00:07:43.291 照明灯と 00:07:43.315 --> 00:07:44.765 野外教会が出来ました 00:07:45.494 --> 00:07:49.633 つまり 我々が現状を保全しようと どんなに努力しても 00:07:50.410 --> 00:07:51.716 変化は免れなかったのです 00:07:52.335 --> 00:07:56.838 我々が最初に実施した 「ジャガーの街」のLiDARスキャンが 00:07:56.862 --> 00:08:02.220 ほんの数年前には存在していた街の姿の 唯一の記録になってしまいました NOTE Paragraph 00:08:03.609 --> 00:08:05.055 大まかに言えば 00:08:05.079 --> 00:08:07.309 これが我々考古学者にとっての 問題なのです 00:08:07.758 --> 00:08:10.880 現地調査を行えば 何らかの変化は避けられません 00:08:10.904 --> 00:08:13.954 ただでさえ 地球は変化しています 00:08:13.978 --> 00:08:16.325 古代遺跡は破壊され 00:08:16.924 --> 00:08:18.579 歴史が失われています NOTE Paragraph 00:08:19.603 --> 00:08:22.075 今年も 我々を震撼させる事件がありました 00:08:22.099 --> 00:08:25.176 ノートルダム大聖堂の火災です 00:08:25.200 --> 00:08:27.442 シンボルの尖塔は崩落し 00:08:27.466 --> 00:08:29.365 屋根もほぼ全壊しました 00:08:29.909 --> 00:08:34.294 奇跡的に 美術史家の アンドリュー・タロンと 彼の同僚が 00:08:34.318 --> 00:08:37.200 2010年にLiDARを使って 大聖堂をスキャンしていました 00:08:37.827 --> 00:08:41.791 当時の彼らの目的は 聖堂の建築方法を調べることでしたが 00:08:42.537 --> 00:08:47.222 現在 彼らのLiDARスキャンは 大聖堂の最も包括的な記録となっており 00:08:47.246 --> 00:08:49.960 再建の際にかけがえのない 資料となるはずです 00:08:51.095 --> 00:08:53.470 彼らには 火災の発生もデータの使われ方も 00:08:53.494 --> 00:08:55.549 知るべくもなかったでしょうが 00:08:55.573 --> 00:08:57.097 幸いにもデータは残りました NOTE Paragraph 00:08:57.902 --> 00:09:01.037 我々は今ある生態系や文化遺産が 未来永劫残ることが 00:09:01.061 --> 00:09:02.367 当たり前だと思っています 00:09:02.893 --> 00:09:04.094 しかし 残らないのです 00:09:04.616 --> 00:09:07.715 南カリフォルニア建築大学や ヴァーチャル・ワンダーズなどの組織が 00:09:07.739 --> 00:09:09.985 信じがたい働きぶりで 00:09:10.009 --> 00:09:12.742 世界の歴史遺産を記録し続けていますが 00:09:13.678 --> 00:09:16.984 地上の景観に関しては これに並ぶものがありません 00:09:17.618 --> 00:09:20.491 熱帯雨林の50パーセントが 既に失われました 00:09:20.515 --> 00:09:23.426 約7万3000平方キロメートルの森林が 毎年消失しています 00:09:23.965 --> 00:09:29.405 さらに 海面上昇により 都市や国や大陸が 00:09:29.429 --> 00:09:31.357 判別不能になるでしょう 00:09:32.073 --> 00:09:34.723 そうした場所を 我々が記録に残さない限り 00:09:34.747 --> 00:09:37.224 未来の人々がその存在を 知るすべはなくなります 00:09:38.182 --> 00:09:40.340 地球をタイタニック号に例えれば 00:09:40.364 --> 00:09:42.213 我々は既に氷山に衝突しており 00:09:42.237 --> 00:09:43.767 全員が船に乗ったまま 00:09:43.791 --> 00:09:45.524 楽団が演奏している状態です 00:09:46.183 --> 00:09:50.957 気候変動が今ある文化遺産や 生態系を破滅に追いやるのに 00:09:50.981 --> 00:09:52.404 もう何十年も掛かりません 00:09:52.786 --> 00:09:55.272 しかし 座して 手をこまねいているという選択肢は 00:09:55.296 --> 00:09:56.821 もう我々にはないのです 00:09:57.525 --> 00:10:00.597 救えるものは何でも 救命ボートに乗せるべきではありませんか? NOTE Paragraph 00:10:01.357 --> 00:10:07.438 (拍手) NOTE Paragraph 00:10:09.754 --> 00:10:13.217 私がホンジュラスとメキシコで 行ったスキャンを見れば 00:10:13.241 --> 00:10:16.550 今必要なのが スキャン スキャン またスキャンであり 00:10:16.574 --> 00:10:18.981 それを可能な限り続けるべきなのは 明らかです 00:10:19.005 --> 00:10:20.430 まだ間に合う 今の内に 00:10:21.128 --> 00:10:23.642 こうした気持ちから始まったのが アース・アーカイヴです 00:10:23.646 --> 00:10:26.283 この全く新しい科学的な取り組みは 00:10:26.307 --> 00:10:29.027 LiDARで全地球を スキャンしようというもので 00:10:29.051 --> 00:10:31.343 まずは 最も危惧される地域から着手します NOTE Paragraph 00:10:32.226 --> 00:10:34.234 その目的は3つ 00:10:34.717 --> 00:10:40.258 目的1:今現在の地球を記録して 基礎資料とすること 00:10:40.282 --> 00:10:43.105 それを元に気候変動の 効果的な緩和を目指します 00:10:43.930 --> 00:10:46.550 変動を計測するには2種類のデータ つまり 00:10:46.574 --> 00:10:48.797 ビフォアとアフターのデータが必要です 00:10:49.440 --> 00:10:53.577 今のところ 我々が持つ ビフォアの高解像度データは 00:10:53.601 --> 00:10:55.489 地球の一部分にすぎません 00:10:55.513 --> 00:10:57.454 そのため変動を計測することができず 00:10:57.478 --> 00:11:00.130 現在行われている活動のどれが 00:11:00.154 --> 00:11:02.446 気候変動との闘いに効果を上げているのか 00:11:02.470 --> 00:11:04.392 評価することもできないのです NOTE Paragraph 00:11:05.742 --> 00:11:09.765 目的2:バーチャル地球を作成すること 00:11:10.718 --> 00:11:14.843 それを使って 多くの科学者が同時に 今の地球を研究できるようにします 00:11:15.365 --> 00:11:19.195 私のような考古学者は 未調査の集落探しを行い 00:11:19.563 --> 00:11:22.194 生態学者は木の大きさや 00:11:22.218 --> 00:11:24.257 森林の組成や年齢を調べ 00:11:24.895 --> 00:11:27.194 地質学者は水文学や断層や 00:11:27.218 --> 00:11:28.942 地殻変動を研究することができます 00:11:29.688 --> 00:11:31.192 可能性は無限大です NOTE Paragraph 00:11:32.422 --> 00:11:35.632 目的3:地球の記録を保存すること 00:11:35.656 --> 00:11:38.239 我々の遠い子孫が将来 00:11:38.263 --> 00:11:43.934 失われた文化の歴史遺産を再現して 研究できるようにします 00:11:44.808 --> 00:11:47.560 科学技術の進歩に伴って 00:11:47.584 --> 00:11:50.754 彼らは新たなツールやアルゴリズムや 00:11:50.778 --> 00:11:54.524 AIまでも 現在のLiDARスキャン データに適用して 00:11:54.548 --> 00:11:58.355 今の我々が想像もつかないような 疑問を投げ掛けるでしょう NOTE Paragraph 00:11:59.513 --> 00:12:01.280 ノートルダムのように 00:12:01.304 --> 00:12:05.496 こうした記録の使われ方を 我々が知るすべはありません 00:12:06.035 --> 00:12:08.599 しかしそれらが極めて 重要になることは分かります 00:12:10.053 --> 00:12:14.126 アース・アーカイヴは将来の世代への 究極の贈り物なのです 00:12:15.126 --> 00:12:16.591 というのも実のところ 00:12:17.638 --> 00:12:19.966 その影響を全て見届けるには 私は寿命が足りません 00:12:20.902 --> 00:12:22.331 皆さんも同じでしょう 00:12:23.505 --> 00:12:26.027 だからこそ 行う価値があるのです 00:12:27.218 --> 00:12:30.642 アース・アーカイヴは 人類の将来に託す賭けなのです 00:12:31.150 --> 00:12:33.307 皆が一緒に 00:12:33.331 --> 00:12:34.948 力を合わせて 00:12:34.972 --> 00:12:38.039 人間として 科学者として 00:12:38.063 --> 00:12:40.770 気候変動に立ち向かい 00:12:40.794 --> 00:12:42.994 正しいことを行うと決め 00:12:43.915 --> 00:12:45.845 現在の我々のためばかりではなく 00:12:46.932 --> 00:12:49.878 先人たちの功績をたたえ 00:12:49.902 --> 00:12:54.257 その恩を将来の世代に渡して 00:12:54.281 --> 00:12:56.563 遺産を引き継いでもらうための 賭けなのです NOTE Paragraph 00:12:57.373 --> 00:12:58.539 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:12:58.903 --> 00:13:01.388 (拍手)