WEBVTT 00:00:03.795 --> 00:00:06.620 情報とは、簡単に言えば、ある媒体を介してー 00:00:06.620 --> 00:00:10.590 蓄積・伝達されるメッセージだ。 00:00:10.590 --> 00:00:12.865 絵を描くとき、自由に形を描くことでー 00:00:12.865 --> 00:00:14.636 メッセージを表現するが、 00:00:14.636 --> 00:00:18.563 その取りうる形態の数は無限大にのぼる。 00:00:18.563 --> 00:00:22.326 自己表現に何の規約もないのだ。 00:00:22.326 --> 00:00:24.639 人類が書き言葉を発達させる際、 00:00:24.639 --> 00:00:28.472 周りの世界を分割し、有限数の細かい単位に分割するー 00:00:28.472 --> 00:00:32.960 必要があった。これが現代で言うところの「記号」だ。 00:00:32.960 --> 00:00:36.517 さて、全ての書き言葉はこのように考えられる。 00:00:36.517 --> 00:00:39.048 記号を特定の形式で配置することで、 00:00:39.048 --> 00:00:42.052 メッセージが形成されるのだ。 00:00:42.052 --> 00:00:44.671 さあ紀元前3,000年に戻り、 00:00:44.671 --> 00:00:47.752 2つの古代文字を探求しよう。 00:00:47.752 --> 00:00:51.927 1つ目、古代エジプトには「象形文字」があった。 00:00:51.927 --> 00:00:54.840 神聖な意思疎通の形態とされ、 00:00:54.840 --> 00:00:59.011 その目的は政治、会計、魔術や宗教に限定されていた。 00:00:59.011 --> 00:01:03.106 より抜きの少数の者のみが書記官として訓練を積んだ。 00:01:03.106 --> 00:01:05.540 一般の人々はたいてい書き言葉を 00:01:05.540 --> 00:01:07.234 読めなかった。 00:01:07.234 --> 00:01:12.381 記号そのものは、大雑把に2つに分けられる。 00:01:12.381 --> 00:01:14.651 「表意文字」:意味ある概念を表すー 00:01:14.651 --> 00:01:17.592 文字だ。 00:01:17.592 --> 00:01:20.518 戻る、リンゴ、… 00:01:20.518 --> 00:01:21.906 次に「表音文字」: 00:01:21.906 --> 00:01:24.156 これらは断片的な音を表す。 00:01:24.156 --> 00:01:27.466 [1つの音節を発音する人たち] 00:01:27.466 --> 00:01:30.397 当時、一般的に使われていた記号の数は 00:01:30.397 --> 00:01:33.989 全部で1,500以上あった。 00:01:33.989 --> 00:01:36.627 これらの記号をー 00:01:36.627 --> 00:01:39.318 表意文字と表音文字に分けると、 00:01:39.318 --> 00:01:43.119 表音文字の方はかなり少なかった。 00:01:43.119 --> 00:01:46.194 約140の表音文字があり、 00:01:46.194 --> 00:01:52.059 そのうち個別の子音を表していたのは僅か33種だった。 00:01:52.059 --> 00:01:56.012 使われていた全記号のうち、ごく小さい割合だ。 00:01:56.012 --> 00:01:58.097 当時、記号を記録する媒体には、 00:01:58.097 --> 00:02:01.139 主に岩が用いられた。 00:02:01.139 --> 00:02:04.231 メッセージを未来を伝えるためには、 00:02:04.231 --> 00:02:07.513 碑文の耐久力が理想的だった。 00:02:07.513 --> 00:02:09.675 このような意思疎通の形態では、 00:02:09.675 --> 00:02:12.702 持ち運びにくさはさほど問題にならなかった。 00:02:12.702 --> 00:02:14.291 しかしここで、全く新しいー 00:02:14.291 --> 00:02:17.364 記録媒体が現れた。 00:02:17.364 --> 00:02:20.657 ナイル川の洪水の後に残った沈泥により、 00:02:20.657 --> 00:02:23.954 周囲の土地が極めて肥沃になった。 00:02:23.954 --> 00:02:28.261 そこでの農作物の1つに「パピルス」があった。 00:02:28.261 --> 00:02:30.066 それを細長くスライスし、 00:02:30.066 --> 00:02:32.181 水に漬けて、 00:02:35.328 --> 00:02:38.641 織り合わせ、最後にプレスすると、 00:02:38.641 --> 00:02:42.252 天然の砂糖が接着剤となりくっついた。 00:02:44.876 --> 00:02:47.660 数日後、乾燥させ、ほとんど重さのないー 00:02:47.660 --> 00:02:50.291 書き版になった。 00:02:53.219 --> 00:02:55.651 この媒体は、情報を幅広い地域に伝えるためにー 00:02:55.651 --> 00:02:58.580 理想的だった。碑文が耐久性、時間にー 00:02:58.580 --> 00:03:01.875 重きを置いたのとは対照的だ。 00:03:01.875 --> 00:03:03.895 この安く、持ち運びやすいー 00:03:03.895 --> 00:03:06.562 記録媒体が普及すると同時に、 00:03:06.562 --> 00:03:08.600 書き言葉がより多くの人々に普及し、 00:03:08.600 --> 00:03:12.901 新たな目的で文字が記述されるようになった。 00:03:12.901 --> 00:03:15.776 パピルスに書く人が徐々に増えるにつれて、 00:03:15.776 --> 00:03:19.511 記号は素早く書けるように進化した。 00:03:19.511 --> 00:03:23.544 ここから「ヒエラティック」という筆記体が生まれた。 00:03:23.544 --> 00:03:25.155 例えば、これは現存する中ではー 00:03:25.155 --> 00:03:28.410 世界最古の手術文章だ。 00:03:28.410 --> 00:03:33.534 紀元前1,600年頃に、ヒエラティックで書かれた。 00:03:33.534 --> 00:03:35.957 これらの記号は象形文字からー 00:03:35.957 --> 00:03:38.959 派生したものだが、素早く書くためにー 00:03:38.959 --> 00:03:42.987 絵が簡略化されている。いわば古代の速記術だ。 00:03:42.987 --> 00:03:45.840 また、一般に使われる記号の数がー 00:03:45.840 --> 00:03:50.266 減り始め、700種程度になった。 00:03:50.266 --> 00:03:52.763 重い岩の媒体から解放され、 00:03:52.763 --> 00:03:54.561 アイデアは軽いものになった。 00:03:54.561 --> 00:03:56.780 読み書き、思考、活動がー 00:03:56.780 --> 00:03:58.913 俗化することで、手書き文化はー 00:03:58.913 --> 00:04:01.320 目覚ましい普及を遂げた。 00:04:01.320 --> 00:04:04.894 そして、紀元前650年頃に「デモティック」というー 00:04:04.894 --> 00:04:09.439 筆記体系が生まれた。さらに速記しやすくなるよう、 00:04:09.439 --> 00:04:12.835 工夫がなされた。 00:04:12.835 --> 00:04:16.264 例えば、この文章は婚姻契約書だ。 00:04:16.264 --> 00:04:20.116 知られる限り最も初期の、デモティックの例の1つだ。 00:04:20.116 --> 00:04:21.939 面白いことに、新たな記法ではー 00:04:21.939 --> 00:04:24.357 記号の総数がまたしても劇的に減少した。 00:04:24.357 --> 00:04:26.677 前と比べると、 00:04:26.677 --> 00:04:29.760 数にしておよそ10%程度しかー 00:04:29.760 --> 00:04:31.884 使われていない。 00:04:31.884 --> 00:04:33.555 この原因は、 00:04:33.555 --> 00:04:36.847 表音文字によって… 00:04:36.847 --> 00:04:39.809 [1つの音節を発音する人たち] 00:04:39.809 --> 00:04:43.137 表意文字が置き換えられたためだ。 00:04:43.137 --> 00:04:44.846 より平易になったことで、 00:04:44.846 --> 00:04:48.799 幼い子供にも文字を教えられるようになった。 00:04:48.799 --> 00:04:52.416 他の文化でも似たパターンが見られる。 00:04:52.416 --> 00:04:56.174 紀元前3,000年に戻り、メソポタミアを訪れてみよう。 00:04:56.174 --> 00:04:58.421 そこでは「くさび形文字」が用いられていた。 00:04:58.421 --> 00:05:01.118 その元々の目的は会計だった。 00:05:01.118 --> 00:05:02.777 硬貨が発明される以前に、 00:05:02.777 --> 00:05:05.585 借金や余剰商品を追跡する手法としてー 00:05:05.585 --> 00:05:08.517 重要視された。 00:05:08.517 --> 00:05:10.419 例えば、これは動物の皮膚のー 00:05:10.419 --> 00:05:13.142 備蓄を記録した文章だ。 00:05:13.142 --> 00:05:15.676 そして、この言葉は他の目的も満たすように進化した。 00:05:15.676 --> 00:05:17.803 例えばこの書き板には、パンとビールのー 00:05:17.803 --> 00:05:20.179 レシピが記されている。 00:05:20.179 --> 00:05:20.976 さらにこの書き板には、 00:05:20.976 --> 00:05:23.382 法的文章が記されている。 00:05:23.382 --> 00:05:25.320 さて、もともとこの言葉はー 00:05:25.320 --> 00:05:26.978 シュメール人に用いられ、 00:05:26.978 --> 00:05:30.651 2,000種以上の記号があった。 00:05:30.651 --> 00:05:32.779 これもまた表意文字と、 00:05:32.779 --> 00:05:35.550 表音文字の2種類からなっていた。 00:05:35.550 --> 00:05:38.162 シュメール語は、徐々に話し言葉であるー 00:05:38.162 --> 00:05:40.152 アッカド語に置き換えられた。 00:05:40.152 --> 00:05:45.469 これは紀元前2,300年の、知られる限り最古の辞書だ。 00:05:45.469 --> 00:05:49.740 シュメール語とアッカド語の単語が列挙されている。 00:05:49.740 --> 00:05:52.740 これは現在のシリアで発見された。 00:05:52.740 --> 00:05:54.865 アッカド語に合うようにー 00:05:54.865 --> 00:05:56.511 言語を適応させる過程で、 00:05:56.511 --> 00:06:00.053 記号の数は約600種まで減少した。 00:06:00.053 --> 00:06:01.116 そして表音文字へー 00:06:01.116 --> 00:06:04.346 移行し、さらに数は減った。 00:06:04.346 --> 00:06:07.484 振り返ろう。象形文字とくさび形文字は、 00:06:07.484 --> 00:06:10.180 進化した結果、数百種の表音文字をー 00:06:10.180 --> 00:06:12.766 使うようになった。 00:06:12.766 --> 00:06:16.449 そして書き言葉がカジュアルな用途になるのに伴い、 00:06:16.449 --> 00:06:18.463 より多くの人々に浸透した。 00:06:18.463 --> 00:06:20.965 新たな書き言葉を発明する際は、 00:06:20.965 --> 00:06:24.700 土に文字を記すことが多かった。 00:06:24.700 --> 00:06:27.704 書き言葉の歴史上、最も重要な発見の1つは、 00:06:27.704 --> 00:06:30.617 紀元前1,700年に遡る。 00:06:30.617 --> 00:06:34.508 シナイ文字が、シナイ半島で発見された。 00:06:34.508 --> 00:06:36.873 文字は20フィート間隔で記されている。 00:06:36.873 --> 00:06:40.154 この発見で重要な点は、絵は全てー 00:06:40.154 --> 00:06:42.376 子音を示し、 00:06:42.376 --> 00:06:46.026 表意文字が無かったことだ。 00:06:46.026 --> 00:06:47.576 正しく発音すると、 00:06:47.576 --> 00:06:51.811 古代セム語の言葉になる。 00:06:51.811 --> 00:06:54.532 完全には解読されていないが、この文はー 00:06:54.532 --> 00:06:58.443 「名前、階級、祈祷文」の形式と見られる。 00:06:58.443 --> 00:07:01.815 「最高位」「神」といった単語が解読されている。 00:07:01.815 --> 00:07:05.738 この何気ない例が、革命の一端を表している。 00:07:05.738 --> 00:07:09.414 表音文字のみの組み合わせで、意味を創りだすのだ。 00:07:09.414 --> 00:07:14.844 [音節を発音する女性] 00:07:14.844 --> 00:07:19.591 紀元前1,000年、フェニキア文字の発明に至る。 00:07:19.591 --> 00:07:21.552 地中海沿岸で、 00:07:21.552 --> 00:07:22.911 海洋貿易のー 00:07:22.911 --> 00:07:26.112 文化を持ったフェニキア人が用いた。 00:07:26.112 --> 00:07:28.256 フェニキア文字は、1つの記号がー 00:07:28.256 --> 00:07:32.652 1つの子音を表すという原則に基づいている。 00:07:32.652 --> 00:07:35.465 わずか22種の文字で、 00:07:35.465 --> 00:07:39.013 北方セム語を書き下していた。 00:07:39.013 --> 00:07:41.122 音を表す記号の多くは、 00:07:41.122 --> 00:07:43.928 文字の名前の頭を文字の発音と一致させるために、 00:07:43.928 --> 00:07:48.371 象形文字から拝借したものだ。 00:07:48.371 --> 00:07:51.750 例えば「水」を表す「mem」が変化して、 00:07:51.750 --> 00:07:55.245 今に使われる「M」になった。 00:07:55.245 --> 00:07:57.531 「牛」を表す「Alph」は、 00:07:57.531 --> 00:08:00.109 変化して今の「A」になった。 00:08:00.109 --> 00:08:02.412 ところでアルファベットには、 00:08:02.412 --> 00:08:04.177 発明者も意図しなかったー 00:08:04.177 --> 00:08:07.070 隠れた力があった。セム語でなくてもー 00:08:07.070 --> 00:08:08.432 成り立つことだ。 00:08:08.432 --> 00:08:12.468 [1つの音節を発音する人々] 00:08:12.468 --> 00:08:15.065 この魔法の文字は、わずかな調整でー 00:08:15.065 --> 00:08:17.077 様々な言語に適応できた。 00:08:17.077 --> 00:08:20.166 ヨーロッパ、インド、東南アジアなど、 00:08:20.166 --> 00:08:24.636 読み書きは世界中に広まった。 00:08:24.636 --> 00:08:27.221 これがギリシャ語、現代のラテン・アルファベットのー 00:08:27.221 --> 00:08:30.771 もとになった。 00:08:30.771 --> 00:08:33.846 アルファベットの概念は、情報のー 00:08:33.846 --> 00:08:37.647 伝達や蓄積をできる強力な手法だ。 00:08:37.647 --> 00:08:39.352 実は、記号の種類やー 00:08:39.352 --> 00:08:41.746 その選び方、属する言語でさえ、 00:08:41.746 --> 00:08:43.884 本質とは関係ないことに注意しよう。 00:08:43.884 --> 00:08:46.424 情報とは、取りうる記号のー 00:08:46.424 --> 00:08:51.161 集合の中から、選択をしたものにすぎない。 00:08:51.161 --> 00:08:54.153 それから長い時間、人類は常にー 00:08:54.153 --> 00:08:56.612 情報をより速く、効率的に、広い範囲へー 00:08:56.612 --> 00:09:00.177 伝える伝達手法を探してきた。 00:09:00.177 --> 00:09:02.725 さて、これは人類が試みた、 00:09:02.725 --> 00:09:06.102 新しい通信手段だ。あらゆる人間やー 00:09:06.102 --> 00:09:10.084 動物よりも速い、工学的なものだ。 00:09:11.078 --> 00:09:14.817 もしもし?もしもし!