情報とは、簡単に言えば、ある媒体を介してー
蓄積・伝達されるメッセージだ。
絵を描くとき、自由に形を描くことでー
メッセージを表現するが、
その取りうる形態の数は無限大にのぼる。
自己表現に何の規約もないのだ。
人類が書き言葉を発達させる際、
周りの世界を分割し、有限数の細かい単位に分割するー
必要があった。これが現代で言うところの「記号」だ。
さて、全ての書き言葉はこのように考えられる。
記号を特定の形式で配置することで、
メッセージが形成されるのだ。
さあ紀元前3,000年に戻り、
2つの古代文字を探求しよう。
1つ目、古代エジプトには「象形文字」があった。
神聖な意思疎通の形態とされ、
その目的は政治、会計、魔術や宗教に限定されていた。
より抜きの少数の者のみが書記官として訓練を積んだ。
一般の人々はたいてい書き言葉を
読めなかった。
記号そのものは、大雑把に2つに分けられる。
「表意文字」:意味ある概念を表すー
文字だ。
戻る、リンゴ、…
次に「表音文字」:
これらは断片的な音を表す。
[1つの音節を発音する人たち]
当時、一般的に使われていた記号の数は
全部で1,500以上あった。
これらの記号をー
表意文字と表音文字に分けると、
表音文字の方はかなり少なかった。
約140の表音文字があり、
そのうち個別の子音を表していたのは僅か33種だった。
使われていた全記号のうち、ごく小さい割合だ。
当時、記号を記録する媒体には、
主に岩が用いられた。
メッセージを未来を伝えるためには、
碑文の耐久力が理想的だった。
このような意思疎通の形態では、
持ち運びにくさはさほど問題にならなかった。
しかしここで、全く新しいー
記録媒体が現れた。
ナイル川の洪水の後に残った沈泥により、
周囲の土地が極めて肥沃になった。
そこでの農作物の1つに「パピルス」があった。
それを細長くスライスし、
水に漬けて、
織り合わせ、最後にプレスすると、
天然の砂糖が接着剤となりくっついた。
数日後、乾燥させ、ほとんど重さのないー
書き版になった。
この媒体は、情報を幅広い地域に伝えるためにー
理想的だった。碑文が耐久性、時間にー
重きを置いたのとは対照的だ。
この安く、持ち運びやすいー
記録媒体が普及すると同時に、
書き言葉がより多くの人々に普及し、
新たな目的で文字が記述されるようになった。
パピルスに書く人が徐々に増えるにつれて、
記号は素早く書けるように進化した。
ここから「ヒエラティック」という筆記体が生まれた。
例えば、これは現存する中ではー
世界最古の手術文章だ。
紀元前1,600年頃に、ヒエラティックで書かれた。
これらの記号は象形文字からー
派生したものだが、素早く書くためにー
絵が簡略化されている。いわば古代の速記術だ。
また、一般に使われる記号の数がー
減り始め、700種程度になった。
重い岩の媒体から解放され、
アイデアは軽いものになった。
読み書き、思考、活動がー
俗化することで、手書き文化はー
目覚ましい普及を遂げた。
そして、紀元前650年頃に「デモティック」というー
筆記体系が生まれた。さらに速記しやすくなるよう、
工夫がなされた。
例えば、この文章は婚姻契約書だ。
知られる限り最も初期の、デモティックの例の1つだ。
面白いことに、新たな記法ではー
記号の総数がまたしても劇的に減少した。
前と比べると、
数にしておよそ10%程度しかー
使われていない。
この原因は、
表音文字によって…
[1つの音節を発音する人たち]
表意文字が置き換えられたためだ。
より平易になったことで、
幼い子供にも文字を教えられるようになった。
他の文化でも似たパターンが見られる。
紀元前3,000年に戻り、メソポタミアを訪れてみよう。
そこでは「くさび形文字」が用いられていた。
その元々の目的は会計だった。
硬貨が発明される以前に、
借金や余剰商品を追跡する手法としてー
重要視された。
例えば、これは動物の皮膚のー
備蓄を記録した文章だ。
そして、この言葉は他の目的も満たすように進化した。
例えばこの書き板には、パンとビールのー
レシピが記されている。
さらにこの書き板には、
法的文章が記されている。
さて、もともとこの言葉はー
シュメール人に用いられ、
2,000種以上の記号があった。
これもまた表意文字と、
表音文字の2種類からなっていた。
シュメール語は、徐々に話し言葉であるー
アッカド語に置き換えられた。
これは紀元前2,300年の、知られる限り最古の辞書だ。
シュメール語とアッカド語の単語が列挙されている。
これは現在のシリアで発見された。
アッカド語に合うようにー
言語を適応させる過程で、
記号の数は約600種まで減少した。
そして表音文字へー
移行し、さらに数は減った。
振り返ろう。象形文字とくさび形文字は、
進化した結果、数百種の表音文字をー
使うようになった。
そして書き言葉がカジュアルな用途になるのに伴い、
より多くの人々に浸透した。
新たな書き言葉を発明する際は、
土に文字を記すことが多かった。
書き言葉の歴史上、最も重要な発見の1つは、
紀元前1,700年に遡る。
シナイ文字が、シナイ半島で発見された。
文字は20フィート間隔で記されている。
この発見で重要な点は、絵は全てー
子音を示し、
表意文字が無かったことだ。
正しく発音すると、
古代セム語の言葉になる。
完全には解読されていないが、この文はー
「名前、階級、祈祷文」の形式と見られる。
「最高位」「神」といった単語が解読されている。
この何気ない例が、革命の一端を表している。
表音文字のみの組み合わせで、意味を創りだすのだ。
[音節を発音する女性]
紀元前1,000年、フェニキア文字の発明に至る。
地中海沿岸で、
海洋貿易のー
文化を持ったフェニキア人が用いた。
フェニキア文字は、1つの記号がー
1つの子音を表すという原則に基づいている。
わずか22種の文字で、
北方セム語を書き下していた。
音を表す記号の多くは、
文字の名前の頭を文字の発音と一致させるために、
象形文字から拝借したものだ。
例えば「水」を表す「mem」が変化して、
今に使われる「M」になった。
「牛」を表す「Alph」は、
変化して今の「A」になった。
ところでアルファベットには、
発明者も意図しなかったー
隠れた力があった。セム語でなくてもー
成り立つことだ。
[1つの音節を発音する人々]
この魔法の文字は、わずかな調整でー
様々な言語に適応できた。
ヨーロッパ、インド、東南アジアなど、
読み書きは世界中に広まった。
これがギリシャ語、現代のラテン・アルファベットのー
もとになった。
アルファベットの概念は、情報のー
伝達や蓄積をできる強力な手法だ。
実は、記号の種類やー
その選び方、属する言語でさえ、
本質とは関係ないことに注意しよう。
情報とは、取りうる記号のー
集合の中から、選択をしたものにすぎない。
それから長い時間、人類は常にー
情報をより速く、効率的に、広い範囲へー
伝える伝達手法を探してきた。
さて、これは人類が試みた、
新しい通信手段だ。あらゆる人間やー
動物よりも速い、工学的なものだ。
もしもし?もしもし!